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すべり

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

すべり(じすべり、英語えいご:landslide)とは、土砂どしゃ移動いどう形態けいたいひとつで斜面しゃめんじょう発生はっせいする代表だいひょうてき土砂どしゃ災害さいがいひとつである。後述こうじゅつのようにすべりの定義ていぎひと地域ちいきによって若干じゃっかんことなるが、比較的ひかくてき傾斜けいしゃゆる斜面しゃめんにおいて地下水ちかすい作用さようにより、地中ちちゅう形成けいせいされるすべりめんさかい上部じょうぶ土塊つちくれ移動いどうたい移動いどうブロックなどともばれる)が比較的ひかくてきゆっくりとずりちるように原形げんけいたもったまま斜面しゃめん下方かほうけて移動いどうする(浮力ふりょくによって上部じょうぶかたまり下部かぶかたまり分離ぶんり地下水ちかすいいていると表現ひょうげんされることもある)現象げんしょうすことがおおい。

すべりの別名べつめいを「山津波やまつなみ」ということもあるが、ひとによっては土石流どせきりゅうのことを山津波やまつなみうこともあり混同こんどうされやすい。すべりと土石流どせきりゅうはどちらもみず作用さよう大量たいりょう土砂どしゃうご現象げんしょうというてんではおなじだが、すべりが地下水ちかすいうごくのにたいし、土石流どせきりゅう渓流けいりゅうみず土砂どしゃうごてん現象げんしょうとしては明確めいかくことなるものである。ある程度ていど勾配こうばい傾斜地けいしゃちにおけるすべりは移動いどう速度そくどはやく、狭義きょうぎ土砂崩どしゃくずれ(山崩やまくずれ、斜面しゃめん崩壊ほうかいとも)との区別くべつ曖昧あいまいである。これを崩壊ほうかいせいすべりもしくはすべりせい土砂どしゃ崩壊ほうかいなどとんで狭義きょうぎ土砂崩どしゃくずれと区別くべつする研究けんきゅうしゃもおり、従来じゅうらい土砂崩どしゃくずれとされてきた現場げんばでもきゅう傾斜地けいしゃちすべりせいのものがあるとかんがえられている。

定義ていぎ

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すべりには分野ぶんや研究けんきゅうしゃによって様々さまざま定義ていぎがあるが[1]一般いっぱんてきすべりは、斜面しゃめん形成けいせいするかたまり土砂どしゃいわかたまり)が、地下ちか地層ちそうなか円弧えんこじょうまたは平面へいめんじょう形成けいせいされる地質ちしつてき不連続ふれんぞくめん、すなわち「すべりめん」をさかいにして、すべりめんじょうかたまりがゆっくりと移動いどうする現象げんしょうである。地質ちしつがくもちいられる斜面しゃめん変動へんどう分類ぶんるいはD.J.ヴァーンズによる分類ぶんるい基礎きそとなっている[2]。B.W.ピプキンとD.D.トレントによる斜面しゃめん変動へんどう分類ぶんるいでは、移動いどう速度そくどはやいすべり現象げんしょう(Slide)のうち、岩石がんせき場合ばあいいわすべり(Block glide)、つぶ場合ばあいいわくずすべり(Debris slide)、ほそつぶ場合ばあいすべり(Earth slide)に分類ぶんるいしている[2]

日本にっぽんすべりとう防止ぼうしほうでは「すべり」は「土地とち一部いちぶ地下水ちかすいとう起因きいんしてすべる現象げんしょうまたはこれにともなって移動いどうする現象げんしょう」と定義ていぎされている(すべりとう防止ぼうしほう2じょう1こう)。

英語えいごの Landslide は重力じゅうりょくによって斜面しゃめんいわなどが下方かほう移動いどうする現象げんしょうあらわ包括ほうかつてき用語ようごとして使つかわれることがおおく、がけくず土石流どせきりゅうなどもふくまれる。日本語にほんごすべりも英語えいごのように使用しようされる場合ばあいもある[3]広義こうぎすべり:→ 土砂どしゃ災害さいがい)。

