BitTorrent

BitTorrent client

開発元かいはつもと	BitTorrent, Inc.
最新さいしん版ばん	7.4.3 (Mac) 5.2.0 (Linux) 7.10.5 (Windows)
対応たいおうOS	クロスプラットフォーム
種別しゅべつ	P2P
ライセンス	プロプライエタリ（6.0以降いこう）
公式こうしきサイト	https://www.bittorrent.com/

BitTorrent（ビットトレント）は、ブラム・コーエンによって開発かいはつされた、Peer to Peerを用もちいたファイル転送てんそう用ようプロトコル及およびその通信つうしんを行おこなうソフトウェアである。Bit（ビット）+Torrent（急流きゅうりゅう）から、「急流きゅうりゅうのように早はやく（ファイルを）ダウンロードできる」という意味いみを持もつ。メインラインと呼よばれる本家ほんけのBitTorrent clientの他ほかにも様々さまざまな互換ごかんクライアントが存在そんざいする。

概要がいよう

開発かいはつ者しゃのコーエンは、かつて所属しょぞくしていたベンチャー企業きぎょうで、P2Pプロトコルをベースにした情報じょうほうコンテンツ流通りゅうつうプラットフォームの構築こうちくプロジェクトに携たずさわった（プロジェクトは頓挫とんざ）。その際さい、従来じゅうらいのP2Pネットワークがピアの帯域たいいきを有効ゆうこうに利用りようしていないことやその信頼しんらい性せいが低ひくいことに不満ふまんを感かんじ、それらの欠点けってんを解消かいしょうするBitTorrentの開発かいはつを2001年ねんに一人ひとりで始はじめた。2002年ねんにP2Pプロトコルのファイナライズを、2003年ねんにクライアントソフトをリリースした。2003年ねん4月がつにRed Hat Linux 9がリリースされた際さいに、そのISOイメージをドイツ人じんの一いち利用りよう者しゃがBitTorrentで公開こうかいし、3日間にちかんで3万まん個こ分ぶんのISOイメージが配布はいふされたことで注目ちゅうもくされるようになった。

現在げんざいでは、主要しゅような自由じゆうソフトウェアおよびオープンソースソフトウェアのほか、音楽おんがくや映画えいが、商用しょうようアプリケーションを提供ていきょうするために、BitTorrentが利用りようされている。

BitTorrentで配布はいふされているファイルのダウンロードには、BitTorrentプロトコルを実装じっそうしたクライアントソフトウェアを利用りようする。

インターネットでのBitTorrentが占しめるトラフィックに関かんする報告ほうこくは複数ふくすうある。CableLabs（北米ほくべいCATV業界ぎょうかいの研究けんきゅう機関きかん）はCATVの上のぼりトラフィックの55%、英国えいこく調査ちょうさ会社かいしゃCacheLogicはインターネットのトラフィックの35%、別べつの論文ろんぶんはブロードバンドトラフィックの18%であると報告ほうこくしている。

特徴とくちょう

BitTorrentは、ファイルの配布はいふに使つかわれるコンテンツ提供ていきょう者しゃの負担ふたんを著いちじるしく減少げんしょうさせられる。コンテンツ提供ていきょう者しゃ（Bittorrentにおけるシーダー：ファイルの全すべての断片だんぺんの保持ほじ者しゃ）はそれぞれ異ことなる断片だんぺんを、常つねにピアの一部いちぶだけに配布はいふする。各かくピアは、ピアやシーダーから断片だんぺんをダウンロードすると同時どうじに、自分じぶんの持もつ部分ぶぶんを、持もっていないピアにアップロードする。

BitTorrentがこれまでのソフトウェアと大おおきく異ことなるのは、従来じゅうらいのインターネットにおける法則ほうそくに反はんして、「人気にんきのあるファイルであればあるほど、ダウンロードが早はやくなる」という特徴とくちょうである（Winnyなど一部いちぶのP2Pプロトコルと同おなじ特徴とくちょう）。

Napsterに代表だいひょうされる従来じゅうらいのP2Pソフトウェアの構図こうずは、一極いっきょく集中しゅうちゅう型がたであった。これは、限かぎられた数かずの豊富ほうふな帯域たいいきを持もっているユーザの周まわりに、帯域たいいきの貧弱ひんじゃくな大量たいりょうのユーザがぶら下さがる構図こうずである。このため、ある一ひとつのファイルを取得しゅとくするためにユーザが集あつまると、ダウンロード要求ようきゅうが一いち極きょく集中しゅうちゅうし、全体ぜんたいの拡散かくさん速度そくどとしても豊富ほうふといわれた帯域たいいきを占有せんゆうするだけの速度そくどしか出だすことができない。

