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GRB 970508

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
GRB 970508
発見から1カ月後のGRB 970508の残光
発見はっけんから1カ月かげつのGRB 970508のざんこう
かり符号ふごう別名べつめい GRB 970508
分類ぶんるい ガンマ線がんませんバースト[1]
発見はっけん
発見はっけん 1997ねん5がつ8にち 21:24 UTC
発見はっけんしゃ ベッポサックス
BATSE
ユリシーズ
観測かんそく時間じかん 15 びょう
位置いち
もと:J2000.0[1]
あかけい (RA, αあるふぁ)  06h 53m 49.2s[1]
あかぬき (Dec, δでるた) +79° 16′ 19″[1]
あか方偏かたへんうつり 0.835[1]
視線しせん速度そくど (Rv) 162,500 km/s[1]
距離きょり 60おく光年こうねん
物理ぶつりてき性質せいしつ
そうエネルギー出力しゅつりょく 5 × 1050 erg (5 × 1043 J)
Template (ノート 解説かいせつ■Project

GRB 970508は、1997ねん5月8にち2142ふんUTCに発見はっけんされたガンマ線がんませんバーストである。ガンマ線がんませんバーストは、遠方えんぽう銀河ぎんがうち爆発ばくはつこり、ガンマ線がんません放出ほうしゅつする非常ひじょう光度こうどおおきい閃光せんこうであり、もっともエネルギーのおおきい電磁波でんじは放出ほうしゅつ現象げんしょうである。しばしば、よりなが波長はちょうXせん紫外線しがいせん可視かし光線こうせん赤外線せきがいせん電波でんぱ)のざんこう長時間ちょうじかんのこる。

GRB 970508は、イタリアオランダXせん天文学てんもんがくのための人工じんこう衛星えいせいベッポサックスによる観測かんそく発見はっけんされた。天文学てんもんがくしゃマーク・メツガーは、GRB 970508は地球ちきゅうからやく60おく光年こうねん距離きょりにあることを推定すいていしたが、これはガンマ線がんませんバーストまでの距離きょり測定そくていされたはじめてのれいだった。

このバーストがこるまで、ガンマ線がんませんバーストが地球ちきゅうからどれだけはなれたところでこるかについて、学界がっかいなかでの合意ごういはなかった。ちいさなエネルギーのバーストが銀河系ぎんがけいなかこるとかんがえるせつや、とおはなれたほか銀河ぎんが非常ひじょうおおきなエネルギーのバーストがこるとかんがえるせつがあった。複数ふくすうのタイプのガンマ線がんませんバーストが存在そんざいして、どちらのせつ排除はいじょされない可能かのうせいもあったが、距離きょり測定そくていによってガンマ線がんませんバーストの発生はっせいげん銀河系ぎんがけいがいにあることが明白めいはくになり、議論ぎろん終止符しゅうしふたれた。

GRB 970508は、ざんこう周波数しゅうはすうはじめて測定そくていされたガンマ線がんませんバーストでもある。電波でんぱシグナルの変動へんどう分析ぶんせきすることで、天文学てんもんがくしゃデール・フレイルは、電波でんぱげんはほぼ光速こうそく拡大かくだいしていることを計算けいさんした。この結果けっかから、ガンマ線がんませんバーストは相対性理論そうたいせいりろんてき拡大かくだいともなばくはつであることがつよしめされた。

発見はっけん

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軌道きどうじょうのベッポサックスの想像そうぞう

ガンマ線がんませんバーストは、非常ひじょうつよ光度こうどガンマ線がんません閃光せんこうであり、もっとつよ電磁波でんじは放射ほうしゃかたちである。ガンマ線がんませんバーストは1967ねんに、宇宙うちゅう空間くうかんでのかく爆発ばくはつ発見はっけんするために設計せっけいされた人工じんこう衛星えいせいヴェラによってはじめて発見はっけんされた[2]最初さいしょ爆発ばくはつのちにはしばしば長寿ちょうじゅいのちなが波長はちょうざんこうつづく。最初さいしょ発見はっけんされたガンマ線がんませんバーストのざんこうGRB 970228のXせん[3]、Xせん研究けんきゅうするために設計せっけいされたベッポサックスによって発見はっけんされた[4]