漢字かんじ表記ひょうきするさいに「地滑じすべり」や「辿たどり」とかれる場合ばあいがあるが、本来ほんらい用字ようじは「地辷じすべ」である。「すべ」が常用漢字じょうようかんじではないため、日本にっぽんすべり学会がっかいでは「すべり」と表記ひょうきしている。法令ほうれいじょうは「すべり」と表記ひょうきしている場合ばあいすべりとう防止ぼうしほう)と「地滑じすべり」と表記ひょうきしている場合ばあい土砂どしゃ災害さいがい警戒けいかい区域くいきとうにおける土砂どしゃ災害さいがい防止ぼうし対策たいさく推進すいしんかんする法律ほうりつ)とがある。また、災害さいがい対策たいさく基本きほんほうのように1つの法令ほうれいに「すべり」「地滑じすべり」りょう表記ひょうきが(意味いみじょう使つかけなく)使つかわれる場合ばあいもある。

すべりの発生はっせい条件じょうけん

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きゅう傾斜けいしゃ斜面しゃめんにおける土砂崩どしゃくずれは様々さまざま場所ばしょこりうる災害さいがいであるが、なる斜面しゃめんうごすべりはすべての斜面しゃめんこるわけではなく、いくつか条件じょうけんがある。

すべりめん

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すべりめんは、地中ちちゅう次元じげんてきさん次元じげんてき形成けいせいされる。おも粘土ねんど鉱物こうぶつふくんだだい三紀みきそう堆積岩たいせきがんや、火山かざん活動かつどうねつすい温泉おんせんみず影響えいきょう)などによる粘土ねんどけた、強度きょうどひく堆積岩たいせきがんない粘土ねんどそうしょうじるケースがおおい。すべりめんは、かたさのことなる地層ちそう境目さかいめなどに形成けいせいされやすく、とく地層ちそうめんながばんじょう傾斜けいしゃした状況じょうきょうで、風化ふうかしてもろくなった地層ちそうにすべりめん形成けいせいされたり、かた地盤じばんうえ堆積たいせきしたやわらかい粘土ねんどしつ地盤じばんが、その境目さかいめをすべりめんとして移動いどうするケースがおおい。おおくの場合ばあい、すべりめんとなる不連続ふれんぞくめんでは恒常こうじょうてき地下水ちかすい浸透しんとうして劣化れっかすすんでおり、地下水ちかすいによってかたまりはたら浮力ふりょくあいまってかたまりおもさにえきれずせんだん破壊はかいすることによりすべりが発生はっせいする。すべりめんはせんだん破壊はかいともなかたまり移動いどう現象げんしょうであり、そういう意味いみでは断層だんそうのメカニズムに類似るいじしたいちめんもある。なお、すべりめんあつさは一般いっぱんすうmm程度ていどあつさしかない。すべりめん部分ぶぶんをサンプルとして採取さいしゅすると、せんだん破壊はかいによって形成けいせいされた、光沢こうたくのあるきれいな平面へいめん観察かんさつされることがくある。この状態じょうたいを「かがみはだ」としょうしている。

すべりめん形状けいじょう分布ぶんぷじょうきょう調査ちょうさ特定とくていすることは、対策たいさく工事こうじ計画けいかくには不可欠ふかけつ作業さぎょうである。地表ちひょうめんあらわれた亀裂きれつ隆起りゅうき陥没かんぼつ状況じょうきょうを「現地げんち踏査とうさ」によって観察かんさつし、まずはおおまかな平面へいめん形状けいじょう推測すいそくする。そして、その中心ちゅうしんせん基準きじゅん数カ所すうかしょボーリング調査ちょうさおこない、ボーリングによってられたサンプル(ボーリングコア)をよく観察かんさつして、かく地点ちてんですべりめんふかさを判定はんていする。うごきのおそすべりの場合ばあいは、ボーリング調査ちょうさあなゆがけい埋設まいせつし、数ヶ月すうかげつあいだゆがみの蓄積ちくせきじょうきょう観測かんそくする場合ばあいがある。観測かんそく結果けっか解析かいせきすることにより、ゆがみのおおきな深度しんどにすべりめんがあると推測すいそくする。これらの作業さぎょうにより、すべりめん形状けいじょうさん次元じげんてきとらえることが可能かのうとなり、その調査ちょうさ方法ほうほう併用へいようしてすべりの移動いどう速度そくどなどをることが可能かのうとなる。すべりめん深度しんどは、すべりの規模きぼにもよるがかずm~すう10m程度ていどであることがおおい。

