足利あしかが義明よしあき

凡例はんれい 足利あしかが 義明よしあき
時代じだい	室町むろまち時代ときよ後期こうき（戦国せんごく時代じだい）
生誕せいたん	不ふ詳しょう
死没しぼつ	天文てんもん7年ねん10月7日にち（1538年ねん10月29日にち）
改名かいめい	空そら然しか → 宗そう済わたる → 足利あしかが義明よしあき
別名べつめい	小しょう弓ゆみ公方くぼう
墓所はかしょ	千葉ちば県けん市原いちはら市し八幡やはた　御ご墓はか堂どう墓地ぼち内ない
官位かんい	右みぎ兵衛ひょうえ佐さ
氏族しぞく	足利あしかが氏し（古河ふるかわ公方くぼう）
父母ちちはは	父ちち：足利あしかが政氏まさうじ
兄弟きょうだい	高基たかもと、義明よしあき、基もと頼よりゆき、貞さだ岩がん昌永しょうえい（甘あま棠院開祖かいそ）
子こ	義よし純じゅん、頼よりゆき純じゅん、雪ゆき下等かとう覚さとし院いん某ぼう、青あお岳だけ尼あま、足利あしかが晴はれ直ただし（上杉うえすぎ憲けん寛ひろし）正室せいしつ、旭山あさひやま尼あま

足利あしかが 義明よしあき（あしかが よしあき）は、室町むろまち時代ときよ後期こうき（戦国せんごく時代じだい）の武将ぶしょう。足利あしかが氏しの一門いちもん。第だい2代だい古河ふるかわ公方くぼう足利あしかが政氏まさうじの子こ。第だい3代だい古河ふるかわ公方くぼう足利あしかが高基たかもとの弟おとうと。小しょう弓ゆみ公方くぼうを自称じしょうした。

生涯しょうがい

第だい2代だい古河ふるかわ公方くぼう・足利あしかが政まさし氏しの子ことして誕生たんじょうした。

早はやくから出家しゅっけし、鶴岡つるおか八幡宮はちまんぐう若宮わかみや別当べっとう（雪ゆき下殿しもとの）空そら然しか（こうねん）として僧籍そうせきにあった。永えい正ただしの乱らんにおいて、父ちちと兄あに・高基たかもとが対立たいりつすると、下野げや国こくに移うつって宗そう済わたると改名かいめいした。その後ご、還俗げんぞくして名なを足利あしかが義明よしあきと改あらため、上総かずさ国こく真里谷まりやつ城主じょうしゅの真ま里谷さとや信清のぶきよの支援しえんのもと、下総しもうさ国こく小しょう弓ゆみ城じょう（南生実みなみおゆみ城じょう）を攻撃こうげきして千葉ちば氏し家臣かしんの原はら胤たね隆たかし・原はら友とも胤たね・原はら虎胤とらたね・高城たかぎ胤たね吉きちらを破やぶって同どう城しろを占拠せんきょする。そして、「小しょう弓ゆみ公方くぼう」を自称じしょうして古河ふるかわ公方くぼうと対立たいりつした。上杉うえすぎ朝良ともよしの死去しきょを契機けいきとして高柳たかやなぎから小しょう弓ゆみに移うつり座ざしている。この義明よしあきの高柳たかやなぎから小しょう弓ゆみ入部にゅうぶは、通説つうせつでは永えい正ただし14年ねん（1517年ねん）10月がつとされてきたが、実際じっさいは永えい正ただし15年ねん（1518年ねん）7月がつであることが佐藤さとう博信ひろのぶにより判明はんめいした。なお、義明よしあきが東北とうほくを放浪ほうろうしていたという逸話いつわは根拠こんきょのない俗説ぞくせつで完全かんぜんな誤あやまりである。また、旧来きゅうらいの通説つうせつでは義明よしあきの死後しごに築城ちくじょうされたと考かんがえられてきた生実いくみ城じょう（北きた生実いくみ城じょう）の築城ちくじょう年代ねんだいが室町むろまち時代じだいに遡さかのぼることが判明はんめいし、原はら氏しが奪うばわれた後のちに義明よしあきが御所ごしょにした「小しょう弓ゆみ」はこちらの生実いくみ城じょうではないかとする説せつもある。

