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天下(テンカ)とは? 意味や使い方 - コトバンク

天下てんかみ)テンカ

デジタル大辞泉だいじせん天下てんか」の意味いみみ・例文れいぶん類語るいご

てん‐か【天下てんか

《「てんが」とも》
てんおおっているぜん世界せかい
いちこく全体ぜんたいくにじゅう。また、国家こっか。「天下てんか号令ごうれいする」「天下てんかおさめる」
なか世間せけん。「天下てんかられる」「天下てんかはじをさらす」
いちこく政治せいじいちこく支配しはいけん。「徳川とくがわ天下てんかとなる」「天下てんか掌握しょうあくする」
権力けんりょくをにぎっておもうままにうこと。「かかあ天下てんか
比類ひるいないこと。このうえないこと。「天下てんかだい泥棒どろぼう」「天下てんか横綱よこづな
江戸えど時代じだい将軍しょうぐんのこと。天下てんかさま
「―の城下じょうかなればこそ」〈浮・永代ながよぞうさん
(「とも」「ども」などをともなって副詞ふくしてきもちいて)どのように。どれほど。
「―につぶれあしきゅうへりとも」〈みなもと玉鬘たまかずら
[類語るいご]社会しゃかい世界せかい世間せけんなか民間みんかん巷間こうかんこうかん市井しせいしせい江湖こうここうこ世俗せぞく俗世ぞくせ世上せじょう人中ひとなか

てん‐げ【天下てんか

てんか(天下てんか」におなじ。「天上てんじょう天下てんか唯我独尊ゆいがどくそん

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精選せいせんばん 日本にっぽん国語こくごだい辞典じてん天下てんか」の意味いみみ・例文れいぶん類語るいご

てん‐か【天下てんか

  1. 名詞めいし ( ふるくは「てんが」とも )
  2. [ いち ] てんした
    1. てんしたひろがるすべての空間くうかん世界せかい全部ぜんぶ。また、この。あめのした。
      1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「万物ばんぶつ出生しゅっしょうをなすうつわはてんが也」(出典しゅってん遊楽ゆうらく習道風見かざみ(1423‐28ごろ))
      2. [その文献ぶんけん]〔しょけいだい禹謨〕
    2. このくに全部ぜんぶいちこく全体ぜんたい国家こっかくにちゅう
      1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「のよに鉄輪てつりんおうとなりていち天下てんかおうとあらむ」(出典しゅってんかんさとし院本いんぽん三宝さんぼう(984)した)
      2. 天下てんか権柄けんぺいを捨給へることねんひさしければ」(出典しゅってん太平たいへい(14Cきゅう)
    3. 世間せけんなか
      1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「天下てんかどもげんさだ万国ばんこくいちなにろう羽翼うよくいちおとずれしょうやまいち」(出典しゅってんしのげ雲集うんしゅう(814)なつにちすめらぎふとしおとうと南池みなみいけ嵯峨天皇さがてんのう〉)
      2. つて受ある手爾波てにはといふにいたりては、天下てんかひとすくなく」(出典しゅってん俳諧はいかい去来きょらいしょう(1702‐04)故実こじつ)
    4. いちこく政治せいじ万機ばんき。また、くに支配しはいする権力けんりょく
      1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「大王だいおうは此をむかえて〈りゃく終日しゅうじつ終夜しゅうやきゅうふとうんへども不足ふそくざりけり。天下てんかゆえまりて万事ばんじそむきゅうふ」(出典しゅってん今昔こんじゃく物語ものがたりしゅう(1120ころか)さん)
    5. いちこく支配しはいするものとくに、幕府ばくふ将軍家しょうぐんけ天下てんかさま
      1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「そうゆたか朝臣あそんすすむこれ天下てんか停止ていしもりほう歟」(出典しゅってん聞御おうながななねん(1420)はちがついちにち)
      2. どもいまより、天下てんかだぞ」(出典しゅってん歌舞伎かぶきほうかかまつ成田なりた利剣りけん(1823)大詰おおづめ)
    6. 実権じっけんにぎって采配さいはいること。また、おもうままにふるまうこと。また、その状況じょうきょう。「かかあ(かかあ)天下てんか
      1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「瀬川せかわくんさへなくなってりょうへば、のちきみ、もうわれ(われわれ)天下てんかさ」(出典しゅってん破戒はかい(1906)〈島崎しまざき藤村とうそん)
    7. てんかいち(天下一てんかいち」のりゃく
      1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「ぼうがひげが、天下てんかひげになったとおもふて」(出典しゅってん虎明とらあきほん狂言きょうげんひげ室町むろまちまつ近世きんせいはつ))
    8. カルタで、つよさつひとつである「あざ(蠣)」のさつ
      1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「よくよくじゃ・てんかをもっていなるるの」(出典しゅってん雑俳ざっぱいそぎかけ(1713))
  3. [ ] ( おおく、助詞じょし「に」「の」「と」などをともなって )
    1. ( おおく「天下てんかに」「天下てんかの」のかたちで ) 比類ひるいのないこと。このうえないこと。もっともすぐれていること。
      1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「天下てんかのそらごとならむとおもへば、ただいま、ここちあしくてあればとて、やりつ」(出典しゅってん蜻蛉とんぼ日記にっき(974ごろちゅう)
    2. ( 「天下てんかに(と)… …とも」「天下てんかに(と)… …ども」のかたちで ) どんなに。いかに。
      1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「天下てんかつぶれ、あしをれきゅうへりとも」(出典しゅってん源氏物語げんじものがたり(1001‐14ごろ玉鬘たまかずら)