すべり地形ちけい

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すべりは跡地あとち地形ちけい樹木じゅもくがたなどに特徴とくちょうがあり、現在げんざい活動かつどうではないものでも、移動いどうした土塊つちくれおおきさや移動いどうした方向ほうこうなどはある程度ていど推定すいていできる。現地げんち踏査とうさのほかれたひとでは地形ちけい等高線とうこうせんかたちただけでも情報じょうほうることができる。すべりはおな斜面しゃめん活動かつどう停滞ていたい反復はんぷくかえしながら安定あんていかたちへと崩壊ほうかいしていくことがおおく、すべり地形ちけい判読はんどくすることは地域ちいき防災ぼうさい対策たいさく工事こうじかんがえるうえで大切たいせつである。以下いかすべり地形ちけいおも特徴とくちょうしめす。

すべりではすべりめんより上部じょうぶ土塊つちくれやまからずりちていくことから、ずりちた部分ぶぶんには山内さんない露出ろしゅつしている。この部分ぶぶん一般いっぱんがけじょう急斜面きゅうしゃめんになることがおおく、滑落すべりおちがけばれる。露出ろしゅつしたがけ部分ぶぶんはすべりめん一部いちぶである。したのほうにはすべった土塊つちくれ移動いどうたい)がのこっておりすべりめんえなくなる。土塊つちくれしたくにつれてうえからされて圧縮あっしゅくされたようになり、下方かほうがわかたにははらみだすようなになる。また、土塊つちくれのこっている部分ぶぶんでは勾配こうばいさんよりもゆるやかになる(斜面しゃめん平坦へいたんつくるときにきり盛土もりつちおこなうようなイメージになる)。現地げんち踏査とうさでは滑落すべりおちがけとその下方かほうひろがるなる斜面しゃめん、および土塊つちくれ下方かほうがわかたでのはらみだしの存在そんざいなどを確認かくにんして判断はんだんする。地形ちけい判読はんどくでは等高線とうこうせん間隔かんかく周囲しゅういくらべて不自然ふしぜんひろい(=なる斜面しゃめん場所ばしょや、がわかた下方かほうへのはらみだしがれるような場所ばしょから判断はんだんしていく。


地下水ちかすい

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地下水ちかすいりょう増加ぞうかがすべりの原因げんいんとなることがおおい。典型てんけいてきれい大雨おおあめ春先はるさき融雪ゆうせつである。わったところではダムへの貯水ちょすい原因げんいん場合ばあいがある。

地震じしん

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土塊つちくれ重量じゅうりょうバランス

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すべりめん上部じょうぶ土塊つちくれ停止ていししているときに絶妙ぜつみょう重量じゅうりょうバランスで移動いどう(すべり)が停止ていししている場合ばあいがある。このような潜在せんざいてきすべり斜面しゃめんであるとはらずに、道路どうろ工事こうじやダムの工事こうじによって斜面しゃめん下部かぶでの掘削くっさくおこなうと土塊つちくれ再度さいどうごしてしまうということがある。後述こうじゅつのように、ぎゃくすべりのうごきをめるときにも土塊つちくれ重量じゅうりょうバランスをとってやる方法ほうほうがある。

すべりによる被害ひがい

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すべりの対策たいさく

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ハード対策たいさく

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ボーリング調査ちょうさやすべりめん推定すいていなどの結果けっかまえておこなわれる。地表ちひょうすいすみやかな排水はいすい地下水ちかすい排水はいすい促進そくしんによる地下水ちかすいりょうのコントロール、およびすべりめんつらぬくアンカーによる上下じょうげ土塊つちくれ固定こてい土塊つちくれかたまり重量じゅうりょうバランスを調整ちょうせいして移動いどうおさえる土工どこうなどがおこなわれる。施設しせつ完成かんせいにさらに地下水ちかすい変動へんどうゆがみなどをすうげつからいちねん程度ていど観測かんそくし、すべりがまったかどうか追加ついか施工しこう必要ひつようかどうかを判断はんだんする。

地下水ちかすいりょうのコントロール

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地表ちひょうすいすみやかにすべり斜面しゃめんから排水はいすいするためにコンクリートなどの透過とうかせい材料ざいりょうもちいて水路すいろこう施工しこうされることがおおい。水路すいろこうによって地表ちひょうすい排水はいすいしてしまうことですべりめんでの地下水ちかすい増加ぞうかおさえる。斜面しゃめん広範囲こうはんい透過とうかせいにしたいときにはUみぞなどではなく布製ぬのせいがたわくにコンクリートやモルタルをながんだものを使つかうこともおおい。