その後ご、対外たいがい政策せいさくで信清のぶきよと対立たいりつし、信清のぶきよが死去しきょすると真里谷まりやつ氏しの内紛ないふんに介入かいにゅうし、真ま里谷さとや信隆のぶたかを追放ついほうし信しん応おうを当主とうしゅとした。一方いっぽうで、信隆のぶたかは高基たかもととその子こ・晴はれ氏し、そして相模さがみ国こくの後のち北条ほうじょう氏しと結むすび義明よしあきと敵対てきたいする。天文てんもん7年ねん（1538年ねん）、義明よしあきは軍ぐんを起おこして下総しもふさ国こく国府台こうのだいに出陣しゅつじんし、北条ほうじょう氏綱うじつなと決戦けっせんを行おこなった（第だい一いち次じ国府台こうのだい合戦かっせん）。義明よしあきは武勇ぶゆうに優すぐれ、自みずから陣頭じんとう指揮しきをとり、一時いちじは晴氏はるうじ・氏綱うじつな軍ぐんに対たいして優勢ゆうせいだったが、里見さとみ義よし堯が消極しょうきょく的てきで軍ぐんの士気しきが上あがらず、次第しだいに劣勢れっせいとなる。その中なかで弟おとうとの基もと頼よりゆき、嫡男ちゃくなんの義よし純じゅんが討うち死じにし、この報ほうを耳みみにした義明よしあきは氏綱うじつな軍ぐんに突撃とつげきするが、その反攻はんこうに遭あって戦死せんしした。

義明よしあきの死しで小しょう弓ゆみ公方くぼうは滅亡めつぼうしたが、次男じなんの足利あしかが頼よりゆき純じゅん（頼よりゆき淳あつし）は初はじめは里見さとみ義よし堯・義弘よしひろ（義弘よしひろの正室せいしつ青あお岳だけ尼あまは義明よしあきの娘むすめ）、後のちに豊臣とよとみ秀吉ひでよしの庇護ひごを受うけて生いき延のび、孫まごの代だいにはとこにあたる古河ふるかわ公方くぼうの後裔こうえい足利あしかが氏し姫ひめをめとって喜連川きつれがわ氏しと改姓かいせいした。関ヶ原せきがはらの戦たたかいの後のちに成立せいりつした江戸えど幕府ばくふから喜連川きつれがわ藩はん5000石せきの領地りょうちを与あたえられ、他家たけからの養子ようしを迎むかえつつ明治維新めいじいしん以降いこうも足利あしかがに復姓ふくせいして存続そんぞくしている。

参考さんこう論文ろんぶん

• 佐藤さとう博信ひろのぶ「雪ゆき下殿しもとの御座所ござしょ考こう―古河ふるかわ公方くぼうの政治せいじ基盤きばんをめぐって―」『日本にっぽん史し研究けんきゅう』302号ごう、1987年ねん。 /所収しょしゅう:佐藤さとう博信ひろのぶ『中世ちゅうせい東国とうごくの支配しはい構造こうぞう』思文閣出版しぶんかくしゅっぱん社しゃ、1989年ねん。 
• 佐藤さとう博信ひろのぶ「小しょう弓ゆみ公方くぼう足利あしかが氏しの成立せいりつと展開てんかい―特とくに房総ぼうそう諸しょ領主りょうしゅとの関係かんけいを中心ちゅうしんに―」『歴史れきし学がく研究けんきゅう』635号ごう、1992年ねん。 
• 平田ひらた満男みつお「足利あしかが基はじめ頼よりゆき関係かんけい文書ぶんしょ小しょう考こう」『戦国せんごく史し研究けんきゅう』7号ごう、1984年ねん。 
• 黒田くろだ基樹もとき「戦国せんごく期き扇谷おうぎや上杉うえすぎ氏しの政治せいじ動向どうこう―朝良ともよし・朝興ともおきを中心ちゅうしんとして―」『千葉ちば史学しがく』24号ごう、1994年ねん。