気象きしょう警報けいほう

気象きしょう警報けいほう（きしょうけいほう）とは、暴風ぼうふう、大雨おおあめ、大雪おおゆきなどの重大じゅうだいな気象きしょう災害さいがいが起おこるおそれがある場合ばあいに、気象庁きしょうちょう（各かく気象台きしょうだい）が警戒けいかいを呼よび掛かけるために発表はっぴょうする予報よほう。単たんに警報けいほうとも言いう。大雨おおあめ・暴風ぼうふう・波浪はろうなどいくつかの現象げんしょうは下位かいに注意報ちゅういほう、上位じょういに特別とくべつ警報けいほうがある。

警戒けいかいレベルでは大雨おおあめ警報けいほうおよび洪水こうずい警報けいほうは警戒けいかいレベル3（高齢こうれい者しゃ等とう避難ひなん）、高潮こうちょう警報けいほうは警戒けいかいレベル4（速すみやかに全員ぜんいん避難ひなん）にそれぞれ相当そうとうし、避難ひなん指示しじなどの目安めやすとなる。

なお、気象きしょう業務ぎょうむ法ほうには地震じしん、噴火ふんかの警報けいほう（緊急きんきゅう地震じしん速報そくほうおよび噴火ふんか警報けいほう）も規定きていされており、本ほん項こうでは必要ひつように応おうじて解説かいせつする。

定義ていぎと区分くぶん

警報けいほう類るいの法的ほうてき定義ていぎ

名称めいしょう			定義ていぎ	準拠じゅんきょ法規ほうき
予報よほう			観測かんそくの成果せいかに基もとづく現象げんしょうの予想よそうの発表はっぴょう	法ほう2条じょう6項こう
	注意報ちゅういほう		災害さいがいの起おこるおそれがある旨むねを注意ちゅういして行おこなう予報よほう	施行しこう令れい4条じょう
	警報けいほう		重大じゅうだいな災害さいがいの起おこるおそれがある旨むねを警告けいこくして行おこなう予報よほう	法ほう2条じょう7項こう
		特別とくべつ警報けいほう	予想よそうされる現象げんしょうが特とくに異常いじょうであるため重大じゅうだいな災害さいがいの起おこるおそれが著いちじるしく大おおきい旨むねを警告けいこくして行おこなう警報けいほう	法ほう13条じょうの2
注ちゅう:「法ほう」は気象きしょう業務ぎょうむ法ほう、「施行しこう令れい」は気象きしょう業務ぎょうむ法ほう施行しこう令れい。

日本にっぽんにおける気象きしょう業務ぎょうむは気象きしょう業務ぎょうむ法ほうに定さだめられており、「警報けいほう」は「重大じゅうだいな災害さいがいの起おこるおそれのある旨むねを警告けいこくして行おこなう予報よほう」と定義ていぎされている。気象庁きしょうちょうには、業務ぎょうむとして気象きしょう、地象ちしょう、海象せいうちの予報よほうや警報けいほうを行おこなう責務せきむがあり、同どう法ほうと関連かんれんする規定きていはその種類しゅるいおよび、伝達でんたつや周知しゅうちについて、気象庁きしょうちょう以外いがいによる警報けいほうの制限せいげんなどを定さだめている。

警報けいほうには、一般いっぱん向むけの警報けいほうと特定とくてい業務ぎょうむ（船舶せんぱく、航空こうくう）向むけの警報けいほうがある。

警報けいほうの区分くぶんは気象きしょう業務ぎょうむ法ほう施行しこう令れいと気象庁きしょうちょう予報よほう警報けいほう規定きていにまたがって定さだめられ、またいくつかの警報けいほうは実務じつむ上じょう独立どくりつして発表はっぴょうせず他ほかの警報けいほうに含ふくめられている。一般いっぱん向むけの警報けいほうは施行しこう令れいに9つ定さだめられているが、予報よほう警報けいほう規定きていにはそれを組くみ替かえた10種類しゅるいの警報けいほうが定さだめられている。そのうち3つは地震じしん・火山かざん・津波つなみに対たいするものなので、一般いっぱん向むけで実際じっさいに発表はっぴょうされる気象きしょう警報けいほうは暴風ぼうふう、暴風ぼうふう雪ゆき、大雨おおあめ、大雪おおゆき、高潮こうちょう、波浪はろう、洪水こうずいの7種類しゅるいである（2022年ねん時点じてん）。

一般いっぱんの利用りように適合てきごうする警報けいほう（施行しこう令れい第だい4条じょう）（実際じっさいに発表はっぴょうされる警報けいほうとは異ことなる）
種類しゅるい	説明せつめい
気象きしょう警報けいほう	暴風雨ぼうふうう、暴風ぼうふう雪ゆき、大だい雨あめ、大だい雪ゆき等ひとしによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。実際じっさいには現象げんしょう名めいを冠かんした、暴風ぼうふう、暴風ぼうふう雪ゆき、大雨おおあめ、大雪おおゆきの4種類しゅるいに区分くぶん（予報よほう警報けいほう規定きてい第だい11条じょう）。
地震動じしんどう警報けいほう	地震動じしんどうによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。発生はっせいした断層だんそう運動うんどうによる地震動じしんどうに限かぎる。緊急きんきゅう地震じしん速報そくほうとして発表はっぴょうされている。
火山かざん現象げんしょう警報けいほう	噴火ふんか、降灰こうかいなどによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。現在げんざいは噴火ふんか警報けいほうのみが運用うんようされている。火山かざんガス予報よほう、降灰こうかい予報よほうは予報よほうとして発表はっぴょうされており、警報けいほうレベルがない。
土砂崩どしゃくずれ警報けいほう	大雨おおあめ、大雪おおゆき等とうに伴ともなう山崩やまくずれ、地滑じすべり等ひとしによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。実際じっさいには大雨おおあめ警報けいほうに含ふくめられる。(2023年ねん＜令れい和わ5年ねん＞11月30日にち、地面じめん現象げんしょう警報けいほうから名称めいしょう変更へんこう)
津波つなみ警報けいほう	津波つなみによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。
高潮こうちょう警報けいほう	台風たいふうなどによる海面かいめんの異常いじょうな上昇じょうしょう（高潮こうちょう）による重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。
波浪はろう警報けいほう	風浪ふうろうやうねりによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。
浸水しんすい警報けいほう	浸水しんすいによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。実際じっさいには大雨おおあめ警報けいほうに含ふくめられる。
洪水こうずい警報けいほう	洪水こうずいによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。

