Crusoe TM5600
Crusoe (クルーソー)は、トランスメタ が開発 かいはつ したx86 互換 ごかん マイクロプロセッサ である。ここでは後継 こうけい プロセッサであるEfficeon (イフィシオン)についても述 の べる。
名称 めいしょう は『漂流 ひょうりゅう 記 き 』の主人公 しゅじんこう ロビンソン・クルーソー に由来 ゆらい する。設計 せっけい ・発売 はつばい 元 もと のトランスメタ についてはそちらの記事 きじ を参照 さんしょう のこと。同社 どうしゃ はいわゆるファブレスであり、製造 せいぞう は社外 しゃがい への委託 いたく であった。
最大 さいだい の特徴 とくちょう はx86命令 めいれい をCrusoeのハードウェア ではデコード せず、「コードモーフィングソフトウェア (英語 えいご 版 ばん ) (CMS4.1)」がx86命令 めいれい をCrusoeのネイティブのVLIW 命令 めいれい に動的 どうてき に変換 へんかん する点 てん である。この点 てん で、発表 はっぴょう 当初 とうしょ は同 どう 時期 じき に開発 かいはつ されたインテル のItanium とVLIW(Itaniumでは発展形 はってんけい のEPICアーキテクチャ )の実装 じっそう 方法 ほうほう について比較 ひかく されることがあった。また、CPU 負荷 ふか に応 おう じて動的 どうてき にCPUのクロック周波数 しゅうはすう を高低 こうてい するLongRun 技術 ぎじゅつ を採用 さいよう し、同 どう CPUの消費 しょうひ 電力 でんりょく の低減 ていげん に貢献 こうけん している。
2000年 ねん に発売 はつばい された「TM5400/5600」ではPCのノースブリッジ チップを統合 とうごう している。ただしAGP には対応 たいおう していない。主 おも に組 く み込 こ み向 む け用途 ようと を狙 ねら ったCPUであるが、発表 はっぴょう 当初 とうしょ は、まだ他社 たしゃ 製 せい CPUに低 てい 消費 しょうひ 電力 でんりょく 向 む けのものがなかったため、ソニー 、NEC 、富士通 ふじつう 、東芝 とうしば 、カシオ など特 とく に日本 にっぽん 市場 いちば 向 む けの各社 かくしゃ のモバイル向 む けノートパソコン などに広 ひろ く採用 さいよう された。しかし、初回 しょかい のアプリケーション起動 きどう 時 じ にはコードモーフィング処理 しょり を行 おこな うため、(2回 かい 目 め の起動 きどう からは多少 たしょう 速 はや くなるというアナウンスだったものの)パフォーマンスは同 どう クロック 周波数 しゅうはすう の他社 たしゃ 製 せい CPUとベンチマーク などで比較 ひかく すると60%程度 ていど で、明 あき らかに見劣 みおと りするものだった。またノートパソコン全体 ぜんたい の消費 しょうひ 電力 でんりょく を左右 さゆう するのはCPUだけではなかった。発売 はつばい 当初 とうしょ 、各 かく CPUのCMSはフラッシュメモリ に書 か き込 こ まれていてバージョンアップ時 じ に変更 へんこう が可能 かのう とされていたが、修正 しゅうせい 版 ばん は一般 いっぱん にはリリースされていない。
2002年 ねん にはCMS4.2にバージョンを上 あ げ、クロック周波数 しゅうはすう を向上 こうじょう して、パフォーマンスを改善 かいぜん した「TM5800」を発売 はつばい した。これらはノートパソコン以外 いがい に、タブレットPC やブレードサーバ への採用 さいよう も期待 きたい された。もっとも、2003年 ねん にインテルが対抗 たいこう して低 てい 消費 しょうひ 電力 でんりょく のCPU (Pentium M ) を出荷 しゅっか したことや、製造 せいぞう 先 さき をIBM からTSMC に変更 へんこう したものの度重 たびかさ なる製造 せいぞう 遅延 ちえん などでクロックスピードを上 あ げることができず、CPUパフォーマンスを上 あ げることができなかったことなどから、各社 かくしゃ のノートパソコンでの採用 さいよう 数 すう は徐々 じょじょ に減少 げんしょう することになる。
このほか、IBM もCrusoeを搭載 とうさい したノートパソコン(ThinkPad )を試作 しさく 、展示 てんじ したことがあったが、目標 もくひょう とした連続 れんぞく 駆動 くどう 時間 じかん を実現 じつげん できず、開発 かいはつ は中止 ちゅうし された[1] 。
Efficeon TM8600 1GHz
1GHz Efficeon TM8600 を搭載 とうさい するシャープ製 せい モバイルノート (Mebius MURAMASA / PC-MM2-5NE)
2004年 ねん 、次世代 じせだい プロセッサ「Astro」のコードネーム で呼 よ ばれていた「TM8000」(現 げん 「Efficeon(イフィシオン)」)が発売 はつばい された。製造 せいぞう は当初 とうしょ TM8600シリーズについてはTSMC で行 おこな われたが、製造 せいぞう プロセスを90nmに切替 きりか えたTM8800シリーズについては富士通 ふじつう あきるの工場 こうじょう で行 おこな われている。
