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R-73 (ミサイル)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
R-73/AA-11 Archer
Su-27の翼つばさ端はしに装備そうびされたR-73M1
種類しゅるい 短距離たんきょり空そら対空たいくうミサイル
製造せいぞう国こく ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦れんぽう/ロシアの旗 ロシア
設計せっけい ヴィーンペル科学かがく製造せいぞう連合れんごう
製造せいぞう ダックス工場こうじょう（英語えいご版ばん）
トビリシ航空機こうくうき製造せいぞう（ロシア語ご版ばん）(過去かこ)
性能せいのう諸しょ元もと
ミサイル直径ちょっけい 170mm
ミサイル全長ぜんちょう 2,900mm
ミサイル全幅ぜんぷく 510mm
ミサイル重量じゅうりょう 105kg (R-73M1)[1]
110kg (R-73M2)[2]
115kg (R-73E)[2]
弾頭だんとう HE破片はへん効果こうか（7.4kg）
射程しゃてい 20km (R-73M1)[1]
30km (R-73M2)[1]
推進すいしん方式ほうしき RDTT-295固体こたい燃料ねんりょうロケット
目標もくひょう捜索そうさく装置そうち Mk.80
誘導ゆうどう方式ほうしき 赤外線せきがいせんホーミング
飛翔ひしょう速度そくど マッハ2.5[1]
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R-73（ロシア語ご: Р-73エール・スィェーミヂスャト・トリー）は、ソビエト連邦れんぽうのヴィーンペル機械きかい設計せっけい局きょくで開発かいはつされた短距離たんきょり空そら対空たいくうミサイルである。北大西洋きたたいせいよう条約じょうやく機構きこう（NATO）で用もちいられたNATOコードネームでは、AA-11　アーチャー（Archer）と呼よばれた。

概要がいよう[編集へんしゅう]

R-73は、ソ連それん戦闘せんとう機きに装備そうびされる短距離たんきょり空そら対空たいくうミサイルとして、前任ぜんにんのR-60（AA-8 エイフィド）を代替だいたいするために1973年ねんに開発かいはつが始はじめられ、1985年ねんに最初さいしょのミサイルが就役しゅうえきした。

R-73は、前任ぜんにんのR-60と同様どうように赤外線せきがいせんホーミング方式ほうしきを採用さいようしているが、シーカーの冷却れいきゃく方式ほうしきは、ペルティエ素子そしによる熱ねつ電でん効果こうかを利用りようしたものから、窒素ちっそによるジュール＝トムソン効果こうかを利用りようしたものに変更へんこうされた。搭載とうさいされるMk.80シーカーは、アンチモン化かインジウム（InSb）素子そしを使用しようしており、中ちゅう赤あか外がい（MWIR）帯域たいいきに対応たいおうし、全ぜん方位ほうい交戦こうせん能力のうりょくを実現じつげんしている。ロックオン距離きょりは8-12kmである[3]。また、視野しや角かくは中心ちゅうしん線せん±45度どとされたほか、機体きたい側がわの赤外線せきがいせん捜索そうさく追尾ついびシステム（IRST）やShchel (露ろ：Щель) 、Sura (露ろ：Сура) などのヘッドマウントディスプレイ（HMD）とリンクすることが可能かのうとなっており、これによって実現じつげんされるオフボアサイト射撃しゃげき能力のうりょくは、非常ひじょうに先進せんしん的てきなものであった。このシーカーはウクライナのアーセナルが開発かいはつし、供給きょうきゅうしてきたが2014年ねんウクライナ騒乱そうらんの影響えいきょうによる禁輸きんゆからロシア国内こくないメーカーにより代替だいたい品ひんが製造せいぞうされ使用しようされている[4]。

