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顔かお回かい

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曖昧さ回避 「顔かお淵ふち」はこの項目こうもくへ転送てんそうされています。顔かお淵ふちは『論語ろんご』の篇へん名めい（顔かお淵ふち篇へん）のことも指さします。
顔かお回かい
『至いたり聖せい先賢せんけん半身はんしん像ぞう』より、顔かお回かい
中国ちゅうごく語ご
繁体字はんたいじ 顏かお回かい
簡体字かんたいじ 颜回
発音はつおん記号きごう
標準ひょうじゅん中国語ちゅうごくご
漢語かんご拼音Yán Huí
別名べつめい
繁体字はんたいじ 顏かお淵ふち
簡体字かんたいじ 颜渊
発音はつおん記号きごう
標準ひょうじゅん中国語ちゅうごくご
漢語かんご拼音Yán Yuān
旧きゅう字体じたい
旧きゅう字体じたい顏かお囘、顏かお淵ふち

顔かお 回かい（がん かい、紀元前きげんぜん521年ねん - 紀元前きげんぜん490年ねん頃ころ[1][2]）は、孔子こうしの弟子でしの一人ひとり。尊称そんしょうは顔かお子こ、諱いみなは回かい、字じは子こ淵ふち（しえん）、ゆえに顔かお淵ふち（がんえん）ともいう[3]。後世こうせいの儒教じゅきょうでは四聖しせいの一人ひとり「復ふく聖きよし」として崇敬すうけいされる[4]。魯の出身しゅっしん[3]。

孔あな門もん十じゅう哲あきらの一人ひとりで、随一ずいいちの秀才しゅうさい。孔子こうしにその将来しょうらいを嘱望しょくぼうされたが、孔子こうしに先立さきだって早はや逝した。顔かお回かいは名誉めいよ栄達えいたつを求もとめず、ひたすら孔子こうしの教おしえを理解りかいし実践じっせんすることを求もとめた。その暮くらしぶりは極きわめて質素しっそであったという。このことから老ろう荘そう思想しそうと結むすび付つけられることもある。

人物じんぶつ[編集へんしゅう]

清貧せいひん[編集へんしゅう]

顔かお回かいの暮くらしぶりは極きわめて質素しっそであったという。『論語ろんご』雍也篇へんなどによれば、わずか一いち杯はいの飯めしと汁しるだけの食事しょくじをとり（「箪食瓢ひさご飲いん」「一いち箪の食しょく一瓢いっぴょうの飲いん」[5]）、狭せまくてみすぼらしい町まちに住すんだ（「在ざい陋巷」[6]）という。

孔子こうしの高弟こうてい[編集へんしゅう]

『論語ろんご』には顔かお回かいへの賛辞さんじがいくつか見みられる。たとえば孔子こうしが「顔かお回かいほど学がくを好このむ者ものを聞きいたことがない」（雍也第だい六ろく、先進せんしん第だい十じゅう一いち）や同門どうもんの秀才しゅうさい子こ貢みつぎが、「私わたしは一いちを聞きいて二にを知しる者もの、顔かお回かいは一いちを聞ききて十じゅうを知しる者もの」（公おおやけ冶長第だい五ご）、と述のべたことが記載きさいされている。顔かお回かいは孔子こうしから後継こうけい者しゃとして見みなされていた。それだけに早世そうせいした時ときの孔子こうしの落胆らくたんは激はげしく、孔子こうしは「ああ、天てんわれをほろぼせり」（先進せんしん第だい十じゅう一いち）と慨嘆がいたんした。 顔かお回かいが貧まずしく、食物しょくもつを手てに入いれるのすら難むずかしかったとき、欲よくのない顔かお回かいに「聖人せいじんの道みちに庶い」と評価ひょうかし（先進せんしん第だい十じゅう一いち）[7]、「顔かお回かいは私わたしを助たすけることはせず、ただ黙だまっているがしっかりと私わたしを理解りかいしていると評価ひょうかした（先進せんしん第だい十じゅう一いち）[7]。

このように『論語ろんご』の先進せんしん第だい十じゅう一いちには顔かお回かいに関かんする記述きじゅつが多おおく、中なかでも顔かお回かいが亡なくなった「顔かお回かい死しす」で始はじまる箇所かしょが数箇所すうかしょ登場とうじょうし、これもまた孔子こうしが顔かお回かいに対たいして評価ひょうかしていた証拠しょうこと言いえる[8]。

『史記しき』仲なか尼に弟子でし列伝れつでん第だい七ななによると、好学こうがくであることに加くわえて「怒いかりを遷うつさず、過あやまちをふたたびせず」と孔子こうしに評ひょうされている。また、29歳さいで頭髪とうはつがすべて白髪はくはつだったという[9]。

