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TiVo

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

TiVoえい: Tivoization)とは、GNU General Public License (GNU GPL, GPL) のような、ソフトウェアコピーレフトソフトウェアライセンス条件下じょうけんかむが、ハードウェアの制限せいげんにより、利用りようしゃがソフトウェアの改変かいへんばんをそのハードウェアじょう動作どうささせることを妨害ぼうがいするようなハードウェアDRM製品せいひん作成さくせいすることをしめ用語ようごである。リチャード・ストールマンがこの用語ようごつくした。かれはこの方法ほうほうによって、GNU GPLが保護ほごするように意図いとしていたソフトウェアの自由じゆう一部いちぶが、利用りようしゃみとめられなくなると主張しゅちょうしている[1]。この用語ようごTiVoしゃがTiVoブランドのハードディスクレコーダー (DVR) にGNU GPLライセンスのソフトウェアを利用りようしていたにもかかわらず、そのハードウェア設計せっけいによりユーザーが改変かいへんばんソフトウェアを実行じっこうすることを積極せっきょくてき妨害ぼうがいしていたことに由来ゆらいする[2][3]

概略がいりゃく

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TiVoのソフトウェアはLinuxカーネルGNUプロジェクトのソフトウェアをんでいる。これらはどちらもGNU General Public Licenseバージョン2 (GPLv2) のしたでライセンスされている。GPLv2は、ソフトウェアの受領じゅりょうしゃ対応たいおうするソースコード入手にゅうしゅできるようにすることを頒布はんぷしゃ要求ようきゅうしている。この要求ようきゅう事項じこうは、GPLソフトウェアの利用りようしゃがソフトウェアを自分じぶん目的もくてきによりてきしたものに自由じゆう改変かいへんできるようにすることを目標もくひょうとしている[4]

しかし、TiVoはプログラムのデジタル署名しょめいがTiVoの製造せいぞう業者ぎょうしゃによって認証にんしょうされたものと一致いっちした場合ばあいにのみ自社じしゃ製品せいひんじょうでプログラムを動作どうささせるようにした。このことは、GPLv2の目標もくひょう回避かいひしているとストールマンはかんがえている[5]。このように、TiVoはGPLv2の要求ようきゅう事項じこう採用さいようしてソースコードを他者たしゃ改変かいへんできるようにしながら、あらゆる改変かいへんされたソフトウェアはTiVoのハードウェアじょうでは動作どうさしない。ハードウェアメーカーが改変かいへん自由じゆうちながらも、製品せいひん利用りようしゃには一切いっさいその自由じゆうあたえないという不均衡ふきんこう状態じょうたいといえる。

一方いっぽうLinuxカーネルげん著作ちょさくしゃであるリーナス・トーバルズは、TiVoがデジタル署名しょめい使つかって自社じしゃ販売はんばいするシステムじょう動作どうさするソフトウェアを制限せいげんするのは適切てきせつであると主張しゅちょうした。トーバルズは、ソフトウェアに私的してきなデジタル署名しょめい使つかうことはセキュリティツールにとって有用ゆうようであるとかんがえているとべた。トーバルズは、ソフトウェアライセンスが支配しはいこうとするのはソフトウェアのみで、そのソフトウェアが動作どうさするハードウェアまで対象たいしょうとすべきでないともしんじている。ソフトウェアにアクセスすることができ、それを改変かいへんしてのハードウェアじょう動作どうささせることができるかぎり、Linuxの改変かいへんばん動作どうさするのをさまたげるためにデジタル署名しょめい使つかうことに、倫理りんりもとてんはないとトーバルズはしんじている[6]一方いっぽうアラン・コックスなど、のLinux開発かいはつしゃなかにはことなる意見いけん表明ひょうめいするものもいる[7]

ストールマンとフリーソフトウェア財団ざいだん (Free Software Foundation, FSF) はこれらの懸念けねんのいくつかにこたえようとした。かれらは、GPLv3の策定さくてい目標もくひょうに、セキュリティ目的もくてきでの私的してきなデジタル署名しょめいみとめるが、TiVo防止ぼうしすることをふくめたとべた。

