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山谷さんやふう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
山谷さんやふうふうけい循環じゅんかん)のしき。このはアメリカアパラチア山脈さんみゃくれいで、たに沿いおよびたに交差こうさの2つのふうけいくわえて、山地さんち-平野ひらのふうけいえがかれている。
谷に沿う向きに上昇・下降する風と谷に交差する向きに上昇・下降する風 谷に沿う向きに上昇・下降する風と谷に交差する向きに上昇・下降する風
たに沿きに上昇じょうしょう下降かこうするふうたに交差こうさするきに上昇じょうしょう下降かこうするふう

山谷さんやふう(やまたにかぜ[1])とは盆地ぼんちたにやま沿いの平野へいやなどにられるふうであり、ひるたにからやまへ、よるやまからたにへと風向ふうこう変化へんかする[2][3][4][5]

山風やまかぜ谷風たにかぜ狭義きょうぎにはたに沿いに上昇じょうしょう下降かこうするふうし、広義こうぎにはやま斜面しゃめん上昇じょうしょう下降かこうするふうふくめる[2][3]。また山谷さんやふう循環じゅんかんともなかぜだけではなく、そうかんスケールかぜ地形ちけい作用さようけてしょうじるたにすじ沿かぜ山風やまかぜ谷風たにかぜぶことがある[3][6]

原因げんいん原理げんり

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山風やまかぜ谷風たにかぜ

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山谷さんやふうふうけい循環じゅんかん)は、たにき(あるいは渓谷けいこくそこ川筋かわすじ)に沿方向ほうこうふうけいたに交差こうさするきのふうけいわさったものである。ねつによる循環じゅんかんで、海陸かいりくふう類似るいじした部分ぶぶんがある[3][4][1][7]

にちちゅう日射にっしゃにより加熱かねつされるやま斜面しゃめんせっする空気くうきあたためられて上昇じょうしょうする。はじめのとうあつめん水平すいへい仮定かていすると、斜面しゃめんせっするあたたかい空気くうきおなたかさのたにそこ上空じょうくうよりも気圧きあつひくくなる。あたたかい空気くうき圧力あつりょく勾配こうばいしたがって、鉛直えんちょくではなく、たにそこから斜面しゃめん上方かみがたへと斜面しゃめんけられるようなかたち上昇じょうしょうする[8][4]。この機構きこうすべりのぼりふうで、斜面しゃめん上昇じょうしょうふうともいう[4][6][9]

斜面しゃめん空気くうき相対そうたいてきあたたまりやすい原理げんりとして、水平すいへい方向ほうこうだん面積めんせきあたりの日射にっしゃりょうたいする加熱かねつされる空気くうき容積ようせき比率ひりつちがい、つまり斜面しゃめんのほうが日射にっしゃたいする空気くうき容積ようせきちいさいこともげられる[6][1]

斜面しゃめん沿上昇じょうしょうした暖気だんきやま頂上ちょうじょうえると鉛直えんちょく上昇じょうしょうし、よくやま反対はんたいがわ上昇じょうしょう気流きりゅう合流ごうりゅうする。また、斜面しゃめんでの上昇じょうしょうたいして上空じょうくうではよわぎゃくきのふうはんりゅう)がしょうじる[4]

斜面しゃめんでの上昇じょうしょうおよびはんりゅうたにそこ下降かこうしてあつしする効果こうかによってたにそこ地表ちひょうでも気圧きあつがり、たにひくほうからたかほうへとしょうじた圧力あつりょく勾配こうばいしたがたに沿ってのぼふう狭義きょうぎ谷風たにかぜ)がく。また、こちらも上空じょうくうではよわたんりゅうしょうじる[4][6]

夜間やかんにちちゅうとはぎゃくやま斜面しゃめんせっする空気くうきやされて、おなたかさのたにそこ上空じょうくうよりも気圧きあつたかくなり、斜面しゃめん沿って冷気れいき下降かこうする。たにそこつめたい空気くうき収束しゅうそくして気圧きあつたかまり、たにそこから上空じょうくうへの上昇じょうしょうしょうじ、上空じょうくう山頂さんちょうかうたんりゅうしょうじる[4][10]この機構きこう滑降かっこうふうで、斜面しゃめん下降かこうふうともいう[4][10][11]

