軍ぐん犬けん

軍ぐん犬けん（ぐんけん）または軍用ぐんよう犬けん（ぐんようけん）は、軍務ぐんむのために調練ちょうれんした犬いぬである。

概要がいよう[編集へんしゅう]

犬いぬを軍事ぐんじ目的もくてきに飼かいならすことは古代こだいより行おこなわれており、人間にんげんより優すぐれた視覚しかくや嗅覚きゅうかくを用もちいた警戒けいかい・捜索そうさく・探知たんち能力のうりょくや、直接的ちょくせつてきな攻撃こうげき能力のうりょくは重宝ちょうほうされてきた。日本にっぽんの歴史れきし上じょうでは南北なんぼく朝あさ時代じだいに、越前えちぜん国こく鷹巣たかのす城じょう(現げん・福井ふくい県けん高須たかす山さん)攻防こうぼう戦せんに於おいて、南朝なんちょう方かたの武将ぶしょう・畑はたけ時じ能のうが愛犬あいけん「犬いぬ獅子じし」を偵察ていさつ犬けんとして用もちいた逸話いつわが『太平たいへい記き』に記録きろくされており^[1]、戦国せんごく時代じだいには武蔵むさし国こくの武将ぶしょう・太田おおた資し正ただしが、「三楽さんらく犬いぬ」と称しょうした多数たすうの犬いぬを城郭じょうかく間あいだの伝令でんれい犬けんとして用もちいた記録きろくが『関せき八はち州しゅう古いにしえ戦せん録ろく』や『甲きのえ陽よう軍ぐん鑑かん』に記述きじゅつされている^[2]。近代きんだい以降いこうでも、その能力のうりょくは高たかく評価ひょうかされており、第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん、湾岸わんがん戦争せんそう、イラク戦争せんそうでも投入とうにゅうされている。20世紀せいき前半ぜんはんでは、化学かがく戦せんにも対応たいおうできるように軍用ぐんよう犬いぬ向むけのガスマスクも装備そうびされていた時期じきがあった。

優すぐれた能力のうりょくの一方いっぽうで、軍用ぐんよう犬けんは轟音ごうおんに弱よわいという欠点けってんも抱かかえており、大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐんは、通信つうしん手段しゅだんの一部いちぶとして軍用ぐんよう犬けんを運用うんようしていたが、ペリリューの戦たたかいなどのアメリカ軍ぐんの猛烈もうれつな艦かん砲ほう射撃しゃげきと爆ばく撃げき下したでは怯おびえてしまい、役やくにたなかった^[3]記録きろくが残のこる他ほか、同おなじペリリューの戦たたかいではアメリカ海兵かいへい隊たいも2個こ野戦やせん犬いぬ小隊しょうたい24頭とうを派遣はけんしたが、絶たえ間まない砲撃ほうげきで神経症しんけいしょうとなり、島しまを去さることを余儀よぎなくされた。

日本にっぽんの軍ぐん犬けん[編集へんしゅう]

近代きんだい日本にっぽんでは秋田あきた犬いぬやテリアが訓練くんれんされたこともあったが、主流しゅりゅうはジャーマン・シェパードだった^[4]。日本にっぽんで近代きんだい以前いぜんに犬いぬを武力ぶりょくとして用もちいた例れいは知しられていないが、奇策きさくとして畑はたけ時じ能のうらがスパイ代かわりに犬いぬを用もちいた逸話いつわ、太田おおた資し正ただしらが伝令でんれい代かわりに犬いぬを用もちいた逸話いつわが伝つたわっている^[4]。

