秋田あきた犬いぬ

秋田あきた犬いぬ

愛称あいしょう	日本にっぽん秋田あきた犬いぬ
原産地げんさんち	日本にっぽん（秋田あきた県けん）
特徴とくちょう 体重たいじゅう オス 60–90 lbs (27–41 kg) メス 50–80 lbs (23–36 kg) 体高たいこう オス 25–27 in (64–69 cm) メス 23–25 in (58–64 cm) 外そと被ひ ダブルコート 毛色けいろ 赤あか、黒くろ虎とら、赤あか虎とら、霜降しもふり虎とら、白しろ、胡麻ごま、黒くろ。犬いぬの遺伝いでん的てき変異へんい体たいの腹部ふくぶに白しろい毛皮けがわが付ついているものはすべて、黒くろとグレーを含ふくむことができる 出産しゅっさん数すう 3-12 匹ひき、平均へいきん 7-8 匹ひき 寿命じゅみょう 10 年ねん
主要しゅよう畜犬団体だんたいによる分類ぶんるいと標準ひょうじゅん FCI Group 5 Spitz and Primitive dogs Section 5 Asian Spitz and related breeds ##255 (Japanese), #344 (American) Akita Inu 標準ひょうじゅん AKC Working Group 標準ひょうじゅん ANKC Group 6 (Utility) 標準ひょうじゅん CKC Group 3 – Working Dogs 標準ひょうじゅん JKC 第だい5グループ 標準ひょうじゅん KC (UK) Utility Japanese 標準ひょうじゅん NZKC Utility Japanese 標準ひょうじゅん UKC Northern Breed Japanese 標準ひょうじゅん
イヌ (Canis lupus familiaris)

秋田あきた犬いぬ（あきたいぬ、あきたけん）は、秋田あきた県けん原産げんさんの日本犬にほんいぬの一種いっしゅ。国くにの天然記念物てんねんきねんぶつに指定していされている。日本犬にほんいぬ種しゅのうち唯一ゆいいつの大型おおがた犬けん種たねである。

概要がいよう

日本にっぽん犬けんの最さい北きた系けい、中北なかきた系けい、南方なんぽう系けいの3種しゅのうち、秋田あきた犬けんは最さい北きた系けいに属ぞくする大型おおがた犬けんである。地元じもとでは「大館おおだて犬いぬ（おおだていぬ）」とも呼よばれていたが、1931年ねん（昭和しょうわ6年ねん）7月がつに国くにの天然記念物てんねんきねんぶつに指定していされた際さいに「秋田あきた犬いぬ」として指定していされたことから以後いごこの名称めいしょうが一般いっぱん化かした。

日本人にっぽんじんの間あいだでは忠ちゅう犬けんハチ公はちこうのエピソードで有名ゆうめいであり、主人しゅじんに忠実ちゅうじつな家庭かてい犬けんの品種ひんしゅとして、広ひろく知しられている。奥羽山脈おううさんみゃく一帯いったいで狩猟しゅりょう犬けんとして飼育しいくされていたマタギ犬けんや大館おおだて地方ちほうの地ち犬けんを基もとにして作つくられた犬いぬであり、平成へいせいにはいっても秋田あきた県けん下かを中心ちゅうしんに家庭かてい犬けん（ペット）としての愛好あいこう者しゃが多おおい。「あきたいぬ」と読よまれており、藩政はんせい時代じだいから「マタギいぬ」、「おおだていぬ」、「あきたいぬ」と変遷へんせんしつつ呼よばれてきた。一部いちぶ自治体じちたいでは「特定とくてい犬けん」に指定していされ、檻おりの中なかでの飼育しいくが義務ぎむ化かされている。

明治めいじ期きに洋よう犬けんとの交配こうはいによる品種ひんしゅ改良かいりょうにより大型おおがた化かしている。秋田あきた犬いぬ協会きょうかい（1948年ねん-2016年ねん）からヤマザキ学園がくえん大学だいがくに寄贈きぞうされた1950年代ねんだいの昭和しょうわ25年ねん頃ごろから昭和しょうわ末期まっきの1980年代ねんだいにかけて秋田あきた犬いぬを撮影さつえいした8ミリフィルム動画どうが438本ほんによると、かつては耳みみが折おれ曲まがっていたり、体毛たいもうにブチ模様もようがあったりする洋よう犬けんの特徴とくちょうを持もった秋田あきた犬けんがいたことが分わかる。このように歴史れきし的てきに他た犬いぬ種しゅの影響えいきょうを受うけてきた犬いぬ種しゅではあるが、2004年ねんにアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの研究けんきゅうチームが犬いぬとオオカミでのDNAを比較ひかくした調査ちょうさによると、調査ちょうさ対象たいしょうになった世界せかいの85種類しゅるいの犬いぬ種しゅの中なかで、秋田あきた犬けんはシャー・ペイ、柴犬しばけんとチャウチャウに次ついでオオカミに近ちかい犬いぬ種しゅであることが判明はんめいしている。