天下てんか補助ほじょ注記ちゅうき

( 1 )呉音ごおんテンゲでまれる場合ばあいは、仏典ぶってんにおける用法ようほう日常にちじょうしたもので、天上てんじょうかいたいする地上ちじょうかいい、一方いっぽう漢音かんおんテンカでまれる場合ばあいは、国家こっか国土こくどなどので、両者りょうしゃ本来ほんらい系列けいれつことにしていたとられる。しかし、確証かくしょうとぼしいので、漢字かんじ表記ひょうきれい便宜上べんぎじょうほんこうおさめた。
( 2 )[ ]本来ほんらいくもわるくも比類ひるいのないことをあらわし、おお肯定こうていてき評価ひょうかもちいられるが、挙例きょれいの「蜻蛉とんぼ」のように、否定ひていてき用法ようほうられる。


あめ‐の‐した【天下てんか

  1. 名詞めいし ( 漢語かんご天下てんか(てんか)」の訓読くんどくか。また、「高天原たかまがはら(たかまのはら)したにある、この国土こくど」のもこもるか )
  2. 地上ちじょう世界せかい全部ぜんぶてんたいしていう。
    1. (イ) ( 政治せいじてきに、その勢力せいりょくおよ範囲はんいすべてをいう ) このくに全部ぜんぶ日本にっぽん国土こくど全国ぜんこくとくに、このぜん世界せかい。てんか。
      1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「天皇てんのう(すめろき)きますくにやすべいのうおお(アメノシタ) 四方しほうみちには」(出典しゅってん万葉集まんようしゅう(8Cいちはちよんいち)
    2. (ロ) ( 一般いっぱんてきに ) 地上ちじょうのすべて。このなか。この世界せかい。また、この世間せけん一般いっぱん
      1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「天下てんか(あめのした)すでにおほひてゆきひかりればたっとくもあるか」(出典しゅってん万葉集まんようしゅう(8Cいちななさんきゅうさん)
  3. くにちゅうひと世間せけんおおくのひと天下てんか人々ひとびと
    1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「ざいには、ぬし避くとなむもうすなる。あめのしたそしりもうすことはべるなり」(出典しゅってん宇津うつたもつ物語ものがたり(970‐999ごろ藤原ふじわらきみ)
  4. 朝廷ちょうてい。また、朝廷ちょうてい政事せいじ
    1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「国家こっか(アメノシタ)永久えいきゅう(とこめづら)にして、社稷しゃしょく(くに)きこと勿(な)し」(出典しゅってん日本書紀にほんしょき(720)推古いちねんよんがつ岩崎いわさきほんくん))
  5. なか国中くになかもっと程度ていどたかいことを強調きょうちょうしていう。
    1. (イ) ( 「てんしたの」のかたちで ) 天下てんか比類ひるいがないさま。天下てんかだいいち
      1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「あめのしたの色好いろごのみ」(出典しゅってん伊勢物語いせものがたり(10Cまえさんきゅう)
    2. (ロ) ( 副詞ふくしてきに「てんしたにおいて」ので ) 日本にっぽんちゅうのどこででもすべて。また、どこにいったい。
      1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「あめのした、こよひのおくりものよりこえて、さらにさらにせじ。これよりいつかあらん。〈りゃく〉あめのした、これよりこえたるこころにくさ、いつかあらん」(出典しゅってん宇津うつたもつ物語ものがたり(970‐999ごろ内侍ないしとく)