近代きんだい以降いこうにおいて、大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐんでは日にち清しん戦争せんそう、日にち露ろ戦争せんそうにて警備けいび犬けんとしての犬いぬの運用うんようが少数しょうすうみられ、1910年ねん（明治めいじ43年ねん）には台湾たいわんの高砂たかさご族ぞくの武装ぶそう蜂起ほうきに際さいして探索たんさく犬けんとして警察犬けいさつけんの供給きょうきゅうを受うけ運用うんようした記録きろくが残のこるが、組織そしきとしての軍ぐん犬けんの本格ほんかく的てきな運用うんようは、第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん以降いこう、日本にっぽん国内こくないにジャーマンシェパードの移入いにゅうが行おこなわれて以降いこうである。陸軍りくぐん歩兵ほへい学校がっこう内うちに軍ぐん犬いぬ育成いくせい所しょが置おかれ、シェパードを中心ちゅうしんにドーベルマンやエアデール・テリアも用もちいた軍用ぐんよう犬けんの育成いくせいが行おこなわれた。1928年ねん（昭和しょうわ3年ねん）には民間みんかん団体だんたいとして日本にっぽんシェパード犬けん倶楽部くらぶ（現げん・日本にっぽんシェパード犬いぬ登録とうろく協会きょうかい）が発足ほっそくし、軍ぐんや警察けいさつへのシェパードの供給きょうきゅうが行おこなわれるようになり、1933年ねん（昭和しょうわ8年ねん）には軍用ぐんよう犬けんの受うけ入いれ窓口まどぐちとして社団しゃだん法人ほうじん帝国ていこく軍用ぐんよう犬けん協会きょうかい（現げん・日本にっぽん警察犬けいさつけん協会きょうかい）も発足ほっそくした。満州まんしゅう事変じへんで死しんだ那智なち・金剛こんごうに初はつの軍用ぐんよう犬けん功労こうろう章あきら甲かぶと号ごうが授与じゅよされた^[5]。

こうした民間みんかんからの供給きょうきゅう経路けいろを経へて育成いくせいされた陸軍りくぐんの軍用ぐんよう犬けんは満州まんしゅう事変じへん以降いこう、伝令でんれい犬けんや警備けいび犬けんとして中国ちゅうごく戦線せんせんで顕著けんちょな活躍かつやくを見みせ、人間にんげんの兵士へいし同様どうように犬いぬの出征しゅっせい壮行そうこうが行おこなわれる例れいも見みられるようになる。1939年ねんには、「軍用ぐんよう犬けんの出征しゅっせい」というタイトルの子供こども向むきニュース映画えいがも朝日新聞社あさひしんぶんしゃにより製作せいさくされた^[6]。満州まんしゅう国こくの成立せいりつ以降いこうは関東軍かんとうぐんも軍ぐん犬いぬ育成いくせい所しょを満州まんしゅう国領こくりょう内ないに設立せつりつして最盛さいせい期きには3500頭とう以上いじょうの軍用ぐんよう犬けんを飼育しいく、同どう時期じきに大日本帝国だいにっぽんていこく海軍かいぐんも警備けいび犬けんとして軍用ぐんよう犬けんの導入どうにゅうを開始かいしした。しかし、太平洋戦争たいへいようせんそう以降いこうは連合れんごう軍ぐん側がわの軍用ぐんよう犬けん戦術せんじゅつが向上こうじょうした事こともあり、次第しだいに日本にっぽん側がわの軍用ぐんよう犬けんの活躍かつやくは見みられなくなっていった。沖縄おきなわ戦せんでも日本にっぽん兵へいと共ともに多おおくの軍用ぐんよう犬けんが戦たたかい、その殆ほとんどがパートナーの兵士へいし（ドッグハンドラー<英語えいご版ばん>）共々ともども戦死せんししている。日本にっぽんの軍用ぐんよう犬けんは勇敢ゆうかんであったが近代きんだい兵器へいきの攻撃こうげきには余あまりにも無力むりょくであり、皮肉ひにくにもこの事実じじつがアメリカ軍ぐんを始はじめとする近代きんだい的てきな軍隊ぐんたいから攻撃こうげき犬けん（英語えいご版ばん）としての軍用ぐんよう犬けんの運用うんようを排除はいじょする契機けいきにもなった^[7]。

