(Translated by https://www.hiragana.jp/)
PowerPC G3 - Wikipedia コンテンツにスキップ

PowerPC G3

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
XPC750PRX300PE。MotorolaせいのPowerPC 750。Power Macintosh G3けのもので、上部じょうぶバックサイドキャッシュられる。以下いか製品せいひんくらべ、ヒートスプレッダいのが特徴とくちょうである。
PPC750CXEHP55-3
GEKKO 45L8926ESD
(PPCDBK-EFB486X3)
Power MacけのCPUアップグレードカード

PowerPC G3(パワーピーシー・ジースリー)はPowerPCだい3世代せだいマイクロプロセッサぶものとして、Apple Computerによって使つかわれた名称めいしょうである。おもにAppleの製品せいひん採用さいようされていたPowerPC 75xシリーズをすが、用途ようとなどに使つかわれるPowerPC 74xをふくむこともある。

当初とうしょMacintosh互換ごかんようとして互換ごかんメーカーに供給きょうきゅうされたが、のちMacintoshコンピュータのCPUとしても、97ねん発売はつばいPower Macintosh G3採用さいようされた。PowerPC G3名称めいしょう使つかわれたのは、このときからである。つづいて、PowerBook G3iMaciBookなどにひろ採用さいようされ、2003ねんにiBook G4が発売はつばいされるまで6年間ねんかん採用さいようされつづけた。

2006ねんのAppleの路線ろせん変更へんこう(MacintoshのCPUをPowerPCけいからIntelけい変更へんこう)により、PowerPCは組込くみこ用途ようと専用せんよう製品せいひんとなった。IBMは2009ねんよりPowerPC G3シリーズをPowerPC 400けい統合とうごうし、PowerPC 476FPを発表はっぴょうした。

設計せっけい[編集へんしゅう]

PowerPC G3はPowerPC 603eおよびPowerPC 603evの発展はってんけいとして開発かいはつされた。開発かいはつはApple Computer、IBMモトローラ共同きょうどうおこなわれた。

CPUバスは60xバスで、パッケージはCBGAまたはPBGA発展はってんけいであるため、既存きそんのPowerPCと完全かんぜん互換ごかんせいがある。

PowerPC G3ではベースとなるPowerPC 603eの2+1(1は分岐ぶんき)命令めいれい実行じっこうのスーパースカラプロセッサコアをベースに、以下いかよう改良かいりょうくわえた。