特定とくてい業務ぎょうむ向むけの警報けいほうとして気象庁きしょうちょうの責務せきむに規定きていされているのは、航空機こうくうき向むけ、船舶せんぱく向むけ、および水防すいぼう活動かつどう向むけの3種しゅ。前ぜん2つは国際こくさい航行こうこうに関かかわることから世界せかい気象きしょう機関きかん(WMO)、国際こくさい民間みんかん航空こうくう機関きかん(ICAO)や国際こくさい海事かいじ機関きかん(IMO)の国際こくさい規格きかくに適合てきごうする形かたちで行おこなわれている。なお鉄道てつどう、電気でんきなどその他たの特定とくてい事業じぎょう向むけの予報よほう・警報けいほうの規定きていもあるが責務せきむではなく、予報よほうは提供ていきょうしているものの警報けいほうはない。

航空機こうくうきの利用りように適合てきごうする警報けいほう（施行しこう令れい第だい5条じょう）（実際じっさいに発表はっぴょうされる警報けいほうとは異ことなる）
種類しゅるい	説明せつめい
飛行場ひこうじょう警報けいほう	公共こうきょうの用ように供きょうする飛行場ひこうじょうおよびその付近ふきん（おおむね半径はんけい5海里かいり（9km））を対象たいしょうとする、気象きしょう、地象ちしょう、津波つなみ、高潮こうちょう、波浪はろうに関かんする警報けいほう。
空域くういき警報けいほう	国土こくど交通こうつう省令しょうれいで定さだめる空域くういきを対象たいしょうとする、気象きしょうおよび火山かざん現象げんしょうに関かんする警報けいほう。実務じつむ上じょうは空域くういき悪あく天てん情報じょうほう（SIGMET）や航空こうくう路ろ火山灰かざんばい情報じょうほう（VAA）で代用だいようされているが、これは警報けいほうに相当そうとうする内容ないようを含ふくまないこともある。

船舶せんぱくの利用りように適合てきごうする警報けいほう（施行しこう令れい第だい5条じょう）（実際じっさいに発表はっぴょうされる警報けいほうとは異ことなる）
種類しゅるい	説明せつめい
海上かいじょう警報けいほう	国土こくど交通こうつう省令しょうれいで定さだめる海域かいいきを対象たいしょうとする、船舶せんぱくの運航うんこうに必要ひつような、海上かいじょうの気象きしょう、火山かざん現象げんしょう、津波つなみ、高潮こうちょう、波浪はろうに関かんする警報けいほう。全般ぜんぱん海上かいじょう警報けいほう、地方ちほう海上かいじょう警報けいほう、津波つなみに関かんする海上かいじょう警報けいほうがある。

水防すいぼう活動かつどう向むけの警報けいほうは気象きしょう業務ぎょうむ法ほう及および水防すいぼう法ほうが定さだめるもので、気象庁きしょうちょうが単独たんどくまたは河川かせん管理かんり者しゃ（国土こくど交通省こうつうしょうまたは都道府県とどうふけん）との協定きょうていにより指定していした河川かせんについて共同きょうどうで発表はっぴょうする。この区分くぶんとして施行しこう令れいに4種類しゅるい定さだめられているが、予報よほう警報けいほう規定きていにより一般いっぱん向むけの各かく警報けいほうを以って代用だいようされている。洪水こうずい警報けいほうは、主おもに一級いっきゅう河川かせんにおいて別途べっと発表はっぴょうされる指定してい河川かせん洪水こうずい予報よほうと連動れんどうしており、それ以外いがいの中小ちゅうしょう河川かせんでは、河川かせんごとに洪水こうずい予報よほうを個別こべつに発表はっぴょうすることが難むずかしいためその地域ちいきの洪水こうずい警報けいほうを以って代用だいようする。

水防すいぼう活動かつどうの利用りように適合てきごうする警報けいほう（施行しこう令れい第だい6条じょう）（実際じっさいに発表はっぴょうされる警報けいほうとは異ことなる）
種類しゅるい	説明せつめい
水防すいぼう活動かつどう用よう気象きしょう警報けいほう	暴風雨ぼうふうう、大雨おおあめによる重大じゅうだいな水害すいがいの警告けいこく。大雨おおあめ警報けいほうにより代用だいようされる（予報よほう警報けいほう規定きてい第だい16条じょう、以下いか同おなじ）。
水防すいぼう活動かつどう用よう津波つなみ警報けいほう	津波つなみによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。津波つなみ警報けいほうにより代用だいようされる。
水防すいぼう活動かつどう用よう高潮こうちょう警報けいほう	台風たいふうなどによる海面かいめんの異常いじょうな上昇じょうしょう（高潮こうちょう）による重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。高潮こうちょう警報けいほうにより代用だいようされる。
水防すいぼう活動かつどう用よう洪水こうずい警報けいほう	洪水こうずいによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。洪水こうずい警報けいほうにより代用だいようされる。

なお地震じしん・火山かざんが警報けいほうの対象たいしょうに加くわえられたのは2007年ねんの法ほう改正かいせいで、それまでの火山かざん情報じょうほう（火山かざん活動かつどう度どレベル）などは警報けいほうでも予報よほうでもない情報じょうほう提供ていきょうの位置付いちづけだった。

対象たいしょう区域くいきと発表はっぴょう機関きかん

警報けいほう・注意報ちゅういほうの対象たいしょう区域くいきの区分くぶんは2010年ねん5月から、原則げんそくとして市町村しちょうそんを単位たんいとして、一部いちぶでは市町村しちょうそん内ないを分割ぶんかつして設定せっていされた区域くいき、また東京とうきょう23区くは各かく特別とくべつ区くを単位たんいとしている。予報よほう区くとしては府県ふけん予報よほう区くやそれを分割ぶんかつした一いち次じ・二に次じ細分さいぶん区域くいきが定さだめられている（気象庁きしょうちょう 「警報けいほう・注意報ちゅういほうや天気てんき予報よほうの発表はっぴょう区域くいき」参照さんしょう）。

なお、東京とうきょう都と小笠原おがさわら村むらは長ながらく注意報ちゅういほうの対象たいしょうではなかったが、人ひとが居住きょじゅうしている父島ちちじま・母島ははじまとその周辺しゅうへん海域かいいきに限かぎり2008年ねん3月26日にちから開始かいしされている。

警報けいほう・注意報ちゅういほうは、担当たんとう気象きしょう官署かんしょである地方ちほう気象台きしょうだい（一部いちぶは測候所そっこうじょが分担ぶんたん）・管区かんく気象台きしょうだいが発表はっぴょうする。