特徴とくちょう

身体しんたい的てき特徴とくちょう

• 体高たいこうは58-69cmであるが、JKCではオス67cm、メス61cmを理想りそう体高たいこうとしている。
• 大型おおがた犬けんで、胴体どうたい、肢し、吻は、がっしりとしている。
• 体長たいちょうは、体高たいこうに比くらべやや長ながめ。
• 体毛たいもうは下毛しもげと上うえ毛げの2層そう構造こうぞうで、耐寒たいかん能力のうりょくに優すぐれる。下毛しもげは密度みつどが高たかく、上うえ毛げは長ながさ5cm前後ぜんこうの硬かたい直ちょく毛けである。
• 毛色けいろは赤あか、白しろ、虎とら、黒くろ、胡麻ごま。ただし、胡麻ごま毛げと黒毛くろげは絶滅ぜつめつ状態じょうたいである。
• 虎とらは黒くろ虎とら、赤あか虎とら、霜降しもふり虎とらと分わけられている。
• 闘犬とうけんや狩猟しゅりょう犬けんとして改良かいりょう・飼育しいくされた経緯けいいから、高たかい身体しんたい能力のうりょくを備そなえ、力ちからも強つよい。
• 股関節こかんせつ形成けいせい不全ふぜん、鼓腸こちょう症しょうにかかりやすい。また、ホヒトー小柳こやなぎー原田はらだ病びょうが他たの犬いぬ種しゅに比くらべて出現しゅつげん頻度ひんどが多おおいと言いわれる。

性格せいかく

• 飼かい主ぬしに忠実ちゅうじつで、番犬ばんけんとしての適性てきせいに優すぐれる。
• 見知みしらぬ人間にんげんや他たの犬いぬに対たいする攻撃こうげき性せいが強つよく、威圧いあつ的てきな態度たいどをとることもある。保険ほけん金きん支払しはらいデータ（賠償ばいしょう責任せきにん事故じこ）の犬いぬ種しゅごとの事故じこの発生はっせい率りつを集計しゅうけいしたところ、秋田あきた犬けんが発生はっせい率りつ3.7%と最もっとも高たかく、続つづいてバーニーズ・マウンテン・ドッグ（2.1%）、ボーダー・コリー（1.2%）となっており、闘犬とうけん種しゅということも有あって人間にんげんや他たの動物どうぶつに対たいして危害きがいを加くわえないように飼育しいくには特とくに注意ちゅういが必要ひつようである。
• 1972年ねん、秋田あきた犬けんがポメラニアンを噛かみ殺ころした事件じけんで「秋田あきた犬けんは一般いっぱんにどう猛もうで人ひとや動物どうぶつを襲おそいやすく飼育しいくが困難こんなん」として賠償ばいしょうを認みとめる判決はんけつが東京とうきょう地方裁判所ちほうさいばんしょであった。判決はんけつに対たいし秋田あきた犬いぬ保存ほぞん会かいは、裁判官さいばんかんは秋田あきた犬いぬを誤解ごかいしているとして抗議こうぎ文ぶんを送おくっている。

歴史れきし

古代こだい犬いぬ種しゅの系統けいとう樹じゅ

闘犬とうけんとしての利用りよう

古来こらい、東北とうほく地方ちほうにはマタギ犬けんと呼よばれる狩猟しゅりょう犬けんが飼かわれていた。秋田あきた地方ちほうでも「秋田あきたマタギ犬けん」と呼よばれるマタギ犬けんがいたが、これは中型ちゅうがた犬けんで秋田あきた犬いぬとは区別くべつされる。秋田あきた犬けんの直接ちょくせつの祖先そせん犬けんは大館おおだて地方ちほうで武士ぶしや豪農ごうのうによって番犬ばんけんや闘犬とうけんとして飼かわれていた犬いぬで、別名べつめい大館おおだて犬いぬとも呼よばれていた。

江戸えど時代じだい、出羽でわ国こく北部ほくぶの秋田あきた地方ちほうは、佐竹さたけ氏し（秋田あきた藩はん）によって治おさめられた。佐竹さたけ氏しは関ヶ原せきがはらの戦たたかいでの日和見ひよりみ的てきな態度たいどにより、常陸ひたち国こくから転てん封ふうされた外様とざま大名だいみょうであり、江戸えど幕府ばくふによって藩はん内ないの築城ちくじょうや武力ぶりょくの向上こうじょうが厳きびしく警戒けいかいされた。佐竹さたけ家かでは久保田くぼた城しろの佐竹さたけ宗家そうけを中心ちゅうしんとして、一族いちぞくの東家あずまや、西家にしいえ、北きた家か、南みなみ家かを、それぞれ久保田くぼた城下じょうか、大館おおだて、角館かくのだて、湯沢ゆざわに配はいした。江戸えど時代じだい、大館おおだて城代じょうだいの佐竹さたけ西家にしいえ（小場おば家か）は闘犬とうけんによって家臣かしんたちの闘志とうしを養やしなったとされる。

