警報けいほうシステム

警報けいほうシステム（けいほうシステム）とは、危険きけん・危機ききが差さし迫せまっている状態じょうたい（緊急きんきゅう事態じたい, emergency）、あるいは危険きけん性せい（リスク, risk）の高たかい状態じょうたいを、警報けいほうとして不ふ特定とくてい多数たすうの者ものに周知しゅうちするシステムのこと。危険きけん・機器きき・危険きけん性せいの対象たいしょうや、警報けいほうの形態けいたいはさまざまである。社会しゃかい学がく、安全あんぜん工学こうがく、心理しんり学がくに関連かんれんが深ふかい。

生物せいぶつ学がく的てきな警報けいほうシステム

地球ちきゅう上じょうの生物せいぶつには、本能ほんのう的てきに、自みずからに迫せまる危機ききを警告けいこくとして自己じこ認識にんしきさせるシステムが幾いくつか備そなわっている。

疼痛とうつう（一般いっぱん的てきにいう痛いたみを指さす医学いがく用語ようご） - 痛いたみによって外傷がいしょうや体内たいないの異常いじょうを認識にんしきさせる。「痛いたみ方かた」痛いたみの程度ていど、部位ぶいなどにより詳細しょうさいな状態じょうたいを認識にんしきし、保護ほご行動こうどうや痛いたみ経験けいけんに基もとづく回避かいひ行動こうどうにつながる。
恐怖きょうふ - 恐怖きょうふを感かんじたことをきっかけに、危険きけんに対処たいしょしようとする防御ぼうぎょ力りょくが一時いちじ的てきに向上こうじょうする。また、恐怖きょうふ体験たいけんはそれに対たいする回避かいひ行動こうどうにつながる。

また、警告けいこく（特定とくてい者しゃに対たいする警報けいほう）を発はっすることによって自みずからを守まもろうとするシステムを持もつ生物せいぶつもいる。

警告けいこく色しょく（警戒色けいかいしょく） - 自みずからの体からだの色彩しきさいや模様もようによって周囲しゅういに警告けいこくを発はっし、自みずからを守まもろうとしていると考かんがえられている。
威嚇いかく - 自みずからの体からだを大おおきく見みせたり、色いろや模様もようを変かえたり、音おとを出だしたり、動うごきを見みせたりして相手あいてをひるませようとする行動こうどう。威嚇いかくは攻撃こうげきの前ぜん段階だんかいとしてだけではなく、自みずからを守まもろうとする側面そくめんもある。

社会しゃかいにおける警報けいほうシステム

社会しゃかいの中なかには、実じつにさまざまな目的もくてき、形態けいたいの警報けいほうシステムが存在そんざいしている。

産業さんぎょう

労働ろうどう安全あんぜん衛生えいせい法ほう・労働ろうどう安全あんぜん衛生えいせい規則きそくや関連かんれんする特定とくてい作業さぎょうを規定きていした法規ほうきでは、いくつかの作業さぎょうにおいて、警報けいほうシステムにより作業さぎょう者しゃに危険きけんを知しらせることを規定きていしている。有機ゆうき溶剤ようざいや特定とくてい化学かがく物質ぶっしつ、可燃かねん性せいガスなどの危険きけん物ぶつ類るいを扱あつかう作業さぎょう、酸さん欠かけ環境かんきょう下かや掘削くっさくなどを行おこなう建設けんせつ現場げんば、坑道こうどう内うちでの作業さぎょうなどで規定きていされている。警報けいほうは規定きていされていないが濃度のうどの監視かんし測定そくていが義務付ぎむづけられているもので、警報けいほう機能きのう付つきのシステムを用もちいることもある。また、安全あんぜん性せいを向上こうじょうさせる目的もくてきで自主じしゅ的てきに警報けいほう装置そうちを設もうける場合ばあいもある。
航空こうくう分野ぶんや
- 空中くうちゅう衝突しょうとつ防止ぼうし装置そうち(TCAS)の警報けいほうシステム
- 対地たいち接近せっきん警報けいほう装置そうち(GPWS)
- 飛行場ひこうじょう警報けいほう
鉄道てつどう分野ぶんや
- 自動じどう列車れっしゃ保安ほあん装置そうちの警報けいほうシステム
- 踏切ふみきり警報けいほう機き
船舶せんぱく分野ぶんや
- 海上かいじょう警報けいほう
交通こうつう分野ぶんや
- 衝突しょうとつ被害ひがい軽減けいげんブレーキ - 自動車じどうしゃにおける衝突しょうとつ防止ぼうし警告けいこくシステム。

建築けんちく物ぶつ

消防しょうぼう法ほうに基もとづき一定いっていの条件じょうけんに該当がいとうする建築けんちく物ぶつでは自動じどう火災かさい報知ほうち設備せつびが設置せっちされ、地区ちく音響おんきょう装置そうち（ベル）や非常ひじょう放送ほうそう設備せつびの大おおきな音おとにより火災かさいを知しらせる。
- 漏電ろうでんによる火災かさいのリスクが高たかい一定いってい基準きじゅんを満みたす建築けんちく物ぶつでは、漏電ろうでん火災かさい警報けいほう器きにより漏電ろうでん時じに警報けいほうを発はっして火災かさいの危険きけんを知しらせる。
また防犯ぼうはんや不審ふしん者しゃ対策たいさくなどセキュリティを目的もくてきに警報けいほう装置そうちが設置せっちされる場合ばあいがある。