基準きじゅん

具体ぐたい的てきな単位たんい時間じかん当あたりの降水こうすい量りょう、風速ふうそくなどの気象きしょう要素ようそ、それらの複ふく合あい指標しひょうを数値すうち化かして予あらかじめ基準きじゅんを定さだめている。地理ちり的てきな特性とくせい、過去かこの災害さいがい事例じれいや観測かんそく値ちなどが考慮こうりょされ、地域ちいきにより差さがある。概おおむね類似るいじした基準きじゅんだが、大雨おおあめや洪水こうずい、高潮こうちょうなどは市町村しちょうそん等ひとしごとに土壌どじょう雨量うりょう指数しすうや潮位ちょういなどが細こまかく設定せっていされている。

表題ひょうだいごとに基準きじゅんは過去かこに何なん度どか全面ぜんめん的てきに改正かいせいされている。2010年ねん5月がつからは大雨おおあめ警報けいほうの土砂どしゃ災害さいがい基準きじゅんで24時じ間あいだ雨量うりょうに代かえて土壌どじょう雨量うりょう指数しすう、洪水こうずい警報けいほうで流域りゅういき雨量うりょう指数しすう、2017年ねんからは大雨おおあめ警報けいほうの浸水しんすい害がい基準きじゅんで1時じ間あいだ・3時じ間あいだ雨量うりょうに代かえて表面ひょうめん雨量うりょう指数しすうという複ふく合あい指標しひょうをそれぞれを導入どうにゅう。警報けいほうの効果こうか低下ていかを招まねく空振からぶりを低減ていげんする精緻せいち化かを図はかり、また同どう時期じきに危険きけん度ど分布ぶんぷ（キキクル）の提供ていきょうを開始かいしした。

なお、直前ちょくぜんに地震じしん（おおむね震度しんど5強つよ以上いじょう）・火山かざん噴火ふんかが発生はっせいしたり、豪雨ごううに起因きいんする大だい規模きぼな災害さいがいがあったなどの状況じょうきょうに応おうじて、基準きじゅんが引ひき下さげられる場合ばあいがある。

伝達でんたつ

警報けいほうが発表はっぴょうされた場合ばあい、国くに・地方自治体ちほうじちたいの機関きかん、さらには個々ここの住民じゅうみんなどは災害さいがいの発生はっせいに備そなえて要員よういんの出動しゅつどう、高齢こうれい者しゃ等とう避難ひなんや避難ひなん指示しじ、通行つうこう制限せいげん、危険きけん箇所かしょからの退避たいひなどの防災ぼうさい対応たいおうを行おこなう必要ひつようがある。このため、気象庁きしょうちょうの発表はっぴょうした警報けいほうについてはその解除かいじょも含ふくめて以下いかのように通知つうち・周知しゅうちの徹底てっていを図はかるための伝達でんたつ系統けいとうが制度せいど化かされており防災ぼうさい対応たいおうの迅速じんそくかつ確実かくじつな実施じっしを支援しえんするようになっている（気象きしょう業務ぎょうむ法ほう第だい15条じょう、同どう法ほう施行しこう令れい第だい7条じょう）。

• 警察庁けいさつちょうの機関きかん・都道府県とどうふけん警察けいさつ（津波つなみ警報けいほう）

→関係かんけい市町村しちょうそん長ちょう→公衆こうしゅう・所在しょざいの官公かんこう署しょ

• 国土こくど交通省こうつうしょうの航空こうくう交通こうつう管制かんせい機関きかん（飛行場ひこうじょう警報けいほう・空域くういき警報けいほう）

→航行こうこう中ちゅうの航空機こうくうき

• 国土こくど交通省こうつうしょうの河川かせん管理かんり機関きかん（水防すいぼう活動かつどう用よう各種かくしゅ警報けいほう）

決きまった周知しゅうち先さきはないが、各種かくしゅの水防すいぼう活動かつどうのトリガーとなる。気象きしょう警報けいほうが発表はっぴょうされた場合ばあい、防災ぼうさいの観点かんてんから河川かせんに限かぎらず地方ちほう整備せいび局きょくに所属しょぞくする該当がいとう地域ちいきの各かく河川かせんや国道こくどう事務所じむしょが特別とくべつ体制たいせいに入はいるケースが多おおい。

• 海上保安庁かいじょうほあんちょう（気象きしょう・高潮こうちょう・波浪はろう・火山かざん現象げんしょう・津波つなみ・海上かいじょうの各かく警報けいほう）

→航海こうかい中ちゅうおよび入港にゅうこう中ちゅうの船舶せんぱく

• 都道府県とどうふけん知事ちじ（気象きしょう・高潮こうちょう・波浪はろう・火山かざん現象げんしょう・津波つなみ・地面じめん現象げんしょう・洪水こうずいの各かく警報けいほう、水防すいぼう活動かつどう用よう各種かくしゅ警報けいほう、共同きょうどう洪水こうずい警報けいほう）

→関係かんけい市町村しちょうそん長ちょう→公衆こうしゅう・所在しょざいの官公かんこう署しょ

• NTT東日本ひがしにっぽん・西日本にしにほん（同上どうじょう）

→関係かんけい市町村しちょうそん長ちょう→公衆こうしゅう・所在しょざいの官公かんこう署しょ

• NHK（気象きしょう・高潮こうちょう・波浪はろう・地震動じしんどう・火山かざん現象げんしょう・津波つなみ・地面じめん現象げんしょう・洪水こうずいの各かく警報けいほう）

→公衆こうしゅう（放送ほうそうの義務ぎむ）

主おもな伝達でんたつ手段しゅだんとしてテレビ放送ほうそうやデータ放送ほうそう、ラジオ放送ほうそう、インターネットが挙あげられる。スマートフォンアプリ、登録とうろく型がたメールなどもある。

技術ぎじゅつ的てきには、気象庁きしょうちょうから各かく専門せんもん機関きかんや自治体じちたいへ、ADESS（アデス）と呼よばれるシステムを起点きてんにして、直接ちょくせつあるいは気象きしょう業務ぎょうむ支援しえんセンターを通つうじて、電文でんぶんデータとして配信はいしんされる。データは統一とういつした気象庁きしょうちょうXML形式けいしきで、その他たの防災ぼうさい気象きしょう情報じょうほうも同様どうよう。古ふるく電報でんぽうの流ながれを汲くんでテキスト（文章ぶんしょう、平文へいぶん）形式けいしきである2バイト文字もじのかな漢字かんじ形式けいしきの時代じだいが続つづいていたが、2011年ねんにXML形式けいしきが開始かいしし、2018年ねんにはかな漢字かんじ形式けいしきが廃止はいしされた。