1997ねん5がつ8にち2142ふんUTC、ベッポサックスのガンマ線がんませんバーストモニターは、やく15秒間びょうかんつづいたガンマ線がんませんバーストを記録きろくした[5][6]。これは、太陽たいよう調査ちょうさのために設計せっけいされた無人むじん探査たんさユリシーズ[7]コンプトンガンマせん観測かんそく衛星えいせいのBurst and Transient Source Experiment(BATSE)によっても検出けんしゅつされた[8]。このバーストは、ベッポサックスの2つの広域こういきXせんカメラの視野しやはいっており、ベッポサックスのチームは数時間すうじかんのうちに、その場所ばしょ直径ちょっけいやく10ぶん範囲はんいしぼんだ[6]

観測かんそく

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ニューメキシコしゅうにあるちょう大型おおがた干渉かんしょう電波でんぱ望遠鏡ぼうえんきょうぐん

バーストのおおよその位置いち決定けっていされたのち、ベッポサックスのチームのエンリコ・コスタは、アメリカ国立こくりつ電波でんぱ天文台てんもんだいちょう大型おおがた干渉かんしょう電波でんぱ望遠鏡ぼうえんきょうぐん担当たんとうするデール・フレイルと連絡れんらくった。フレイルは発見はっけんから4時間じかん以内いないの130ふんUTCに20cmの波長はちょう観測かんそくはじめた[9]観測かんそく準備じゅんびおこなっているあいだ、フレイルはヘール望遠鏡ぼうえんきょうもちいた研究けんきゅうおこなっていた天文学てんもんがくしゃのスタニスラフ・ジョルゴフスキーと連絡れんらくった。ジョルゴフスキーはすぐにデジタイズド・スカイ・サーベイられた過去かこ画像がぞう比較ひかくしてみたが、その領域りょういきあたらしい電波でんぱげんはなかった。ジョルゴフスキーの同僚どうりょうカリフォルニア工科こうか大学だいがく天文台てんもんだいつとめるマーク・メツガーはさらに詳細しょうさいにデータを分析ぶんせきしたが、やはり電波でんぱげん同定どうていはできなかった[9]

よくゆう、ジョルゴフスキーはふたたびこの領域りょういき観測かんそくした。5月8にちと5がつ9にちりょうよる画像がぞうくらべたが、光度こうど減少げんしょうしている天体てんたいつからなかった[10]。メツガーは光度こうど増大ぞうだいした天体てんたい気付きづいたが、それはガンマ線がんませんバーストのざんこうではなく変光星へんこうせいだろうと判断はんだんした。ヤン・ファン・パラディスにひきいられたアムステルダムのチームのティトゥス・ガラマとポール・グルートは、5月8にちアリゾナしゅうWIYN望遠鏡ぼうえんきょう撮影さつえいされた画像がぞうと5がつ9にちカナリア諸島かなりあしょとうウィリアム・ハーシェル望遠鏡ぼうえんきょう撮影さつえいされた画像がぞう比較ひかくしたが、やはりこの期間きかん光度こうど減少げんしょうしている天体てんたいつけることはできなかった[10]

バーストのXせんざんこう発見はっけん、ベッポサックスのチームはより正確せいかく位置いちめ、メツガーが変光星へんこうせいだと推定すいていした天体てんたいがまだこのせま範囲はんいのこっていることがかった。カリフォルニア工科こうか大学だいがくとアムステルダムのチームは、このへんこうせい天体てんたいについての結論けつろん公表こうひょうすることをためらった。5月10にち宇宙望遠鏡科学研究所うちゅうぼうえんきょうかがくけんきゅうしょのハワード・ボンドはかれ発見はっけん発表はっぴょう[11]、これはのちガンマ線がんませんバースターの可視かしこうざんこうであることが確認かくにんされた[10]

