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モンスーン

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
インド南西なんせい夏季かきモンスーンの開始かいし優勢ゆうせいふうなが

モンスーンえい: monsoon)は、ある地域ちいきで、一定いってい方角ほうがくへのかぜとくによく傾向けいこうがあるとき(そのかぜ卓越たくえつふうぶ)、ぶしによってかぜ方角ほうがく卓越たくえつ風向ふうこう)が変化へんかするものをぶ。アラビアの「ぶし」(موسم mawsim、マウスィム)に由来ゆらいする用語ようごである[1]

これは、アラビアかい毎年まいとし6がつから9月にかけて南西なんせいかぜが、10月から5月にかけて北西ほくせい季節風きせつふうき、沿岸えんがん諸国しょこく海上かいじょう貿易ぼうえき交通こうつうおおきな影響えいきょうあたえていたことによる。もともとは毎年まいとしおな時期じきおこなわれる行事ぎょうじのことを意味いみしていたが、アラビアかい時期じきによってきがわるふうのことをかたりとなり、季節風きせつふうとしてひろまった。アフリカのサブサハラ南米なんべいなどでは雨季うきあらし大雨おおあめを、インド東南とうなんアジアでは雨季うきそのものを意味いみするかたりとしても使用しようされている。

インドでは「モンスーンというと小学生しょうがくせいでもっているが、気象台きしょうだいではこれについてなにらない」とわれている[2]。この言葉ことばは、モンスーンが身近みぢかでありながら厳密げんみつ定義ていぎがなされていない俗語ぞくごであることを意味いみする[2]

日本にっぽん教科書きょうかしょには季節風きせつふう表記ひょうきされている。

発生はっせい原理げんり

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基本きほんてきにモンスーンの原理げんりは、海陸かいりくふうおなじである。大陸たいりくあたたまりやすくえやすい一方いっぽう海洋かいようあたたまりにくくえにくいという特徴とくちょうがある。そのため夏季かきにはだい陸上りくじょう空気くうきほうあたたかくなり上昇じょうしょう気流きりゅうしょうじ、それをおぎなうために海洋かいようから大陸たいりく季節風きせつふうく。ぎゃく冬季とうきには海洋かいようほうあたたかくなるので、大陸たいりくから海洋かいよう季節風きせつふうく。海陸かいりくふうひるよる風向ふうこうわるが、季節風きせつふうなつふゆ風向ふうこうわる。

モンスーンの分布ぶんぷとモンスーン気候きこう

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海陸かいりく分布ぶんぷくわえて、大気たいきだい循環じゅんかんともなう、緯度いどたいごとの循環じゅんかんがあるため、モンスーンの発生はっせい地域ちいき(モンスーン気候きこう)はかたよった分布ぶんぷをしている。

とく大陸たいりく東岸とうがんてい緯度いど大陸たいりく南岸なんがん南半球みなみはんきゅうでは北岸ほくがん)におおくみられ、ひがしアジアからインド洋いんどよう沿岸えんがんアフリカ大陸たいりく東部とうぶカリブ海かりぶかい南北なんぼくアメリカ大陸あめりかたいりく東岸とうがんオーストラリア東岸とうがんなどが代表だいひょうてきである。

とくにアジアのものは非常ひじょう規模きぼおおきく、アジアモンスーンともばれる。アフリカ東岸とうがんからインド洋いんどようひがしアジアまでのやく1まんkmにわたって、高温こうおん多湿たしつ空気くうきながれが形成けいせいされる。モンスーン・アジアでは、ある時期じきさかい気候きこう急激きゅうげき変化へんかすることから、モンスーンの発生はっせい正確せいかく把握はあくされている。アジアモンスーンの源流げんりゅうは、5がつ中旬ちゅうじゅんにアフリカ東岸とうがんマダガスカル付近ふきん発現はつげんし、湿しめったインド洋いんどよう空気くうき供給きょうきゅうけながら北東ほくとううごき、西にしアジアにも影響えいきょうおよぼしながらインドをふくめたみなみアジアにたっする。そのベンガルわんインドシナ半島いんどしなはんとう中国ちゅうごく南部なんぶて、日本にっぽんふくめたひがしアジアにもおよぶ。梅雨つゆ原因げんいんの1つである[3]

