諏訪すわ頼よりゆき水すい

凡例はんれい 諏訪すわ 頼よりゆき水すい
時代じだい	安土あづち桃山ももやま時代じだい - 江戸えど時代じだい前期ぜんき
生誕せいたん	元もと亀かめ元年がんねん12月23日にち（1571年ねん1月がつ18日にち）
死没しぼつ	寛永かんえい18年ねん1月がつ14日にち（1641年ねん2月がつ23日にち）
別名べつめい	小太郎こたろう（通称つうしょう）
墓所はかしょ	長野ながの県けん茅野ちの市しの頼よりゆき岳だけ寺てら
官位かんい	従したがえ五ご位い下した、因幡いなば守もり
幕府ばくふ	江戸えど幕府ばくふ
主君しゅくん	徳川とくがわ家康いえやす→秀忠ひでただ→家光いえみつ
藩はん	上野うえの総社そうじゃ藩はん主おも→信濃しなの諏訪すわ藩はん主あるじ
氏族しぞく	諏訪すわ氏し
父母ちちはは	父ちち：諏訪すわ頼よりゆき忠ただし、母はは：理り昌あきら院いん（向山むかいやま氏し）
兄弟きょうだい	頼よりゆき水すい、頼よりゆき定じょう、頼よりゆき雄ゆう、頼広よりひろ、頼よりゆき盛もり
妻つま	：貞さだ松まつ院いん（本多ほんだ康かん重しげるの長女ちょうじょ）
子こ	忠頼ただより（忠ちゅう恒つね）、頼よりゆき郷きょう、頼よりゆき長ちょう、頼よりゆき孚まこと、娘むすめ（土岐とき定義さだよし正室せいしつ）、娘むすめ（三枝さえぐさ守まもる昌あきら正室せいしつ）、娘むすめ（大久保おおくぼ長重ながしげ正室せいしつ）、娘むすめ（徳永とくなが昌あきら成なり正室せいしつ）、娘むすめ（鳥居とりい忠勝ただかつ室しつ）、娘むすめ（茅野ちの頼よりゆき良りょう室しつ）、娘むすめ（諏訪すわ盛もり政まさし室しつ）、娘むすめ（諏訪すわ頼よりゆき寛ひろし室しつ）

諏訪すわ 頼よりゆき水すい（すわ よりみず）は、安土あづち桃山ももやま時代じだい、江戸えど時代じだい前期ぜんきの大名だいみょう。信濃しなの諏訪すわ藩はんの初代しょだい藩主はんしゅ。諏訪すわ頼よりゆき忠ただしの長男ちょうなん。

生涯しょうがい

天正てんしょう5年ねん（1577年ねん）、6歳さいで父ちち頼よりゆき忠ちゅうから諏訪すわ大社たいしゃ大だい祝しゅく（おおほうり）職しょくを譲ゆずられた。天正てんしょう18年ねん（1590年ねん）、父ちちと共ともに小田原おだわら征伐せいばつに従軍じゅうぐんした。その後ご、主家しゅかの徳川とくがわ氏しが関東かんとうに移うつり封ふうとなったため、頼よりゆき忠ちゅう父子ふしはこれに従したがって諏訪すわを離はなれて関東かんとうに移うつり、武蔵むさし国こく奈良梨ならなしに所領しょりょうを与あたえられた。その翌々年よくよくねん、上野うえの国こく総社そうじゃへ移うつり封ふうされ、同年どうねんに父ちちから家督かとくを譲ゆずられた。慶長けいちょう5年ねん（1600年ねん）の関ヶ原せきがはらの戦たたかいでは徳川とくがわ秀忠ひでただ軍ぐんに従したがい、信濃しなの国こくや上野うえの国こくの守備しゅびを命めいじられた。第だい二に次じ上田うえだ合戦かっせん後のちには上田うえだ城しろの受取うけとり役やくを果はたしている。これら功績こうせきなどにより、戦後せんごの慶長けいちょう6年ねん（1601年ねん）10月がつ、諏訪すわ氏し伝来でんらいの地ちである信濃しなの国高くにたか島とう2万まん7,000石せきへと復帰ふっきした。

慶長けいちょう19年ねん（1614年ねん）からの大坂おおさかの陣じんでは甲府こうふ城じょうの守備しゅびを命めいじられ、長男ちょうなんの忠頼ただよりが諏訪すわ軍ぐんを率ひきいて出兵しゅっぺいした。頼よりゆき水すいは冬ふゆの陣じんの際さいに自身じしんが城しろの留守居るすいなどのような閑職かんしょくに留とめられていることに不満ふまんを持もち、夏なつの陣じんでは大だい坂さかへ従軍じゅうぐんさせてもらうように願ねがったが叶かなえられず、夏なつの陣じんの際さいも甲府こうふ城じょうの守備しゅびを命めいじられた。