1997ねん5がつ10日とおかから11にちにかけてのよる、メツガーの同僚どうりょうのチャールズ・スティーデルはW・M・ケック天文台てんもんだいへんこうせい天体てんたいのスペクトルを記録きろくした[12]かれはそのデータをメツガーにおくると、メツガーはのちにz = 0.8349 ± 0.0002のあか方偏かたへんうつりから[13][14][15]マグネシウムとてつ吸収きゅうしゅうせん同定どうていし、バーストからのひかり地球ちきゅうからやく60おく光年こうねんさき物質ぶっしつ吸収きゅうしゅうされていることをしめした[16]。バーストのあか方偏かたへんうつり自体じたい決定けっていされていないが、バーストと地球ちきゅうあいだ吸収きゅうしゅう物質ぶっしつ存在そんざい必要ひつようになり、バーストはすくなくともそれよりとおいことになる[12][17]。スペクトルせんライマン・アルファのもりいていることから、あか方偏かたへんうつりはz ≦ 2.3となるが[14][15]シカゴ大学だいがくのダニエル・リチャートによるさらにくわしい研究けんきゅうにより、赤色あかいろへんうつりはz ≒ 1.09と提案ていあんされた。これは、ガンマ線がんませんバーストのあか方偏かたへんうつり測定そくていされたはじめてのれいだった[18][19]。いくつかの光学こうがくスペクトルもカラル・アルト天文台てんもんだいにおいて430-710 nmと350-800 nmの波長はちょうられたが、輝線きせんられなかった[20]

GRB 970508の発見はっけんから5にちの5がつ13にち、フレイルはちょう大型おおがた干渉かんしょう電波でんぱ望遠鏡ぼうえんきょうぐんでの観測かんそく再開さいかいした[21]かれはバーストのあった領域りょういきを3.5 cmの波長はちょう観測かんそくすると、すぐにつよいシグナルを検出けんしゅつした[21]。24あいだ、3.5 cmのシグナルは有意ゆういつよくなり、また6 cmと21 cmにもシグナルが検出けんしゅつされた[21]。これは、ガンマ線がんませんバーストのざんこう電波でんぱはじめてのたしかな観測かんそくであった[21][22][23]

それから1カ月かげつ、フレイルは電波でんぱげん光度こうどごとにかなり変動へんどうしながら徐々じょじょ増大ぞうだいしていることを観測かんそくした。変動へんどう観測かんそく波長はちょうすべてで同時どうじにはこらなかったが、プリンストン大学ぷりんすとんだいがくのジェレミー・グッドマンはこれを電波でんぱ銀河系ぎんがけいない恒星こうせいあいだプラズマによってげられているためだと説明せつめいした[22][24]。このような電波でんぱ光度こうど変動へんどうは、天体てんたいかけの直径ちょっけいが3マイクロびょう以内いないときにのみこる現象げんしょうだった[24]

特徴とくちょう

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ベッポサックスのガンマ線がんませんバーストモニターは、40-700keVのエネルギー範囲はんいで1.85 ± 0.3 nJ/m2りゅうたば記録きろくした。広域こういきカメラ(2-26 keV)は0.7 ± 0.1 nJ/m2りゅうたば記録きろくした[25]。BATSE (20-1000 keV)は3.1 ± 0.2 nJ/mのりゅうたば記録きろくした[8]

バーストの5あいだ天体てんたい等級とうきゅうは、Uバンド(紫外線しがいせん領域りょういき)で20.3 ± 0.3、Rバンド(赤色あかいろこう領域りょういき)で21.2 ± 0.1にたっした[20]ざんこうは、Uバンドでは5月11にち213ふんUTC(Uバンド)に19.6 ± 0.3、Rバンドでは5がつ10日とおか2055ふんUTCに19.8 ± 0.2のピークにたっした[20]

キットピーク国立こくりつ天文台てんもんだい天文学てんもんがくしゃジェームズ・ローズはバーストを分析ぶんせきし、これがつよビームではないことをめた[26]。フレイルらによるさらなる分析ぶんせきで、バーストから放出ほうしゅつされる合計ごうけいのエネルギーはやく5×1043 Jとしめし、またローズはガンマ線がんません合計ごうけいのエネルギーはやく3×1043 Jであるとしめした[27]。このことは、ガンマ線がんませんとバーストの噴射ふんしゃ運動うんどうエネルギーはおな程度ていどで、ガンマ線がんません生産せいさん効率こうりつわるいモデルは排除はいじょできることが示唆しさされた[27]

