黄き巣す

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黄き巣す
斉ひとし
皇帝こうてい
『残ざん唐とう五ご代だい史し演義えんぎ』
王朝おうちょう 斉ひとし
在位ざいい期間きかん 878年ねん - 884年ねん
都城みやこのじょう 長安ながやす
姓せい・諱いみな 黄き巣す
諡号しごう 承うけたまわ天てん応おう運うん啓けい聖せい睿文宣せん武ぶ皇帝こうてい
生年せいねん 大和やまと9年ねん（835年ねん）
没年ぼつねん 金きむ統みつる5年ねん6月17日にち
（884年ねん7月がつ13日にち）
后妃こうひ 曹氏
年号ねんごう 王おう霸 : 878年ねん - 880年ねん
金きむ統みつる : 880年ねん - 884年ねん
黄き巣す軍ぐんの進路しんろ

黄き 巣す（こう そう）は、唐とう末すえの反乱はんらん指導しどう者しゃ。874年ねんから10年間ねんかん、全土ぜんどを転戦てんせんしながら反乱はんらんを指揮しきした。

この一連いちれんの大乱たいらんを黄き巣すの名なをとって黄き巣すの乱らんと呼よぶ。黄き巣すの乱らんにより全国ぜんこく王朝おうちょうとしての唐とうは実質じっしつ的てきに滅ほろび、以後いごは各地かくちに割拠かっきょする軍閥ぐんばつの中なかで長安ながやす一帯いったいをかろうじて治おさめる一いち地方ちほう政権せいけんに転落てんらくする。

生涯しょうがい[編集へんしゅう]

「黄き巣すの乱らん」も参照さんしょう

黄き巣すは曹州冤句県けん（現在げんざいの山東さんとう省しょう菏沢市し牡丹ぼたん区く）の出身しゅっしん[1]。若わかい頃ころは騎射きしゃを良よくし任侠にんきょうを好このんでいた。一方いっぽうで学問がくもんに励はげみ、何なん度どか進士しんしに挙あげられたが科挙かきょには落第らくだいして、塩しお賊ぞく（私わたし塩しおの密売みつばい人じん）となった[2]。

乾いぬい符ふ元年がんねん（874年ねん）、同おなじく塩しお賊ぞくだった王おう仙せん芝しばが数すう千せんの衆しゅうをもって挙兵きょへいすると、黄き巣すも数すう千せんの衆しゅうを率ひきいて、これに参加さんかし、やがて反乱はんらん軍ぐんの中心ちゅうしん人物じんぶつの一人ひとりになっていった[3][4]。黄き巣すと王おう仙せん芝しばは特定とくていの根拠地こんきょちは持もたず、山東さんとう・河南かなん・安徽あんきを略奪りゃくだつしては移動いどうという行動こうどうを繰くり返かえした[2][5]。876年ねんに唐とうから懐柔かいじゅう策さくとして王おう仙せん芝しばだけに官僚かんりょうのポストが示しめされたが、これに黄き巣すが反対はんたいしたために二に人にんは分裂ぶんれつし[6]、乾いぬい符ふ5年ねん（878年ねん）に王おう仙せん芝しばは官軍かんぐんに敗やぶれて戦死せんしした[6][7]。

その残党ざんとうを合あわせた黄き巣す軍ぐんは江南えなへと向むかうが両りょう浙・福建ふっけんを経へて、879年ねんに広州こうしゅうへと入はいり[6][7]、現地げんちのアラビア商人しょうにんなどの外国がいこく人じん商人しょうにんを多数たすう殺害さつがいした[6]。その後ご、黄き巣す軍ぐんは北きたへ帰かえることを目指めざし、西にしの桂かつら州しゅうから潭州を経由けいゆして長江ちょうこうを渡わたるも現地げんちの藩はん鎮軍に大敗たいはいして[8]、再ふたたび長江ちょうこうを南みなみに渡わたって東ひがしへと進路しんろを変かえた[9][8]。

官軍かんぐんの虚きょを突ついて[9]、采さい石せき[8]で長江ちょうこうを渡わたり、そこから洛陽らくようの南みなみの汝なんじ州しゅうに入はいった[9][8]。ここで自みずから天てん補ほ平均へいきん大将軍だいしょうぐんを名乗なのる[9]。同年どうねんの秋あきに洛陽らくようを陥落かんらくさせる[9][8]。さらに西にしへ進軍しんぐんし、長安ながやすの東ひがしの守まもりである潼関を突破とっぱし、その5日にち後ごには長安ながやすを占領せんりょうした[10][11]。唐とうの皇帝こうてい僖宗は成都せいとへと避難ひなんした。

黄き巣すは長安ながやすで皇帝こうていに即位そくいし、国号こくごうを大だい斉ひとしとし、金きむ統みつると改元かいげんした[10][12]。長安ながやすに入城にゅうじょうした後のちの黄き巣す軍ぐんは貧民ひんみんがいればこれに施ほどこしをしたが、官吏かんりや富豪ふごうを憎にくんで略奪りゃくだつを行おこない、黄き巣すも統御とうぎょできないほどであった[12]。一方いっぽうで唐とうの三さん品ひん以上いじょうの高官こうかんは追放ついほうしたが、四よん品ひん以下いかの官僚かんりょうはその職しょくに残のこした。貧民ひんみんや群盗ぐんとう出身しゅっしんの黄き巣す軍ぐんの兵士へいしたちに官僚かんりょうとしての仕事しごとが出来できるわけはないので、唐とうの官僚かんりょうをそのまま採用さいようせざるをえないのであった[13]。