明治めいじ40年ねん頃ごろの秋田あきた犬いぬ

秋田あきた犬けんがどのような経緯けいいで大型おおがた化かしたのか明確めいかくにはわかっていない。昭和しょうわ6年ねん（1931年ねん）に当時とうじの大館おおだて町まちで開催かいさいされた「古老ころう犬いぬ座談ざだん会かい」によると、江戸えど時代じだい末期まっき、大館おおだての浄きよし応おう寺てら、通称つうしょう「中なかの寺てら」に「モク」という名なの名犬めいけんが飼かわれていた。モクは安政あんせい末すえの生うまれで、戊辰戦争ぼしんせんそうの戦火せんかをくぐり抜ぬけ、明治めいじ4、5年ねん（1871、72年ねん）まで生いきたが、肩かた丈たけ2尺しゃく8寸すん位い（約やく85cm）あり、大人おとなを乗のせても潰つぶれないほどの大型おおがた犬けんだったという。モクは立たて耳みみ、巻まき尾おの純じゅん和わ犬けんで、色いろはゴマ、毛けは長ながかった。この説せつを信しんじるならば、遅おそくとも江戸えど時代じだい末期まっきまでには秋田あきた犬けんは大型おおがた化かしていたことになる。

時代じだいが移うつっても秋田あきたの闘犬とうけん熱ねつは衰おとろえず、明治めいじになると、他たの地方ちほうの犬いぬ種しゅや外国がいこく産さんの大型おおがた犬いぬ種しゅとの交配こうはいが積極せっきょく的てきに行おこなわれるようになった。1897年ねん（明治めいじ30年ねん）頃ごろからは、秋田あきたと並ならんで闘犬とうけんの盛さかんであった高知こうち県けんから土佐犬とさいぬ（四国しこく犬いぬ）が入はいってきており（その後ご、土佐犬とさいぬは洋よう犬けんとの交配こうはいで大型おおがた化かする）、さらに日にち清しん戦争せんそう以降いこうは、南みなみ樺太からふとへ渡わたった人ひとたちが持もち込こんだ樺太からふと犬いぬや北海道ほっかいどう犬いぬも入はいっている。

一方いっぽう、洋よう犬いぬ種しゅとしては、まず大館おおだてに近ちかい小坂こさか銅山どうざんのドイツ人じん技師ぎしの飼かい犬いぬであったマスティフと思おもわれる犬いぬと、明治めいじ中期ちゅうき以降いこうには、ジャーマン・シェパード・ドッグやグレート・デーンなどとの交配こうはいも行おこなわれた。これによって立たて耳みみ、巻まき尾おといったスピッツタイプ本来ほんらいの特徴とくちょうが失うしなわれた犬いぬは旧来きゅうらいの秋田あきたマタギに対たいして「新しん秋田あきた」と呼よばれた。

江戸えど、明治めいじと盛さかんに行おこなわれた闘犬とうけんも、明治めいじ末まつの1908年ねん（明治めいじ41年ねん）に至いたり、社会しゃかい的てき弊害へいがいに鑑かんがみて、ついに秋田あきた県けん下かに闘犬とうけん禁止きんし令れいが発令はつれいされた。警視庁けいしちょうが闘犬とうけん・闘鶏とうけい・闘牛とうぎゅうを全国ぜんこくで禁止きんしするのが1916年ねん（大正たいしょう5年ねん）7月がつ26日にちのことであり、それに8年ねんも先駆さきがけての禁止きんし令れいは、県下けんかでの白熱はくねつぶりを偲しのばせる。洋よう犬けんとの雑ざつ化かによるタイプの乱みだれに、闘犬とうけん禁止きんし令れい、洋よう犬けん人気にんきの高たかまりなどが重かさなって、秋田あきた犬けんにとっては不遇ふぐうの時代じだいがしばらく続つづいた。