同どう時期じき、日本にっぽん国内こくないでも1944年ねん（昭和しょうわ19年ねん）より犬いぬ猫ねこ献納けんのう運動うんどうにより種別しゅべつを問とわず多おおくの犬いぬや猫ねこが皮革ひかくを得える材料ざいりょうとして屠殺とさつされ、結果けっかとして日本にっぽん軍ぐんの軍用ぐんよう犬けんの供給きょうきゅう経路けいろも消滅しょうめつする事こととなった。前線ぜんせんの軍用ぐんよう犬けんも敗走はいそうの際さいの飢餓きがにより、軍馬ぐんばと共ともに友軍ゆうぐん兵へいの手てで食料しょくりょうとして屠殺とさつされる例れいが少すくなくなく、敗戦はいせん後ごも多おおくの日本にっぽん軍ぐん犬いぬは復員ふくいん船せんで帰還きかんする事ことも叶かなわず、そのまま戦地せんちに遺棄いきされる事こととなった。不利ふりな戦況せんきょうの中なか、無血むけつ撤退てったいに成功せいこうし奇跡きせきとも讃たたえられるキスカ島とう撤退てったい作戦さくせんでも、軍ぐん犬けんが置おき去ざりにされている。日本にっぽん軍ぐんの武装ぶそう解除かいじょに当あたっては各種かくしゅの軍用ぐんよう動物どうぶつも重要じゅうような鹵獲ろかく対象たいしょうとして位置付いちづけられ、軍馬ぐんばなどは中国ちゅうごく軍ぐん（国民こくみん革命かくめい軍ぐん、八はち路ろ軍ぐん）に引ひき渡わたされて運用うんようが続つづけられる例れいもあったが、軍用ぐんよう犬けんの場合ばあいは新あたらしい主人しゅじんに懐いだかないなどの問題もんだいからその場ばで敵てき軍ぐんに殺害さつがいされる例れいも少すくなくなく、エアデール・テリアがイギリス軍ぐんに整然せいぜんと引ひき渡わたされた僅わずかな成功せいこう例れいが残のこる程度ていどで、結局けっきょく日本にっぽん国内こくないに無事ぶじに帰還きかん出来できた軍用ぐんよう犬けんは僅わずか数すう頭とうに過すぎなかったという（帰還きかんできた犬いぬは1匹ひきもいないとされることもある^[8]）。靖国神社やすくにじんじゃにはこうした戦地せんちに斃れた軍用ぐんよう犬けんを祀まつる軍ぐん犬けん慰霊いれい像ぞうが建立こんりゅうされており、例年れいねん3月がつ20日はつかの動物どうぶつ愛護あいごの日ひに軍ぐん犬けん慰霊いれい祭さいが行おこなわれていたが、2012年ねん以降いこうは軍馬ぐんばや軍ぐん鳩ばととの合同ごうどうでの慰霊いれい祭さいが、例年れいねん4月がつ7日にちの愛馬あいばの日ひに行おこなわれるようになった。

その一方いっぽうで、国内こくないに残のこされた訓練くんれん中ちゅうの犬いぬも日本にっぽん軍ぐんの解体かいたいにより行いき場ばを失うしない、戦後せんごの食糧しょくりょう不足ふそくの中なか、口減くちべらしの為ために殺ころせ処分しょぶんされたり（食料しょくりょうとなる前提ぜんていで）市場いちばに放出ほうしゅつされるなどして、多おおくは悲惨ひさんな末路まつろを辿たどっていったとされており、日本にっぽんシェパード犬けん協会きょうかいの理事りじであった中島なかじま基はじめ熊ぐまは、戦時せんじ中ちゅうの軍ぐんの威いを借かりた横暴おうぼうな振ふる舞まいに加くわえ、終戦しゅうせん直後ちょくごの犬いぬに対たいする劣悪れつあく極きわまりない仕打しうちを忘わすれたかのように（日本にっぽん警察けいさつ向むけの警察犬けいさつけん、極東きょくとう米べい軍ぐんや東南とうなんアジアに於おける西側にしがわ同盟どうめい国軍こくぐん向むけの）軍用ぐんよう犬いぬ供給きょうきゅうに邁進まいしんする連合れんごう国軍こくぐん占領せんりょう下かの日本にっぽんにおけるブリーダーや関連かんれん団体だんたいに対たいして「軍ぐん犬けん報国ほうこくの看板かんばんを警察犬けいさつけんに塗ぬり替かえただけの人間にんげんは、慰霊いれい祭さいを行おこなって犬いぬに詫わびるべきだ」という主旨しゅしの痛烈つうれつな批判ひはん文ぶんを残のこしている。

1950年ねん（昭和しょうわ25年ねん）、警察けいさつ予備よび隊たいの発足ほっそくと共ともに、旧きゅう日本にっぽん軍ぐんの運用うんよう体制たいせいを参考さんこうに警備けいび犬けんとしての軍用ぐんよう犬けんの供給きょうきゅう・運用うんようが再開さいかいされ、保安ほあん隊たいでの保安ほあん犬けんを経へて陸上りくじょう自衛隊じえいたいでも昭和しょうわ30年代ねんだい後半こうはんまで警備けいび犬けんの運用うんようが行おこなわれていたが、現在げんざいでは廃止はいしされている。一方いっぽう、海上かいじょう自衛隊じえいたいでは警備けいび犬けん（けいびけん）、航空こうくう自衛隊じえいたいでは歩哨ほしょう犬けん（ほしょうけん）という名称めいしょうで現在げんざいも採用さいようしている（2013年ねん（平成へいせい25年ねん）10月がつ1日にちにこちらも「警備けいび犬けん」に改称かいしょう）。