近接きんせつ信管しんかんにはレーダー式しきのもの(一部いちぶ派生はせい型がたではレーザー式しきのものも追加ついか)と衝撃しょうげき信管しんかんが装備そうびされ、弾頭だんとうにはRDX爆薬ばくやくに劣化れっかウランとアルミニウムの断片だんぺんを加くわえた連続れんぞくロッド弾頭だんとうが搭載とうさいされた[1]。

翼つばさ構成こうせいとしては1列れつ目めに迎むかえ角かく検出けんしゅつ用ようのセンサーである小ちいさい羽根はね、2列れつ目めに固定こてい式しきの安定あんてい翼つばさ、3列れつ目めに全ぜん遊ゆう動どう式しきのカナード翼つばさ、その後うしろに尾翼びよくが設もうけられており、尾翼びよく後部こうぶにはロール制御せいぎょ用ようのエルロンが取とり付つけられている。前部ぜんぶのセンサーと2枚まいの翼つばさはカウンター・ウェイトとしても機能きのうしており、この効果こうかで20度どの迎むかえ角かくでの飛翔ひしょうが可能かのうとなった[5]。また、推力すいりょく偏向へんこう制御せいぎょ（TVC）能力のうりょくとの組くみ合あわせにより、最小さいしょう旋回せんかい半径はんけいがサイドワインダーの約やく1/2という極きわめて高たかい機動きどう性せいを獲得かくとく、ミサイルは12Gで機動きどうをおこなう空中くうちゅう目標もくひょうへの対応たいおうを可能かのうとした[1]。

これらの特性とくせいから、R-73の性能せいのうは、同どう時期じきに西側にしがわ諸国しょこくで使用しようされていた第だい3世代せだいサイドワインダーに優越ゆうえつするものと信しんじられている。これはASRAAMやIRIS-T、AIM-9X、AAM-5のようなサイドワインダーの後継こうけい機種きしゅの開発かいはつを促うながすことになった。

R-73は、MiG-23後期こうき型がた、MiG-29、Su-27、Su-34、Su-35に使つかわれているが、改修かいしゅうを施ほどこしたMiG-21、Su-24、Su-25と中国ちゅうごくのJ-10でもこれを運用うんようすることができる。また、Mi-24、Mi-28、Ka-50/52のような攻撃こうげきヘリコプターにも装備そうび可能かのうである。

後継こうけいミサイルとしてK-30が開発かいはつされていたが事実じじつ上じょう中止ちゅうしされ、K-74M2の開発かいはつに注力ちゅうりょくすることとなった[6]。

実戦じっせんでの使用しよう[編集へんしゅう]

1996年ねん2月がつ24日にち、レスキューブラザーズ（英語えいご版ばん）の操縦そうじゅうするセスナ337（英語えいご版ばん） 2機きが、キューバ空軍くうぐんのMiG-29から発射はっしゃされたR-73により撃墜げきついされる。キューバ系けい米国べいこく人じん3人にんとキューバ人じん永住えいじゅう者しゃ1人にんが死亡しぼうした[7]。

詳細しょうさいは「1996年ねんレスキューブラザーズ機き撃墜げきつい事件じけん（英語えいご版ばん）」を参照さんしょう

エチオピア・エリトリア国境こっきょう紛争ふんそうにおいてはエチオピアのSu-27とエリトリアのMiG-29においてR-60と合あわせて使用しようされた。

2008年ねん3月がつ18日にち、アブハジアにおいてジョージアのヘルメス 450 UAVがロシア空軍くうぐんのMiG-29から発射はっしゃされたR-73により撃墜げきついされた[8]。

派生はせい型がた[編集へんしゅう]