すべりめん地下水ちかすい排水はいすいには斜面しゃめんよこからすべりめんかってボーリングをっておこなう。斜面しゃめんはしからるもののほかに、斜面しゃめんおおきなつつ垂直すいちょくみ、つつなかからすべりめんかってボーリングをつことで、つつなか地下水ちかすいあつ排水はいすいさせる方法ほうほうがある。このつつしゅう水井みずいといいすべり対策たいさく施工しこう特徴とくちょうてきにみられる構造こうぞうぶつである。しゅう水井みずい一般いっぱん蛇腹じゃばら鋼板こうはん(ライナープレートとばれる)で構成こうせいされる。たかさはすべりめんよりもふかくまでってあることがおおい。ただし、活動かつどうせいすべりの場合ばあいはすべりめんえてることでしゅう水井みずいすべりのちから変形へんけい破損はそんしてしまうことから上部じょうぶ土塊つちくれ範囲はんいつくられる。底面ていめんはコンクリートをしつらえ排水はいすいした地下水ちかすい地中ちちゅうさい浸透しんとうしない構造こうぞうとなっており、底面ていめんのすぐわき斜面しゃめんがいつうじる排水はいすいかんかずmうえ地下水ちかすいしゅうみずするしゅうすいかんもうけてある。

アンカーこう

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土工どこう

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付随ふずいする構造こうぞうぶつ

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砂防さぼうダムとうもうける場合ばあいがある。

ソフト対策たいさく

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日本にっぽんにおいてはすべりを所管しょかんする役所やくしょ砂防さぼうほうによる管轄かんかつおこな国土こくど交通省こうつうしょう(および都道府県とどうふけん土木どぼくけい部署ぶしょ)、森林しんりんほうにおける管轄かんかつおこな林野庁りんやちょう(および都道府県とどうふけん林業りんぎょうけい部署ぶしょ)の2つのほかに、土地とち改良かいりょうほうによる管轄かんかつおこな農林水産省のうりんすいさんしょう農村のうそん振興しんこうきょく(および都道府県とどうふけん農業のうぎょう土木どぼくけい部署ぶしょ)の3つがある。

移動いどう原因げんいん

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すべりが発生はっせいする場所ばしょには、地形ちけい地質ちしつ条件じょうけんなどいくつもの自然しぜん条件じょうけんから規制きせいける素因そいんと、すべりすべりどう発生はっせいがねとなったなんらかの誘因ゆういんがある。このすべり発生はっせい機構きこう把握はあくすることで、形態けいたい範囲はんい特定とくていしたマスムーブメント移動いどうブロック)として対策たいさく可能かのうとなる。

すべりの移動いどうは、すべりめんじょうっているかたまりすべりどうしようとするちからが、すべりめんの剪断強度きょうど上回うわまわった場合ばあい発生はっせいする。すべりの移動いどうには、地質ちしつてき条件じょうけんくわえ、地下水ちかすい分布ぶんぷじょうきょう非常ひじょう密接みっせつかかわっていることがられている。一般いっぱんに、すべりは雪解ゆきどけの時期じき梅雨つゆ台風たいふうによる豪雨ごううなど、地下水ちかすい水位すいいおおきく上昇じょうしょうする時期じきおお発生はっせいする。土塊つちくれ地下水ちかすい多量たりょうふくんで重量じゅうりょういちじるしく増加ぞうかするとともに、地下水ちかすい存在そんざいがすべりめんの剪断強度きょうどおおきく低下ていかさせるためである。したがって、年間ねんかん降水こうすいりょう降雪こうせつふくむ)がおお地域ちいきや、すべりの発生はっせいしやすい地質ちしつ条件じょうけん地域ちいきとくに、火山かざんせい堆積たいせきぶつおお地域ちいき凝灰岩ぎょうかいがんどろがんなどがおお産出さんしゅつする地域ちいき)では、すべりの多発たはつ地帯ちたいとしてられる場所ばしょおおい。本州ほんしゅう日本海にほんかいがわから東北とうほく地方ちほう北海道ほっかいどう東部とうぶなどにおお存在そんざいするグリーンタフ地域ちいきや、雪解ゆきど時期じき豪雪ごうせつ地帯ちたいにおいてすべりが多発たはつすることがよくられている。