海上かいじょう自衛隊じえいたいの警備けいび犬けんの中なかには災害さいがい救助きゅうじょ犬けんの検定けんていに合格ごうかくしている犬いぬが二に頭とうおり東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいにおいて災害さいがい出動しゅつどうを果はたしている。そのうちの一いち頭とう、海上かいじょう自衛隊じえいたい呉くれ造づくり修補しゅうほ給きゅう所しょ貯油所しょの警備けいび犬けんの金剛こんごう丸まる（ジャーマンシェパード・雄ゆう）は、生存せいぞん者しゃ捜索そうさくに従事じゅうじし、帰還きかん後ごに体調たいちょうを崩くずして2011年ねん8月がつ9日にちに4歳さい4ヶ月かげつで肺炎はいえんで死亡しぼうした。

アメリカの軍用ぐんよう犬けん[編集へんしゅう]

古ふるくはセミノール戦争せんそう^[9]^[10]や、アメリカ独立どくりつ戦争せんそうにて伝令でんれい犬けんとしての運用うんよう記録きろくがあるが^[11]、第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん期きにはスタビー軍曹ぐんそう（英語えいご版ばん）などを始はじめとする兵士へいしの士気しき向上こうじょうの為ための軍事ぐんじマスコット（英語えいご版ばん）としての利用りように留とまり、本格ほんかく的てきな軍用ぐんよう犬けんの運用うんようは第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん期きより始はじまった。当初とうしょは太平洋たいへいようの島嶼とうしょ戦せんに於おいて、日本人にっぽんじんのみを選別せんべつして殺傷さっしょうする目的もくてきで訓練くんれんが行おこなわれ、日本にっぽん兵へいの捕虜ほりょを利用りようしたり、日系にっけいアメリカ人じん部隊ぶたいが訓練くんれん標的ひょうてきに志願しがんした事ことなどにより、大型おおがた犬けんを中心ちゅうしんとする軍用ぐんよう犬けん部隊ぶたいが組織そしきされたが、彼かれら自身じしんが余あまりにも従順じゅうじゅんであった事ことと、前述ぜんじゅつの通とおり砲撃ほうげきの轟音ごうおんに弱よわかった事ことから数すう百ひゃく万まんドルの金銭きんせん的てきな損失そんしつを出だしたのみで終おわり、このような攻撃こうげき犬けんとしての運用うんようは放棄ほうきされた^[12]。戦後せんご、こうした軍用ぐんよう犬けんのうち549頭とうが帰国きこくしたが、多おおくは戦時せんじ中ちゅうのハンドラーにそのまま引ひき取とられる形かたちでしか市中しちゅうに戻もどれず、最終さいしゅう的てきに4頭とうは市民しみん生活せいかつに完全かんぜんに復帰ふっきする事ことが出来できなかった^[13]。こうした第だい二に次じ大戦たいせん中ちゅうの軍用ぐんよう犬けんで最もっとも著名ちょめいな犬いぬがヨーロッパ戦線せんせんに於おいてハンドラーを守まもる為ためにイタリア軍ぐんの機関きかん銃じゅう陣地じんちへ突入とつにゅう、そのまま陣地じんちを陥落かんらくさせるも負傷ふしょうして退役たいえき、殊勲しゅくん十じゅう字じ章あきらやシルバースター、パープルハート章あきらの授与じゅよを受うけたチップス (犬いぬ)（英語えいご版ばん）であろう。

