おにしゃ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

おにしゃ(きしゃ、Kueiche)は、中国ちゅうごくつたわるかいとり

あずますすむ小説しょうせつしゅうさがせかみ』には「羽衣はごろもおんな」として、以下いかのように記述きじゅつされている。江西えにししょうのあるおとこが、すうにんおんなつけた。1人ひとりおんなてたころもがあったので、おとこがそれをかくしておんなたちに近寄ちかよると、おんなたちはとりとなってったが、もうころもかくされた1人ひとりだけはげられなかった。おとこ彼女かのじょつまとし、のち子供こどもをもうけた。のちおんなかくされていたもうころもつけ、とりとなってり、さらにのちべつころもって子供こどもたちをむかえにて、みなとりとなってった[1]西にしすすむだいしょげんちゅう』によれば、この羽衣はごろもおんなのちに「おにしゃ」とばれるようになったという[2]

太平たいへい御覧ごらん』には、ひとしくにげん山東さんとうしょう)にあたまを9つあかとりがおり、カモて、9つのあたまみなくとある[3]

とうだいの『みねひょうろくこと』によれば、おにしゃは9つのあたまとりで、みねがい中国ちゅうごく南部なんぶからきたベトナム北部ほくぶかけて)におおくいるもので、人家じんかはいんで人間にんげんたましいうばう。あるときに9のあたまのうちのひとつをいぬまれたため、つねにそのくびからしたたらせており、そのびたいえ不幸ふこうさいなまれるという[3]

正字せいじどおり』では「鶬虞(そうぐ)」の記述きじゅつされている。「きゅうとうとり(きゅうとうちょう)」ともいい、ミミズク一種いっしゅである鵂鶹(きゅうりゅう)にたもので、大型おおがたのものでは1たけあまり(やく3メートル)のつばさち、ひるにはものがえないが、よるにはえ、ひかりるとがくらんで墜落ついらくしてしまうという[3]

みなみそうだいしょひとし東野とうの』では、おにしゃは10あたまのうちのひとつをいぬられ、人家じんかしたたらせてがいをなすという。そのためにおにしゃごえいたものは、いえあかりをし、いぬをけしかけてえさせることではらったという[3]

また、おにしゃとはまったくべつ伝説でんせつとして、ひと子供こどもうばって養子ようしにするといわれるかみおんなおんな岐(じょき)」がある。『すわえ』には「おんな岐はおっともいないのになぜ9にんもの子供こどもがいるのか」とあり、このいいつたえが前述ぜんじゅつの『さがせかみ』でのおにしゃ子供こどもにまつわるはなし習合しゅうごうし、さらに「きゅう」が「きゅうしゅ」とあやまってつたえられたことから、おにしゃが9つのあたまとりとしてつたえられたものとられている[3]

前述ぜんじゅつの『げんちゅう』では、これらのおにしゃ羽衣はごろもおんなおんな岐の伝承でんしょう統合とうごうしたかたちで「しゅうととり(こかくちょう)」という鬼神きじんとして記載きさいされているため[3][2]書籍しょせきによってはおにしゃしゅうととり別名べつめいとされていることもある[4][5]あたまの1つはいぬまれたのではなく、しゅう王朝おうちょう宰相さいしょうしゅうこうだん庭師にわしおとされたというせつもある[5]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ たから竹田たけだあきらやくさがせかみ平凡社へいぼんしゃ東洋文庫とうようぶんこ〉、1979ねん、270ぺーじISBN 978-4-582-80010-4 
  2. ^ a b かく ちょげんちゅう」、竹田たけだあきら黒田くろだ真美子まみこ へん中国ちゅうごく古典こてん小説しょうせつせん』 2かん明治めいじ書院しょいん、2006ねん、301-303ぺーじISBN 978-4-625-66343-7 
  3. ^ a b c d e f 多田ただ克己かつみひゃくおに解読かいどく講談社こうだんしゃ講談社こうだんしゃ文庫ぶんこ〉、2006ねん、29-33ぺーじISBN 978-4-06-275484-2 
  4. ^ 草野くさのたくみ幻想げんそう動物どうぶつ事典じてんしん紀元きげんしゃ、1997ねん、100ぺーじISBN 978-4-88317-283-2 
  5. ^ a b 山北やまきたあつし佐藤さとう俊之としゆき監修かんしゅう悪魔あくま事典じてんしん紀元きげんしゃ〈Truth In Fantasy〉、2000ねん、108-109ぺーじISBN 978-4-88317-353-2