市民しみんへの伝達でんたつ手段しゅだんが乏とぼしかった時代じだいには日常にちじょうの天気てんき予報よほうを含ふくめて旗はたや吹ふき流ながし、色いろ灯とう、鐘かね、サイレンによる周知しゅうちが行おこなわれていて、その様式ようしきを示しめす信号しんごう標識ひょうしきが定さだめられていた。現在げんざいでも、津波つなみのように突発とっぱつ的てきな災害さいがいではサイレンは有効ゆうこうな周知しゅうち手段しゅだんのひとつである。

また、気象きしょう業務ぎょうむ法ほう以外いがいにも災害さいがい対策たいさく基本きほん法ほうやこれに基もとづく地域ちいき防災ぼうさい計画けいかくなどにおいて官民かんみんの各かく機関きかんが災害さいがいの発生はっせいの危険きけんを周知しゅうちする活動かつどうのひとつとして、気象庁きしょうちょうの警報けいほうを伝達でんたつする手続てつづきが定さだめられている（後述こうじゅつ）。

船舶せんぱく向むけ海上かいじょう警報けいほうは、GMDSS規格きかくの海上保安庁かいじょうほあんちょうの無線むせんシステムや気象庁きしょうちょうの船舶せんぱく気象きしょう無線むせん・気象きしょう無線むせん模写もしゃ通報つうほう(JMH)・インターネットを通つうじ伝達でんたつされる。

航空機こうくうき向むけ飛行場ひこうじょう警報けいほう・空域くういき警報けいほうは、国土こくど交通省こうつうしょう航空局こうくうきょく経由けいゆや気象庁きしょうちょうの東京とうきょうVOLMET放送ほうそうを通つうじ伝達でんたつされる。

警報けいほうの独占どくせん

気象きしょう業務ぎょうむ法ほう第だい23条じょうにより、気象庁きしょうちょう以外いがいの者ものが警報けいほうを行おこなうことは禁きんじられており、情報じょうほうが錯綜さくそうすることによる防災ぼうさい対応たいおう上じょう・公安こうあん上じょうの混乱こんらんを防止ぼうししている。これと同様どうようの規制きせいはアメリカにおけるSingle "Official" Voice原則げんそくなど、世界せかい的てきにみられる。

なお、通信つうしんが途絶とぜつするなどして気象庁きしょうちょうの津波つなみ警報けいほうが利用りようできない場合ばあいに市町村しちょうそん長ちょうが行おこなう津波つなみ警報けいほうは、気象きしょう業務ぎょうむ法ほう施行しこう令れい第だい8条じょうで“気象庁きしょうちょう以外いがいの者ものの行おこなうことができる警報けいほう”とされ許容きょようされている。また現地げんちで確認かくにんした異変いへんなどに基もとづいて土地とちの管理かんり者しゃなどが行おこなう地象ちしょう（がけ崩くずれなど）の警報けいほうは、緊急きんきゅう避難ひなん的てきなものとして許容きょようされている。

警報けいほうの補足ほそく

警報けいほうの発表はっぴょう後ごに特とくに警戒けいかいしなければならない状況じょうきょうが生しょうじた場合ばあいに、警報けいほうを補足ほそくする気象きしょう情報じょうほうが発表はっぴょうされることがある。例たとえば大雨おおあめ警報けいほうや特別とくべつ警報けいほう発表はっぴょう中ちゅうに数すう年ねんに1回かい程度ていどしか生しょうじないような猛烈もうれつな雨あめを観測かんそくした場合ばあいには記録きろく的てき短時間たんじかん大雨おおあめ情報じょうほうが発表はっぴょうされ、発生はっせいしつつある災害さいがいへの警戒けいかいが呼よびかけられる。また土砂どしゃ災害さいがいの危険きけん性せいが高たかまっている場合ばあい、土砂どしゃ災害さいがい警戒けいかい情報じょうほうを発表はっぴょうし市町村しちょうそん単位たんいで土砂どしゃ災害さいがいへの警戒けいかいを呼よびかけることも行おこなわれている。

警報けいほうを発表はっぴょうするような気象きしょうがあらかじめ予想よそうされる場合ばあいには早期そうき注意ちゅうい情報じょうほう（警報けいほう級きゅうの可能かのう性せい）が発表はっぴょうされる。主おもに当日とうじつ夜よるや翌日よくじつ、最大さいだいで5日にち後ごまで。→cf.タイムライン

警報けいほう・注意報ちゅういほうの構成こうせいでは発表はっぴょう文ぶん（注意ちゅうい警戒けいかい事項じこう）とともに「今後こんごの推移すいい」の発表はっぴょうも2017年ねん出水しゅっすい期きから行おこなわれている。今後こんごの危険きけん度どを、3時じ間あいだごと時じ系列けいれつ表ひょうの形かたちで、雨量うりょう・風速ふうそく・波高はこうなどの値ねを 警報けいほう級きゅう・注意報ちゅういほう級きゅうなどの色分いろわけと共ともに示しめす。概おおむね翌日よくじつまでの予測よそく期間きかん以後いごは「以後いごも警報けいほう級きゅう」などと示しめされる場合ばあいもあり、また予測よそくの確たしかさが低ひくい雷雨らいうなどでは、ある時間じかん以降いこうは灰色はいいろで不ふ確定かくていであることが示しめされる場合ばあいもある。

水害すいがい（土砂どしゃ災害さいがい・浸水しんすい・洪水こうずい）については、ホームページ等とうで地図ちず上じょうに危険きけん度どを5段階だんかいで示しめす危険きけん度ど分布ぶんぷが提供ていきょうされており、1km単位たんいの細こまかい分布ぶんぷを確認かくにんできる。5段階だんかいのうち下したから3段階だんかい目めの赤色あかいろが「警戒けいかい」（警戒けいかいレベル3）、4段階だんかい目めの紫色むらさきいろが「危険きけん」（警戒けいかいレベル4）相当そうとう。