気圧きあつたかまったたにそこ地表ちひょうでは、たにたかほうからひくほうへとしょうじた圧力あつりょく勾配こうばいしたがたに沿ってりるふう狭義きょうぎ山風やまかぜ)がく。また、こちらも上空じょうくうではよわたんりゅうしょうじる[4][10]

斜面しゃめんかこまれた盆地ぼんち地形ちけいでは、あつまった冷気れいき滞留たいりゅうして冷気れいきみずうみというつめたい空気くうきかたまり形成けいせいすることがある[12]

斜面しゃめん上部じょうぶ滑降かっこうふうたにそこまでとどかないことがよくある。成層せいそうをなす冷気れいきそうたっして拡散かくさんしたり、よりたかいところでらんりゅうになったりする。この性質せいしつがひとつの理由りゆうとなって、斜面しゃめん中腹ちゅうふくから上部じょうぶにかけての一定いってい高度こうど周囲しゅういよりも気温きおんたか領域りょういき斜面しゃめん温暖おんだんたいまたは山腹さんぷく温暖おんだんたいという)が形成けいせいされることがある。斜面しゃめん温暖おんだんたいはそのもとよりしも日数にっすうすくなく果樹かじゅえん適地てきちとなる[4][13]

谷風たにかぜ山風やまかぜ高気圧こうきあつ圏内けんないにあるなどしてそうかんスケールかぜおだやかなときにあらわれる一方いっぽうてい気圧きあつちかづくなどするとみだれる[6][9]典型てんけいてきには、谷風たにかぜおよそ1 - 4あいだ開始かいしし、日没にちぼつもしばらくつづく。風速ふうそく地表ちひょうで3 - 5メートル毎秒まいびょう(m/s)程度ていど地表ちひょうからややはなれた上空じょうくうでは5 m/sをえる。山風やまかぜ日没にちぼつおよそ1 - 4あいだ開始かいしし、風速ふうそく地表ちひょうからややはなれた上空じょうくうでは7 - 10 m/sをえる。発達はったつした山谷さんやふう循環じゅんかんたにたかさとどう程度ていどたっする[6][10][7]

山谷さんやふう様相ようそう

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たに平地ひらちめんしたところでは、山風やまかぜ平地ひらちなにキロメートルすすむことがある (outflow jet, valley exit jet)。平地ひらちながてから風速ふうそく最大さいだいとなるが、たに出口でぐち冷気れいきそう扇形せんけいひろがると同時どうじあつさをげんじることで位置いちエネルギー運動うんどうエネルギー変換へんかんされることがおも理由りゆうかんがえられる[7][14]

斜面しゃめん傾斜けいしゃ日射にっしゃ角度かくど関係かんけいで、やま両側りょうがわではたいてい谷風たにかぜ山風やまかぜつよさがことなる。たにすじ方角ほうがくによっても谷風たにかぜ山風やまかぜ時間じかん前後ぜんご特徴付とくちょうづけられる。直後ちょくご日没にちぼつ直前ちょくぜん太陽たいようひく時間じかんには、にちとうたるがわすべりのぼりふう日陰ひかげとなるがわ滑降かっこうふうく。たに両側りょうがわ日陰ひかげ滑降かっこうふうなたのすべりのぼりふうがつながることもある[4][7]

日本にっぽんのように平野へいやせまやま海岸かいがんせまるような地域ちいきでは、にちちゅう海風かいふう谷風たにかぜがつながったようなふうきょうがみられる。さらに、たとえばなつ太平洋たいへいよう高気圧こうきあつによるみなみりのふうねつてきてい気圧きあつ影響えいきょうがあって、京浜けいひん工業こうぎょう地帯ちたいから長野ながのけんまで大気たいき汚染おせん物質ぶっしつ到達とうたつするれいもある[2]

ひろ平野へいやがある地域ちいきでは、山谷さんやふう作用さようによりにちちゅう平野へいやから山地さんちへ、夜間やかん山地さんちから平野へいやへとふうふうけい (mountain–plains wind systems) があることがられている[3][15]

比較的ひかくてき乾燥かんそうした地域ちいきや、そうでない地域ちいきでも乾季かんきには、地表ちひょうめんあらわねつながれたばぞうボーエンおおきくなるとく午後ごごには、大気たいき境界きょうかいそううちあつみをした混合こんごうそう地表ちひょうたっして谷風たにかぜさえぎ[7]

