PLOS ONE

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
PLoS ONEから転送てんそう
PLOS ONE 
略称りゃくしょう (ISO) PLOS ONE
学術がくじゅつ分野ぶんや おも科学かがく医学いがく
言語げんご 英語えいご
編集へんしゅうしゃ ダミアン・パティンソン
詳細しょうさい
出版しゅっぱんしゃ Public Library of Science (PLOS)
出版しゅっぱんれき 2006 – 現在げんざい
出版しゅっぱん間隔かんかく 原稿げんこう受理じゅりした時点じてん公開こうかい
オープンアクセス Yes
ライセンス クリエイティブ・コモンズ・ライセンス 4.0 International
インパクトファクター 2.740(2019ねん
分類ぶんるい
ISSN 1932-6203
LCCN 2006214532
OCLC 228234657
外部がいぶリンク
プロジェクト:出版しゅっぱんPortal:書物しょもつ
テンプレートを表示ひょうじ

PLOS ONE(プロス ワン、旧称きゅうしょう PLoS ONE)は、2006ねんからPublic Library of Scienceしゃより刊行かんこうされているオープンアクセス(OA)査読さどくつきの科学かがく雑誌ざっしである[1]科学かがく医学いがく分野ぶんやいち研究けんきゅう論文ろんぶんあつかっている。プレ出版しゅっぱんにおいて内部ないぶおよび外部がいぶ査読さどく通過つうかした原稿げんこう科学かがく分野ぶんやでの重要じゅうようせい関連かんれんせいひくくても除外じょがいされない。おおむ方法ほうほうろん間違まちがっていない、実験じっけんとデータ分析ぶんせき厳密げんみつおこなわれば掲載けいさいされ、採択さいたくりつは50%以下いかである(2023年度ねんど)。OAで掲載けいさいさいして著者ちょしゃは1,931あめりかドルを支払しはらう(原著げんちょ論文ろんぶん場合ばあい)。PLOS ONE オンラインプラットフォームでは刊行かんこう利用りようしゃ議論ぎろん評価ひょうかおこなうことができる。

歴史れきし[編集へんしゅう]

発展はってん[編集へんしゅう]

ゴードン・アンド・ベティ・ムーア財団ざいだんは、オープンアクセスあたらしい生物せいぶつ医学いがくけい学術がくじゅつ雑誌ざっし創刊そうかんして財務ざいむてき持続じぞく可能かのうなものとするため、2002ねん12月に900まんドル、2006ねん5がつに100まんドルをPLOSにたい助成じょせいした[2][3]。こうしてPLOS ONEは、ベータばんとしてPLoS ONEという名前なまえで2006ねん12月に創刊そうかんされる。創刊そうかんにすでにコメントやノートの機能きのうそなわっており、論文ろんぶん評価ひょうかけられる機能きのうが2007ねん7がつ追加ついかされた。2007ねん9がつには、論文ろんぶんトラックバックける機能きのう追加ついかされた[4]。2008ねん8がつには週刊しゅうかんから日刊にっかんとなり、準備じゅんびととのった論文ろんぶんからじゅん公開こうかいされるようになった[5]。2008ねん10がつ、「ベータ」をだっして正式せいしきばんとなる。2009ねん9がつにはArticle-Level Metrics[6]プログラムの一環いっかんとして、公開こうかいされたすべての論文ろんぶんたいし、たとえばHTMLページビューPDFXMLのダウンロードすうなどのオンラインでの利用りようすう提供ていきょうしはじめた。2012ねんなかば、「PLoS」が「PLOS」へリブランディングするにあたり、ジャーナルのタイトルはPLOS ONEとなった[7]

成果せいか[編集へんしゅう]

2006ねんに138ほん、 2007ねんには1,200ほんきょう論文ろんぶん掲載けいさいしたにすぎなかったが、2008ねんにはやく2,800ほん論文ろんぶん掲載けいさいし、世界せかい最大さいだいオープンアクセスジャーナルとなった。2009ねんには4,406ほん論文ろんぶん掲載けいさいして論文ろんぶんすう世界せかいだい3科学かがくに、そして2010ねんには6,794ほん掲載けいさいしてトップにった[8]。2011ねんには13,798ほん論文ろんぶん掲載けいさいしたが[9]、これはそのとしにPubMedに収録しゅうろくされたぜん論文ろんぶんすうの60ぶんの1にあたるとされる[10]。2012ねんには23,468ほん[11]、 2013ねんには31,500ほん論文ろんぶん掲載けいさいした[12]