てん‐げ【天下てんか

  1. 名詞めいし ( 「げ」は「した」の呉音ごおん ) =てんか(天下てんか
    1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「てんげにおぼつかなくおぼゆとも、ふかざいは、〈りゃく〉じねんにおもひでらるるものなり」(出典しゅってん宇津うつたもつ物語ものがたり(970‐999ごろ内侍ないしとく)

天下てんか補助ほじょ注記ちゅうき

みのあきらかでないものは「てんか」のこうあつかった。→「てんか(天下てんか」の補注ほちゅう


あめ‐が‐した【天下てんか

  1. 名詞めいし
  2. あめのした(天下てんか
    1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「入道にゅうどう相国しょうこくむすめ建礼門院けんれいもんいん、〈りゃく御悩ごのうとて、くものうへあめしたの歎きにてぞありける」(出典しゅってん平家ひらか物語ものがたり(13Cまえさん)
  3. きく一種いっしゅで、はなむらがって、かさひらくようにかせたもの。〔重訂じゅうてい本草ほんぞう綱目こうもく啓蒙けいもう(1847)〕

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天下てんか (てんか)

古代こだい中国ちゅうごく由来ゆらいし,文字もじどおりにはぜん世界せかい意味いみし,〈天子てんし〉の統治とうち対象たいしょうかたり。〈天子てんしみん父母ちちははさく(た)り,もっ天下てんかあるじる〉(《しょけい》),すなわち〈てん〉から〈いのち〉をけた〈てん〉の〈〉が,〈てん〉の〈した全体ぜんたい最高さいこう支配しはいしゃとなるとかんがえるのである。したがって,〈天下てんか〉に正統せいとう天子てんしは1にんしかありえず,外国がいこく予想よそうする〈くに〉とちがい,〈天下てんか〉には理論りろんじょう境界きょうかいせんがない。それゆえ,〈天下てんか〉のかたり普遍ふへんせい語感ごかんともない,同時どうじに,〈天下てんか人心じんしん〉〈天下てんかあざけり〉のしめすごとく,ある権威けんいかんじさせる。日本にっぽんでは,元興寺がんごうじとう露盤ろばんめい(596)に〈大和やまとこく天皇てんのう斯帰しま宮治みやじ天下でんか〉とあるのをはじめ,おそくも6世紀せいきまつ以降いこう天皇てんのうかんして〈天下でんか〉と表現ひょうげんしたれいおおく,《古事記こじき》もかく天皇てんのうについて〈……のみやましましまして天下てんか(あめのした)(し)らしめしき〉と反復はんぷくしている。すなわち,こうして天皇てんのう中国ちゅうごく天子てんし類比るいひし,その統治とうち対象たいしょうたる日本にっぽん列島れっとう一部いちぶぜん世界せかいとみなし,そこにおける最高さいこう支配しはいしゃであることを主張しゅちょうしたのである。原義げんぎからすればやや奇妙きみょうだが,こうして〈日本にっぽん全国ぜんこく〉が往々おうおう天下てんかばれるようになった。