モンスーンがうみがわからくと湿しめった空気くうき内陸ないりくにもたらされ、つよ降雨こううともな雨期うきとなる。ぎゃく大陸たいりくがわからむと乾燥かんそうした空気くうきがもたらされるため乾期かんきとなる(ただし、ふゆ日本にっぽん日本海にほんかいがわのように、大陸たいりく由来ゆらいかわいたふうみじか海域かいいき湿しめったふう変質へんしつすることもある)。このはたらきで、モンスーンは乾季かんき雨季うきのある気候きこう形成けいせいするが、全体ぜんたいとしては湿潤しつじゅん気候きこうをもたらすため影響えいきょう地域ちいきでは熱帯ねったいモンスーン気候きこう(Am)や温帯おんたいなつ気候きこう(Cw)、温暖おんだん湿潤しつじゅん気候きこう(Cfa)となり、稲作いなさくこう適地てきちとなる。

東南とうなんアジア諸国しょこくでは、雨季うき豊富ほうふ雨量うりょう高温こうおんが、べい二期作にきさくさんさくなどを可能かのうにしている。北米ほくべいではグレートプレーンズばれる平原へいげん地帯ちたいがモンスーンの影響えいきょうにはいるため、穀倉こくそう地帯ちたいとなっている。

モンスーン地域ちいきではとく夏期かき湿しめった空気くうき供給きょうきゅうけるため、亜熱帯あねったい地域ちいきであってもなつ乾燥かんそうせず、豊富ほうふ熱帯ねったい雨林うりん形成けいせいされる。このためぎゃくに、なつ乾燥かんそうする地中海ちちゅうかいせい気候きこう大陸たいりく東岸とうがんにはほとんどみられない。

インドをはじめとしたみなみアジアや東南とうなんアジアでは、それまでもっぱひがしりのかぜいていたにもかかわらず、あるからきゅう西にしりのかぜはじめ、数日すうじつあいだ完全かんぜん西にしよりのふうわってしまう。そのため、これらの地域ちいきでは、モンスーンをふう天候てんこう劇的げきてき変化へんかつよむすびつけてかんがえることがおおい。このような地域ちいき貿易ぼうえきふう影響えいきょうつよてい緯度いどたいおおい。日本にっぽんのようななか緯度いどたいでは、移動いどうせい高気圧こうきあつてい気圧きあつ影響えいきょうけやすいのでしゅ風向ふうこうわりやすく、このような劇的げきてき変化へんかられない。

各地かくち季節風きせつふう

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モンスーンによる洪水こうずい見舞みまわれたムンバイ

みなみアジア

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北半球きたはんきゅうあきはいったころから、ユーラシア大陸たいりく中央ちゅうおうシベリア高気圧こうきあつ発達はったつはじめる。この高気圧こうきあつからは乾燥かんそうしたつめたい北東ほくとう季節風きせつふうす。インドネパールバングラデシュなどのみなみアジアでは、11月前後ぜんこうから5がつごろまでこの北東ほくとう季節風きせつふうによる乾燥かんそうした気候きこうつづく。しかし、なつになるとシベリア高気圧こうきあつよわまり、西にしアジア気圧きあつひく地域ちいきができ、みなみインド洋いんどようやオーストラリア付近ふきんからこのてい気圧きあつかって南西なんせい季節風きせつふう(インドモンスーン)がす。6月になると、インド南西なんせいからこの季節風きせつふうつよまりはじめ、次第しだい北東ほくとうひろがってゆく。これにともない、インド南西なんせいからなが雨季うきはじまる。雨季うきは9がつまでつづき、この地域ちいき年間ねんかん降水こうすいりょうの4ぶんの3以上いじょうがこの時期じきる。そのため、10おくにんえるみなみアジアの人口じんこうささえる農業のうぎょう生活せいかつ雨季うきあめ依存いぞんしており[注釈ちゅうしゃく 1]、この時期じき少雨しょうう食料しょくりょう不足ふそく飢餓きがなどの深刻しんこく問題もんだいこす要因よういんとなる。しかしいっぽうで、長雨ながあめにより各地かくち毎年まいとしのように洪水こうずいき、おおきな被害ひがいしている。

