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RecA はDNA での維持 いじ と修復 しゅうふく に重要 じゅうよう な38kDa のタンパク質 たんぱくしつ である[ 2] 。RecAの構造 こうぞう 的 てき ・機能 きのう 的 てき 相 あい 同 どう 体 からだ はDNA修復 しゅうふく タンパク質 たんぱくしつ が発見 はっけん されている全 すべ ての種 たね から見 み つかっている。相 あい 同 どう タンパク質 たんぱくしつ は真 ま 核 かく 生物 せいぶつ ではRad51 、古 こ 細菌 さいきん ではRadAと呼 よ ばれている[ 3] [ 4] 。
RecAには多 おお くの活性 かっせい があるが、その全 すべ てがDNA修復 しゅうふく に関 かん するものである。細菌 さいきん のSOS応答 おうとう (英語 えいご 版 ばん ) でリプレッサーLex Aとリプレッサー λ らむだ (英語 えいご 版 ばん ) の自 じ 触媒 しょくばい 開 ひらき 裂 きれ において[ 5] プロテアーゼ 活性 かっせい を促進 そくしん する機能 きのう を持 も つ[ 6] 。
RecAとDNAの会合 かいごう の多 おお くは相 あい 同 どう 組 くみ 換 か え (英語 えいご 版 ばん )によって起 お こる。RecAタンパク質 たんぱくしつ はssDNA(一本 いっぽん 鎖 くさり DNA )に長 なが いクラスターの形 かたち で強 つよ く結合 けつごう して核 かく タンパク質 たんぱくしつ タンパク繊維 せんい (英語 えいご 版 ばん ) を作 つく る。そのタンパク質 たんぱくしつ は1つ以上 いじょう のDNA結合 けつごう 部位 ぶい をもち、一本 いっぽん 鎖 くさり DNAと二 に 本 ほん 鎖 くさり DNAを両方 りょうほう 抱 かか え込 こ むことができる。これによりDNAの二 に 重 じゅう らせんと一本 いっぽん 鎖 くさり の相補 そうほ 部位 ぶい の対 たい 合 ごう (生物 せいぶつ 学 がく )(英語 えいご 版 ばん ) 反応 はんのう を触媒 しょくばい できるようになる。RecAとssDNAの繊維 せんい は配列 はいれつ 相 しょう 同性 どうせい (英語 えいご 版 ばん ) を持 も つ二 に 重 じゅう らせんDNAを探 さが す。その探索 たんさく プロセスによりDNAの二 に 重 じゅう らせんが引 ひ き伸 の ばされ、相補 そうほ 的 てき 配列 はいれつ の認識 にんしき に至 いた る。このプロセスは配 はい 座 ざ 選択 せんたく と呼 よ ばれる[ 7] [ 8] 。反応 はんのう によって2つのDNAのらせんの組 くみ 換 か えが始 はじ まる。対 たい 合 ごう が終 お わると、ヘテロ二 に 本 ほん 鎖 くさり (英語 えいご 版 ばん ) 領域 りょういき で分岐 ぶんき 点 てん 移動 いどう という反応 はんのう が始 はじ まる。分岐 ぶんき 点 てん 移動 いどう は対 たい になっていない領域 りょういき の一本 いっぽん 鎖 くさり DNAが対 たい になっている領域 りょういき の片方 かたがた の塩基 えんき 鎖 くさり を置 お き換 か え、全体 ぜんたい の塩基 えんき 数 すう を変 か えることなく分岐 ぶんき 点 てん のみを動 うご かす反応 はんのう である。この変化 へんか は自発 じはつ 的 てき に起 お こるが、両方向 りょうほうこう に対 たい して等 ひと しく進 すす むため、効率 こうりつ よく置 お き換 か えているとは言 い いがたい。RecAタンパク質 たんぱくしつ は一方向 いちほうこう への分岐 ぶんき 点 てん 移動 いどう を触媒 しょくばい し、数 すう 千 せん 塩基 えんき 対 たい にも及 およ ぶ二 に 重 じゅう らせんDNAの完全 かんぜん な置 お き換 か えを可能 かのう にする。