バックサイド・キャッシュ・アーキテクチャー採用さいよう(750/750Lのみ)
これは、従来じゅうらいシステムバスじょうかれていた外部がいぶL2キャッシュを、専用せんよう高速こうそくなバスによってCPUと直接ちょくせつつなげることにより、L2キャッシュへのアクセスを高速こうそくさせるというものである。また、G3ではL2キャッシュのタグもプロセッサに内蔵ないぞうしており、高速こうそくなキャッシュヒットの検出けんしゅつ可能かのうであった。この仕組しくみの採用さいようにより、PowerPC G3は従来じゅうらいがたくら効率こうりつてき処理しょり可能かのうとなり、大幅おおはば性能せいのう向上こうじょうられた。
内蔵ないぞうするL1キャッシュを64KBに倍増ばいぞう
603eではデータ16KB+命令めいれい16KBの合計ごうけい32KBであったが、G3では倍増ばいぞうされた。これは604eとおな容量ようりょうである。
いち命令めいれいキャッシュの帯域たいいきを16バイト/サイクルに倍増ばいぞう
603eではL1命令めいれいキャッシュの帯域たいいきが8バイト/サイクルで、コアには1サイクルたり2命令めいれいしか供給きょうきゅうできなかった。603eのコア自体じたいは3-way (2命令めいれい+1分岐ぶんき) のスーパースカラであったが、この制限せいげんによりコアの性能せいのうかしきれていなかった。
整数せいすう演算えんざんユニットを2つに増加ぞうか
乗除じょうじょさんとうのレイテンシがなが命令めいれい以外いがい実行じっこう可能かのう演算えんざんあらたに追加ついかし、整数せいすう演算えんざんユニットのかずは2になった。これによっておおくの整数せいすう演算えんざん命令めいれいについて2命令めいれい同時どうじ実行じっこうすることが可能かのうになり、大幅おおはば性能せいのう向上こうじょうした。この改良かいりょうにより、整数せいすう演算えんざん命令めいれい同士どうしならえてアウト・オブ・オーダー実行じっこうすることも可能かのうになったが、かく整数せいすう演算えんざんユニットにそなえられているリザベーション・ステーションは1エントリであり、効果こうか限定げんていてきである。
動的どうてき分岐ぶんき予測よそく機構きこう採用さいよう
603eではPowerPC命令めいれいのヒントを利用りようした静的せいてき分岐ぶんき予測よそく機構きこうのみ実装じっそうされていたが、G3では動的どうてき分岐ぶんき予測よそく (2レベル予測よそく) もおこなわれる。G3の動的どうてき分岐ぶんき予測よそくは604のものとはことなり、604では分岐ぶんきさき予測よそくにBTAC (Branch Target Address Cache) とばれる分岐ぶんきさきアドレスのキャッシュをもちいていたのにたいし、G3ではBTIC (Branch Target Instruction Cache) とばれる分岐ぶんきさき命令めいれい (2命令めいれいぶん) を直接ちょくせつキャッシュする仕組しくみがもちいられている。分岐ぶんき命令めいれいがBTICにヒットすると、分岐ぶんきさき命令めいれい命令めいれいキャッシュからではなくこのBTICから直接ちょくせつ供給きょうきゅうすることが可能かのうであり、1サイクルはや命令めいれいキューに分岐ぶんきさき命令めいれいれることができる。
ハードウェアによるTLBミスの処理しょり
603シリーズではTLBミス例外れいがい発生はっせいし、OSがTLBを更新こうしんする必要ひつようがあったが、G3プロセッサでは604シリーズと同様どうようにプロセッサが自動的じどうてきにTLBを更新こうしんする。これによってTLBミスのペナルティが減少げんしょうしている。

当初とうしょはハイエンドのPowerPC 604後継こうけいとして、"Mach5"のられる、インラインキャッシュを搭載とうさいしたPowerPC604evが開発かいはつされており、PowerPC 750/740は、互換ごかんメーカーけの安価あんかなマイクロプロセッサとして供給きょうきゅうされていた。PowerPC750の性能せいのうがMach5を上回うわまわることがあきらかになったため、Apple Computer自身じしん採用さいようし、そのさいあらたにPowerPC G3命名めいめいされる。ほぼどう時期じきにAppleは互換ごかん戦略せんりゃく撤回てっかいしている。

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

PowerPC G3は以下いかようすぐれた特徴とくちょうそなえていた。

  • サイズは25mmかくまたは27mmかく小型こがたである
  • 1クロックあたりの処理しょり能力のうりょくたか
  • てい消費しょうひ電力でんりょく
  • 安価あんか

とくてい消費しょうひ電力でんりょくおおきな特徴とくちょうで、たとえばどう配線はいせんのPowerPC 750Lの場合ばあい、500MHzでの平均へいきん/最大さいだい消費しょうひ電力でんりょくは、6.0W/7.5Wであった。このためPowerPC G3はノートパソコンにも動作どうさクロックをほとんどげることなくそのまま搭載とうさいされ、がた同等どうとう処理しょり能力のうりょくあたえることに成功せいこうした。また、安価あんかであったため、iMacなどのてい価格かかくなパソコンにも採用さいようされた。

一方いっぽうで、L2キャッシュなどの影響えいきょう考慮こうりょしない、純粋じゅんすい演算えんざん能力のうりょく比較ひかくではPowerPC 604がG3を圧倒あっとうする。604シリーズを全面ぜんめんてきえるのは、その強力きょうりょく浮動ふどう小数点しょうすうてんユニットを採用さいようしたG3の後継こうけいPowerPC G4登場とうじょうしてからである。

製品せいひん[編集へんしゅう]

2023ねん現在げんざい、「PowerPC 750シリーズ」は、IBM認定にんていのもとロチェスターエレクトロニクスがさい生産せいさんをサポートしている[1]