反応はんのう

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2006ねん、FSFはユーザーが改変かいへんばんソフトウェアの実行じっこうさまたげられるようなTiVoの技術ぎじゅつてきシステムとたたかうことを決意けついした。この行動こうどうは、前述ぜんじゅつ妨害ぼうがい手法しゅほうきんずるという、GNU General Public License (GPL) v3改訂かいていにより実践じっせんうつされた[8]。TiVoに搭載とうさいされているオペレーティングシステムカーネルはGPLの条項じょうこうしたがって頒布はんぷされている。そして、FSFは、あたらしいバージョンのGPLで利用りよう許諾きょだくされるソフトウェアを受領じゅりょうしたものすべてが、頒布はんぷされたソフトウェアの改変かいへんにおいて、ハードウェアの束縛そくばくにより制限せいげんされないことを保証ほしょうされる、ということを目標もくひょうとした。しんライセンスのはんTiVo条項じょうこうは、2007ねん4がつ、TiVoがSECへ提出ていしゅつした資料しりょう英語えいごばんにより、渋々しぶしぶながらその実態じったい認識にんしきされていた。いわく、「われわれは、将来しょうらいGNU/Linuxオペレーティングシステムでの改善かいぜんをわれわれのソフトウェアにめなくなるかもしれない。不幸ふこうにもこのことはわれわれの事業じぎょう多大ただいなる悪影響あくえいきょうとなる。[9]これとは無関係むかんけいに、LinuxカーネルはGPLv3には移行いこうしなかった。

GPL Version 3提案ていあんされた目標もくひょうの1つは「TiVo」の防止ぼうしである。エベン・モグレンによると、「ライセンスはこの規則きそく法的ほうてき回避かいひ方法ほうほう禁止きんしするのとどう程度ていど明確めいかくさで技術ぎじゅつてき回避かいひ方法ほうほう禁止きんしすべきである」[10]とのことである。

GPLv3のだい2草案そうあんはこれを明確めいかくしようとした[11]。しかし、Linux開発かいはつしゃ一部いちぶはGPLv3の2度目どめ草案そうあんでもまだ有益ゆうえき使用しようさまたげられうると懸念けねんしていた[12]

GPLv3のだい3だい4討議とうぎ草案そうあん(それぞれ2007ねん3月28にち2007ねん5月31にち公開こうかいされた)において、はんTiVo条項じょうこうはソフトウェアが「商用しょうよう頒布はんぷ」されるときには適用てきようされないよう、対象たいしょう範囲はんい制限せいげんした[13]。したがって、医療いりょう機器きき電子でんし投票とうひょう対象たいしょうにならない。最終さいしゅうてきには、公式こうしきのGPLv3ではだい4草案そうあんくらべてTiVoかんしてさしておおきな変更へんこうおこなわれず、2007ねん6月29にち正式せいしき発行はっこうされた。リーナス・トーバルズはこのあたらしい草案そうあんとそのDRMたいする位置いちに「非常ひじょう満足まんぞくしている」とった[14]。しかしながら、かれはLinuxカーネルをGPLv3でさいライセンスすることをいま支持しじしていない。いわく、

[Stallman] calls it "tivoization", but that's a word he has made up, and a term I find offensive, so I don't choose to use it. It's offensive because Tivo never did anything wrong, and the FSF even acknowledged that. The fact that they do their hardware and have some DRM issues with the content producers and thus want to protect the integrity of that hardware.

The kernel license covers the *kernel*. It does not cover boot loaders and hardware, and as far as I'm concerned, people who make their own hardware can design them any which way they want. Whether that means "booting only a specific kernel" or "sharks with lasers", I don't care.