また、やまから乾燥かんそうした高温こうおんかぜろすフェーン山谷さんやふうがぶつかると、フェーンののぼりあつしよわめることがある。

日本にっぽん中央ちゅうおう高地こうち一帯いったいでは、静穏せいおんなつ日照ひでり変化へんか特徴とくちょうがみられる。比較的ひかくてきおおきな盆地ぼんち位置いちする甲府こうふ長野ながの松本まつもと上田うえだでは10前後ぜんこうから15ごろまで、比較的ひかくてきちいさいたに位置いちするアメダスの身延みのぶまち中富なかとみ南木曽なぎそ白馬はくばでは10から12ごろまで、平野ひらのよりも日照ひでり時間じかん有意ゆういながくもすくない。一方いっぽう山岳さんがく位置いちする草津くさつ日光にっこう軽井沢かるいざわ山中さんちゅうあさのぞ日照ひでり時間じかんみじかく、夕方ゆうがたとくみじかくなる。これらは、山谷さんやふうくもつく水蒸気すいじょうきたにからやま輸送ゆそうする効果こうか要因よういんかんがえられている[3]

山岳さんがくでの活動かつどうにおいては、山谷さんやふう変化へんか毎日まいにち規則きそくてきなときは好天こうてんの、みだれるときは天気てんき悪化あっかのひとつの目安めやすとなる[1]

脚注きゃくちゅう

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参考さんこう文献ぶんけん

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  • 小倉おぐら義光よしみつ一般いっぱん気象きしょうがく』(だい2はん東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱんかい、1999ねんISBN 978-4-13-062725-2 
  • 新田にったしょうじゅう明正めいせい伊藤いとう朋之ともゆき野瀬のせ純一じゅんいち へん気象きしょうハンドブック』(3はん朝倉書店あさくらしょてん、2005ねん9がつISBN 978-4-254-16116-8 
    • 木村きむら富士男ふじお『§16.2 やま谷風たにかぜ循環じゅんかん』。 
  • 日下くさか博幸ひろゆきふじ文昭ふみあきほか へん日本にっぽん気候きこう百科ひゃっか丸善まるぜん出版しゅっぱん、2018ねん1がつISBN 978-4-621-30243-9 
  • Roland Stull (2022ねん12月10にち). “17.3: Thermally Driven Circulations” (英語えいご). LibreTexts Geosciences. "Practical Meteorology". University of British Columbia. 2024ねん3がつ5にち閲覧えつらん
  • 10.8: Atmospheric Movements and Flow” (英語えいご). LibreTexts Geosciences. "Physical Geography". Lumen Learning (2022ねん9がつ4にち). 2024ねん3がつ5にち閲覧えつらん
  • (英語えいご) Glossary of Meteorology. American Meteorological Society (AMS). https://glossary.ametsoc.org/ 
    • upvalley wind” (2012ねん4がつ25にち). 2024ねん3がつ6にち閲覧えつらん
    • downvalley wind” (2012ねん4がつ25にち). 2024ねん3がつ6にち閲覧えつらん
    • mountain–valley wind systems” (2012ねん4がつ25にち). 2024ねん3がつ6にち閲覧えつらん
    • mountain–plains wind systems” (2012ねん4がつ25にち). 2024ねん3がつ6にち閲覧えつらん
    • outflow jet” (2012ねん4がつ25にち). 2024ねん3がつ6にち閲覧えつらん
  • 根本ねもと順吉じゅんきち. "アナバチックふう". 小学しょうがくかん日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ)』. コトバンクより2024ねん3がつ6にち閲覧えつらん
  • 根本ねもと順吉じゅんきち. "カタバチックふう". 小学しょうがくかん日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ)』. コトバンクより2024ねん3がつ6にち閲覧えつらん
  • 根本ねもと順吉じゅんきち. "山谷さんやふう". 小学しょうがくかん日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ)』. コトバンクより2024ねん3がつ6にち閲覧えつらん
  • 斜面しゃめん温暖おんだんたい”. ルーラル電子でんし図書館としょかん. 農業のうぎょう技術ぎじゅつ事典じてん. のうけん機構きこう. 2024ねん3がつ6にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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