RecAはDNAに依存 いぞん するATPアーゼ であるため、RecAにはATP を加水 かすい 分解 ぶんかい する部位 ぶい も含 ふく まれている。RecAはATPと結合 けつごう しているとき、ADP と結合 けつごう しているときよりDNAとより強 つよ く結合 けつごう する 。
大腸菌 だいちょうきん では、DNA複製 ふくせい の後 のち の姉妹 しまい 染色 せんしょく 分 ぶん 体 からだ がまだ近 ちか い段階 だんかい でRecAを介 かい して相 あい 同 どう 組 くみ 換 か えが起 お こる。RecAは相 あい 同 どう 対 たい 合 ごう 、相 あい 同 どう 組 くみ 換 か え、引 ひ き離 はな された姉妹 しまい 染色 せんしょく 分 ぶん 体 たい の片方 かたがた のDNAの切断 せつだん 修復 しゅうふく の全 すべ てを仲介 ちゅうかい する[ 9] 。
RecAが欠損 けっそん している大腸 だいちょう 菌株 きんしゅ は分子生物学 ぶんしせいぶつがく でのクローニング (英語 えいご 版 ばん ) に有用 ゆうよう である。大腸 だいちょう 菌株 きんしゅ に、遺伝子 いでんし 操作 そうさ によりrecA 突然変異 とつぜんへんい 型 かた 遺伝子 いでんし が導入 どうにゅう されると、プラスミド として知 し られる染色 せんしょく 体外 たいがい DNA が安定 あんてい 化 か される。形質 けいしつ 転換 てんかん と呼 よ ばれるプロセスにおいては、プラスミドDNAが様々 さまざま な状況 じょうきょう でバクテリアに取 と り込 こ まれる。遺伝子 いでんし 外 がい のプラスミドを取 と りこんだバクテリアは形質 けいしつ 転換 てんかん 体 たい と呼 よ ばれる。形質 けいしつ 転換 てんかん 体 たい は、回復 かいふく して他 た のことに使 つか えるように細胞 さいぼう 分裂 ぶんれつ の間 あいだ ずっとプラスミドを保持 ほじ する。RecAタンパク質 たんぱくしつ の機能 きのう がない場合 ばあい 、遺伝子 いでんし 外 がい のプラスミドDNAはバクテリアによる変化 へんか を受 う けない。細胞 さいぼう 培養 ばいよう 地 ち からのプラスミドの精製 せいせい によりPCR によって得 え られたプラスミドの忠実 ちゅうじつ な増幅 ぞうふく が可能 かのう になる。
ノースカロライナ大学 だいがく のウィグル(Wigle)とシングルトン(Singleton)は細胞 さいぼう 内 ない でRecAの機能 きのう を阻害 そがい する小 ちい さな分子 ぶんし が新 あたら しい抗生 こうせい 物質 ぶっしつ の合成 ごうせい に有用 ゆうよう である可能 かのう 性 せい を示 しめ した[ 10] 。多 おお くの抗生 こうせい 物質 ぶっしつ がDNAにダメージを与 あた え、全 すべ てのバクテリアはそのダメージの修復 しゅうふく をRecAに依存 いぞん していることから、RecAの阻害 そがい 剤 ざい はバクテリアへの細胞 さいぼう 毒性 どくせい 強化 きょうか に寄与 きよ する可能 かのう 性 せい がある。さらにRecAの活動 かつどう は耐 たい 性 せい 菌 きん の進化 しんか と同時 どうじ に起 お こることから、RecAの阻害 そがい 剤 ざい は耐 たい 性 せい 菌 きん の出現 しゅつげん を抑 おさ える、もしくは遅 おく らせる効果 こうか がある可能 かのう 性 せい がある。
自然 しぜん 界 かい での形質 けいしつ 転換 てんかん におけるRecAの役割 やくわり [ 編集 へんしゅう ]
RecAのシステムにおける分子 ぶんし の性質 せいしつ の分析 ぶんせき から、コックス(Cox)はそのデータが”RecAタンパク質 たんぱくしつ の最 もっと も重要 じゅうよう な役割 やくわり はDNA修復 しゅうふく にある”と結論 けつろん づけた[ 11] 。RecAについてのさらなる分析 ぶんせき から、コックスはそのデータが”RecAタンパク質 たんぱくしつ がDNA修復 しゅうふく システムにおける中心 ちゅうしん 的 てき な要素 ようそ として遺伝子 いでんし 多様 たよう 性 せい の副産物 ふくさんぶつ として進化 しんか してきた"とした[ 12] 。