元和がんわ2年ねん（1616年ねん）、改易かいえきとなった松平まつだいら忠ただし輝てるの身柄みがらを預あずかることとなった。忠ちゅう輝てる幽閉ゆうへいのために高島たかしま城じょうに郭かくを一ひとつ増設ぞうせつし、諏訪すわ家かは忠ちゅう輝てるの面倒めんどうを生涯しょうがい見みることとなった。寛永かんえい11年ねん（1634年ねん）、第だい3代だい将軍しょうぐん・徳川とくがわ家光いえみつから杯はいと饗応きょうおうを受うけるほどの信任しんにんを受うけた。寛永かんえい17年ねん（1640年ねん）、忠頼ただより（忠ちゅう恒つね）に家督かとくを譲ゆずって隠居いんきょし、翌年よくねんの寛永かんえい18年ねん1月がつ14日にち（1641年ねん2月がつ23日にち）に72歳さいで死去しきょした。

人柄ひとがら

頼よりゆき水すいは政治せいじ手腕しゅわんに優すぐれ、全すべてを指示しじし、前ぜん領主りょうしゅの「七なな公おおやけ三さん民みん」と高たかい税率ぜいりつのせいで逃散していた百姓ひゃくしょうを呼よび戻もどして、新田にった開発かいはつを奨励しょうれいするなど、藩政はんせいの安定あんていに尽力じんりょくしたため家臣かしんや領民りょうみんには評判ひょうばんがよかったと伝つたわる。また、旧領きゅうりょう復帰ふっきといえども、日根野ひねの氏しの統治とうちの後のちに入にゅう封ふうしたため、在地ざいち勢力せいりょくとの地縁ちえん・しがらみと縁えんが切きれており、これがスムーズな藩政はんせいに繋つながったともされる。

頼よりゆき水すいの剛毅ごうきさを示しめす逸話いつわとして、永えい明寺あけてら事件じけんが挙あげられる。頼よりゆき水すいの末すえ娘むすめ亀かめ姫ひめが頼よりゆき水すいに宛あてた書状しょじょうを持もたされた使つかいの下男げなんが、使つかいの最中さいちゅうに隣となりの下男げなんと喧嘩けんかとなり、衣ころも之の渡川どがわへ捨すてられてしまった。投なげた側がわの隣となりの下男げなんは後難こうなんを恐おそれ、諏訪すわ家かの菩提寺ぼだいじであった永えい明あきら寺てらに逃にげ込こんだ。頼よりゆき水すいは罪人ざいにんを引ひき渡わたすように命めいじたが、僧侶そうりょは不ふ介入かいにゅうの特権とっけんと菩提寺ぼだいじとしての格式かくしきを楯だてにして引ひき渡わたさなかった。そこで業ぎょうを煮にやした頼よりゆき水すいは、寺てらを焼やいて罪人ざいにんを捕つかまえ首くびを刎ねた。さらに匿かくまった僧侶そうりょも有無うむを言いわせずに処刑しょけいしたと言いわれている。この時代じだいの僧侶そうりょには権威けんいがあり、また菩提寺ぼだいじを焼やくというのは先祖せんぞに対たいしても恐おそれ多おおいことであるが、何者なにものにも屈こごめしない頼よりゆき水すいの性格せいかくを表あらわしている。

永えい明あきら寺てらは上原うえはら城しろのそばにあった寺てらで、当時とうじ鎌倉かまくら五山ごさんにならって上原うえはら五山ごさんと呼よばれた五ごか寺てらの一ひとつ。永えい明あきら寺てらの他ほか、極楽寺ごくらくじ（唯ただ一いち現存げんそんしている）・金剛寺こんごうじ（廃寺はいじ）・法ほう明寺あけてら・光明寺こうみょうじ（この2か寺てらはのちに合併がっぺいして放ひ光ひかり寺てらとなり上諏訪かみすわに移うつった）があった。現在げんざい、永えい明寺あけてら跡地あとちには碑いしぶみが建設けんせつされている。