再さい作出さくしゅつへの取とり組くみと天然記念物てんねんきねんぶつ指定してい

大正たいしょう年間ねんかんに入はいる頃ころから、学識がくしき者しゃや関係かんけい者しゃによって、「秋田あきた犬いぬを保存ほぞんすべし」という世論せろんが高たかまりを見みせた。保存ほぞん運動うんどうの中心ちゅうしんとなったのは、雑ざつ化かを危惧きぐした当時とうじの大館おおだて町まち長ちょう（泉いずみ茂しげる家か）らである。このような動うごきは秋田あきた犬けんに限かぎったことではなく、明治めいじ期きの舶来はくらい文物ぶんぶつ偏重へんちょうや交通こうつうの自由じゆう化か等とうによる洋よう犬いぬ等とうとの雑ざつ化かと、その反動はんどうとしての保存ほぞん運動うんどうは、全国ぜんこくの日本犬にほんいぬに関かんする共通きょうつうの動うごきだった。

このような流ながれの中なか、1919年ねん（大正たいしょう8年ねん）には、種族しゅぞく保護ほごに関かんする法律ほうりつ、すなわち史蹟しせき名勝めいしょう天然てんねん紀き念ねん物ぶつ保存ほぞん法ほうが発布はっぷされた。同どう法ほうの制定せいていに向むけて中心ちゅうしんとなって動うごいた渡瀬わたせ庄三郎しょうざぶろうは、当時とうじの「日本犬にほんいぬ保守ほしゅ運動うんどう」の中心ちゅうしん人物じんぶつでもある。渡瀬わたせらは翌よく1920年ねん（大正たいしょう9年ねん）、内務省ないむしょうの視察しさつ団だんとして、秋田あきた犬けんの調査ちょうさのために大館おおだて町まち（現げん・大館おおだて市し）を訪おとずれたが、この時ときはタイプの雑ざつ化かが甚はなはだしく、天然記念物てんねんきねんぶつへの指定していには至いたらなかった。渡瀬わたせは1922年ねん（大正たいしょう11年ねん）の動物どうぶつ学会がっかいにおいて 「日本にっぽん犬けんの起源きげんに就ついて」と題だいする発表はっぴょうを行おこなったが、一番いちばんの議論ぎろんの焦点しょうてんは秋田あきた犬けんであったという。

これ以後いご、同好どうこう者しゃによる秋田あきた犬けんの繁殖はんしょく改良かいりょう・再さい作出さくしゅつへの取とり組くみはいっそう勢いきおいを増まし、大舘おおたち町長ちょうちょうは自身じしんが所有しょゆうしていた純血じゅんけつの秋田あきた犬いぬ雄ゆう１匹ひきと、周辺しゅうへんの純血じゅんけつの雌めす犬けん4匹ひきを交配こうはいさせ、さらにかつて町長ちょうちょうが山形やまがた県知事けんちじに贈おくった雄お犬いぬの元もとにも雌めす犬けんを連つれて行いき交配こうはいさせるなどした。

1927年ねん（昭和しょうわ2年ねん）5月がつには、町長ちょうちょうらによって「秋田あきた犬いぬ保存ほぞん会かい」が設立せつりつされた。日本犬にほんいぬ保存ほぞん会かいが東京とうきょうに 設立せつりつされたのは、これより1年ねん遅おそい1928年ねん（昭和しょうわ3年ねん）6月がつのことである。

保存ほぞん会かいの設立せつりつ以降いこう、秋田あきた犬いぬ復興ふっこうへの取とり組くみはいよいよ本格ほんかく的てきになり、1931年ねん（昭和しょうわ6年ねん）春はるの、鏑木かぶらき外がい岐雄らによる再さい調査ちょうさを経へて、同年どうねん7月がつ31日にち、9頭とうの優秀ゆうしゅう犬けんが、「秋田あきた犬けん（あきたいぬ）」として国くにの天然記念物てんねんきねんぶつとしての指定していを受うけるに至いたった。これは日本犬にほんいぬとしては初はつの天然記念物てんねんきねんぶつ指定していである。

この1年ねん後ごの1932年ねん（昭和しょうわ7年ねん）10月4日にち、帰かえらぬ主人しゅじん・上野うえの英三郎えいざぶろう（東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく教授きょうじゅ）を渋谷しぶや駅えきで待まち続つづける秋田あきた犬けん「忠ちゅう犬けんハチ公はちこう」が、日本にっぽん犬けん保存ほぞん会かい初代しょだい会長かいちょうである斎藤さいとう弘吉ひろきちの寄稿きこうによって「いとしや老ろう犬いぬ物語ものがたり」として『朝日新聞あさひしんぶん』に報道ほうどうされ、注目ちゅうもくを集あつめた。2年ねん後ごの1934年ねん（昭和しょうわ9年ねん）4月がつには、東京とうきょう渋谷しぶやの駅頭えきとうでハチ公はちこう像ぞうが除幕じょまくされている。ハチ公はちこうは翌よく1935年ねん（昭和しょうわ10年ねん）3月8日にちに11歳さい4か月げつで死亡しぼうしたが、主人しゅじんに忠実ちゅうじつな秋田あきた犬けんは、忠ちゅう犬けんハチ公はちこうの名なとともに、ますます世よに知しられることになった。この1934年ねん（昭和しょうわ9年ねん）頃ごろから、秋田あきた犬いぬ保存ほぞん会かいは犬いぬ籍せき登録とうろくを実施じっし。1938年ねん（昭和しょうわ13年ねん）には「秋田あきた犬いぬ標準ひょうじゅん」も制定せいていされ、展覧てんらん会かいも開催かいさいされるようになったが、これは太平洋戦争たいへいようせんそうの勃発ぼっぱつによって、一時いちじ中断ちゅうだんされることとなった。