その後ご、黄き巣す軍ぐんには深刻しんこくな食糧しょくりょう問題もんだいが生しょうじた[14]。元々もともと長安ながやすの食料しょくりょう事情じじょうは非常ひじょうに悪わるく、江南こうなんからの輸送ゆそうがあって初はじめて成なり立たっていたのである[15]。長安ながやすを根拠こんきょとして手てに入いれた黄き巣す軍ぐんだったが、それによりかつてのように攻せめられれば逃にげるという行動こうどうが取とれなくなり、他たの藩はん鎮勢力りょくにより包囲ほういされ、食料しょくりょうの供給きょうきゅうが困難こんなんとなった[14]。長安ながやす周辺しゅうへんでは過酷かこくな収奪しゅうだつが行おこなわれ、穀物こくもつ価格かかくは普段ふだんの1000倍ばいとなり、食しょく人じんが横行おうこうした[14]。この状況じょうきょうで882年ねん、黄き巣す軍ぐんの同どう州しゅう防禦ぼうぎょ使しであった朱しゅ温あつし（後ごの朱しゅ全ちょん忠ただし）は黄き巣す軍ぐんに見切みきりを付つけ官軍かんぐんに投降とうこうした[14]。さらに突厥沙すな陀族出身しゅっしんの李り克かつ用ようが大軍たいぐんを率ひきいて黄き巣す討伐とうばつに参加さんか[14]。

883年ねんに黄き巣す軍ぐんは李り克かつ用よう軍ぐんを中核ちゅうかくとする唐とう軍ぐんに大敗たいはい[14]。もはや維持いじするのが困難こんなんになった長安ながやすを黄き巣す軍ぐんは退去たいきょ[14][16]し、河南かなんへ入はいるが、ここで李り克かつ用ようの追撃ついげきを受うけて再ふたたび大敗たいはい。黄き巣す軍ぐんは壊滅かいめつし、泰山たいざん付近ふきんの狼おおかみ虎谷とらやで黄き巣すは外そと甥おいの林はやし言げんの介錯かいしゃくのもと自害じがいして果はてた[17][18]。884年ねん6月のことで、10年ねんに渡わたった黄き巣すの乱らんは終結しゅうけつした[17][19]。

現在げんざいの中国ちゅうごくでは、黄き巣すは農民のうみん反乱はんらんの指導しどう者しゃとして、明あきら末すえの李り自じ成なりとともに高たかく評価ひょうかされている。

詩し[編集へんしゅう]

黄き巣すはいくつか漢詩かんしも残のこしており、『題だい菊花きっか（菊花きっかに題だいす）[1]』・『詠えい菊きく（菊きくを詠えいず）[2]』などで反乱はんらんへの意気込いきごみを謡うたっている。

登場とうじょう作品さくひん[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 氣賀きが澤さわ 2005, p. 134.
  2. ^ a b 窪くぼ添 et al. 1996, p. 478.
  3. ^ 窪くぼ添 et al. 1996, p. 477.
  4. ^ 布目ぬのめ & 栗原くりはら 1997, p. 436.
  5. ^ 布目ぬのめ & 栗原くりはら 1997, p. 437.
  6. ^ a b c d 窪くぼ添 et al. 1996, p. 480.
  7. ^ a b 布目ぬのめ & 栗原くりはら 1997, p. 438.
  8. ^ a b c d e 布目ぬのめ & 栗原くりはら 1997, p. 441.
  9. ^ a b c d e 窪くぼ添 et al. 1996, p. 481.
  10. ^ a b 窪くぼ添 et al. 1996, p. 482.
  11. ^ 布目ぬのめ & 栗原くりはら 1997, pp. 441–442.
  12. ^ a b 布目ぬのめ & 栗原くりはら 1997, p. 442.
  13. ^ 窪くぼ添 et al. 1996, pp. 482–483.
  14. ^ a b c d e f g 窪くぼ添 et al. 1996, p. 483.
  15. ^ 窪くぼ添 et al. 1996, p. 346.
  16. ^ 布目ぬのめ & 栗原くりはら 1997, p. 446.
  17. ^ a b 窪くぼ添 et al. 1996, p. 484.
  18. ^ 布目ぬのめ & 栗原くりはら 1997, pp. 446–447.
  19. ^ 布目ぬのめ & 栗原くりはら 1997, p. 447.

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

史書ししょ[編集へんしゅう]

中国語ちゅうごくご版ばんウィキソースに本ほん記事きじに関連かんれんした原文げんぶんがあります。
中国語ちゅうごくご版ばんウィキソースに本ほん記事きじに関連かんれんした原文げんぶんがあります。

近きん・現代げんだい[編集へんしゅう]

  • 布目ぬのめ, 潮しお渢、栗原くりはら, 益男ますお『隋ずい唐から帝国ていこく』（初版しょはん）講談社こうだんしゃ〈講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ〉、1997年ねん。ISBN 4061593005。 
  • 窪くぼ添, 慶けい文ぶん、關せき尾お, 史郎しろう、中村なかむら, 圭けい爾なんじ、愛宕あたご, 元もと、金子かねこ, 修一しゅういち 著しる、池田いけだ温あつし 編へん『中国ちゅうごく史し 三さん国こく〜唐とう』 2巻かん（初版しょはん）、山川やまかわ出版しゅっぱん社しゃ〈世界せかい歴史れきし大系たいけい〉、1996年ねん。ISBN 4634461609。 
  • 氣き賀澤かざわ, 保ほ規ぶんまわし『中国ちゅうごくの歴史れきし6 絢爛けんらんたる世界せかい帝国ていこく:隋ずい唐から時代じだい』（初版しょはん）講談社こうだんしゃ、2005年ねん。ISBN 978-4062740562。 
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