この現象げんしょうに対たいしてBitTorrentでは、「相手あいて（ピア）からファイルの一部いちぶを受うけとるには、自分じぶんもファイルの一部いちぶを渡わたさなければならない」という規則きそくを導入どうにゅうし、貧弱ひんじゃくな帯域たいいきを持もつユーザにも、全体ぜんたいのファイル配布はいふに協力きょうりょくさせるようにした。これにより、人気にんきのあるファイルに対たいする要求ようきゅうであっても、それだけ多おおくのユーザが配布はいふに協力きょうりょくすることになり、結果けっかとしてユーザ全体ぜんたいが早はやくダウンロードすることができる。

また、この特徴とくちょうより、自分じぶんからアップロードするのは、ダウンロード中ちゅうかダウンロードが完了かんりょうしたファイルのみである。Winnyなどとは異ことなり、自分じぶんがダウンロードしていないファイルのアップロードに加担かたんさせられるということが起おこらないのも大おおきな特徴とくちょうである。

また、BitTorrentは、従来じゅうらいのP2Pに対たいする進歩しんぽというだけではなく、インターネット上じょうでのファイル配布はいふの可能かのう性せいを広ひろげた。一般いっぱん的てきにファイルを配布はいふする際さいには、サーバからそれぞれのユーザが別々べつべつにダウンロードするため、サーバの帯域たいいきが配布はいふ可能かのう量りょうを決きめていた。しかし、BitTorrentを用もちいることでユーザ同士どうしの帯域たいいきが利用りよう可能かのうになり、より多おおくのユーザにファイルを配布はいふすることができるようになる。

2006年ねん10月23日にちに、BitTorrent, Inc.とPC周辺しゅうへん機器きき（ネットワーク機器きき）メーカーであるASUS、Planex、QNAPが提携ていけいし、BitTorrentクライアントを内蔵ないぞうしたルーターやNASを発売はつばいすることを発表はっぴょうした。

BitTorrentがこれまでのP2Pソフトウェアともう一ひとつ大おおきく異ことなるのは、indexing web site (index home page) からインデックストレントファイルをダウンロードしてからでないと、本体ほんたいファイルをP2Pからダウンロードできないということである。この点てんはWinny、Share、Perfect Dark、LimeWireなどの他ほかのP2Pソフトとは異ことなる特徴とくちょうである。

匿名とくめい性せい

「P2P FINDER」というP2Pネットワーク監視かんしサービスが存在そんざいしており、同どうサービスはBitTorrentのトラフィックも解析かいせき可能かのうである。一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん日本にっぽんレコード協会きょうかいは、このP2P FINDERを利用りようして発信はっしん者しゃ情報じょうほう開示かいじ請求せいきゅう訴訟そしょうを起おこし勝訴しょうそし、違法いほうアップローダーを特定とくていしている。

用語ようごと説明せつめい

インデックスサイト (indexing web site)

トレントファイルのインデックスを保持ほじしており、トレントファイルを検索けんさくできるサイト

トレントファイル

トラッカーへのリンクを含ふくむインデックスとなるファイル。拡張子かくちょうしが「.torrent」となっており、クライアントと関連かんれんづけがされている。これを読よみ込こむことによりクライアントはトラッカーと接続せつぞくし、ピアの情報じょうほうを受取うけとり、ダウンロードが開始かいしされる。これ自体じたいはただのインデックスにすぎないので、本体ほんたいファイルをまったく含ふくまない。

ピア (peer)

直接ちょくせつ接続せつぞくしてデータのやりとりを行おこなっているコンピュータ。

トラッカー (tracker)

新規しんき接続せつぞく者しゃにピアのIPアドレスを教おしえるサーバ。

シード／シーダー (seed/seeder)

完全かんぜんなファイルを提供ていきょうしているコンピュータ。最初さいしょの提供ていきょう者しゃについても、ダウンロードが完了かんりょうしたものについてもいう。

リーチャー (leecher)