VLIWでの実行 じっこう 命令 めいれい 数 すう を倍 ばい にするなど内部 ないぶ 設計 せっけい を一新 いっしん したことでパフォーマンス面 めん では同 どう クロック周波数 しゅうはすう のPentium系 けい CPUの80%~90%程度 ていど と大 おお きく改善 かいぜん した。
Crusoe同様 どうよう ノースブリッジ相当 そうとう の機能 きのう を内蔵 ないぞう しており、AGPにも対応 たいおう している。ただし同時 どうじ に発表 はっぴょう されたLongRun2 技術 ぎじゅつ は採用 さいよう されておらず、消費 しょうひ 電力 でんりょく はCrusoeより若干 じゃっかん 上昇 じょうしょう した程度 ていど である。ノートパソコンでの採用 さいよう はシャープの一部 いちぶ の製品 せいひん のみにとどまり(その他 た の携帯 けいたい 型 がた ノートパソコンはシャープ含 ふく めて全社 ぜんしゃ ともPentium Mの採用 さいよう にシフトしてしまった)、同 どう チップを採用 さいよう したファンレスPC やベアボーンキット も存在 そんざい するが、他社 たしゃ 製 せい CPU搭載 とうさい の製品 せいひん に対 たい して若干 じゃっかん 高価 こうか である。
各社 かくしゃ がPentium Mにシフトしたことで、市場 いちば への復活 ふっかつ は無 な いと思 おも われたEfficeonだったが、Spring Processor Forum 2006にて行 おこな われたTransmetaのLongRun2 についてのプレゼンにて「LongRun2実装 じっそう 版 ばん Efficeon」 が作成 さくせい された事 こと が判明 はんめい し、何 なん らかの形 かたち でEfficeonが、再度 さいど 市場 いちば へ登場 とうじょう することが期待 きたい された。
また、マイクロソフト のプリペイドPCサービス「FlexGO」専用 せんよう の機能 きのう を持 も つCPUとしてEfficeonを拡張 かくちょう したものが使用 しよう されている他 ほか 、サムスン 製 せい のWindows XP 搭載 とうさい の携帯 けいたい 電話 でんわ 端末 たんまつ SPH-P9000にもTM8820が搭載 とうさい されているとのことである。
シャープ - Mebius MURAMASA MM2/MM50/MM70/CV(TM8600 1.0GHz) MP40H(TM8800 1.4GHz) MP50G/MP60GS/MP70G(TM8800 1.6GHz)
イーレッツ - Be Silent Mt6600(TM8600 1.0GHz)
HP - t5710(TM8600 1.2GHz)
トランスメタはLongRun2の技術 ぎじゅつ 供与 きょうよ を富士通 ふじつう 、NEC 、ソニー などの各 かく メーカーに対 たい して行 い っている。
起業 きぎょう から赤字 あかじ 続 つづ きだったトランスメタは2005年 ねん 、チップ製造 せいぞう 業者 ぎょうしゃ から知的 ちてき 財産 ざいさん ライセンス企業 きぎょう へと方向 ほうこう 転換 てんかん を図 はか る戦略 せんりゃく を発表 はっぴょう し、その後 ご 、大 だい 規模 きぼ なリストラ を行 おこな った。また、香港 ほんこん のCulturecomへのCrusoeに関 かん する技術 ぎじゅつ 資産 しさん の売却 ばいきゃく とEfficeonの技術 ぎじゅつ ライセンスの提供 ていきょう を発表 はっぴょう した。それらの結果 けっか 、同年 どうねん には初 はつ の黒字 くろじ 化 か を達成 たっせい している。Culturecomとの契約 けいやく は2006年 ねん 2月 がつ 、米国 べいこく 政府 せいふ の技術 ぎじゅつ 輸出 ゆしゅつ 規制 きせい により終了 しゅうりょう (解消 かいしょう )している。
当時 とうじ 、インテルもAMD もクロック戦争 せんそう の真 ま っ只中 ただなか にあり、どちらが先 さき に「1GHzの大台 おおだい 」を越 こ すのかの争 あらそ いを演 えん じていた。しかし、クロックの上昇 じょうしょう は「処理 しょり 性能 せいのう の向上 こうじょう 」と同時 どうじ に「消費 しょうひ 電力 でんりょく の増大 ぞうだい 」を意味 いみ しており、バッテリー容量 ようりょう の制約 せいやく があるノートパソコンのメーカーにとってこれは大 おお きな問題 もんだい であった。特 とく に、ビジネスにおけるモバイルPCの需要 じゅよう が世界 せかい で最 もっと も大 おお きい日本 にっぽん においては、バッテリーによる駆動 くどう 時間 じかん は重要 じゅうよう な問題 もんだい として捉 とら えられ、この解決 かいけつ 案 あん の1つとしてCPUに消費 しょうひ 電力 でんりょく の低 ひく いCrusoeを採用 さいよう するメーカーが増 ふ えた。