移動いどう速度そくど

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一般いっぱんすべりかたまり移動いどう速度そくど通常つうじょう年間ねんかんすうmmからすうcm程度ていどで、えないほどゆるやかなものである。したがって、よほど注意ちゅういして観察かんさつしないかぎり、すべりの活動かつどう実感じっかんすることはすくない。そのため、非常ひじょうふるくから活動かつどうしているすべり地帯ちたいでは、沢山たくさん集落しゅうらく形成けいせいされているれいおおい。ふるくからすべりがおお発生はっせいする場所ばしょ一般いっぱん地下水ちかすい豊富ほうふであるためにみやすく、また土壌どじょう肥沃ひよくであることから稲作いなさく畑作はたさく非常ひじょうてきしているため、先人せんじんこのんで定住ていじゅうし、集落しゅうらく形成けいせいされるのである。一方いっぽう地震じしんによるすべりは地震じしん衝撃しょうげき刺激しげきとなりすうじゅうびょうからすうふんすべる。

しかし、すべりの運動うんどう活発かっぱつになると、徐々じょじょ地盤じばん変形へんけいすることでいえ構造こうぞうゆがみがしょうじ、ふすまやドアがひらかなくなる、かべにヒビがはいる、周辺しゅうへん地盤じばん陥没かんぼつする、井戸水いどみずにごる、道路どうろ亀裂きれつはいる、などの変動へんどうられることがある。また、豪雨ごううなど短時間たんじかん多量たりょう降雨こううがあった場合ばあいなどは、まれかたまり移動いどう速度そくど急激きゅうげき加速かそくすることもあり、動態どうたい観測かんそくによって危険きけん判断はんだんされれば、周辺しゅうへん住民じゅうみんたいして避難ひなん勧告かんこく避難ひなん命令めいれいされる場合ばあいもある。しかし、すべりが突発とっぱつてき活動かつどうはじめた場合ばあいや、移動いどう活発かっぱつ兆候ちょうこう把握はあくできなかった場合ばあい避難ひなん指示しじいつかず、多数たすう死者ししゃ行方ゆくえ不明ふめいしゃ惨事さんじになることもおおい。さらに、滑落すべりおちした土砂どしゃ隆起りゅうきした地盤じばんによって河川かせん閉塞へいそくされてしまうと天然てんねんダムができ、それが一気いっき決壊けっかいすることで土石流どせきりゅう発生はっせいし、しも流域りゅういき集落しゅうらくむなどの災害さいがいこすこともある。