『呂りょ氏し春秋しゅんじゅう』審しん分ぶん覧らん任にん数すう篇へんには、「陳ひね蔡之厄やく」の際さいの「顔かお回かい攫食」説話せつわが伝つたわる。その他た、『荀子』哀あい公こう篇へんと子道しどう篇へん、『韓かん詩し外伝がいでん』巻まき二に、『新しん序じょ』雑事ざつじ五ごなどにも登場とうじょうする[10]。

名称めいしょう[編集へんしゅう]

『説せつ文ぶん解かい字じ』によれば「淵ふち」という漢字かんじには「回かい水すい」（滞留たいりゅうする水みず[11]）という意味いみがあるため、顔かお回かいの諱いみなと字じは対応たいおうしている[12]。

道家みちや・新出にいで文献ぶんけんとの関係かんけい[編集へんしゅう]

清貧せいひんを重おもんじた人物じんぶつ像ぞうなどから、顔かお回かいはしばしば道家みちやと結むすび付つけられる。玄げん学がくの時代じだいに書かかれた『論語ろんご集しゅう解かい』では、先進せんしん第だい十じゅう一いちに出でてくる「空そら」字じに関かんして、顔かお回かいを道家どうかの人物じんぶつであるかのように解釈かいしゃくしている[13][14]。

『荘そう子こ』では、孔子こうしと顔かお回かいの二人ふたりの会話かいわがしばしば描えがかれ、特とくに大宗たいそう師し篇へんでは、二人ふたりが儒家じゅか思想しそうを否定ひていして道家どうか思想しそうを肯定こうていする、という会話かいわが描えがかれる。このことにちなみ、郭沫若かくまつじゃくは、荘そう周しゅうが儒家じゅか八はち派はの一派いっぱ「顔かお氏し之の儒」出身しゅっしんの人物じんぶつであると推測すいそくしている[15]。

20世紀せいき末すえ、顔かお回かいが登場とうじょうする新出にいで文献ぶんけんがいくつか発見はっけんされた。その例れいとして、上うえ博ひろし楚すわえ簡『顔かお淵ふち問とい於孔子こ』[16]、同どう『君子くんし為ため礼れい』[17]がある。この内うち『顔かお淵ふち問とい於孔子こ』は、その道家どうか的てき内容ないようから、荘そう周しゅう後学こうがくの著作ちょさくとする推測すいそくがある[15]。

受容じゅよう[編集へんしゅう]

顔かお回かいをまつる顔かお廟びょう（英語えいご版ばん）、山東さんとう省しょう曲きょく阜市

後こう漢かん代だいには、王おう充たかし『論ろん衡』（主おもに幸こう偶・命いのち義よし・偶会篇へん）、鄭てい玄げん『論語ろんご注ちゅう』、禰衡『顔かお子こ碑ひ』、『後こう漢書かんしょ』孔あな融とおる伝でん所載しょさいの禰衡と孔あな融とおるの会話かいわなどで顔かお回かいが言及げんきゅうされており、それぞれの顔かお回かい像ぞうが窺うかがえる[18]。特とくに『論ろん衡』では、従来じゅうらいの文献ぶんけんに見みられない顔かお回かい死去しきょ説話せつわが語かたられる[19]。

三国みくに魏たかし以降いこう、釈しゃく奠において孔子こうしに従したがえ祀まつされ[3]、また後世こうせいでは、四聖しせいの一人ひとり「復ふく聖きよし」として崇敬すうけいされる[4]。山東さんとう省しょう曲きょく阜市には、顔かお回かいをまつる廟びょう（顔かお廟びょう（英語えいご版ばん）。復ふく聖廟せいびょうともいう）がある[20]。

日本にっぽんの千利休せんのりきゅうは、質素しっそを重おもんじるわび茶ちゃの精神せいしんから、茶道具ちゃどうぐの瓢ひさご花はな入いれに『顔かお回かい』の銘めいを与あたえた[21]。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 井ノ口いのぐち哲也てつや『後こう漢かん経学けいがく研究けんきゅう序説じょせつ』勉つとむ誠まこと出版しゅっぱん、2015年ねん。ISBN 978-4585210238。 （第だい七なな章しょう「顏かお囘像の變遷へんせん」）
  • 郭沫若かくまつじゃく、野原のはら四郎しろう・佐藤さとう武敏たけとし・上原うえはら淳あつし道どう訳わけ 『中国ちゅうごく古代こだいの思想家しそうかたち』上下じょうげ巻まき、岩波書店いわなみしょてん。上うえ: 1953年ねん, doi:10.11501/3007872。下した: 1957年ねん, doi:10.11501/2970897。（原著げんちょ: 郭沫若かくまつじゃく『十じゅう批判ひはん書しょ（中国語ちゅうごくご版ばん）』群ぐん益えき出版しゅっぱん社しゃ、1945年ねん）