 このかたり政治せいじ用語ようごとしては,おお政権せいけん日本にっぽん国内こくないにおける普遍ふへんてき権威けんい示唆しさし,強調きょうちょうするさいもちいられた。宣命せんみょうはしばしば〈天下てんか公民こうみん〉にびかけ,〈大赦たいしゃ〉のみことのり天下てんかくだり,聖武天皇しょうむてんのうは〈おっと天下てんかとみゆう(たも)つものちんなり。天下てんかいきおいゆうものちんなり〉(造立ぞうりゅう盧舎那仏るしゃなぶつみことのり)とほこっている。そして,このように天皇てんのうにかかわる場合ばあい,〈溥天のした王土おうどざるはなく,率土そっとはまおうしんざるはなし〉(《詩経しきょう》)という観念かんねんむすびつけられ,その普遍ふへんてき支配しはいけん強調きょうちょうされるれいが,幕末ばくまつふくめて史上しじょうすくなくない。一方いっぽう武士ぶし勢力せいりょくばすにつれ,武家ぶけ政権せいけんかんしてももちいられた。みなもと頼朝よりともは1185ねん文治ぶんじ1)〈今度こんど天下てんか草創そうそう也〉とごうして朝廷ちょうてい人事じんじ改革かいかくせまり,たてたけし式目しきもくは〈うけたまわひさに(北条ほうじょう朝臣あそん天下でんかを幷呑す〉とべている。北条ほうじょう足利あしかがについて〈天下てんかあるじ〉〈天下てんかぬしりょう〉などと表現ひょうげんしたれいもある。そして,領域りょういきてきいちえんてき支配しはい拡大かくだいしつつ,有力ゆうりょく武将ぶしょうたちが全国ぜんこく支配しはいしゃたらんとしてあらそった戦国せんごく時代じだいはいると,〈天下てんか面目めんぼく〉〈天下てんかそうふ〉〈天下てんかのぼる〉〈天下てんか仕置しおき〉〈天下てんかち〉〈天下てんか殿どの〉〈天下てんかる〉などとさかんにもちいられた。全国ぜんこく全国ぜんこく政権せいけん(あるいは中央ちゅうおう政権せいけん)の所在地しょざいち全国ぜんこく中央ちゅうおう政権せいけん,そしてその支配しはいしゃ個人こじんという同心円どうしんえんじょう重層じゅうそうした意味いみ構造こうぞう成立せいりつしたのである。たとえば〈天下てんかぬの〉の印判いんばん愛用あいようした織田おだ信長のぶながは,上洛じょうらく自分じぶんへの協力きょうりょくは〈天下てんかため〉〈天下てんかたいしてだいちゅう〉であると主張しゅちょうし,一方いっぽう将軍しょうぐん義昭よしあきには〈天下てんか褒貶ほうへん〉や〈沙汰さた〉を論拠ろんきょ非難ひなんびせ,ついにはみずから天下てんかもうつけくる〉としょうするなど,天下てんか権威けんい多義たぎせいをしきりに利用りようしている。

 とくに最高さいこう権力けんりょくしゃ端的たんてき天下てんか用法ようほうは,おそらく,元来がんらい関白かんぱくなどをす〈殿下でんか〉のとしての天下てんかとも交錯こうさくしつつ,足利あしかが時代じだい以後いごしだいにひろがった。そこで〈天下分てんかわ〉の関ヶ原せきがはらも,天下てんかとはすなわち徳川とくがわ将軍しょうぐん往々おうおう意味いみする。江戸えど山王さんのう神社じんじゃまつりを〈天下てんかさい〉とぶときはそうであり,〈天下てんかじょう〉〈天下てんか御法度ごはっと〉もおおくそうであろう。それは,中世ちゅうせい全国ぜんこくてき慣習かんしゅうほう意味いみする〈天下てんか大法たいほう〉と対照たいしょうてきであり,〈天下てんか〉が強力きょうりょくに〈統一とういつ〉されることによって,政治せいじてき権威けんい将軍しょうぐん集中しゅうちゅうしたことをあざやかに象徴しょうちょうしている。

 しかし,一方いっぽう天下てんか原義げんぎからする普遍ふへんせい語感ごかんは,権力けんりょく公共こうきょうせい強調きょうちょうしてその私的してき濫用らんようをみずからあるいはしたからいましめるためにも利用りようされた。とくに〈天下てんかおおやけす〉(《れい》),〈天下てんか一人ひとり天下てんかず,すなわ天下でんか天下てんか也〉(《ろく韜》)のは,明治めいじ初期しょきいたるまでしばしば援用えんようされた。南北なんぼくあさ時代じだいの《梅松うめまつろん》のごとく,〈わたしにあらず。天下てんかため〉〈天下てんか静謐せいひつため〉としょうして朝廷ちょうていさからった行動こうどう肯定こうていてき記述きじゅつしたれいもある。