R-73A
初期しょき型がた[1]。シーカーアングルは中心ちゅうしん線せん±45度ど。コレチェットレーダー近接きんせつ信管しんかんを搭載とうさいしたR-73Kとヤンターリレーザー近接きんせつ信管しんかんを搭載とうさいしたR-73Lの2種類しゅるいがある[9]。射程しゃてい20km。
R-73M1 (R-73 RDM-1)
R-73の改良かいりょう型がた。全体ぜんたいのパフォーマンスが改善かいぜんされている[2]。
R-73M2 (R-73 RDM-2)
1997年ねんに就役しゅうえきしたR-73Mの改良かいりょう型がた。IRCCM能力のうりょくを向上こうじょうさせたほか、推進すいしん装置そうち用ようの固形こけい燃料ねんりょうを増ふやして射程しゃていを30kmに延長えんちょうした[5]。
R-73E
近接きんせつ信管しんかんをレーダー近接きんせつ/目標もくひょうセンサーとしたモデル。レーザー近接きんせつ信管しんかんを加くわえたR-73ELもある[5]。
K-74
1980年代ねんだい半なかばから開発かいはつされ、1997年ねんに明あきらかとされた改良かいりょう型がた[10]。IRCCM能力のうりょくを強化きょうかしたMK.80Mシーカーを搭載とうさいしたほか、シーカーアングルが中心ちゅうしん線せん±60度どに拡大かくだいされた[9]。開発かいはつ名称めいしょうはIzdeliye 740。
R-73BM
MILEX 2017で公開こうかいされたベラルーシのBSVTによるアップグレード型がた。シーカーアングルが中心ちゅうしん線せん±60度どに拡大かくだいされた新あたらしいオールアングルシーカーを特徴とくちょうとしミサイルの妨害ぼうがい抵抗ていこうを大幅おおはばに増加ぞうかさせている。他た新あたらしいエンジン、新あたらしいオートパイロットコントロールユニットを搭載とうさい、目標もくひょう近ちかくで確実かくじつに弾頭だんとうを起爆きばくするため新あたらしいレーザー近接きんせつ信管しんかんも装備そうびされている。最大さいだい射程しゃていは高度こうど20,000mにおいて12km[11]。
K-74M
2015年ねんより出荷しゅっかが開始かいしされたK-74の改良かいりょう型がた[12]。シーカーを二に波長はちょう赤外線せきがいせんセンサを使用しようしてロックオン距離きょりとIRCCM能力のうりょくを向上こうじょうさせ、メモリーを状況じょうきょうに応おうじて前線ぜんせんで再さいプログラム可能かのうなものに変更へんこうしたMM-2000に換かわ装そうし、アングルを中心ちゅうしん線せん±75度どに拡大かくだい、冷却れいきゃく時間じかんは従来じゅうらいの70分ふんから6時じ間あいだに延長えんちょうした[9][13][14]。これらの改良かいりょうで効率こうりつは25-30%増加ぞうかしているとされている[15]。開発かいはつ名称めいしょうはIzdeliye 750。
RVV-MD
輸出ゆしゅつ型がた。レーダー近接きんせつ信管しんかんを搭載とうさいしたRVV-MDとレーザー近接きんせつ信管しんかんを搭載とうさいしたRVV-MDLの2種類しゅるいがある。
K-74M2
Su-57のウェポンベイに搭載とうさいするためにK-74Mをベースに開発かいはつ中ちゅうの発展はってん型がた。以下いかの改良かいりょうを行おこなっており、AIM-9XやASRAAMと同様どうようの性能せいのうを目指めざしている[9][16]。開発かいはつ名称めいしょうはIzdeliye 760。
  • 全幅ぜんぷくを320mmに縮小しゅくしょう。
  • LOAL（発射はっしゃ後ごロックオン）能力のうりょくの付加ふか。
  • 慣性かんせい航法こうほう装置そうちの改善かいぜん。
  • シーカーアングルの中心ちゅうしん線せん±80度どへの拡大かくだい。
  • ロケットモーターの燃焼ねんしょう時間じかんの増加ぞうか。
  • 新あたらしいマルチモード赤外線せきがいせんシーカーの装備そうび。
  • データリンク受信じゅしん機きの装備そうび。
訓練くんれん用よう
UR-73
航空機こうくうきの飛行ひこう訓練くんれん用よう。後部こうぶの尾翼びよくが存在そんざいしないのが外見がいけん上じょうの特徴とくちょうである[17]。
B-72
R-73と同おなじ寸法すんぽうで作つくられたモックアップ[18]。
整備せいび訓練くんれん型がた
整備せいび訓練くんれん用よう。航空機こうくうきに搭載とうさいしての運用うんようは不可能ふかのう[19]。

