馬うま岱

馬うま岱
五丈原ごじょうげん諸しょ葛かずら亮あきら廟びょうの馬うま岱像
蜀しょく漢かん 陳ちん倉くら侯こう・平ひら北きた将軍しょうぐん
死去しきょ	建けん興きょう12年ねん（234年ねん）以降いこう
拼音	Mǎ Dài
主君しゅくん	劉りゅう備→劉りゅう禅ぜん

馬うま 岱（ば たい）は、中国ちゅうごく三さん国こく時代じだいの蜀しょく漢かんに仕つかえた武将ぶしょう。

生涯しょうがい

従兄じゅうけいの馬うま超ちょうは蜀しょく漢かんの驃騎将軍しょうぐん。章あきら武たけ2年ねん（222年ねん）に死去しきょする際さい、主君しゅくんの劉りゅう備に対たいし、「私わたしの一族いちぞく200人にん余あまりはほとんど曹操そうそうに殺ころされてしまいましたが、従弟じゅうていの馬うま岱のみが生いき残のこっています。彼かれを馬うま氏しの祭祀さいしを守まもらせる者ものとして陛下へいかにお預あづけします」と言いい遺のこした。

建けん興きょう12年ねん（234年ねん）8月がつ、五丈原ごじょうげんの戦たたかいからの撤退てったいについて、魏ぎ延のべと楊儀が主導しゅどう権けんを争あらそった。魏ぎ延のべの軍ぐんが形勢けいせい不利ふりになり逃走とうそうすると、楊儀の命いのちを受うけた馬うま岱がこれを追撃ついげきし、魏ぎ延のべを斬殺ざんさつした。

建けん興きょう13年ねん（235年ねん）、馬うま岱は兵へいを率ひきいて魏たかしに攻せめ込こんだが、牛うし金きんの軍ぐんに敗やぶれ千せん余あまりの損害そんがいを出だして退却たいきゃくした。

馬うま岱の官位かんいは平ひら北きた将軍しょうぐん・陳ちん倉くら侯こうにまで昇のぼった。

清しん代だいに編纂へんさんされた『山西さんせい通とおる志こころざし』には、馬うま岱の逸話いつわが1つ記載きさいされている。河東かとう郡ぐん大だい陽ひ県けんを東ひがしへ45里さとの地点ちてんにある清せい渓けいの近ちかくに石いし砦とりでがあり、その壁かべに「将軍しょうぐん黄き巌いわお」の四よん字じが刻きざまれている。そして県けん志こころざしには「黄き巌いわおとは、馬うま岱である。幼おさなくして父ちちを亡なくし、母ははと黄き氏しのもとに身みを寄よせていた時ときの名なが黄き巌いわおであった。彼かれは馬飼まかいいを生業せいぎょうとしていたが、成長せいちょうすると馬うま超ちょうと合流ごうりゅうし、馬うま姓せいに戻もどした」と記しるされているという。

三国志さんごくし演義えんぎにおける馬うま岱

清きよし代だいの書物しょもつに描えがかれた馬うま岱

小説しょうせつ『三国志さんごくし演義えんぎ』では脇役わきやくながら活躍かつやくの多おおい人物じんぶつとなっている。

曹操そうそうの馬うま騰あが謀殺ぼうさつの時とき、後陣ごじんの馬うま岱は命いのち辛からし々生いき残のこり、商人しょうにんに身みを窶やつし、馬うま騰あが・馬うま鉄てつ・馬うま休きゅう討死うちじにの報ほうを馬うま超ちょうに告つげる。馬うま超ちょう・韓かん遂とげと共ともに行動こうどうし反乱はんらんを起おこすが、賈詡の離間りかん策さくに嵌はまり、馬うま超ちょうと共ともに羌族ぞくの地ちに逃のがれている。

張ちょう魯の下したに身みを寄よせた後のち、漢かん中ちゅうに攻せめ込こんで来きた劉りゅう備軍ぐんと戦たたかい、配下はいかの魏ぎ延のべを退しりぞける。ここで魏ぎ延のべを退しりぞけるのは後ごの場面ばめんの伏線ふくせんとなっているようである。 また、馬うま超ちょうとの戦たたかいを求もとめてきた張ちょう飛ひとも対峙たいじするが、一蹴いっしゅうされ馬うま超ちょうの出番でばんとなっている。 その後ご、馬うま超ちょうが劉りゅう備つぶさに降伏ごうぶくすると同おなじく従したがっている。馬うま超ちょう亡なき後あとは後事こうじを託たくされ、平ひら北きた将軍しょうぐんとなって諸しょ葛かずら亮あきらに随したがい南みなみ征ただしや北きた伐きに参加さんかし、蜀しょくの忠臣ちゅうしんとして仕つかえる。

北きた伐き時ときに、諸しょ葛かずら亮あきらが火ひ計けいで司馬しば懿諸共ども魏ぎ延のべを排除はいじょしようとしたが、運悪うんわるく魏ぎ延のべには火ひ計けいがかからず策さくが失敗しっぱいしている。この時とき、諸しょ葛かずら亮あきらは魏ぎ延のべを収おさめるために火ひ計けいを指揮しきさせた馬うま岱を杖つえ刑けいにさせ、直後ちょくごに樊建を派遣はけんして馬うま岱を慰なぐさめている。次つぎの排除はいじょ策さくとして苦肉くにく計けいを用もちい魏ぎ延のべ配下はいかとさせている。

馬うま岱は諸しょ葛かずら亮あきらの臨終りんじゅう時じ、彼かれから密ひそかに魏ぎ延のべが反乱はんらんを起おこした際さいの策さくを与あたえられている。諸しょ葛かずら亮あきらの死後しご、魏ぎ延のべと楊儀が反目はんもくした際さいには、偽いつわって魏ぎ延のべに荷担かたんしている。楊儀配下はいかの何なに平ひらめ（王おう平たいら）との戦たたかいの後のち、魏ぎに降ふろうとした魏ぎ延のべを押おしとどめ、漢かん中ちゅうに攻せめ込こむことを進言しんげんする。南みなみ鄭てい城しろで姜きょう維・楊儀の軍ぐんと対峙たいじした時ときは、楊儀が魏ぎ延のべに向むかって「『わしを殺ころせる者ものがあるか』と、三さん度ど叫さけべば漢かん中ちゅうをお譲ゆずり致いたそう」と告つげるが、馬うま岱は魏ぎ延のべが一度いちど叫さけぶなり、その言葉ことばが終おわらないうちに「俺おれが殺ころしてやる」と叫さけんで、魏ぎ延のべを背後はいごから斬ぎり殺ころしている。これは諸しょ葛かずら亮あきらから、魏ぎ延のべが叫さけんだら不意ふいを打うって斬きるように、と命めいじられていたからである。成都せいとに帰還きかん後ご、馬うま岱は反逆はんぎゃく者しゃの魏ぎ延のべを討うち取とった功績こうせきにより、彼かれの爵位しゃくいを劉りゅう禅ぜんから賜たまわることになる。