天然 てんねん 型 がた バクテリアの形質 けいしつ 転換 てんかん には、あるバクテリア(多 おお くは同種 どうしゅ )間 あいだ のDNA伝播 でんぱ と、RecAタンパク質 たんぱくしつ が仲介 ちゅうかい するドナーのDNAとレシピエントの染色 せんしょく 体 たい を相 あい 同 どう 組 くみ 換 か えが関 かか わっている。RecAが中心 ちゅうしん 的 てき な役割 やくわり を果 は たす形質 けいしつ 転換 てんかん がこのプロセスを実行 じっこう するために特徴 とくちょう 的 てき に相互 そうご 作用 さよう する多 おお くの遺伝子 いでんし 生成 せいせい 物 ぶつ (例 れい :枯草 かれくさ 菌 きん の場合 ばあい は約 やく 40種 しゅ )に依存 いぞん することは、DNA伝播 でんぱ に適応 てきおう するように進化 しんか していることを示 しめ している。枯草 かれくさ 菌 きん の場合 ばあい は伝播 でんぱ したDNA の長 なが さは1/3にもなり、染色 せんしょく 体 たい の長 なが さに匹敵 ひってき するほどにもなりうる[ 13] [ 14] 。バクテリアの染色 せんしょく 体 たい の外部 がいぶ のDNAを組 く み込 こ む場合 ばあい 、まず最初 さいしょ に菌 きん をDNAを取 と り込 こ める状態 じょうたい にしなければならない。形質 けいしつ 転換 てんかん は原核 げんかく 生物 せいぶつ ではよく起 お こることであり、これまでに67種 たね の生物 せいぶつ が形質 けいしつ 転換 てんかん を起 お こしうることが知 し られている[ 15] 。
形質 けいしつ 転換 てんかん で最 もっと も研究 けんきゅう されている生物 せいぶつ の一 ひと つが枯草 かれくさ 菌 きん である。このバクテリアでは、RecAタンパク質 たんぱくしつ が新 あら たに入 はい る一本 いっぽん 鎖 くさり DNA(ssDNA)と相互 そうご 作用 さよう し、繊維 せんい 構造 こうぞう を作 つく る[ 16] 。これらのRecA/ssDNA繊維 せんい はコンピテント機構 きこう を持 も ち、細胞 さいぼう 質 しつ 基質 きしつ まで広 ひろ がる細胞 さいぼう 極 きょく から生成 せいせい する。RecA/ssDNA繊維 せんい は、染色 せんしょく 体 たい に存在 そんざい し、相 あい 同 どう 的 てき 領域 りょういき を読 よ みとるヌクレオフィラメントであると考 かんが えられている。このプロセスによって新 あたら しく入 はい ったDNAが枯草 かれくさ 菌 きん の染色 せんしょく 体内 たいない でなじみ、遺伝子 いでんし 情報 じょうほう の書 か き換 か えが発生 はっせい する。
ミショッド(Michod)らは、RecAが仲介 ちゅうかい する形質 けいしつ 転換 てんかん が枯草 かれくさ 菌 きん と同様 どうよう に淋菌 りんきん 、インフルエンザ菌 きん 、肺炎 はいえん レンサ球菌 きゅうきん 、ミュータンス菌 きん などでもDNA修復 しゅうふく のための相 あい 同 どう 組 くみ 換 か えへの適応 てきおう であるということの根拠 こんきょ を示 しめ した[ 17] 。ヒトにとっての病原菌 びょうげんきん の場合 ばあい 、これらは宿主 しゅくしゅ による酸化 さんか 的 てき 防御 ぼうぎょ から身 み を守 まも らなければならないため、RecAが仲介 ちゅうかい するDNAダメージの修復 しゅうふく が細菌 さいきん に大 おお きな利益 りえき をもたらしていると考 かんが えられている。
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