採用さいよう国こく[編集へんしゅう]

青あおが運用うんよう国こく。赤あかでは退役たいえきしている

過去かこの運用うんよう国こく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]
  1. ^ a b c d e f g AA-11 ARCHER R-73
  2. ^ a b c Short-Range Air-to-Air Missile
  3. ^ OPTICAL SEEKERS FOR AIR-TO-AIR MISSILES
  4. ^ Гендиректор "Дукса": мы возродим в России малую авиацию | РИА Новости
  5. ^ a b c 世界せかいの名な機きシリーズ MiG-29 フルクラム P.47-48
  6. ^ Наследник Су-27: Air Forces Monthly о Т-50
  7. ^ Armando Alejandre Jr., Carlos Costa, Mario de la Pena y Pablo Morales v. Republica de Cuba, Case 11.589, Report No. 86/99, OEA/Ser.L/V/II.106 Doc. 3 rev. at 586 (1999).
  8. ^ “Russian jet shoots Georgian drone © Reuters”. YouTube. 2016年ねん6月がつ7日にち閲覧えつらん。
  9. ^ a b c d Jane’s Missiles and Rockets 19-May-2006 Vympel plans to develop air-to-air missiles for Russia's PAK FA fighter
  10. ^ Vympel reveals previously classified air-to-air missiles
  11. ^ MILEX 2017: BSVT unveils modernized R-73BM & R-60BM air-to-air missiles
  12. ^ “"Дукс": поставки новейшей ракеты "воздух-воздух" в ВКС уже начались”. https://ria.ru/20160602/1441912460.html 
  13. ^ ЖУРНАЛ "ЭКСПОРТ ВООРУЖЕНИЙ", ИЮЛЬ-АВГУСТ 2009
  14. ^ 「空自くうじAWACSを脅威きょういにさらす長距離ちょうきょりミサイル　中国ちゅうごく、ロシアと日米にちべいの2020年代ねんだい空そら対空たいくう対決たいけつ　急いそげ！ロシアに勝まさる空そら対空たいくうミサイルの開発かいはつ」『軍事ぐんじ研究けんきゅう』2015年ねん10月がつ。 
  15. ^ “В ВКС начали поступать новейшие ракеты "воздух-воздух"”. https://ria.ru/20160602/1441941070.html 
  16. ^ Russia and CIS Observer 17 June 2007.
  17. ^ Учебная авиационная ракета УР-73
  18. ^ Габаритно-массовый макет Б-72
  19. ^ Учебно-разрезная ракета Р-73
  20. ^ Su-25KM SCORPION (It is made in Georgia) - YouTube

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • Norman Friedman (2006). The Naval Institute guide to world naval weapon systems. Naval Institute Press. ISBN 9781557502629. https://books.google.co.jp/books?id=4S3h8j_NEmkC 
  • SinoDefence.com (2008年ねん10月がつ20日はつか). “R-73 (AA-11) Short-Range Air-to-Air Missile” (英語えいご). 2011年ねん6月がつ22日にち閲覧えつらん。
  • indian-military.org (2010年ねん3月がつ12日にち). “Vympel R-73 (NATO: "AA-11 Archer")” (英語えいご). 2011年ねん6月がつ22日にち閲覧えつらん。

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

ウィキメディア・コモンズには、R-73 (ミサイル)に関連かんれんするメディアがあります。
長ちょう射程しゃてい型がた
中ちゅう射程しゃてい型がた
短たん射程しゃてい型がた
NATOコードネーム
(曖昧あいまいさ回避かいひ)
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