その後ごは主おもに地雷じらいなどの爆発ばくはつ物ぶつを検知けんちする検知けんち犬けん（英語えいご版ばん）や、歩哨ほしょう犬けんとしての運用うんようが主おもとなっており、ベトナム戦争せんそうでは4,000頭とう以上いじょうの軍用ぐんよう犬けんを投入とうにゅう、ブービートラップの発見はっけんなどで成果せいかを上あげているが、戦争せんそう終結しゅうけつ後ごに帰国きこくできた犬いぬは僅わずか200頭とう余あまりだったと言いわれる。軍用ぐんよう犬けんの戦死せんしや、敗走はいそうの際さいの遺棄いきなどはハンドラーのベトナム帰還きかん兵へいにもPTSDを患わずらわせる結果けっかを生うんだ。彼かれらの多おおくは「軍用ぐんよう犬けんを戦地せんちに見捨みすてる事ことは自みずからの子こを置おき去ざりにする事ことに等ひとしい」と述のべており、こうした事態じたいを重おもく見みた米国べいこく政府せいふは2000年ねん11月、ビル・クリントン大統領だいとうりょうの署名しょめいにより、「軍事ぐんじ作業さぎょう犬けんの帰還きかんプログラム」を成立せいりつさせ、アフガニスタン紛争ふんそうやイラク戦争せんそうに参戦さんせんした軍用ぐんよう犬けんが里親さとおやの元もとで適切てきせつに市民しみん生活せいかつに復帰ふっきする為ための取とり組くみを開始かいしした^[14]。なお、犬いぬに対たいする粗略そりゃくな扱あつかいがあった場合ばあい、軍法ぐんぽう会議かいぎへかける正当せいとう性せいを担保たんぽするため、犬いぬにはハンドラーと同等どうとう以上いじょうの階級かいきゅうが与あたえられている。

現在げんざいでも多おおくの軍用ぐんよう犬けんがアメリカ軍ぐんでは運用うんようされており、2011年ねんにはNavy SEALsが運用うんようするマリノア犬いぬの「カイロ」が、海神わたつみの槍やり作戦さくせん（ウサーマ・ビン・ラーディンの殺害さつがい）に参加さんかして成果せいかを挙あげている一方いっぽうで^[15]^[16]、イラク戦争せんそうに於おける捕虜ほりょ収容しゅうよう所しょ ^[17]やグアンタナモ湾わん収容しゅうようキャンプ^[18]などにおいて、尋問じんもんの際さいに軍用ぐんよう犬けんを捕虜ほりょや収容しゅうよう者しゃにけしかける脅迫きょうはくが用もちいられているとして新あらたな人道じんどう上じょうの問題もんだいを生うみ出だしている。

2019年ねん 10月26日にち、ISIL指導しどう者しゃアブー・バクル・アル＝バグダーディーを急襲きゅうしゅうしたカイラ・ミューラー作戦さくせんでは、軍用ぐんよう犬けんコナンがバグダーディーを追おい詰つめる最終さいしゅう的てきな役割やくわりを果はたし、自爆じばくに巻まき込こまれて負傷ふしょうした^[19]。当初とうしょ犬いぬ種しゅと名前なまえは、作戦さくせんに参加さんかした部隊ぶたい名めいを秘匿ひとくするために公表こうひょうされなかったが、後のちにベルジアン・シェパード・ドッグ・マリノアのコナンという名なが明あきらかにされた。ドナルド・トランプ大統領だいとうりょうは、コナンをツイッターにてアメリカの英雄えいゆうと称となえた^[20]。

ドイツの軍用ぐんよう犬けん[編集へんしゅう]

1914年ねん、ドイツ軍ぐんは牧羊ぼくよう犬けんとして用もちいられていたシェパードを軍用ぐんよう犬けんとして使用しよう開始かいしした^[21]。

スロベニアの軍用ぐんよう犬けん[編集へんしゅう]

スロベニアにおいて初はじめて使つかわれたのは、1991年ねんの十じゅう日間にちかん戦争せんそうであった。当時とうじは主しゅとして重要じゅうような建物たてもの、倉庫そうこ、交通こうつうの要所ようしょでの警備けいび犬けんとして数すう名めいの国土こくど防衛ぼうえい隊たい隊員たいいんによって使つかわれていた。十じゅう日間にちかん戦争せんそう終結しゅうけつ後ご、ハンドラー養成ようせいのため、第だい1特殊とくしゅ旅団りょだんが編成へんせいされている。

ハンガリーの軍用ぐんよう犬けん[編集へんしゅう]