対策たいさく

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  • すべりかたまり移動いどう顕著けんちょみとめられた場合ばあいには、災害さいがいからの安全あんぜん確保かくほする防止ぼうし施設しせつとして対策たいさく工事こうじ必要ひつようる。対策たいさく工法こうほう個別こべつすべり機構きこう保全ほぜん対象たいしょうぶつ工法こうほう経済けいざいせいとう勘案かんあんした「抑制よくせいこう」と「抑止よくしこう」に大別たいべつされる。
  • 抑制よくせいこうは、すべりの活動かつどう活発かっぱつさせる要因よういんである地下水ちかすいを、井戸いどしゅう水井みずい)や排水はいすいようのトンネル、横穴よこあなボーリングなどによってすべり区域くいきから排出はいしゅつして地下水ちかすいげ、さらに雨水あまみずなどが浸透しんとうしにくいように水路すいろ整備せいびするなど、移動いどう土塊つちくれるい推進すいしんりょく低減ていげんさせるための自然しぜん条件じょうけん変化へんかさせる工法こうほうす。くずれた斜面しゃめんブルーシートおおい、雨水あまみず浸透しんとうふせ応急おうきゅう処置しょち抑制よくせいこうひとつである。また、土砂どしゃ掘削くっさく可能かのう場合ばあいは、すべりの上部じょうぶ土砂どしゃのぞいて荷重におもらし、ぎゃく末端まったんでは盛土もりつちをしてかたまり重量じゅうりょうバランスを安定あんていさせ、移動いどうさえむこともある。すべり災害さいがい関連かんれんなどでは、抑止よくしこうをスムーズにおこなうことを可能かのうにするための「応急おうきゅう処置しょち」と位置いちづけられることもおおい。
  • 抑止よくしこうは、コンクリートくい鋼管こうかんくいなどを移動いどうかたまりみ、すべりめんよりした堅固けんご地盤じばん固定こていすることでかたまり移動いどうめる「くいこう」や、おなじくすべりめん地盤じばんにワイヤーのたばとう固定こていし、それをって地表ちひょうめん定着ていちゃくさせ、ワイヤーの張力ちょうりょく移動いどうかたまりまたけてめる「アンカーこう」などがおお採用さいようされる。一般いっぱんには、抑制よくせいこうによってすべりの運動うんどうおおむ沈静ちんせいしてから着工ちゃっこうし、これを恒久こうきゅうてき対策たいさく工事こうじとして定着ていちゃくさせることを目的もくてきとして施行しこうされる。抑制よくせいこうのみですべりすべりどう沈静ちんせいしたと推察すいさつされる場合ばあいは、長期間ちょうきかんわたって動態どうたい観測かんそくとう実施じっしした総合そうごうてき効果こうか判定はんていにより、抑止よくしこう施工しこう有無うむ決定けっていされる。
  • 日本にっぽんすべりで、民家みんか農地のうち影響えいきょうあたえる箇所かしょについては、農林水産省のうりんすいさんしょう国土こくど交通省こうつうしょうすべりとう防止ぼうしほうもとづき「すべり防止ぼうし区域くいき」に指定していし、くに都道府県とどうふけん対策たいさくおこなっている。すべり防止ぼうし区域くいきないでは、すべりの運動うんどう影響えいきょうあたえるおそれのある土砂どしゃ掘削くっさく地下水ちかすいのくみげなどの行為こうい許可きょかおこなうことがきんじられている。
  • 日本にっぽんすべり対策たいさく事業じぎょう先駆せんくしゃ谷口たにぐち敏雄としおがいる。

すべりと棚田たなだ

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地下水ちかすいめんさかいすべりがきることによって、すべったかたまり斜面しゃめん上部じょうぶでは部分ぶぶんてき地下水ちかすいみゃく地上ちじょう露出ろしゅつしている状態じょうたいになっている。また、すべったときの運動うんどう地中ちちゅうふかくからよくたがやされている部分ぶぶんもあることから、棚田たなだ段々畑だんだんばたけとして利用りようされることがある。

地球ちきゅう以外いがいすべり

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地球ちきゅうがた惑星わくせい衛星えいせいであれば、すべりが発生はっせいする可能かのうせいはあるが、ある程度ていどおおきな重力じゅうりょく存在そんざい地球ちきゅうじょう地下水ちかすいのように土塊つちくれ移動いどうするさいおおきな摩擦まさつ軽減けいげんする要素ようそがある天体てんたいかぎられる[4]近年きんねん惑星わくせい探査たんさ結果けっかにより、金星かなぼし火星かせい木星もくせい衛星えいせいイオ土星どせい衛星えいせいイアペトゥスなどではだい規模きぼすべりが確認かくにんされるようになった[5]

脚注きゃくちゅう

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出典しゅってん

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  1. ^ 岩松いわまつあきら "すべりがく入門にゅうもんだいしょう" 国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん インターネット資料しりょう収集しゅうしゅう保存ほぞん事業じぎょう 2021ねん3がつ14にち閲覧えつらん
  2. ^ a b 斜面しゃめん調査ちょうさ 北海道ほっかいどう地質ちしつ調査ちょうさぎょう協会きょうかい、2017ねん5がつ21にち閲覧えつらん
  3. ^ すべりとは? すべり地形ちけいとは?”. 防災ぼうさい科学かがく技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょ. 2012ねん4がつ11にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2015ねん8がつ17にち閲覧えつらん
  4. ^ すべりにともな物質ぶっしつ移動いどう変形へんけい だい4かい” (PDF). 小松こまつ吾郎ごろう (2004ねん). 2013ねん6がつ3にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2023ねん12月25にち閲覧えつらん
  5. ^ 土星どせい衛星えいせい巨大きょだい地滑じすべあと. ナショナルジオグラフィック. (2012ねん7がつ31にち). https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/6480/ 2023ねん11月27にち閲覧えつらん 

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 古谷ふるやたかし彦1996『ランドスライド-すべり災害さいがい諸相しょそう-』古今ここん書院しょいん

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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