Crusoeの開発 かいはつ アナウンスに対 たい しインテルは危機 きき 感 かん を抱 いだ き、2001年 ねん 低 てい 電圧 でんあつ 版 ばん と超 ちょう 低 てい 電圧 でんあつ 版 ばん のMobilePentium III を開発 かいはつ し市場 いちば に投入 とうにゅう した。これらは、通常 つうじょう のMobile Pentium IIIのシリコンウェハー から、より低 ひく い電圧 でんあつ でも動作 どうさ する優良 ゆうりょう な個体 こたい を選別 せんべつ した製品 せいひん である。選別 せんべつ 品 ひん である為 ため 、動作 どうさ クロックは低 ひく くとも低 てい 電圧 でんあつ 版 ばん および超 ちょう 低 てい 電圧 でんあつ 版 ばん の価格 かかく は標準 ひょうじゅん 的 てき な製品 せいひん よりも高 たか い設定 せってい が行 おこな われた。
その後 ご 、インテルのモバイルCPUにおいては、2002年 ねん よりデスクトップ版 ばん と同 おな じNetBurstマイクロアーキテクチャ を採用 さいよう したPentium 4-M シリーズが発表 はっぴょう されたが、TDPに問題 もんだい をかかえており本来 ほんらい の性能 せいのう を発揮 はっき できないものだった。2003年 ねん より発売 はつばい されたPentium M ではP6マイクロアーキテクチャ が採用 さいよう され、クロックは低 ひく いものの電力 でんりょく あたりの処理 しょり 能力 のうりょく の高 たか いCPUとなった。ネットブック に搭載 とうさい されているインテルのA100、Intel Atom シリーズも、Pentium M の系譜 けいふ を受 う け継 つ いでおり、非常 ひじょう に低 ひく い電力 でんりょく で動作 どうさ している。
一方 いっぽう 、デスクトップCPUにおけるクロック戦争 せんそう はより長 なが く続 つづ いた。インテルのCPUはPentium 4 において3GHz後半 こうはん までその性能 せいのう を向上 こうじょう させたものの、消費 しょうひ 電力 でんりょく の増大 ぞうだい に伴 ともな う熱 ねつ 問題 もんだい から行 い き詰 づ まりを見 み せる。クロック上昇 じょうしょう の連続 れんぞく による性能 せいのう 向上 こうじょう に限界 げんかい を悟 さと ったインテルは、2005年 ねん 発売 はつばい のPentium D において物理 ぶつり CPUの複数 ふくすう コア化 か による性能 せいのう 向上 こうじょう を目指 めざ した。しかし、Pentium 4のCPUコアを流用 りゅうよう して2つパッケージにしたために、熱 ねつ 問題 もんだい が深刻 しんこく 化 か してしまう。そこで、消費 しょうひ 電力 でんりょく が低 ひく く、熱 ねつ 問題 もんだい が発生 はっせい しにくいPentium M に目 め をつけた。2006年 ねん にPentium M を元 もと にして改良 かいりょう し、デュアルコアにしたIntel Core 2 シリーズを発売 はつばい し、電力 でんりょく あたりの処理 しょり 能力 のうりょく の高 たか いデスクトップCPUとして発売 はつばい 。成功 せいこう を収 おさ めたといえる。
Transmetaはインテルの企業 きぎょう 力 りょく により業績 ぎょうせき 悪化 あっか を余儀 よぎ なくされ、主要 しゅよう 事業 じぎょう を半導体 はんどうたい の開発 かいはつ 販売 はんばい から開発 かいはつ した知的 ちてき 所有 しょゆう 権 けん のライセンス提供 ていきょう に移行 いこう させていった。ただ、性能 せいのう の低減 ていげん を抑 おさ えつつ消費 しょうひ 電力 でんりょく を節減 せつげん する というアイディアを持 も ったCPUは、当時 とうじ としては画期的 かっきてき であり、その後 ご のインテルのCPUに間接 かんせつ 的 てき ながら大 おお きな影響 えいきょう を与 あた えた。CPUのクロック周波数 しゅうはすう を高低 こうてい することにより消費 しょうひ 電力 でんりょく を低減 ていげん するEIST というインテルの技術 ぎじゅつ は、LongRun技術 ぎじゅつ のアイディアと同 おな じものであり、トランスメタは2006年 ねん にインテルを特許 とっきょ 権 けん の侵害 しんがい で訴 うった えている(後 のち にインテルが金銭 きんせん を払 はら うことで和解 わかい )。
2004年 ねん 、AMDは1GHz競争 きょうそう 終了 しゅうりょう 後 ご に自 みずか らはしごを外 はず す形 かたち で「省 しょう 電力 でんりょく ・高 こう 効率 こうりつ 」方向 ほうこう にシフトしつつあった。そして対抗 たいこう のために以前 いぜん から開発 かいはつ していたK7 シリーズの一部 いちぶ をNational Semiconductorから買収 ばいしゅう した省 しょう 電力 でんりょく プロセッサのブランドGeodeを冠 かん したGeode NXと命名 めいめい し、投入 とうにゅう した。その後 ご 、AMD-K8アーキテクチャの低 てい 電力 でんりょく ソリューションとしてOpteron EE / 同 どう HE、Turion 64 を発売 はつばい した。