戦中せんちゅうの受難じゅなんと戦後せんごの混乱こんらん

日にち中ちゅう戦争せんそうから太平洋戦争たいへいようせんそうに至いたる時代じだいの食糧しょくりょう不足ふそく、ことに大戦たいせん末期まっきと終戦しゅうせん後ごの深刻しんこくな食糧難しょくりょうなんは、大型おおがた犬けんである秋田あきた犬けんの保存ほぞんに甚大じんだいな被害ひがいを与あたえ、秋田あきた犬けんの数かずは激減げきげんした。餌えさとして与あたえるものも、ワラビノリやカタクリ澱粉でんぷん、野菜やさい類るいなど、植物しょくぶつ質しつのものがほとんどであり、どうにか生いき延のびても子こが生うまれなかったり、生うまれた子犬こいぬも栄養失調えいようしっちょうでうまく育そだたず、ようやく育そだっても、ジステンパー等ひとしの病気びょうきによって多おおくが死しんだりしたという。

大型おおがた犬けんであればその分ぶん必要ひつようとする食料しょくりょうも多おおくなるため、犬いぬに餌えさをやるだけでも国賊こくぞく呼よばわりされたという時代じだいであった。大おおきな犬いぬは目めを引ひく分ぶん、風当かぜあたりも強つよかった。戦時せんじ下かでは、軍用ぐんようの防寒ぼうかん衣料いりょうとして犬いぬの毛皮けがわを使用しようしたため、軍用ぐんよう犬けんとなるジャーマン・シェパード・ドッグ以外いがいの犬いぬには捕獲ほかく命令めいれいが出だされていた。その捕獲ほかくを逃のがれる目的もくてきで、ジャーマン・シェパード・ドッグを交配こうはいしたことが、秋田あきた犬けんの純化じゅんかを後退こうたいさせることともなった。

1945年ねん（昭和しょうわ20年ねん）の終戦しゅうせんの時点じてんでは、血統けっとうの正ただしい秋田あきた犬けんは、愛犬あいけん家かの非常ひじょうな努力どりょくにより残のこされた、わずか十じゅう数すう頭とうに過すぎなかった。これらの犬いぬを土台どだいとして、戦後せんご再ふたたび純血じゅんけつ種しゅとしての繁殖はんしょく固定こていが行おこなわれた。

ヘレン・ケラーへの贈呈ぞうていのエピソード（詳細しょうさいは後述こうじゅつ）や、連合れんごう国こく軍ぐんのアメリカ軍ぐん兵士へいしらが体からだが大おおきく愛あいらしい顔かおつきの秋田あきた犬いぬを好このんで飼がったこと、戦後せんご混乱こんらん期きに番犬ばんけんとしての需要じゅようが高たかまったことが相あいまって、秋田あきた犬けんはちょっとしたブームとなった。このため、この時代じだいは、雑種ざっしゅ化かしたものまでが高たかい値段ねだんで売うられ、1955年ねん（昭和しょうわ30年ねん）頃ごろまでは、様々さまざまなタイプの「秋田あきた犬いぬ」が繁殖はんしょく・販売はんばいされたという。

この当時とうじ広ひろく出回でまわった、太ふとく大おおきく雄大ゆうだいではあるが、顔かお・色いろ・体からだの造つくり等とうに、戦時せんじ中ちゅうに交雑こうざつしたジャーマン・シェパード・ドッグの特徴とくちょうを半なかば残のこしているものを、「出羽でわ系けい」と呼よんでいる。この頃ころ、全ぜん犬いぬ種しゅ団体だんたい共同きょうどうの展覧てんらん会かいでトップになった「金剛こんごう号ごう」も出羽でわ系けいであり、秋田あきた犬いぬ保存ほぞん会かいにおいてさえ、金剛こんごう号ごうの子こで同おなじ出羽いずは系けいの 「金きむ朝ちょう号ごう」が名誉めいよ章あきらを受賞じゅしょうしている。出羽いずは系けいには繁殖はんしょく力りょくの強つよさもあり、昭和しょうわ20年代ねんだいを通とおして、秋田あきた犬いぬ界かいを席巻せっけんする勢いきおいがあった。