東南とうなんアジア北部ほくぶ

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東南とうなんアジア北部ほくぶタイベトナムラオスなどでは、みなみアジアよりはやく3〜5がつごろから風向ふうこうわりはじめる。冬季とうき南シナ海みなみしなかい東風こち、インドシナ南部なんぶ南東なんとうふう、インドシナ北部ほくぶ北東ほくとうふうだが、熱帯ねったい収束しゅうそくたい北上ほくじょうとともにみなみりのふうわっていき、夏季かきの7〜8がつごろには全域ぜんいき西風せいふうになる。この地域ちいきでは、ふゆ沿岸えんがんのぞいてあめおおくない期間きかんであるが、はるはいると湿しめった空気くうきにより内陸ないりくでもあめえてくる。おおくの地域ちいきで5がつ雨季うきはじまる。雨季うきしょう休止きゅうしのある地域ちいきもある。9〜10がつごろおおくの地域ちいき雨季うき終了しゅうりょうし、あめすくない乾季かんきとなる。ただ、ベトナムなどのインドシナ東岸とうがんでは、12月ごろまで雨季うき断続だんぞくてきつづく。

東南とうなんアジア南部なんぶ

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東南とうなんアジア南部なんぶマレーシアシンガポールフィリピンインドネシアなどでは、5〜10月の雨季うき南西なんせいからく。ただし、スマトラ島すまとらとうジャワ島じゃわとうみなみ沿岸えんがんでは東風こちとなる。11〜4がつ乾季かんきには、べた4カ国かこく地域ちいき北東ほくとうからく。ただし、スマトラ島すまとらとうジャワ島じゃわとうみなみ沿岸えんがんでは南西なんせいふうとなる。タイのバンコクやフィリピンのマニラは、このような雨季うき乾季かんき交代こうたい沿った降水こうすいりょう推移すいい観測かんそくする。しかし、マレーシアのクアラルンプールは6〜7がつ雨量うりょうみ、また、インドネシアのジャカルタは8がつ雨量うりょうそこつ。この地域ちいき気候きこう多様たようせい注意ちゅういようする。

ひがしアジア

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中国ちゅうごく西部せいぶ北部ほくぶとモンゴルをのぞいたひがしアジアのひろ地域ちいきで、モンスーンがられる。また、このモンスーンの範囲はんい太平洋たいへいようミッドウェーとう付近ふきんまでつづいている。冬季とうき北風きたかぜ北西ほくせいふう西風せいふうと、夏季かき南風みなみかぜ南東なんとうふう東風こち特徴付とくちょうづけられる。

華南かなん南シナ海みなみしなかいでは、5がつごろ南西なんせいふうはじめるとともに、雨季うきはじまる。このころ、東南とうなんアジアの赤道せきどうじょう熱帯ねったい収束しゅうそくたいよわまり、華南かなん付近ふきんにもう1つの収束しゅうそくたい形成けいせいされる。これにかってふうむことで、南西なんせいふうこる。華南かなん付近ふきん収束しゅうそくたいは7〜8がつまでのあいだにどんどん北上ほくじょうしていく。これは日本にっぽん梅雨つゆ前線ぜんせんばれる前線ぜんせんであり、ひがしにもながびてくるが、西側にしがわ中国ちゅうごく内陸ないりくでは空気くうき乾燥かんそうしてしまうためあめおおくない。8月からは大陸たいりく高気圧こうきあつ勢力せいりょくしてきて、南風みなみかぜ南東なんとうふう東風こちよわまってくる。日本にっぽん付近ふきんでは秋雨あきさめ前線ぜんせんたるちいさな収束しゅうそくたい南下なんかられるが、中国ちゅうごく方面ほうめんでは収束しゅうそくせんあらわれにくい。ひがしアジアでは、雨季うきは2〜3ヶ月かげつ程度ていどである。ふゆ乾燥かんそうしてあめすくない。