—Linus Torvalds[15]

参考さんこうやく

(ストールマンが)それをTiVo呼称こしょうしたが、それは、かれつくした言葉ことばであり、わたしおもうに侮蔑ぶべつてき用語ようごだ。だから、わたしはそのライセンスを採用さいようすることを選択せんたくしない。なぜ侮蔑ぶべつてきなのかって? Tivoはなんにも間違まちがったことはしちゃいない。そしてFSFはそのことを渋々しぶしぶながらみとめてすらいるからだ(訳注やくちゅう:TiVoのソフトウェアはすべてGPLv2である)。TiVoがかれらのハードウェアを稼動かどうし、そしていくつかのDRMを保持ほじするという事実じじつは、コンテンツの製作せいさくしゃるところがある。したがって、そのハードウェアの一貫いっかんせい維持いじすることをのぞんでいるのはコンテンツ製作せいさくしゃだ。

カーネルのライセンスは「まさにカーネルのみ」を対象たいしょうとする。それはブートローダやハードウェアを対象たいしょうとしない。そして、わたしおもかぎり、ハードウェア製作せいさくしゃ自身じしんのハードウェアをきなように設計せっけいしてしかるべきだ。「特定とくていのカーネルのみでのブートすること」や「レーザービーム搭載とうさいがたサメ」(訳注やくちゅうオースティン・パワーズ ゴールドメンバー登場とうじょうした兵器へいき)なのかそうではないのかなんて、わたしにはどうでもいい。

—リーナス・トーバルズ

いずれにせよ、Linuxカーネルのライセンス変更へんこうは、非常ひじょうおおくの著作ちょさくけんしゃ存在そんざいするため、事実じじつじょう不可能ふかのうであると予想よそうされる。おおくのGPLソフトウェアとことなり、Linuxカーネルは"or, at your option, any later version"(「または、あなたの選択せんたくで、以降いこうのバージョンの」)文言もんごん存在そんざいしないGPLv2でのみ許諾きょだくされている。これゆえ、すべての著作ちょさくけんしゃから合意ごういないかぎしんバージョンへのさいライセンスは許可きょかされない[16]

BusyBoxのような、TiVoされたみシステム幅広はばひろ利用りようされるソフトウェアを開発かいはつする、そのいくつかのプロジェクトでもGPLv3への移行いこう辞退じたいしている[17]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ John Sullivan (2006ねん2がつ8にち). “[Info-gplv3] “GPLv3 Update #2””. Free Software Foundation. 2011ねん4がつ27にち閲覧えつらん
  2. ^ GNU.org Frequently Asked Questions about the GNU Licenses”. Free Software Foundation. 2011ねん4がつ27にち閲覧えつらん
  3. ^ A Quick Guide to GPLv3”. Free Software Foundation. 2011ねん4がつ27にち閲覧えつらん
  4. ^ The Free Software Definition”. 2008ねん4がつ15にち閲覧えつらん。 “...The freedom to study how the program works, and adapt it to your needs...”
  5. ^ “Using large disks with TiVo” at www.gratisoft.us
  6. ^ fa.linux.kernel: Linus Torvalds: Flame Linus to a crisp! on 2003-04-24
  7. ^ “UK Linux guru backs GPL 3” on news.zdnet.co.uk on 2006-01-31
  8. ^ Richard Stallman explains the new GPL provisions to block "tivoisation"”. 2011ねん4がつ29にち閲覧えつらん
  9. ^ Paul McDougall (2007ねん6がつ1にち). “TiVo Warns Investors New Open Source License Could Hurt Business”. InformationWeek. 2011ねん4がつ29にち閲覧えつらん
  10. ^ Eben Moglen, speaking about GPLv3 in Barcelona”. 2008ねん4がつ15にち閲覧えつらん
  11. ^ Opinion on Digital Restrictions Management — GPLv3
  12. ^ linux.kernel: “GPLv3 Position Statement” by James Bottomley on 2006-09-22
  13. ^ GPLv3 FAQ, with explanation of Section 6's limits”. 2008ねん4がつ15にち閲覧えつらん
  14. ^ Torvalds 'pretty pleased' about new GPL 3 draft”. CNet news.com. 2008ねん4がつ15にち閲覧えつらん
  15. ^ Linus Torvalds. "Re: Dual-Licensing Linux Kernel with GPL V2 and GPL V3", Message to the Linux Kernel Mailing List dated Wed, 13 Jun 2007 14:33:07 -0700 (PDT)
  16. ^ Ciaran O’Riordan. “(About GPLv3) Can the Linux Kernel Relicense?”. 2011ねん4がつ29にち閲覧えつらん
  17. ^ Busy busy busybox”. LWN.net. 2011ねん4がつ29にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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