ハンガリーでは、2005年ねん後半こうはんに爆発ばくはつ物ぶつ・武器ぶき破壊はかい（EOD）を目的もくてきとする軍用ぐんよう犬けん特殊とくしゅ班はんを編成へんせいし、EOD大隊だいたいに編入へんにゅうさせ活動かつどうを開始かいしした。2007年ねんの初はじめに、アフガニスタン北部ほくぶで爆発ばくはつ物ぶつ探知たんち犬けん数すう頭とうがアフガニスタン北部ほくぶで活動かつどうしていたハンガリー地方ちほう復興ふっこう支援しえん部隊ぶたいに配備はいびされ、同どう支援しえん部隊ぶたいの要員よういんとして爆発ばくはつ物ぶつ探知たんち、及および空港くうこうの警備けいびの役割やくわりを担になっている。

イスラエルの軍用ぐんよう犬けん[編集へんしゅう]

イスラエル陸軍りくぐん歩兵ほへい科か（英語えいご版ばん）には軍用ぐんよう犬けんの運用うんようを集中しゅうちゅう的てきに行おこなう特殊とくしゅ部隊ぶたい"第だい7149"オケッツ"部隊ぶたい（英語えいご版ばん）"が編成へんせいされている。1930年代ねんだいからハガナーの部隊ぶたいとして活動かつどうしていたが1954年ねんに一いち度ど解かい隊たいされ、現在げんざいのオケッツ隊たいは1974年ねんに再編さいへんされたものである。

軍用ぐんよう犬けんの役割やくわり[編集へんしゅう]

警備けいび・哨戒しょうかい: 夜間やかんに見張みはりをさせ、不審ふしんな人物じんぶつが来きたら吠ほえさせる。また、近ちかくに隠かくれている敵てき兵へいの臭においや音おとを感知かんちさせる。場合ばあいによっては直接ちょくせつ攻撃こうげきさせて制圧せいあつするよう訓練くんれんすることもある。拠点きょてん警備けいびのみではなく、野戦やせんにおける前線ぜんせん投入とうにゅうも行おこなわれている。
探知たんち

負傷ふしょう兵へいの捜索そうさく: 戦場せんじょうで動うごけなくなっている負傷ふしょう兵へいをいち早はやく発見はっけんさせる。

地雷じらいや爆発ばくはつ物ぶつの探知たんち: 犬いぬの優すぐれた嗅覚きゅうかくを用もちいて、埋設まいせつされた地雷じらいや車両しゃりょう・器材きざいに隠かくされた爆発ばくはつ物ぶつなどを探知たんちさせる。地雷じらい探知たんち機きで発見はっけんできない地雷じらいでも発見はっけんできる。
戦闘せんとう: 犬いぬの戦闘せんとう力りょくを用もちいて直接ちょくせつ敵てき兵へいを攻撃こうげきさせる。古代こだいでは刃物はものを放射状ほうしゃじょうに配置はいちした首輪くびわをつけ敵てき軍ぐんに突撃とつげきさせて敵てき兵へいを殺傷さっしょうさせるようなことが行おこなわれていた。現在げんざいでは戦闘せんとう目的もくてきのみで訓練くんれんすることはほとんどない。
対戦たいせん車しゃ犬けん（地雷じらい犬けん）: 対戦たいせん車しゃ地雷じらいを背負しょわせ敵てき戦車せんしゃの下したに潜もぐり込こませて破壊はかいさせる。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中なかにソビエト連邦れんぽう軍ぐんが用もちいた。
詳細しょうさいは「対戦たいせん車しゃ犬いぬ」を参照さんしょう
伝令でんれい: 背嚢はいのうに文書ぶんしょを入いれ、伝令でんれいとして前線ぜんせんの将兵しょうへいに命令めいれいを伝つたえる。
輸送ゆそう: 弾薬だんやく運搬うんぱん車しゃを引ひかせて機関きかん銃じゅう陣地じんちなどに弾薬だんやくを運はこばせる。また、医薬品いやくひん運搬うんぱんや通信つうしん線せん敷設ふせつにも用もちいられた。第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん前後ぜんこうのヨーロッパでは荷車にぐるま（ドッグカート（英語えいご版ばん））で犬いぬに荷物にもつを運搬うんぱんさせる手段しゅだんが広ひろく用もちいられていた為ため^[22]、これを転用てんようする形かたちでベルギー軍ぐんやフランス軍ぐん等とうで使用しようされたが^[23]、塹壕ざんごう戦せんの出現しゅつげん以降いこうはこうした運用うんようは行おこなえなくなった。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中ちゅうにはソビエト連邦れんぽう軍ぐんが負傷ふしょう者しゃの運搬うんぱんに犬いぬを用もちいていた。犬いぬは雪ゆき中ちゅうや爆ばく撃げき孔あな（クレーター）を越こえて運搬うんぱんする能力のうりょくに優すぐれていた為ためである^[24]。