ダウンロード中ちゅうのコンピュータ。本来ほんらい、開発かいはつ者しゃのコーエンは、ピアにアップロードせずにダウンロードだけを試こころみるものに対たいしてこの言葉ことばを使つかっているが、今いまでは、広ひろくダウンロード中ちゅうのピアを呼よぶのに使つかわれている。

スウォーム (swarm)

同おなじトレントファイルにより、同おなじファイルを提供ていきょう／ダウンロード中ちゅうのコンピュータのグループ全体ぜんたいをいう。ほとんどの場合ばあい、一ひとつのコンピュータはその一部いちぶとだけ、直接ちょくせつデータのやりとりを行おこなっている。

共有きょうゆう比ひ／負担ふたん率りつ (share ratio)

アップロード量りょうとダウンロード量りょうとの比ひ。オープンソースソフトウェアなど、開発かいはつ者しゃが継続けいぞく的てきにシードの提供ていきょうを続つづけている場合ばあいは別べつとして、最低さいていでもこれが1に達たっするまで共有きょうゆうを続つづけるのが礼儀れいぎとされている。トラッカーによってはこの値ねに準じゅんじてシードの速はやさあるいは量りょうに制限せいげんを掛かけていることがある。

可用性かようせい／健康けんこう度ど (health)

ピアにあるデータを集あつめるといくつのファイルができるかを目安めやすとして表あらわしたもので、小数しょうすうか%で表示ひょうじされる。1.0または100%を下回したまわると完全かんぜんなファイルをダウンロードできない可能かのう性せいが高たかい。

99%病やまい

ファイルのダウンロードが99%完了かんりょうし、シーダー、リーチャー共どもあるにもかかわらずダウンロードが100%完了かんりょうしない状態じょうたい。最後さいごのピースが見みつからないことが原因げんいんであるが、ダウンロードしたままにしておくか、一旦いったんダウンロードをやめ、再度さいどダウンロードを開始かいしする事ことで改善かいぜんする。