 なお,日本にっぽん全国ぜんこく天下てんかとみなす無理むり幕末ばくまついたるとあらわとなった。しかし,文字もじどおりの天下てんかべつに〈宇内うだい〉〈万国ばんこく〉〈地球ちきゅう〉そして〈世界せかい〉とばれ,以後いご日本にっぽん全国ぜんこく天下てんか用法ようほうも,徐々じょじょ大時代おおじだいかんじをあたえるようになった。
執筆しっぴつしゃ

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日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ)天下てんか」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

天下てんか
てんか

てんいのちけたてん天子てんし)が、てんした(あめのした)を統治とうちするという中国ちゅうごくてき世界せかいかん日本にっぽんでは埼玉さいたまけん稲荷山いなりやま古墳こふん(いなりやまこふん)出土しゅつどかね錯銘(きんさくめい)てつけんに「天下でんかささえ大王だいおう(あめのしたしろしめすわかたけるのおおきみ)」(銘文めいぶんに「からし(しんがい)ねん」の干支えとがある。471ねん)、また熊本くまもとけん江田えだ船山ふなやま古墳こふん(えたふなやまこふん)出土しゅつどぎん錯銘(ぎんさくめい)大刀たちにも「天下でんか」のかたりがみえ、5世紀せいき後半こうはんまでに天下てんかかんする政治せいじ思想しそう受容じゅようしていた。ただし、当時とうじ倭国わのくに(わこく)は中国ちゅうごく南朝なんちょうそう(そう)とさつふう(さくほう)関係かんけいむすんでおり、中国ちゅうごく天下てんか支配しはいのもと、倭国わのくに支配しはい統治とうちけんのなかで天下てんかおさめたことになる。日本にっぽんにおける「天下でんか」の用法ようほうは、百済くだら(くだら)・しん(しらぎ)などのしげるこく(ばんこく)にたいする支配しはい歴史れきしてき前提ぜんていとなっていた。「天下でんか大王だいおう」の表記ひょうきは、のちの律令りつりょうほうで「御宇ぎょう天皇てんのう(あめのしたしろしめすすめらみこと)」にわった。

吉村よしむら武彦たけひこ

 古代こだい中国ちゅうごく創案そうあんされた独特どくとく世界せかいかんあらわかたり至上しじょう人格じんかくしんとしての「てん」が支配しはいするぜん世界せかいであると同時どうじに、天命てんめいけて天子てんしとなった有徳うとく(うとく)の為政者いせいしゃが「てん」にかわって統治とうちする世界せかい王土おうど)を意味いみする(したがって本来ほんらい天下てんか」と「王土おうど」はけっして対立たいりつ概念がいねんではなかった)。ただし不徳ふとく天子てんしあらわなでみん仁政じんせい(ぶみんじんせい)をわすれ、人民じんみんくるしめるような政治せいじをすれば、天命てんめいかわ(あらた)まってしん天子てんし登場とうじょうし、天下てんかてき世界せかいさい編成へんせいされるものとかんがえられた(易姓革命えきせいかくめいろん(えきせいかくめいろん))。「天下てんか」のかたり日本にっぽんでも上述じょうじゅつのように古代こだいから使つかわれているが、中世ちゅうせい以降いこう武家ぶけ政権せいけん時代じだいになると、武家ぶけ政権せいけん公共こうきょうせいという見地けんちから「天下てんか思想しそうや「天道てんとうてん)」思想しそう標榜ひょうぼう(ひょうぼう)し、王土おうど思想しそうによって一方いっぽうてきおうたけし王権おうけん絶対ぜったいする朝廷ちょうてい公家くげ勢力せいりょく対決たいけつしたり、下剋上げこくじょう(げこくじょう)の運動うんどう武家ぶけ政権せいけん成立せいりつ交替こうたいなどを正当せいとうした。とくに戦国せんごく安土あづち桃山ももやま時代じだいには日本にっぽん全国ぜんこく全国ぜんこく制覇せいは拠点きょてんとなった京都きょうとゆたか政権せいけん主権しゅけんしゃなどをさす流行りゅうこうとなった。