画像がぞう[編集へんしゅう]

鄧南光こう（中国語ちゅうごくご版ばん）により、1940-1945年ねんの間あいだに台北たいぺい市しにて撮影さつえいされた日本にっぽん陸軍りくぐんの軍用ぐんよう犬いぬ達たち。4頭とうともシェパード系けいの犬いぬ種しゅとみられる。
戦闘せんとう訓練くんれん中ちゅうの日本にっぽん陸軍りくぐんの軍用ぐんよう犬いぬ達たち。攻撃こうげき犬けんとしての運用うんようが行おこなわれていた実像じつぞうがうかがえる。丹前たんぜんに似にた綿入わたいれ服ふくを着用ちゃくようし、標的ひょうてき役やくとなっている2名めいも軍靴ぐんかと巻まき脚絆きゃはんを履はいている事ことから、日本にっぽん兵へい自身じしんが標的ひょうてき役やくとなり訓練くんれんを行おこなっていたものとみられる(1940-1945年ねん、鄧南光こう撮影さつえい)。
陸軍りくぐん兵へい達たちと共ともに野戦やせん訓練くんれんに参加さんかする軍用ぐんよう犬けん。中国ちゅうごく語ごのテロップでは『青年せいねん軍ぐん（中国語ちゅうごくご版ばん）訓練くんれん』とされているが、小銃しょうじゅうや鉄てつ帽ぼうなどの軍装ぐんそう品ひんから、日本にっぽん陸軍りくぐんの台湾たいわん人じん兵士へいし達いたるであるとみられる(1940-1945年ねん、鄧南光こう撮影さつえい)。
アメリカ海兵かいへい隊たいの軍用ぐんよう犬けん
満開まんかいの桜さくらと、海上かいじょう自衛隊じえいたい舞鶴まいづる警備けいび隊たいの警備けいび犬いぬたち
海上かいじょう自衛隊じえいたいの警備けいび犬けん「昴すばる輝てる（こうき）」
ハンドラーとともに仮眠かみんをとるアメリカ海兵かいへい隊たいの軍用ぐんよう犬けん
戦死せんししたコルトン・ラスク上等じょうとう兵へいの相棒あいぼうだった軍用ぐんよう犬けんのエリ。エリは退役たいえき後ごに上等じょうとう兵へいの遺族いぞくに引ひき取とられた。
ラスク上等じょうとう兵へいの遺品いひんのペンダント。
アメリカ海兵かいへい隊たいの軍用ぐんよう犬けん（1945年ねん硫黄いおう島とう）
アメリカ軍ぐんの軍用ぐんよう犬けんは民間みんかんの家庭かていに預あづけられ5か月げつ間あいだ育そだてられる
アフガニスタンの戦闘せんとうで負傷ふしょうしたアメリカ海兵かいへい隊たいの爆発ばくはつ物ぶつ探知たんち犬けん
1944年ねん7月がつ、バイユーにて治療ちりょうを受うけるイギリス軍ぐんの地雷じらい探知たんち犬けん（1944年ねん）
グアム海軍かいぐん基地きちの軍用ぐんよう犬けん墓地ぼちを訪おとずれるアメリカ海兵かいへい隊たいの軍用ぐんよう犬けんとハンドラー
アフガニスタンの戦場せんじょうで睡眠すいみんを取とる軍用ぐんよう犬けんと女性じょせいハンドラー
アフガニスタンの子供こどもと触ふれ合あうアメリカ海兵かいへい隊たいの軍用ぐんよう犬けん
イギリス軍ぐんの軍用ぐんよう犬けん
イスラエル陸軍りくぐんの軍用ぐんよう犬いぬ運用うんよう特殊とくしゅ部隊ぶたい、オケッツ（英語えいご版ばん）。
戦死せんししたアメリカ陸軍りくぐんの軍用ぐんよう犬けんのバトルフィールド・クロス
アメリカ海兵かいへい隊たいの軍用ぐんよう犬けんのために営いとなまれた葬儀そうぎの様子ようす
海上かいじょう自衛隊じえいたい舞鶴まいづる警備けいび隊たいで行おこなわれた、警備けいび犬けんの追悼ついとう式しき