日本にっぽん

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日本にっぽんでは夏季かきには太平洋たいへいよう高気圧こうきあつから南東なんとうふう卓越たくえつし、冬季とうきにはシベリア高気圧こうきあつから北西ほくせいふう卓越たくえつする。大陸たいりくからの季節風きせつふう乾燥かんそうしているのが普通ふつうであるが、日本海にほんかいわたあいだ暖流だんりゅう対馬つしま海流かいりゅうながれている海面かいめんから水蒸気すいじょうき供給きょうきゅうけて変質へんしつして湿しめった空気くうきとなるてん特異とくいてきである。この湿しめった季節風きせつふうにより日本海にほんかいがわだいゆきがもたらされる。

ひがしアフリカ

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モンスーン(季節風きせつふう)がくため、インドから紅海こうかい沿岸えんがんにかけての地域ちいきでは、古代こだいから『エリュトゥラーうみ案内あんない』の記述きじゅつにあるように紅海こうかい中心ちゅうしんりく沿いにインド洋いんどよう交易こうえきをしていてモンスーンを利用りようした海上かいじょう貿易ぼうえきおこなわれていたことがかっている。古代こだいローマ時代じだいになるとヒッパルコスのかぜとしてマ帝国まていこくでもられるようになり、うみのシルクロード発展はってんにも寄与きよした。

きたアメリカ

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語源ごげん

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アラビアで「ぶし」をあらわموسم (mawsim) が、ポルトガル monçao になり、オランダ monssoen経由けいゆして、1580年代ねんだい英語えいご monsoon になった[1]

その

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インドには、施工しこう不良ふりょう老朽ろうきゅうした建築けんちくぶつ多数たすう存在そんざいしており、モンスーンの時期じきになるとしばしば死者ししゃともな建築けんちくぶつ崩壊ほうかい事故じこなどが発生はっせいする[5]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 梅雨つゆ予想よそうのようにインドでは雨季うき時期じき予想よそうおこなわれている[4]

出典しゅってん

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  1. ^ a b OED monsoon.
  2. ^ a b 根本こんぽんほか(1959):1ページ
  3. ^ モンスーンロード〜アジアをけるふう大地だいち物語ものがたり 1996ねん8がつ5にち NHK総合そうごう
  4. ^ “ムンバイでモンスーンシーズンにけて工事こうじきゅうピッチ 6がつ7にちからあめ模様もよう. ムンバイ経済けいざい新聞しんぶん. (2015ねん5がつ20日はつか). http://mumbai.keizai.biz/headline/162/ 2017ねん6がつ7にち閲覧えつらん 
  5. ^ インド・ムンバイでビル倒壊とうかい、17にん死亡しぼう 救助きゅうじょ作業さぎょうつづ”. AFP (2017ねん7がつ26にち). 2019ねん3がつ20日はつか閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 根本ねもと順吉じゅんきち倉嶋くらしまあつし吉野よしの正敏まさとし沼田ぬまたしん季節風きせつふうじんしょかん、1959ねん10がつ30にち、294ぺーじ 
  • monsoon”. Online English Dictionary. 2018ねん7がつ30にち閲覧えつらん。 “1580s, "trade wind of the Indian Ocean," from Dutch monssoen, from Portuguese monçao, from Arabic mawsim "time of year, appropriate season" (for a voyage, pilgrimage, etc.), from wasama "he marked."”

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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