主おもなクライアントソフトウェア

BitTorrentクライアントは様々さまざまなプラットフォームに実装じっそうされ、その多おおくが日本語にほんごを含ふくむ多言たげん語ごに対応たいおうしている。

• BitTorrent：コーエンおよびBitTorrent, Inc.によって開発かいはつ、配布はいふされているオリジナルのBitTorrentクライアントで、Mainlineとも呼よばれる。バージョン5まではPythonによって実装じっそうされ、オープンソースとして公開こうかいされている。BitTorrent, Inc.が2006年ねん12月にWindows用ようクライアントを開発かいはつしていたμみゅーTorrentを買収ばいしゅうした後のち、バージョン6からはこれをベースにしたものに変更へんこうされ、それ以降いこうのソースコードも非公開ひこうかいとなった。
• ABC (Yet Another BitTorrent Client)：BitTornadoを元もとにPythonで実装じっそうされている。接続せつぞくの優先ゆうせん度どを調整ちょうせいする機能きのうや、ウェブインターフェースを備そなえる。
• BitComet：C++で実装じっそうされている。UPnP対応たいおうルーターを使つかっている場合ばあいのNAT設定せっていやポート設定せってい、コンピューターのキャッシュ設定せっていを自動じどうで行おこなう。トレントファイルを開ひらいて、複数ふくすうのファイルの中なかからダウンロードするファイルを任意にんいで選択せんたくすることができる。特とくに、極東きょくとうアジアで使つかわれているクライアントである。日本にっぽんもその例外れいがいではなく、多おおくの情報じょうほうを日本語にほんごで得えることができる。一方いっぽうで、動作どうさないし開発かいはつ思想しそうが利己りこ的てきであると非難ひなんされることがあり、一部いちぶのクライアントはBitCometとの接続せつぞくを禁止きんししている。
• BitSpirit (Eng)：多言たげん語ご対応たいおう。DHTネットワーク、Gzip圧縮あっしゅく、UPnP、スーパーシード、プロキシ対応たいおうなど多た機能きのう。個別こべつファイルダウンロード可能かのう。ダウンロードピースマップ表示ひょうじ。TCPIP接続せつぞく制限せいげん解除かいじょパッチ装備そうび。
• BitThief：Javaで動作どうさするクライアントソフトウェア。BitTorrentの原則げんそくに反はんしてアップロードを行おこなわず、ダウンロードのみおこなうので一部いちぶのクライアントは接続せつぞくを禁止きんししている。言語げんごは英語えいごのみ。
• μみゅーTorrent：uTorrentと表記ひょうきされる場合ばあいも。リソースの消費しょうひを抑おさえた軽量けいりょうなクライアントとして開発かいはつされている。2006年ねん12月7日にちに本家ほんけBitTorrentに買収ばいしゅうされた。多おおくがオープンソースで開発かいはつされているBitTorrentクライアントの中なかで珍めずらしく、クローズドソースにて提供ていきょうされている。ただし、元々もともとの製作せいさく者しゃはver. 1.6.1を最後さいごに開発かいはつには参加さんかしていない。トレントファイルを開ひらいて、複数ふくすうのファイルの中なかからダウンロードするファイルを任意にんいで選択せんたくすることができる。Vuze、BitCometと並ならんで、最もっともよく使つかわれているクライアントのひとつ。
• BitTornado：Pythonによる実装じっそう。クロスプラットホーム。スーパーシードモードを備そなえる。
• CTorrent：C++で実装じっそうされている。軽量けいりょう化かや機能きのう拡張かくちょうを図はかったEnhanced CTorrentもある。
• Deluge：Pythonによる実装じっそう。UPnPやNAT-PMP、DHTなどに対応たいおうする。
• Flash Get：最新さいしん版ばんで対応たいおうしている。欲ほしいファイルだけを入手にゅうしゅできる機能きのうもついている。
• Free Download Manager：Windows用ようのオープンソースなダウンロードマネージャ。BitTorrentにも対応たいおうしている。日本語にほんご対応たいおう。
• Net Transport：日本語にほんご対応たいおうのダウンロードマネージャ。ファイルの個別こべつダウンロード対応たいおう。
• KTorrent：KDEに含ふくまれるクライアント。
• Lftp：コンソール上じょうで使つかえるクライアント。
• LimeWire：Beta版ばんの4.13.0でBitTorrentが実装じっそうされている。
• Mozilla Firefox：BitTorrentプロトコルを実装じっそうした拡張かくちょう機能きのう「FireTorrent」「MozTorrent」「AllPeers」の開発かいはつが行おこなわれている。
• Opera：バージョン9より、BitTorrentに正式せいしき対応たいおうした。米べいBitTorrent社しゃとの間あいだで、商標しょうひょうの使用しようやBitTorrentサーチエンジンへのアクセスなどに関かんして提携ていけいが結むすばれている。
• qBittorrent：Qtを使用しようして実装じっそうされた、クロスプラットホームなクライアント。非常ひじょうに高機能こうきのう。
• QtWeb：バージョン3.2より、Torrentクライアント機能きのうを搭載とうさいしている。
• rTorrent：ncursesを使用しようしたTUIのBitTorrentクライアント
• Shareaza：Gnutella2をメインとしたソフトウェアだが、Gnutella、eDonkey2000の他ほかにBitTorrentプロトコルにも対応たいおうしている。
• Transmission：Cによる実装じっそう。クロス・プラットホームバックエンドの上うえに、シンプルで使つかいやすいインターフェースを持もつ。macOS (Cocoa), Linux/NetBSD/FreeBSD/OpenBSD (GTK), BeOS/ZETA版はんが公開こうかいされている。非公式ひこうしきだがWindows版ばんもある。
• 4Gamer Game Loader/Torrentan Network System：ゲームポータルサイトの4Gamer.netが、ジャストプレイヤー株式会社かぶしきがいしゃと制作せいさくしている。ゲームのダウンロードに特とく化かしている模様もよう。ベンチマークサイトを見みる限かぎり、BitTorrentとの違ちがいが何なにかあるようであるが、詳細しょうさいは不明ふめい。BitTorrentを使つかったベンチマークサイトでもある。
• Vuze（旧きゅう Azureus）：Javaで実装じっそうされており、多おおくのプラットフォームに対応たいおうしている。細こまかい設定せっていが可能かのうであり、また、様々さまざまなプラグインがある。
• 迅雷じんらい（Xunlei、Thunder）：中国ちゅうごく圏けんでよく使つかわれているクライアント。利用りよう者しゃ数すうだけで見みれば世界せかい最大さいだいのμみゅーtorrentに匹敵ひってきするとのデータもある。
• aria2：C++で実装じっそうされているクロスプラットフォームなダウンロードマネージャ。CUIで動作どうさするほか、JSON-RPCやXML-RPCでのリモートコントロールに対応たいおう。

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

• BitTorrent 公式こうしきサイト（英語えいご）