広ひろく一般いっぱんに向むけられるもの

自然しぜん災害さいがいや事件じけん、事故じこなど不ふ特定とくてい多数たすうの者ものに危険きけんが及およぶような事象じしょうに対たいしては、広ひろく一般いっぱんに向むけた警報けいほうシステムが用もちいられる。

気象きしょう警報けいほう、気象きしょう注意報ちゅういほう - 大だい雨あめ、大だい雪ゆき、地吹雪じふぶき、洪水こうずい、強つよ風ふう、雷かみなりなど
噴火ふんか警報けいほう - 火山かざんの噴火ふんか
緊急きんきゅう地震じしん速報そくほうなどの地震じしん警報けいほうシステム - 地震じしん
- 警戒けいかい宣言せんげん、東海とうかい地震じしんに関連かんれんする情報じょうほう - 東海とうかい地震じしんの予知よち時じ
津波つなみ警報けいほう、津波つなみ注意報ちゅういほうなどの津波つなみ警報けいほうシステム - 地震じしんによる津波つなみ
洪水こうずい予報よほう、水防すいぼう警報けいほう - 洪水こうずい
大気たいき汚染おせん注意報ちゅういほう - 光化学こうかがくスモッグなどの大気たいき汚染おせん
国民こくみん保護ほご警報けいほう - 武力ぶりょく攻撃こうげき
アンバーアラート - アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくやカナダなどで、誘拐ゆうかい事件じけんや行方ゆくえ不明ふめい事件じけんが発生はっせいした際さいにテレビやラジオ放送ほうそう、電光でんこう掲示板けいじばんなどで広ひろく広報こうほうするシステム。
緊急きんきゅう警報けいほう放送ほうそう - 津波つなみ警報けいほうや警戒けいかい宣言せんげん発表はっぴょう時じなどに、テレビやラジオ放送ほうそうにおいて対応たいおう機種きしゅの受信じゅしん機きを自動じどう起動きどうさせる信号しんごうを送出そうしゅつする、警告けいこく放送ほうそう。
全国ぜんこく瞬時しゅんじ警報けいほうシステム - 上記じょうきを包括ほうかつ的てきにカバーし、市民しみんに伝達でんたつするシステム。

なお市町村しちょうそんなどの地方自治体ちほうじちたいは、上記じょうきのような災害さいがい全般ぜんぱんに対たいして、災害さいがい対策たいさく基本きほん法ほうに基もとづきその危険きけん性せいに応おうじて、避難ひなん準備じゅんび情報じょうほう、避難ひなん勧告かんこく、避難ひなん指示しじを発表はっぴょうするほか、警戒けいかい区域くいきを設定せっていして法的ほうてきに立たち入いりを制限せいげんする。これらは警報けいほう・注意報ちゅういほうなどの名なを冠かんしてはいないが、避難ひなんを促うながす警報けいほうの性格せいかくを持もっている。

警報けいほうの形態けいたい

物理ぶつり的てきな基準きじゅんのある危険きけんでは、計測けいそくや検知けんちを行おこない、しきい値ち以上いじょうになった時点じてんで警報けいほうを発はっするシステムが多おおく用もちいられる。これが使つかえないような場合ばあいや高度こうどな判断はんだんが必要ひつような場合ばあいは、人間にんげんによる客観きゃっかん的てきな判断はんだんを以もって警報けいほうを発はっするシステムが採用さいようされる。

自動的じどうてきに警報けいほうを発はっするものではブザーやベル、スピーカー（音声おんせい放送ほうそうやサイレン）などの音響おんきょうや照明しょうめいの点灯てんとう・点滅てんめつを用もちいて知しらせるものがある。建設けんせつ現場げんばや交通こうつう管制かんせいなどでは、ホイッスルや誘導ゆうどう棒ぼうが警告けいこくの意味いみで用もちいられることがある。また、危険きけんが常時じょうじ存在そんざいする地域ちいきでは標識ひょうしき（ピクトグラムや文字もじ）で知しらせるものがある。

また、広ひろく一般いっぱんに向むけた警報けいほうとしてはテレビ、ラジオなどの放送ほうそう媒体ばいたい、携帯けいたい電話でんわなどの移動いどう通信つうしん機器ききを用もちいた警報けいほうシステムも多用たようされる。

脚注きゃくちゅう

参考さんこう文献ぶんけん

特許庁とっきょちょう『平成へいせい18年度ねんど特許とっきょ出願しゅつがん技術ぎじゅつ動向どうこう調査ちょうさ報告ほうこく書しょ警報けいほうシステム（要約ようやく版ばん）』、2007年ねん5月がつ。