石毛いしげ ただし

石母田いしもたただしちょ日本にっぽん古代こだい国家こっかろん だい1』(1973・岩波書店いわなみしょてん)』吉村よしむら武彦たけひこちょ古代こだい天皇てんのう誕生たんじょう』(1998・角川書店かどかわしょてん)』石毛いしげただしちょ戦国せんごく安土あづち桃山ももやま時代じだい思想しそう」(石田いしだ一良かずよしへん体系たいけい日本にっぽん叢書そうしょ23 思想しそうⅡ』所収しょしゅう・1976・山川やまかわ出版しゅっぱんしゃ)』永原ながはらけいちょ天下てんかじん」(あさ直弘なおひろへん権威けんい支配しはい所収しょしゅう・1987・岩波書店いわなみしょてん)』石毛いしげただしちょゆたか政権せいけん政治せいじ思想しそう」(藤野ふじのたもつへんゆたか政権せいけん成立せいりつ所収しょしゅう・1994・雄山閣ゆうざんかく)』

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普及ふきゅうばん どおり天下てんか」のみ・字形じけい画数かくすう意味いみ

天下てんか】てんか

全土ぜんど。この。〔しょだい(ああ)、ひろすなわすなわすなわたけすなわすめらぎてん眷命し、よんを奄(えんいう)し、天下てんかきみさしむ。

どおりてん」の項目こうもく

出典しゅってん 平凡社へいぼんしゃ普及ふきゅうばん どおり普及ふきゅうばん どおりについて 情報じょうほう

とっさの日本語にほんご便利べんりちょう天下てんか」の解説かいせつ

天下てんか

ぜん世界せかいてんいのちけたものてんした支配しはいするという、天皇てんのう支配しはいりょく正当せいとうさ、広大こうだいさをあらわすことばであったが、織田おだ信長のぶなが(いちさんよんはち)の出現しゅつげん以降いこうくにえる統一とういつ概念がいねんとして、「天下てんかじん」(てんかびと)のように、至高しこうなるものをうえいただいた支配しはいしゃ統一とういつしゃというあらたな中央ちゅうおう集権しゅうけんぞうあらわすものとなった。

出典しゅってん (かぶ)朝日新聞あさひしんぶん出版しゅっぱん発行はっこう「とっさの日本語にほんご便利べんりちょうとっさの日本語にほんご便利べんりちょうについて 情報じょうほう

世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん旧版きゅうばんうち天下てんか言及げんきゅう

江戸えど時代じだい】より

…さらに戦争せんそうがなくなり,武士ぶし政治せいじてき地位ちい軍功ぐんこうによらず,家柄いえがらによって決定けっていされるようになると,家老がろう地位ちい東照宮とうしょうぐう将軍しょうぐん大名だいみょう伝統でんとうてき権威けんい完全かんぜん依存いぞんすることとなった。その存在そんざい天下てんか平和へいわつらなる主君しゅくん権威けんい完全かんぜん依存いぞんしているというてんでは,側近そっきん家老がろうおなじことになったのである。 この結果けっか本来ほんらい主君しゅくん側近そっきんとのあいだ固有こゆうのものであった情緒じょうちょ共有きょうゆう関係かんけいが,大名だいみょう家老がろうあいだにも強制きょうせいされることになった。…

中国ちゅうごく】より


政治せいじ機構きこう――封建ほうけんこおりけん
 中国ちゅうごく文明ぶんめいはしばしばローマのそれにくらべられ,政治せいじてき文明ぶんめいしょうせられる。たしかに両者りょうしゃは,おおくの少数しょうすう民族みんぞくをもふく非常ひじょう広域こういき,いわゆる〈天下てんか〉が,中央ちゅうおう政府せいふより派遣はけんする官吏かんりによって統一とういつてき統治とうちせられたてんている。しかし中国ちゅうごく場合ばあい周囲しゅうい先行せんこうする高度こうど文明ぶんめいをもたず,いわば独力どくりょくで,すこぶる整備せいびした政治せいじ機構きこうつくりあげたのである。…

※「天下てんか」について言及げんきゅうしている用語ようご解説かいせつ一部いちぶ掲載けいさいしています。

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