一般いっぱんに発表はっぴょうされる警報けいほう

2022年ねん時点じてん

種類しゅるい	説明せつめい	注意報ちゅういほう等とうの有無うむ※
		特とく	注ちゅう	早はや
気象きしょう災害さいがい
暴風ぼうふう警報けいほう	暴風ぼうふうによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。風速ふうそくが陸上りくじょうで20m/s前後ぜんご、海上かいじょうで25m/s前後ぜんごを基準きじゅんとしている地域ちいきが多おおい。	○	○	○
暴風ぼうふう雪ゆき警報けいほう	雪ゆきを伴ともなった暴風ぼうふうによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。雪ゆきを伴ともなうことによる視程してい障害しょうがい（吹雪ふぶき）への注意ちゅうい喚起かんきも内容ないように含ふくまれる。風速ふうそくが陸上りくじょうで20m/s前後ぜんご、海上かいじょうで25m/s前後ぜんごを基準きじゅんとしている地域ちいきが多おおい。 ※2	○	○	(○)
大雨おおあめ警報けいほう	大雨おおあめによる、がけ崩くずれ、土石流どせきりゅう、地滑じすべりなどの土砂どしゃ災害さいがいや、低ひくい土地とちの浸水しんすい・冠水かんすい、下水道げすいどうの溢水いっすいなどの重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。表題ひょうだいに「土砂どしゃ災害さいがい」か「浸水しんすい害がい」のどちらか、あるいはその両方りょうほうが括弧かっこ書がきで付記ふきされる。直近ちょっきんの雨あめが地中ちちゅうに残のこり土砂どしゃ災害さいがいの危険きけん性せいが続つづいているときなどは雨あめがやんでもしばらく解除かいじょされない。 大雨おおあめ警戒けいかいレベル3相当そうとう。	○	○	○
大雪おおゆき警報けいほう	大雪おおゆきによる建物たてもの被害ひがいや交通こうつう障害しょうがいなどの重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。	○	○	○
高潮こうちょう警報けいほう	台風たいふうや低てい気圧きあつなどによる海面かいめん水位すいいの異常いじょうな上昇じょうしょう（高潮こうちょうや異常いじょう潮位ちょうい）が引ひき起おこす、海岸かいがん付近ふきんの低ひくい土地とちの重大じゅうだいな浸水しんすい災害さいがいの警告けいこく。 高潮こうちょう警戒けいかいレベル4相当そうとう。	○	○	○
波浪はろう警報けいほう	高たかい波なみによる遭難そうなんや沿岸えんがん施設しせつの被害ひがいなどの重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。	○	○	○
洪水こうずい警報けいほう	大雨おおあめや長期間ちょうきかんの雨あめ、融雪ゆうせつによる、河川かせんの増水ぞうすい、堤防ていぼうやダムが破やぶ堤つつみ損壊そんかい・溢水いっすい（氾濫はんらん）し低ひくい土地とちにあふれ出だす重大じゅうだいな洪水こうずい災害さいがいの警告けいこく。予報よほう区内くないにある河川かせんを包括ほうかつ的てきに対象たいしょうとして発表はっぴょうされる。なお大おおきな河川かせんでは、連動れんどうして指定してい河川かせん洪水こうずい警報けいほうが発表はっぴょうされる。 洪水こうずい警戒けいかいレベル3相当そうとう。	×	○	×
※1 特とく:特別とくべつ警報けいほう、注ちゅう:注意報ちゅういほう、早はや:早期そうき注意ちゅうい情報じょうほう（警報けいほう級きゅうの可能かのう性せい）。なお、暴風ぼうふう雪ゆきの注意報ちゅういほうは「風雪ふうせつ注意報ちゅういほう」、暴風ぼうふうの注意報ちゅういほうは「強風きょうふう注意報ちゅういほう」。暴風ぼうふう雪ゆきの早期そうき注意ちゅうい情報じょうほうは暴風ぼうふうに含ふくめられる。 ※2 暴風ぼうふう雪ゆき警報けいほうには暴風ぼうふう警報けいほうの警戒けいかい事項じこうが含ふくまれる。

注意報ちゅういほうのうち、濃霧のうむ・雷かみなり・乾燥かんそう・なだれ・着ちゃく氷ごおり・着き雪ゆき・霜しも・低温ていおん・融雪ゆうせつの9種しゅについては、対応たいおうする警報けいほうが存在そんざいしない。これらの現象げんしょうについては、被害ひがいが局所きょくしょ的てきなものにとどまったり、あまり大おおきな災害さいがいをもたらすものでなかったりするためと考かんがえられる。

種類しゅるい	説明せつめい	特別とくべつ警報けいほう・注意報ちゅういほう等とうの有無うむ
地震じしん災害さいがい
緊急きんきゅう地震じしん速報そくほう	地震動じしんどうによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。発生はっせいした断層だんそう運動うんどうによる地震動じしんどうに限かぎる。最大さいだい予想よそう震度しんどが5弱じゃく以上いじょうとなるときに予想よそう震度しんど4以上いじょうの地域ちいきを対象たいしょうに発表はっぴょうされる緊急きんきゅう地震じしん速報そくほう（「一般いっぱん向むけ」および、この基準きじゅんに達たっした「高度こうど利用りよう者しゃ向むけ」）がこれに該当がいとうする。	（特別とくべつ警報けいほう級きゅうも同名どうめい） （注意報ちゅういほうなし）
火山かざん災害さいがい
噴火ふんか警報けいほう	噴火ふんかによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。日本にっぽん国内こくない108の活火山かっかざんすべてを対象たいしょうとするが、特とくに地元じもと自治体じちたいとの調整ちょうせいがなされた火山かざんについては入山にゅうざん規制きせいや避難ひなんの必要ひつよう性せいが噴火ふんか警戒けいかいレベルで表示ひょうじされる。	（特別とくべつ警報けいほう級きゅうも同名どうめい） （注意報ちゅういほうなし）
津波つなみ災害さいがい
津波つなみ警報けいほう	津波つなみによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。津波つなみ予報よほうも参照さんしょう。	大だい津波つなみ警報けいほう 津波つなみ注意報ちゅういほう

特定とくてい業務ぎょうむ向むけに発表はっぴょうされる警報けいほう

飛行場ひこうじょう警報けいほう

2024年ねん時点じてん。原則げんそくとして、発表はっぴょう時点じてんから6時じ間あいだ後ごまでの予報よほうに基もとづいて発表はっぴょうする。

種類しゅるい	説明せつめい	注意報ちゅういほうの有無うむ
気象きしょう災害さいがい
飛行場ひこうじょう強風きょうふう警報けいほう	強風きょうふうによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。10分間ふんかん平均へいきん風速ふうそく34ノット以上いじょう48ノット未満みまんの場合ばあい。	なし
飛行場ひこうじょう暴風ぼうふう警報けいほう	暴風ぼうふうによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。10分間ふんかん平均へいきん風速ふうそく48ノット以上いじょうの場合ばあい（台風たいふう警報けいほう除のぞく）。
飛行場ひこうじょう台風たいふう警報けいほう	熱帯ねったい低てい気圧きあつの暴風ぼうふうによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。熱帯ねったい低てい気圧きあつにより10分間ふんかん平均へいきん風速ふうそく64ノット以上いじょうの場合ばあい。
飛行場ひこうじょう大雨おおあめ警報けいほう	大雨おおあめによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。基準きじゅんは空港くうこうごとに異ことなる。
飛行場ひこうじょう大雪おおゆき警報けいほう	大雪おおゆきによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。基準きじゅんは空港くうこうごとに異ことなる。
飛行場ひこうじょう高潮こうちょう警報けいほう	高潮こうちょうによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。基準きじゅんは空港くうこうごとに異ことなる。