系譜けいふ

父母ちちはは

• 諏訪すわ頼よりゆき忠ただし（父ちち）
• 理り昌あきら院いん ー 向山むかいやま氏し（母はは）

正室せいしつ

• 貞さだ松まつ院いん ー 信濃しなの国こく飯山いいのやま藩主はんしゅ本多ほんだ康かん重しげるの娘むすめ

子女しじょ

• 諏訪すわ忠ただし恒つね（長男ちょうなん）生母せいぼは貞さだ松まつ院いん（正室せいしつ）
• 諏訪すわ頼よりゆき郷きょう（次男じなん）生母せいぼは貞さだ松まつ院いん（正室せいしつ） - 旗本はたもと。のち甲府こうふ藩はん徳川とくがわ綱重つなしげ家老がろう。6千せん石せき。
• 諏訪すわ頼よりゆき長ちょう - 頼よりゆき泰たい。徳川とくがわ忠長ただながに仕つかえ、のち旗本はたもと。
• 諏訪すわ頼よりゆき孚まこと - 高島たかしま藩はん家臣かしんとなる。早世そうせい。
• 娘むすめ - 摂津せっつ国こく高槻たかつき藩主はんしゅ土岐とき定義さだよし正室せいしつ
• 娘むすめ - 旗本はたもとのち安あん房ぼう国こく三さん枝えだ藩主はんしゅ三枝さえぐさ守まもる昌あきら正室せいしつ。次男じなんが諏訪すわ頼よりゆき増ぞうと名乗なのり旗本はたもと3千せん石せき。
• 大久保おおくぼ長重ながしげ正室せいしつ - 幕府ばくふ旗本はたもと。娘むすめが忠ちゅう恒つねの養女ようじょとなり、藩はん家老がろう諏訪すわ盛住もりずみに嫁とつぎ諏訪すわ頼よりゆき意いを産うんでいる。
• 徳永とくなが昌あきら成なり正室せいしつ - 幕臣ばくしん。徳永とくなが寿ことぶき昌あきらの次男じなん
• 鳥居とりい忠勝ただかつ室しつ - 鳥居とりい元忠もとただの四よん男なん。徳川とくがわ頼房よりふさに付つけられ水戸みと藩士はんし。忠勝ただかつの娘むすめが大石おおいし良りょう欽に嫁とつぎ、良りょう欽の嫡孫ちゃくそんが大石おおいし良雄よしお。
• 茅野ちの頼よりゆき良りょう室しつ - 家臣かしん
• 諏訪すわ盛もり政まさし室しつ - 諏訪すわ家か家老がろう。家臣かしん
• 諏訪すわ頼よりゆき寛ひろし室しつ - 諏訪すわ大社たいしゃ上社かみやしろ大祝だいしゅく

養女ようじょ

• 小沢おざわ正宗まさむね室しつ - 家臣かしん。諏訪すわ盛もり政まさし娘むすめつまり頼よりゆき水すいの外孫そとまご。

頼よりゆき岳だけ寺てら

詳細しょうさいは「頼よりゆき岳だけ寺てら」を参照さんしょう

前出ぜんしゅつの菩提寺ぼだいじ焼やき討うちののち、頼よりゆき水すいは新あらたな菩提寺ぼだいじとして寺院じいん（のちの諏訪すわ藩主はんしゅ家か墓所はかしょとなる温泉寺おんせんじ）を建立こんりゅうする予定よていであったが、これを果はたさないまま死去しきょしたため、寛永かんえい8年ねん（1631年ねん）に先立さきだって創建そうけんされていた頼よりゆき岳だけ寺てらに葬ほうむられた。。本堂ほんどう左ひだり後方こうほうにある廟所びょうしょ（国くに指定してい史跡しせき）には頼よりゆき水すい（頼よりゆき岳だけ寺てら殿どの）とその父ちち（永えい明寺あけてら殿どの）・母はは（理り昌あきら院いん殿どの）が祀まつられている。

本尊ほんぞんの木造もくぞう釈迦牟尼しゃかむに佛ぼとけは廃寺はいじとなった永えい明あきら寺てらから移うつされた物ものであり、運慶うんけい・湛慶たんけい合作がっさくと伝つたえられている。高島たかしま藩主はんしゅ諏訪すわ家か墓所はかしょ（温泉寺おんせんじ墓所はかしょと頼よりゆき岳だけ寺てら墓所はかしょの一括いっかつ指定してい）が国くにの史跡しせきに指定していされている。頼よりゆき水すいの眠ねむる「諏訪すわ氏頼うじより岳だけ寺てら廟所びょうしょ」は市し指定してい史跡しせきにもなっていて、同どう敷地しきち内ないには諏訪すわ家かを支ささえた家臣かしん団だんの墓地ぼちも多おおく残のこされている。