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]
  1. ^ 『中国人ちゅうごくじん名めい事典じてん』ISBN 4-8169-1164-2
  2. ^ 『中国ちゅうごく神話しんわ・伝説でんせつ大だい事典じてん』ISBN 4-469-01261-0
  3. ^ a b c 宇野うの茂彦しげひこ・小学館しょうがくかん　日本にっぽん大だい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ)『顔かお回かい』 - コトバンク
  4. ^ a b “大成たいせい殿どのに祀まつられているもの｜史跡しせき湯島ゆじま聖堂せいどう｜公益こうえき財団ざいだん法人ほうじん斯文しぶん会かい”. www.seido.or.jp. 2020年ねん12月7日にち閲覧えつらん。
  5. ^ 『箪食瓢ひさご飲いん』 - コトバンク
  6. ^ 『陋巷』 - コトバンク
  7. ^ a b 石本いしもと道明みちあき、青木あおき洋司ようじ『論語ろんご　朱しゅ熹の本文ほんぶん訳やくと別べつ解かい』明徳めいとく出版しゅっぱん社しゃ、2017年ねん11月25日にち。ISBN 978-4-89619-941-3。 
  8. ^ 金谷かなや治おさむ『孔子こうし』 4巻かん、講談社こうだんしゃ〈人類じんるいの知的ちてき遺産いさん〉、1980年ねん8月がつ10日とおか、234-238頁ぺーじ。 
  9. ^ 司馬しば遷 著ちょ、箭内やない亘わたる 訳やく『史記しき列伝れつでん 上巻じょうかん』 経子けいこ史し部ぶ第だい15巻かん（第だい4版はん）、国民こくみん文庫ぶんこ刊行かんこう会かい〈国くに訳やく漢文かんぶん大成たいせい〉、1924年ねん、60頁ぺーじ。doi:10.11501/926465。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/926465/35。2020年ねん1月がつ16日にち閲覧えつらん。 
  10. ^ 井ノ口いのぐち 2015, p. 232-234.
  11. ^ 大渕おおふち貴之たかゆき「避諱による唐とう代だい類書るいしょの部立ぶだて改変かいへんについて——『藝文げいぶん類聚るいじゅう』における「改あらため字じ」を中心ちゅうしんに」『九州きゅうしゅう中國ちゅうごく學會がっかい報ほう』第だい46巻かん、2007年ねん、6頁ぺーじ。 
  12. ^ 段だん玉だま裁さい『説せつ文ぶん解かい字じ注ちゅう』水みず部ぶ「淵ふち回かい水すい也」の注文ちゅうもん「顔かお回かい字じ子こ淵ふち」 “說せつ文ぶん解かい字じ注ちゅう 第だい1118頁ぺーじ (圖書館としょかん) - 中國ちゅうごく哲學てつがく書しょ電子でんし化か計けい劃” (中国ちゅうごく語ご). ctext.org. 2021年ねん3月がつ17日にち閲覧えつらん。
  13. ^ 湯浅ゆあさ邦弘くにひろ編へん『概説がいせつ 中国ちゅうごく思想しそう史し』ミネルみねるヴァ書房ぁしょぼう、2010年ねん、ISBN 9784623058204。（南澤みなみさわ良彦よしひこ著ちょ「第だい4章しょう 魏ぎ晋すすむ南北なんぼく朝あさ・隋ずい唐とう」）70頁ぺーじ。
  14. ^ 仲畑なかはた, 信しんじ「王おう弼『論ろん語釈ごしゃく疑うたぐ』について」『中国ちゅうごく思想しそう史し研究けんきゅう』第だい19巻かん、1996年ねん12月25日にち、107頁ぺーじ、doi:10.14989/234376、ISSN 0388-3086。 
  15. ^ a b 井ノ口いのぐち 2015, p. 233.
  16. ^ 湯浅ゆあさ邦弘くにひろ「上うえ博ひろし楚すわえ簡『顔かお淵ふち問とい於孔子こ』と儒家じゅか系けい文献ぶんけん形成けいせい史し」『中国ちゅうごく研究けんきゅう集しゅう刊かん』第だい55巻かん、大阪大学おおさかだいがく中国ちゅうごく学会がっかい、2012年ねん、doi:10.18910/58712。 
  17. ^ 浅野あさの裕一ひろいち「上うえ博ひろし楚すわえ簡『君子くんし爲ため禮れい』と孔子こうし素もと王おう説せつ」『中国ちゅうごく研究けんきゅう集しゅう刊かん』第だい41巻かん、大阪大学おおさかだいがく中国ちゅうごく学会がっかい、2006年ねん。 
  18. ^ 井ノ口いのぐち 2015, p. 259-262.
  19. ^ 井ノ口いのぐち 2015, p. 259.
  20. ^ 『顔かお廟びょう』 - コトバンク
  21. ^ “瓢ひさご花はな入いれ 顔がお回かい”. www.eiseibunko.com. 永えい青あお文庫ぶんこ美術館びじゅつかん. 2021年ねん3月がつ17日にち閲覧えつらん。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

徳行とっこう
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政事せいじ
文学ぶんがく
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