しかし、その一方いっぽうでは、わずかな純血じゅんけつ種しゅの個体こたいを土台どだいとして、マスティフやジャーマン・シェパード・ドッグ等とうの外来がいらい犬けんの特徴とくちょうを除去じょきょして本来ほんらいの秋田あきたマタギ犬けんに近ちかづける努力どりょくが、保存ほぞん会かいを中心ちゅうしんに続つづけられた。改良かいりょう、繁殖はんしょく、指導しどうへの取とり組くみが実みを結むすび、大型おおがた犬いぬ種しゅとしての固定こてい化かが実現じつげんしたが、1955年ねん（昭和しょうわ30年ねん）頃ごろからは、この「一ノ関いちのせき系けい」が秋田あきた犬けんの主流しゅりゅうとなった。やがて出羽いずは系けいの犬いぬは、国内こくないではほぼ完全かんぜんに排除はいじょされることとなった。

一方いっぽう、占領せんりょう軍ぐん兵士へいしの帰国きこくとともにアメリカに渡わたった当時とうじの「秋田あきた犬いぬ」の子孫しそんは、現在げんざい「アメリカン・アキタ」として、アメリカを始はじめ、世界せかい各地かくちに広ひろがっているが、これらはほぼすべてが出羽いずは系けいの血統けっとうであると言いってよい。多おおくの地域ちいきでは、その当時とうじの犬いぬの子孫しそんがそのままに飼かわれており、かつての占領せんりょう軍ぐん兵士へいしは秋田あきた犬けんの中なかでも特とくに体格たいかくの良よい、いわゆる「熊くま顔がお」型がたの秋田あきた犬いぬを持もち帰かえったことより、一ノ関いちのせき系けいが主流しゅりゅうとなった日本にっぽんの秋田あきた犬いぬとは外観がいかんなどがかなり異ことなっているので、独自どくじの犬いぬ種しゅと見みなされている。

例外れいがい的てきに、アメリカ西海岸にしかいがんのみは、1969年ねん（昭和しょうわ44年ねん）に秋田あきた犬いぬ保存ほぞん会かいの支部しぶが作つくられ、毎年まいとしの展覧てんらん会かいや継続けいぞく的てきな指導しどうの結果けっか、日本にっぽんと変かわらなくなっている。

現代げんだい

その後ご、秋田あきた犬けんは全国ぜんこく的てきに飼育しいくされるようになり、2010年代ねんだいに至いたっている。1977年ねん（昭和しょうわ52年ねん）には、秋田あきた犬いぬ保存ほぞん会かい創立そうりつ50年ねんを記念きねんして、日本にっぽんの犬いぬ種しゅ団体だんたいでは唯一ゆいいつの博物館はくぶつかん機能きのうを持もつ「秋田あきた犬いぬ会館かいかん」が大館おおだて市しに建設けんせつされた。

秋田あきた犬けんは、観光かんこう客きゃく誘致ゆうちのシンボル的てき存在そんざいとして扱あつかわれることもあり、2016年ねんに大館おおだて市しで発足ほっそくした観光かんこう地域ちいきづくり法人ほうじん（DMO）は「秋田あきた犬いぬツーリズム」と命名めいめいされた。

2018年ねん4月がつには、飼かい主ぬしの死去しきょなどで放棄ほうきされた秋田あきた犬けんの新あたらしい飼かい主ぬし探さがしなどの拠点きょてん「秋田あきた犬いぬステーション」がエリアなかいち（秋田あきた市し）に開設かいせつされた。

秋田あきた犬けんは飼かい主ぬし以外いがいの市民しみんや観光かんこう客きゃくにも人気にんきがある。秋田あきた県内けんないの展示てんじ施設しせつは2018年ねんに7カ所かしょ増ふえて12カ所かしょとなった。公開こうかいされている犬いぬの過労かろうやストレスといった問題もんだいも起おきており、施設しせつの運営うんえい団体だんたいなどが2018年ねん10月がつに「秋田あきた犬いぬネットワーク会議かいぎ」を設立せつりつして、ノウハウの交換こうかんや、犬いぬの負担ふたんが少すくないふれあい方かたの情報じょうほう発信はっしんなどに取とり組くんでいる。