PowerPC 750(Arthur[2][編集へんしゅう]

モトローラが180nm で製造せいぞう、200〜300MHzで動作どうさする。L2キャッシュは外部がいぶ

PowerPC 750L[編集へんしゅう]

IBMが製造せいぞうしたどう配線はいせんばん、300〜500MHzで動作どうさする。

PowerPC 750CX/CXe[編集へんしゅう]

IBMが180nm SOIで製造せいぞう、 L2キャッシュ256KBを内蔵ないぞう、CXは350〜550MHzで、CXeは500〜700MHz動作どうさする[3]

Gekko[編集へんしゅう]

  • IBMが180nm SOIで製造せいぞうニンテンドーゲームキューブよう開発かいはつされたもの(PowerPC 750CXeをベースに倍精度ばいせいど浮動ふどう小数点しょうすうてんすう演算えんざん対応たいおうSIMD追加ついかした設計せっけい

PowerPC 750FX/FL[編集へんしゅう]

2002ねんから出荷しゅっか、IBMが130nm SOI, low-k誘導体ゆうどうたい製造せいぞう[4]、L2キャッシュ512KB、消費しょうひ電力でんりょくは800MHz動作どうさで3.6W。

PowerPC 750GX[編集へんしゅう]

IBMが90nm SOIで製造せいぞう、200MHz FSB対応たいおう、L2キャッシュ1MB、1.1GHzまで


PowerPC 750CL[編集へんしゅう]

EPSONせいレーザープリンター、LP-S7500のコントローラーとして使用しようされているPowerPC 750CL

IBMが90nm SOIで製造せいぞう、L2キャッシュ256KB、1GHzまで。消費しょうひ電力でんりょくは400MHzで1.7W、900MHzで5.6Wにまでしょう電力でんりょくされている。64ビットの倍精度ばいせいど浮動ふどう小数点しょうすうてんレジスタを利用りようして単精度たんせいどのSIMD演算えんざんおこな命令めいれい追加ついかされているひとし、いくつかの機能きのう追加ついかされている。


Broadway[編集へんしゅう]

  • IBMが90nm SOIで製造せいぞう任天堂にんてんどうWiiよう開発かいはつされたもの(Gekko互換ごかんであり、PowerPC 750CLがベースとおもわれるが詳細しょうさい非公開ひこうかい

Espresso[編集へんしゅう]

PowerPC 74x[編集へんしゅう]

用途ようとけ、L2キャッシュなし

RAD750[編集へんしゅう]

PowerPC 750をベースに、たい放射線ほうしゃせん仕様しよう、 -55℃から125℃での動作どうさ保証ほしょう付加ふかしたマイクロコントローラ。宇宙うちゅうでの使用しよう想定そうていしRAD6000の後継こうけいとして開発かいはつされ、マーズ・リコネッサンス・オービターパーサヴィアランス[5]をはじめとする宇宙うちゅう探査たんさ搭載とうさいされる。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 製造せいぞう中止ちゅうしひん継続けいぞく供給きょうきゅう】IBMPowerPC750シリーズ | Rochester Electronics, Ltd. - Powered by イプロス”. Rochester Electronics, Ltd.. 2023ねん2がつ21にち閲覧えつらん
  2. ^ PowerBook 3400後継こうけいのKangaは Arthurチップ搭載とうさいで10がつ発表はっぴょう”. web.archive.org (1998ねん12月6にち). 2022ねん2がつ12にち閲覧えつらん
  3. ^ IBM releases next PowerPC roadmap” (英語えいご). Macworld. 2023ねん2がつ21にち閲覧えつらん
  4. ^ IBM、1GHz動作どうさのPowerPC 750FXを2002ねん後半こうはん発売はつばい”. pc.watch.impress.co.jp. 2023ねん2がつ21にち閲覧えつらん
  5. ^ Hagedoorn, Hilbert. “NASA Perseverance rover 200 MHZ CPU costs $200K” (英語えいご). Guru3D.com. 2021ねん3がつ3にち閲覧えつらん