航空こうくう交通こうつう管制かんせいも参照さんしょう。

海上かいじょう警報けいほう

2024年ねん時点じてん。原則げんそくとして、発表はっぴょう時点じてんから24時じ間あいだ後ごまでの予報よほうに基もとづいて発表はっぴょうする。警報けいほう電文でんぶんでは海域かいいきごとの予報よほうのほか、荒天こうてんの原因げんいんである温帯おんたい低てい気圧きあつや熱帯ねったい低てい気圧きあつ（台風たいふう）の位置いちや進路しんろ、強風きょうふうの範囲はんいなどを伝つたえる。

種類しゅるい		説明せつめい	注意報ちゅういほうの有無うむ
気象きしょう災害さいがい
一般いっぱん警報けいほう	海上かいじょう風ふう警報けいほう	風ふうによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。風速ふうそく28ノット以上いじょう34ノット未満みまん（風力ふうりょく7）の場合ばあい。	なし
	海上かいじょう濃霧のうむ警報けいほう	霧きりによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。海上かいじょう視程していがおおむね500m（瀬戸内海せとないかいでは1km）以下いかの場合ばあい。
	海上かいじょう着ぎ氷ごおり警報けいほう	着ちゃく氷ごおりによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。低温ていおんと風ふうにより波なみしぶき、雨あめ、霧きりが船体せんたいに付着ふちゃくし凍結とうけつする状態じょうたいの場合ばあい。
海上かいじょう強風きょうふう警報けいほう		強風きょうふうによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。風速ふうそく34ノット以上いじょう48ノット未満みまん（風力ふうりょく8 - 9）の場合ばあい。台風たいふうでは旧きゅう階級かいきゅうで「弱よわい」に相当そうとうする。
海上かいじょう暴風ぼうふう警報けいほう		暴風ぼうふうによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。風速ふうそく48ノット以上いじょう（風力ふうりょく10以上いじょう）の場合ばあい（台風たいふう警報けいほう除のぞく）。台風たいふうでは旧きゅう階級かいきゅうで「並なみの強つよさ」に相当そうとうする。
海上かいじょう台風たいふう警報けいほう		台風たいふうの暴風ぼうふうによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。「強つよい」以上いじょうの台風たいふうにより風速ふうそく64ノット以上いじょう（風力ふうりょく12）の場合ばあい。
海上かいじょううねり警報けいほう		離はなれた海域かいいきからのうねりによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。
火山かざん災害さいがい
火山かざん現象げんしょうに関かんする海上かいじょう警報けいほう		火山かざん噴火ふんかによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。噴火ふんかの影響えいきょうが海上かいじょうや沿岸えんがんに及およぶ恐おそれがある場合ばあいに海域かいいきを指定していして発表はっぴょうする。	なし
津波つなみ災害さいがい
津波つなみに関かんする海上かいじょう警報けいほう		津波つなみによる重大じゅうだいな災害さいがいの警告けいこく。予報よほう区くや予想よそう高たかさによる区分くぶんなどは一般いっぱん向むけの津波つなみ警報けいほうと同おなじ。	あり（津波つなみ注意報ちゅういほう相当そうとう）

航行こうこう警報けいほう（海上保安庁かいじょうほあんちょう所管しょかん）も参照さんしょう。

歴史れきし

1883年ねん（明治めいじ16年ねん）3月1日にちに東京とうきょう気象台きしょうだい（現在げんざいの気象庁きしょうちょう）が日本にっぽんの気象きしょう機関きかんとして暴風ぼうふう警報けいほうの業務ぎょうむを開始かいし。なお、毎日まいにちの天気てんき予報よほうの開始かいしはこの1年ねんほど後ごの1884年ねん（明治めいじ17年ねん）6月1日にちである。これ以降いこう、大おおきな警報けいほう体系たいけいの変更へんこうとしては1935年ねん（昭和しょうわ10年ねん）の気象きしょう特報とくほう（現在げんざいの注意報ちゅういほう）の新設しんせつ、2013年ねん（平成へいせい25年ねん）の特別とくべつ警報けいほうの新設しんせつが挙あげられる。警報けいほうの種類しゅるいは社会しゃかいの要請ようせい、監視かんし・予測よそく技術ぎじゅつの向上こうじょうなどにより数すう度どに亘わたって変かわってきた。当初とうしょは暴風ぼうふうのみ、1950年ねんに暴風雨ぼうふうう・暴風ぼうふう雪ゆき・大雨おおあめ・大雪おおゆきの4種しゅ、1953年ねんに高潮こうちょう、波浪はろう、洪水こうずいが追加ついかされ7種しゅ、1988年ねんに暴風雨ぼうふううが廃止はいし・暴風ぼうふうに変更へんこうされて現在げんざいに至いたる。