政治せいじ利用りよう

日本にっぽん維新いしんの会かいの衆議院しゅうぎいん議員ぎいん・遠藤えんどう敬たかしは秋田あきた犬けんのブリーダー（繁殖はんしょく者しゃ）としても有名ゆうめいで、遠藤えんどうの「泉州せんしゅう高師浜たかしのはま荘そう」産さんの秋田あきた犬けんは高たかい評価ひょうかを受うけている。2016年ねんから公益社こうえきしゃ団だん法人ほうじん「秋田あきた犬いぬ保存ほぞん会かい」の代表だいひょう理事りじを務つとめている。遠藤えんどうは国会こっかい議員ぎいんになって以降いこう、大阪おおさか18区く選挙せんきょ区くや重複じゅうふく立候補りっこうほした近畿きんき比例ひれいブロックの有権者ゆうけんしゃに秋田あきた犬いぬを無償むしょうで譲渡じょうとしてきており、公職こうしょく選挙せんきょ法ほう違反いはんが指摘してきされている。

秋田あきた犬いぬをめぐる交流こうりゅう

ヘレン・ケラー

1937年ねん（昭和しょうわ12年ねん）、来日らいにちしていたヘレン・ケラーが秋田あきたを訪おとずれ記念きねんに秋田あきた犬いぬを所望しょもうした。そこで秋田あきた警察けいさつ署しょの小笠原おがさわら巡査じゅんさ部長ぶちょうが連つれてきていた仔犬こいぬが贈おくられた（秋田あきた犬けん「神風かみかぜ号ごう」）。「神風かみかぜ号ごう」は、初はじめてアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくに渡わたった秋田あきた犬けんである。しかし、渡米とべいから2か月げつで神風かみかぜ号ごうは亡なくなってしまったため、再度さいど、1939年ねん（昭和しょうわ14年ねん）に小笠原おがさわら巡査じゅんさ部長ぶちょうから「剣山けんざん号ごう」が贈おくられた。彼女かのじょは1948年ねん（昭和しょうわ23年ねん）の再さい来日らいにち時じに秋田あきたを再訪さいほうして謝意しゃいを表あらわしている。

忠ちゅう犬けんハチ公はちこう

忠ちゅう犬けんハチ公はちこうが縁えんで、秋田あきた県けん大館おおだて市し（ハチの出生しゅっしょう地ち）、東京とうきょう都と渋谷しぶや区く（ハチの暮くらした街まち）、三重みえ県けん津つ市し（飼主かいぬしの上野うえの英三郎えいざぶろうの出身しゅっしん地ち）、山形やまがた県けん鶴岡つるおか市し（逸話いつわを広ひろめるきっかけとなった斎藤さいとう弘吉ひろきちの出身しゅっしん地ち）で自治体じちたい間あいだの交流こうりゅうがある。

秋田あきた犬けんの贈呈ぞうてい

ザギトワらと秋田あきた犬けん「マサル」（2018年ねん5月がつ）

• 1937年ねんと1939年ねんにヘレン・ケラーに計けい2頭とう贈おくられた。
• 2012年ねん（平成へいせい24年ねん）7月がつに、前年ぜんねんの東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさい時どきの支援しえんに対たいする返礼へんれいとして、秋田あきた県けんからメスの子犬こいぬ「ゆめ」がロシア連邦れんぽうのプーチン大統領だいとうりょうに贈おくられた。
• 2017年ねん2月がつに、白はく鵬ほう翔しょうに贈おくられた。
• 2018年ねん5月がつに、平たいら昌あきらオリンピックフィギュアスケート女子じょし金きんメダリストのアリーナ・ザギトワ（ロシア）に秋田あきた犬いぬ保存ほぞん会かいからメスの子犬こいぬ「マサル (Масару)」が贈おくられた。
• 2018年ねん7月がつに、朝あさ青あお龍りゅう明徳あきのりにオスの子犬こいぬの「マサオ」が贈呈ぞうていされた。前述ぜんじゅつの「マサル」のいとこである。

畜犬団体だんたい

秋田あきた犬けんの畜犬団体だんたいは以下いかの通とおり。背景はいけいが灰色はいいろの団体だんたいは現在げんざい活動かつどうしていない。

団体だんたい名めい	通称つうしょう	所在地しょざいち	備考びこう
秋田あきた犬いぬ保存ほぞん会かい	秋保あきう	秋田あきた県けん大館おおだて市し
秋田あきた犬いぬ保存ほぞん協会きょうかい	秋保あきう協きょう	秋田あきた県けん大館おおだて市し	1961年ねんに秋保あきうと合併がっぺい
秋田あきた犬いぬ協会きょうかい	秋あき協きょう	神奈川かながわ県けん鎌倉かまくら市し	2016年ねんに解散かいさん

品評ひんぴょう会かい

5月3日にちに開催かいさいされる品評ひんぴょう会かいでは、審査しんさ基準きじゅんとして「尻尾しっぽが円えんを描えがく」「歯並はならび」「耳みみが立たつか」など60項目こうもくが存在そんざいする。