距離きょりとモデル

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このバーストがこるまで、ガンマ線がんませんバーストが地球ちきゅうからどれくらいはなれた場所ばしょこるのかについての天文学てんもんがくしゃあいだ共通きょうつう認識にんしきはなかった。バーストのひとしかたせい分布ぶんぷからは、これらが銀河系ぎんがけいのディスクのなかにはないことを示唆しさしていたが、ガンマ線がんませんバーストは銀河系ぎんがけい銀河ぎんがハローなか位置いちし、エネルギーがたかくないためあかるくえないのだと主張しゅちょうする天文学てんもんがくしゃもいた。一方いっぽうガンマ線がんませんバーストは宇宙うちゅうろんてき距離きょりがあるほか銀河ぎんがないにあり、非常ひじょうにエネルギーがおおきいために検出けんしゅつができるとかんがえる天文学てんもんがくしゃもいた。距離きょり測定そくていとバーストの合計ごうけいエネルギーの計算けいさん結果けっかは、明白めいはく後者こうしゃせつ支持しじしており、この議論ぎろんには終止符しゅうしふたれた[28]

5月の1ヶ月かげつあいだで、電波でんぱ強度きょうど変動へんどう目立めだたなくなった。これは、発見はっけんされたときにすでに電波でんぱげんがかなり拡張かくちょうしていたことをしめしていた。電波でんぱげんまでの既知きち距離きょり変動へんどうわるまでの経過けいか時間じかんから、フレイルは電波でんぱげんはほぼ光速こうそく膨張ぼうちょうしていたことを計算けいさんした[29]既存きそんのいくつかのモデルでは相対そうたいろんてき速度そくど拡張かくちょうする天体てんたい概念がいねん内包ないほうしていたが、この発見はっけんはそのようなモデルを支持しじする最初さいしょ強力きょうりょく証拠しょうこになった[30][31]

ホスト銀河ぎんが

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1998ねん8がつ撮影さつえいされたGRB 970508のホスト銀河ぎんが

GRB 970508のざんこうは、最初さいしょ検出けんしゅつされてから19.82にち最大さいだい光度こうどたっしたのちやく100日間にちかんかけてべきじょうそくしたがって徐々じょじょくらくなり[32]最終さいしゅうてきには等級とうきゅうV = 25.4 ± 0.15のほし形成けいせいさかんな矮小わいしょう銀河ぎんがのこして消滅しょうめつした[32][33]

ホスト銀河ぎんがのディスクは扁平へんぺいりつ0.70 ± 0.07の自然しぜん対数たいすうそこかたちであった[32]。GRB 970508のざんこう赤色あかいろへんうつりz = 0.835はホスト銀河ぎんが赤色あかいろへんうつりz = 0.83とほぼ一致いっちし、以前いぜん観測かんそくされたバーストとことなり、GRB 970508は活動かつどう銀河ぎんがかく関連かんれんしているらしいことがあきらかとなった[32]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c d e f SIMBAD Astronomical Database”. Results for GRB 970508. 2016ねん9がつ25にち閲覧えつらん
  2. ^ Schilling 2002, pp. 12–16
  3. ^ Costa 1997
  4. ^ Schilling 2002, pp. 58–60
  5. ^ Pedersen 1997
  6. ^ a b Schilling 2002, pp. 115–116
  7. ^ Pian 1998
  8. ^ a b Kouveliotou 1997
  9. ^ a b Schilling 2002, pp. 116–117
  10. ^ a b c Schilling 2002, pp. 118–120
  11. ^ Bond 1997
  12. ^ a b Schilling 2002, pp. 121-123
  13. ^ Varendoff 2001, p. 383
  14. ^ a b Metzger 1997a
  15. ^ a b Metzger 1997b
  16. ^ Katz 2002, p. 148
  17. ^ Katz 2002, p. 149
  18. ^ Schilling 2002, p. 120
  19. ^ Reichart 1998
  20. ^ a b c Castro-Tirado 1998
  21. ^ a b c d Schilling 2002, p. 124
  22. ^ a b Katz 2002, p. 147
  23. ^ NRAO 1997
  24. ^ a b Schilling 2002, p. 125
  25. ^ Galama 1998
  26. ^ Rhoads 1999
  27. ^ a b Pacz-ski 1999, p. 2
  28. ^ Schilling 2002, p. 123
  29. ^ Waxman 1998
  30. ^ Schilling 2002, p. 126
  31. ^ Piran 1999, p. 23
  32. ^ a b c d Fruchter 2000
  33. ^ Bloom 1998

出典しゅってん

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