明治めいじから昭和しょうわ前期ぜんき

• 1883年ねん3月がつ1日にち - 東京とうきょう気象台きしょうだい（現在げんざいの気象庁きしょうちょう）が毎日まいにちの天気てんき図ず作成さくせいと暴風ぼうふう警報けいほうの業務ぎょうむを開始かいし。5月26日にちには初はじめて全国ぜんこく暴風ぼうふう警報けいほうが発表はっぴょう。新聞しんぶん記事きじによると関西かんさいでは暴風ぼうふうに先せんだって連絡れんらくがあり船せんの出航しゅっこうを見合みあわせることができたという。
• 1883年ねん7月がつ1日にち - 内務省ないむしょう地理ちり局きょくが暴風ぼうふう警報けいほう信号しんごう標しるべ式しきを制定せいてい。高たかい柱はしらに赤あか球だまを掲かかげて警戒けいかいの旨むねを周知しゅうちすることとした。
• 1908年ねん（明治めいじ41年ねん）4月がつ1日にち 「天気てんき予報よほう暴風ぼうふう警報けいほう規定きてい」、「地方ちほう天気てんき予報よほう、地方ちほう暴風ぼうふう警報けいほう信号しんごう標識ひょうしき」を制定せいてい。暴風ぼうふう警報けいほうは「風ふう強したたかるべし」、「風雨ふうう強したたかるべし」、「暴風雨ぼうふううのおそれあり」の3種類しゅるいに分わけられる。
• 1935年ねん（昭和しょうわ10年ねん）7月がつ15日にち - 暴風ぼうふう警報けいほうの下位かいに気象きしょう特報とくほう（現在げんざいの注意報ちゅういほう）を設もうける。前年ぜんねん9月がつの室戸むろと台風たいふうの教訓きょうくんを受うけ、地域ちいきによっては頻繁ひんぱんになりすぎて鈍感どんかんになる傾向けいこうがあった警報けいほうをより警戒けいかい度どの高たかい情報じょうほうに位置付いちづける。暴風ぼうふう警報けいほう は「暴風雨ぼうふうう、暴風ぼうふう雪ゆき襲来しゅうらいし災害さいがいの大だいならんとする見込みこみなるとき」。気象きしょう特報とくほう は「風雨ふうう、風雪ふうせつ、大雨おおあめ、大雪おおゆき、その他た特とくに注意ちゅういを要ようする気象きしょう上じょうの異常いじょう現象げんしょうの起おこらんとするとき」。電報でんぽうや信号しんごう標しるべについても改正かいせい。また全国ぜんこく10気象きしょう区くをさらに小しょう気象きしょう区くに分わける。
• 1950年ねん（昭和しょうわ25年ねん） - 運輸省うんゆしょう告示こくじの気象きしょう予報よほう規程きていおよびその実施じっし要領ようりょうにより、気象きしょう警報けいほうの種類しゅるいとして暴風雨ぼうふうう、暴風ぼうふう雪ゆき、大雨おおあめ、大雪おおゆきを規定きてい。なおこの頃ころのみ、中央ちゅうおう気象台きしょうだい（現在げんざいの気象庁きしょうちょう）が全国ぜんこく単位たんいで発表はっぴょうする台風たいふう注意報ちゅういほう、台風たいふう警戒けいかい報ほうも存在そんざいした。

なお、太平洋戦争たいへいようせんそうの期間きかんに敷しかれた気象きしょう管制かんせいでは全国ぜんこくで警報けいほう・特報とくほうを含ふくむ天気てんき予報よほうの公表こうひょうが中止ちゅうしされたほか、日にち中ちゅう戦争せんそう時ときにも中止ちゅうしされた期間きかんがあった。ただし、特とくに甚大じんだいな被害ひがいが予想よそうされる場合ばあいは「特例とくれい暴風ぼうふう警報けいほう」を発表はっぴょうすることとしていたものの、情報じょうほうは限定げんてい的てきで十分じゅうぶんではなく、1942年ねん（昭和しょうわ17年ねん）周防灘すおうなだ台風たいふうなどでは被害ひがいを拡大かくだいさせた。