経営けいえい[編集へんしゅう]

創業そうぎょう編集へんしゅうちょうはクリス・サリッジであった[13]。 2008ねん3がつ、ピーター・ビンフィールドにがれ、2012ねん5がつまでつとめた。現在げんざい編集へんしゅうちょうはダミアン・パティンソンである[14]

出版しゅっぱんコンセプト[編集へんしゅう]

PLOS ONE は、伝統でんとうてき査読さどく学術がくじゅつ雑誌ざっしとはことなったコンセプトにもとづいている。ひとつは、掲載けいさい可否かひめる基準きじゅんとして論文ろんぶんの「認識にんしきされた重要じゅうようせい」を採用さいようしていないというてんである。つまりPLOS ONE は、実験じっけんとデータ分析ぶんせき厳密げんみつおこなわれたかどうかだけ確認かくにんし、重要じゅうようせい判断はんだんは、出版しゅっぱん議論ぎろんやコメントをつうじて科学かがくコミュニティがおこなうものとしてそれをまかせている[15]

Each submission will be assessed by a member of the PLOS ONE Editorial Board before publication. This pre-publication peer review will concentrate on technical rather than subjective concerns and may involve discussion with other members of the Editorial Board and/or the solicitation of formal reports from independent referees. If published, papers will be made available for community-based open peer review involving online annotation, discussion, and rating.[16]

ジャーナリストのジム・ジャイルズは、この雑誌ざっしが「ジャーナルの地位ちいインパクトファクターたいするアカデミア強迫きょうはく観念かんねんたいして挑戦ちょうせんしようとしている」とべている[17]。オンラインのみの出版しゅっぱんぶつであるので、PLOS ONE は、印刷いんさつ媒体ばいたい雑誌ざっしよりもおおくの論文ろんぶん公開こうかいすることができる。境界きょうかい領域りょういき枠外わくがいのテーマの研究けんきゅう積極せっきょくてき掲載けいさいし、特定とくてい科学かがく領域りょういきにとどまらないようにしている[15]

PLOS ONE掲載けいさいされる論文ろんぶんはどのようなながさでもフルカラーでもよく、マルチメディアファイルなどの付録ふろくふくむことができる。記事きじさい利用りようはクリエイティブ・コモンズ・ライセンス 「表示ひょうじ」(CC-BY)にしたがう。創刊そうかん最初さいしょの4年間ねんかんで、40,000にん以上いじょう外部がいぶ査読さどくしゃ査読さどくかかわり[18]、6,000にん以上いじょう研究けんきゅうしゃ国際こくさいてき編集へんしゅう委員いいんかい投稿とうこう審査しんさし、平均へいきんで2.9にん専門せんもんによる査読さどくのちやく39-50%の論文ろんぶん採択さいたくされている[19]

ビジネスモデル[編集へんしゅう]

「ようこそ、Nature。しんから」 Scientific Reports創刊そうかんさいPublic Library of ScienceからNature Publishing Groupおくった歓迎かんげいのメッセージ[20]。1981ねんApple個人こじんけパソコン市場いちば参入さんにゅうしてきたIBMたいしておくったメッセージのパロディ[21]

Public Library of Scienceのすべての雑誌ざっしおなじように、PLOS ONE は、著者ちょしゃ出版しゅっぱん手数料てすうりょうすことによってまかなわれている。「著者ちょしゃ支払しはらい」モデルによって、PLOSのジャーナルはすぐに出版しゅっぱん無料むりょうだれにでもすべての論文ろんぶん提供ていきょうする(すなわち、オープンアクセスとする)ことができる。2015ねん3がつ時点じてんPLOS ONE は、著者ちょしゃに1,931ドル(原著げんちょ論文ろんぶん場合ばあい[22]手数料てすうりょうしている。十分じゅうぶん資金しきんっていない著者ちょしゃたいしては、手数料てすうりょう免除めんじょするか、減額げんがくすることもある[23]。スティーブン・ハーナッドは、出版しゅっぱんたいしてではなく、採否さいひにかかわらず査読さどくかく段階だんかいたいして著者ちょしゃ課金かきんする「過失かしつ査読さどくモデルを提唱ていしょうしている[24]。PLoSは2009ねんまで赤字あかじ経営けいえいであったが、2010ねんはじめて運用うんようコストをまかなえるようになった[25]。それはおもPLOS ONE成長せいちょうによるものとされる。