モチーフ

1953年ねん発行はっこうの2円えん切手きって

• 2円えん普通ふつう切手きっての意匠いしょう
  • 1953年ねん（昭和しょうわ28年ねん）8月がつ25日にち - 1989年ねん（平成へいせい元年がんねん）3月がつ31日にち発行はっこう
  • 1989年ねん（平成へいせい元年がんねん）4月がつ1日にち - 2002年ねん（平成へいせい14年ねん）9月がつ30日にち発行はっこう 刷すり色しょく変更へんこう、“NIPPON”追加ついか
• 平成へいせい18年ねん（2006年ねん）用よう年賀ねんが切手きっての意匠いしょう
  • 2005年ねん（平成へいせい17年ねん）11月15日にち発行はっこう 50円えん郵便ゆうびん切手きって
• 北都銀行ほくとぎんこうのマスコットキャラクター「ほっくん」、及および前身ぜんしんの「うぎんのコロちゃん」は秋田あきた犬けんである。
• 秋田あきた朝日放送あさひほうそうのマスコットキャラクター「ミーチュー」は秋田あきた犬けんがモチーフである。
• 国土こくど交通省こうつうしょう東北とうほく地方ちほう整備せいび局きょく能代のしろ河川かせん国道こくどう事務所じむしょのマスコットキャラクター「たくすくん」「みらいちゃん」は秋田あきた犬けんがモチーフである。
• 秋田あきたふるさと村むらのマスコットキャラクター「ノブ」は秋田あきた犬けんがモチーフである。
• 秋田あきた内陸ないりく縦貫じゅうかん鉄道てつどうAN-8800形かたち気動車きどうしゃ
• ラッピング車両しゃりょう「秋田あきた犬いぬっこ列車れっしゃ」
• もろこし - 秋田あきたの銘菓めいか秋田あきた犬けんがデザインされている
• 秋田あきた県けん出身しゅっしんの漫画まんが家か高橋たかはしよしひろの漫画まんが『白しろい戦士せんしヤマト』の主人公しゅじんこう・ヤマト、『銀ぎん牙きば -流ながれ星ぼし 銀ぎん-』の主人公しゅじんこう・銀ぎんやその続編ぞくへん『銀ぎん牙きば伝説でんせつWEED』の主人公しゅじんこう・ウィードは秋田あきた犬けんである。
• 「太陽たいようの犬いぬ」 - 日本にほんテレビ系列けいれつの秋田あきた犬いぬ親子おやこが主人公しゅじんこうのドラマ
• 「スノープリンス 禁きんじられた恋こいのメロディ」 - 秋田あきた犬いぬと主人公しゅじんこうの少年しょうねんの映画えいが
• 「HACHI 約束やくそくの犬いぬ」 - アメリカ版ばんハチ公はちこう
• 平治へいじ (犬いぬ) - 山やまのガイド犬けんとして「奇跡きせきの山やま さよなら、名犬めいけん平治へいじ」で映画えいが化かされた秋田あきた犬いぬ
• わさお - 実在じつざいした秋田あきた犬けん。「ぶさかわ犬いぬ」として人気にんきがあり、テレビ番組ばんぐみに取とり上あげられたほか、映画えいがの題材だいざいにもなった。
• 秋田あきた県けんのボランティアキャラ、「エイト」「エール」「エース」は秋田あきた犬けんである。
• 秋田あきたダイハツ販売はんばいのマスコットキャラクター「ダイハチ」は秋田あきた犬けんである。
• Jリーグジェフユナイテッド市原いちはら・千葉ちばのマスコット「ジェフィ」「ユニティ」は秋田あきた犬けんの兄弟きょうだいである。

関連かんれん項目こうもく

• 犬いぬの品種ひんしゅ一覧いちらん
• 危険きけん犬いぬ種しゅ
• 土佐とさ闘犬とうけん
• 老ろう犬いぬ神社じんじゃ
• 犬いぬっこまつり

外部がいぶリンク

• 株式会社かぶしきがいしゃMeta Akita
• 公益社こうえきしゃ団だん法人ほうじん 秋田あきた犬いぬ保存ほぞん会かい
• 『秋田あきた犬いぬ』 - コトバンク
• 秋田あきた犬けんの性格せいかくや特徴とくちょう、価格かかくから飼かい方かたまで - わんちゃんホンポ
• 秋田あきた犬いぬ - みんなの犬いぬ図鑑ずかん
• ６０年ねん前まえの秋田あきた犬いぬ、まるで洋よう犬けんの姿すがた…動画どうが保存ほぞんへ資金しきん募集ぼしゅう（朝日新聞あさひしんぶんデジタル記事きじ2019年ねん2月がつ1日にち）