気象きしょう業務ぎょうむ法ほう制定せいてい以降いこう

• 1952年ねん（昭和しょうわ27年ねん）12月27日にち - 気象きしょう業務ぎょうむ法ほう施行しこう。同どう法ほうの体系たいけい下かで翌よく1953年ねんに運輸省うんゆしょう告示こくじの気象庁きしょうちょう予報よほう警報けいほう規程きていを制定せいてい。警報けいほうは「重大じゅうだいな災害さいがいが起おこる恐おそれのある旨むねを警告けいこくして行おこなう予報よほう」と規定きていされ、気象きしょう警報けいほうに高潮こうちょう、波浪はろう、洪水こうずいが追加ついか。気象きしょう特報とくほうは気象きしょう注意報ちゅういほうとなる。
• 1954年ねん（昭和しょうわ29年ねん）8月がつ15日にち - 警報けいほう・注意報ちゅういほうの基準きじゅんに具体ぐたい的てきな数値すうち基準きじゅんが導入どうにゅうされる（気象きしょう官署かんしょ予報よほう業務ぎょうむ細則さいそくの制定せいてい）。
• 1955年ねん（昭和しょうわ30年ねん） - 気象きしょう業務ぎょうむ法ほう・水防すいぼう法ほう改正かいせいにより指定してい河川かせん洪水こうずい予報よほうを導入どうにゅう。当初とうしょの対象たいしょうは一部いちぶの大だい河川かせんのみ。
• 1960年ねん（昭和しょうわ35年ねん）7月がつ - 前年ぜんねん9月がつ伊勢湾いせわん台風たいふうの教訓きょうくんを受うけ、気象庁きしょうちょう予報よほう警報けいほう規程きていを改正かいせい。警報けいほう文ぶんの発表はっぴょうを警報けいほうごと個別こべつから一括いっかつ・標題ひょうだいに警報けいほう名めい列挙れっきょへ、また予報よほう区くを府県ふけんから細分さいぶん区域くいき（現在げんざいの1次じ細分さいぶん）へと細こまかくして変更へんこうした（発表はっぴょうは府県ふけんごと）。
• 1972年ねん（昭和しょうわ47年ねん）6月がつ - 大雨おおあめ警報けいほうの基準きじゅんに1時じ間あいだ・3時じ間あいだ雨量うりょうが導入どうにゅう。短時間たんじかん強きょう雨うによる被害ひがいが目立めだった昭和しょうわ42年ねん7月がつ豪雨ごううの教訓きょうくんから検討けんとうが進すすめられていた。
• 1979年ねん（昭和しょうわ54年ねん）7月がつ - 大雨おおあめ警報けいほうについて警報けいほう名めいの後うしろに1次じ細分さいぶん区域くいき名めいを括弧かっこ付つきで明記めいきするよう運用うんよう変更へんこう。
• 1983年ねん（昭和しょうわ58年ねん）8月がつ - 大雨おおあめ警報けいほうを補完ほかんする記録きろく的てき短時間たんじかん大雨おおあめ情報じょうほうの創設そうせつ、警報けいほう文ぶんの冒頭ぼうとうに防災ぼうさい上じょう重要じゅうような事項じこうを付記ふきする「見出みだし的てき警告けいこく文ぶん」の開始かいし。
• 1987年ねん（昭和しょうわ62年ねん）6月がつ - 二に次じ細分さいぶん区域くいき単位たんいでの発表はっぴょうを開始かいし。この区分くぶんは各かく府県ふけんで順次じゅんじ細こまかく改善かいぜんされていき、2000年ねんには214、この後のち分割ぶんかつが進すすみ、2004年ねんには364となった。
• 1988年ねん（昭和しょうわ63年ねん）4月がつ1日にち - 暴風雨ぼうふうう警報けいほうを廃止はいしし、新設しんせつの暴風ぼうふう警報けいほうと既存きそんの大雨おおあめ警報けいほうに移行いこう。雨あめを伴ともなう可能かのう性せいのある暴風雨ぼうふううに対たいして暴風ぼうふう警報けいほうが発表はっぴょうされていたが、結果けっか的てきに雨あめを伴ともなわない場合ばあいがあること、雨量うりょう予報よほうの精度せいどが向上こうじょうしたことから雨あめと風かぜを分離ぶんりして発表はっぴょうすることとした。
• 2000年ねん（平成へいせい12年ねん） - 前年ぜんねんの広島ひろしま県けんの土砂どしゃ災害さいがいを受うけて、警報けいほう文ぶんの冒頭ぼうとうに「過去かこ数すう年ねんで最もっとも土砂どしゃ災害さいがいの起おこる可能かのう性せいが高たかくなっている」との見出みだしを付記ふきして土砂どしゃ災害さいがいへの警戒けいかいを重かさねて呼よびかける大雨おおあめ警報けいほうの切きり替かえ運用うんようを開始かいし（切きり替かえの基準きじゅんとして土壌どじょう雨量うりょう指数しすうを活用かつよう）。また2004年ねんには鹿児島かごしま県けん水俣みなまた市しの土石流どせきりゅう災害さいがいを受うけて表題ひょうだいに「重要じゅうよう変更へんこう！」と付記ふきする運用うんようを開始かいし。
• 2005年ねん（平成へいせい17年ねん）から2008年ねん（平成へいせい20年ねん） - 大雨おおあめ警報けいほうの重要じゅうよう変更へんこうに代かえて土砂どしゃ災害さいがい警戒けいかい情報じょうほうを各かく府県ふけんで順次じゅんじ開始かいし。
• 2007年ねん（平成へいせい19年ねん）12月 - 気象きしょう業務ぎょうむ法ほう改正かいせいにより、地震動じしんどうと火山かざん現象げんしょうの警報けいほうを気象庁きしょうちょうの業務ぎょうむに位置付いちづけ。同年どうねん10月がつ開始かいしの緊急きんきゅう地震じしん速報そくほうを警報けいほう等とうに位置付いちづけ。噴火ふんか警報けいほう・噴火ふんか予報よほう・噴火ふんか警戒けいかいレベルの運用うんよう開始かいし。
• 2008年ねん - 大雨おおあめ警報けいほうの基準きじゅんに雨量うりょうと併あわせ土壌どじょう雨量うりょう指数しすうを導入どうにゅう。
• 2010年ねん（平成へいせい22年ねん）5月がつ - 警報けいほう・注意報ちゅういほうの発表はっぴょう単位たんいを市町村しちょうそんごとに細分さいぶん化か。大雨おおあめ警報けいほうの表題ひょうだいに「土砂どしゃ災害さいがい」「浸水しんすい害がい」を付記ふきする運用うんよう変更へんこう。大雨おおあめ警報けいほうの土砂どしゃ災害さいがい基準きじゅんを土壌どじょう雨量うりょう指数しすうに一本いっぽん化か。洪水こうずい警報けいほうの基準きじゅんを流域りゅういき雨量うりょう指数しすうに変更へんこう。
• 2013年ねん（平成へいせい25年ねん）8月がつ30日にち - 警報けいほうの上位じょういに特別とくべつ警報けいほうを新設しんせつ。
• 2017年ねん（平成へいせい29年ねん） - 大雨おおあめ警報けいほうの浸水しんすい害がい基準きじゅんを表面ひょうめん雨量うりょう指数しすうに変更へんこう。

その他た

報道ほうどうなどにおいて「○○地方ちほう気象台きしょうだいが●●警報けいほう（注意報ちゅういほう）を発令はつれいした」と表現ひょうげんされることがままあるが、正式せいしきには「発表はっぴょう」という表現ひょうげんが正ただしい。なお、災害さいがい対策たいさく基本きほん法ほうには「災害さいがいに関かんする予報よほう又または警報けいほうの発令はつれい」が規定きていされており、これに基もとづき地方自治体ちほうじちたいが高齢こうれい者しゃ等とう避難ひなんや避難ひなん指示しじを発はっすることは「発令はつれい」という。

日本にっぽん以外いがいの事例じれい

日本にっぽん以外いがいの気象きしょう当局とうきょくでも警報けいほう類るいに階級かいきゅうを設もうけていて、概念がいねんは同おなじではないが、日本にっぽんの気象庁きしょうちょうの「警報けいほう」に相当そうとうする主おもなものとして以下いかが挙あげられる。

• アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく - "Warning"：生命せいめいや財産ざいさんを脅おびやかす現象げんしょうが発生はっせいしていて、それが差さし迫せまっているか、すでに近ちかづきつつある場合ばあいに発表はっぴょうされる。下位かいの情報じょうほうとして"Watch"、"Advisory"がある。Severe weather terminology (United States)（英語えいご版ばん）も参照さんしょう。

「警報けいほう」「注意報ちゅういほう」のような2区分くぶんではなく、日本にっぽんでも導入どうにゅうされた大雨おおあめ等とうに関かんする警戒けいかいレベルや噴火ふんか警戒けいかいレベルのような警戒けいかいレベルを用もちいている地域ちいきもある。

• 中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく - 警報けいほう・注意報ちゅういほうの類るいとして、3 - 5段階だんかいの警戒けいかいレベルにより区分くぶんした「预警信号しんごう」がある。地方ちほうにより異ことなる。警報けいほう相当そうとうの区別くべつは困難こんなん。突発とっぱつ気象きしょう災害さいがい預あずか警信号ごうも参照さんしょう。

参考さんこう文献ぶんけん

• 羽鳥はとり光彦みつひこ「気象きしょう業務ぎょうむ法ほう等とうの沿革えんかく -法ほう制度せいどから見みた特徴とくちょうとその意義いぎ」、気象庁きしょうちょう、『測候そっこう時報じほう』、83巻かん、2016年ねん。
• 饒にょう村むら曜『最新さいしん図解ずかい　特別とくべつ警報けいほうと自然しぜん災害さいがいがわかる本ほん』、オおーム社むしゃ、2015年ねん ISBN 9784274505614

関連かんれん項目こうもく

• 気象きしょう
• 気象庁きしょうちょう

外部がいぶリンク

• 気象きしょう警報けいほう・注意報ちゅういほう - 気象庁きしょうちょう