影響えいきょう[編集へんしゅう]

幅広はばひろ分野ぶんやをカバーし、それほど選考せんこうきびしくなく、著者ちょしゃ支払しはらいモデルで、通常つうじょうクリエイティブ・コモンズ・ライセンス出版しゅっぱんするという「PLOS ONE モデル」は、雑誌ざっしにインスピレーションをあたえてきた[26][27][28]。そのような雑誌ざっしには、たとえばScientific Reports [29][30][31]Open Biologyがある[32]

評判ひょうばん[編集へんしゅう]

2009ねん9がつPLOS ONE は、がく協会きょうかい出版しゅっぱんしゃ協会きょうかい英語えいごばん(Association for Learned and Professional Society Publishers, ALPSP) から出版しゅっぱんイノベーションしょう受賞じゅしょうした[33]受賞じゅしょう理由りゆうは、「あらゆるめんたいしてしんにイノベーティブなアプローチをおこない、コミュニティに利便りべんせいをもたらしかつ長期ちょうきてき展望てんぼうちつつ、独創どくそうてき革新かくしんてきしつたか出版しゅっぱんおこなった」からであった。2010ねん1がつには、Journal Citation Reportsにおいてインパクトファクターが算出さんしゅつされることとなった[34]。 PLOS ONEの2013ねんインパクトファクターは3.534であった[35]。 Scopus Journal Analyzerの"Trend Line"(あるとしにおいて、いままでその雑誌ざっし掲載けいさいされたすべての論文ろんぶんへのそう引用いんようすうを、そのとし掲載けいさいされた論文ろんぶんすうった数値すうち)では、PLOS ONEの2009ねんは3.74であった[36]

抄録しょうろく索引さくいん[編集へんしゅう]

PLOS ONEに掲載けいさいされた論文ろんぶん情報じょうほうは、下記かきのデータベースに収録しゅうろくされている[16]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  1. ^ 佐藤さとう しょう、「PLOS ONEのこれまで,いま,このさき」『情報じょうほう管理かんり』 2014ねん 57かん 9ごう p.607-617, doi:10.1241/johokanri.57.607
  2. ^ Gordon and Betty Moore Foundation”. 2002ねん12月17にち閲覧えつらん
  3. ^ Gordon and Betty Moore Foundation”. 2006ねん5がつ閲覧えつらん
  4. ^ Zivkovic, Bora. “Trackbacks are here!”. 2015ねん3がつ15にち閲覧えつらん
  5. ^ PLOS ONE Milestones, a timeline on Dipity
  6. ^ Article-Level Metrics Information”. 2015ねん3がつ15にち閲覧えつらん
  7. ^ David Knutson (2012ねん7がつ23にち). “New PLOS look”. PLOS BLOG. Public Library of Science. 2012ねん8がつ6にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2012ねん8がつ6にち閲覧えつらん
  8. ^ Morrison, Heather (2011ねん1がつ5にち). “plos one now worlds largest journal”. Poetic Economics Blog. 2011ねん1がつ16にち閲覧えつらん
  9. ^ Taylor, Mike. "It’s Not Academic: How Publishers Are Squelching Science Communication." Discover Magazine . February 21, 2012. Retrieved on March 3, 2012.
  10. ^ Konkeil, Stacey (2011ねん12月20にち). “PLOS ONE: Five Years, Many Milestones”. everyONE Blog. 2011ねん12月24にち閲覧えつらん
  11. ^ Hoff, Krista (2013ねん1がつ3にち). “PLOS ONE Papers of 2012”. everyONE Blog. 2013ねん5がつ21にち閲覧えつらん
  12. ^ http://blogs.plos.org/everyone/2014/01/06/thanking-peer-reviewers/
  13. ^ Poynder, Richard (2006ねん6がつ15にち). “Open Access: Stage Two”. Open and Shut Blog. 2011ねん3がつ27にち閲覧えつらん
  14. ^ Jerram, Peter (2012ねん5がつ8にち). “Publisher of PLOS ONE moves to new Open-Access initiative”. The official PLOS Blog. 2012ねん6がつ22にち閲覧えつらん
  15. ^ a b MacCallum, C. J. (2006). “ONE for All: The Next Step for PLOS”. PLoS Biol. 4 (11): e401. doi:10.1371/journal.pbio.0040401. PMC 1637059. PMID 17523266. http://biology.plosjournals.org/perlserv/?request=get-document&doi=10.1371/journal.pbio.0040401. 
  16. ^ a b PLOS ONE Journal Information. Plosone.org (2012-09-04). Retrieved on 2013-06-20.
  17. ^ Giles, J. (2007). “Open-Access Journal Will Publish First, Judge Later”. Nature 445 (7123): 9. doi:10.1038/445009a. PMID 17203032. http://www.nature.com/nature/journal/v445/n7123/full/445009a.html. 
  18. ^ Thanking PLOS ONE Peer Reviewers”. PLOS ONE (2010ねん12がつ). 2011ねん1がつ16にち閲覧えつらん
  19. ^ PLOS ONE Editorial and Peer-Review Process”. PLOS ONE (2008ねん). 2013ねん12月12にち閲覧えつらん
  20. ^ Allen, Liz (January 19, 2011) "Welcome, Nature. Seriously", (WebCite)
  21. ^ Welcome message from Apple to IBM
  22. ^ Publication Fees”. 2015ねん3がつ16にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2024ねん2がつ5にち閲覧えつらん
  23. ^ Publication Fees”. PLOS. 2015ねん3がつ16にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2015ねん1がつ1にち閲覧えつらん
  24. ^ Harnad, Stevan (June–July 2011). “No-Fault Peer Review Charges: The Price of Selectivity Need Not Be Access Denied or Delayed”. D-Lib Magazine. doi:10.1045/july2010-harnad. 2011ねん3がつ27にち閲覧えつらん
  25. ^ Peter Jerram (2011ねん7がつ20日はつか). “2010 PLoS Progress Update”. 2012ねん1がつ16にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2012ねん1がつ16にち閲覧えつらん
  26. ^ Dagmar Sitek & Roland Bertelmann, "Open Access: A State of the Art", 2 March 2014, Springer, doi:10.1007/978-3-319-00026-8_9 [1] In: Sönke Bartling & Sascha Friesike (Editors), Opening Science: The Evolving Guide on How the Web is Changing Research, Collaboration and Scholarly Publishing , Springer, 2014, ISBN 978-3-319-00025-1, 339 pp. [2]
  27. ^ Rhodri Jackson and Martin Richardson, "Gold open access: the future of the academic journal?", Chapter 9 in Cope and Phillip (2014), p.223-248. The Future of the Academic Journal , 2nd ed., Chandos Publishing, Jul 1, 2014, 478 pages.
  28. ^ Bo-Christer Björk and David Solomon, "Developing an Effective Market for Open Access Article Processing Charges", March 2014, 69 pages. Final Report to a consortium of research funders comprising Jisc, Research Libraries UK, Research Councils UK, the Wellcome Trust, the Austrian Science Fund, the Luxembourg National Research Fund, and the Max Planck Institute for Gravitational Physics. [3]
  29. ^ Nature's open-access offering may sound death knell for subs model”. The Times Higher Education (2011ねん1がつ13にち). 2011ねん1がつ23にち閲覧えつらん
  30. ^ Jonathan Eisen (2011ねん1がつ7にち). “Nature New PLOS One Like Journal "Scientific Reports"”. The Tree of Life. 2011ねん1がつ23にち閲覧えつらん
  31. ^ Martin Fenner (2011ねん1がつ6にち). “New journal "Nature ONE" launched today”. Gobbledygook. 2011ねん1がつ23にち閲覧えつらん
  32. ^ Press release by the Royal Society on the launch of the journal, October 17, 2011 (WebCite)
  33. ^ ALPSP Awards 2010–finalists announced”. ALPSP. 2010ねん9がつ9にち閲覧えつらん
  34. ^ Patterson, Mark (2010ねん1がつ5にち). “PLOS ONE indexed by Web of Science”. PLOS Blogs. 2010ねん9がつ9にち閲覧えつらん
  35. ^ 2013 Journal Citation Reports Science Edition. Philadelphia, Thompson Reuters, 2014.
  36. ^ Journal Information”. 2024ねん2がつ5にち閲覧えつらん

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]