浜田はまだ藩はん（読よみ）はまだはん

石見いわみ国こく那賀なか郡ぐん浜田はまだ（現げん，島根しまね県けん浜田はまだ市し）に藩はん庁ちょうをおいた譜代ふだい中ちゅう藩はん。ただし初期しょきは外様とざま，末期まっきは親藩しんぱん。1619年ねん（元和がんわ5）古田ふるた重治しげはるが伊勢いせ国松くにまつ坂ざかより浜田はまだへ封ふうじられ，那賀なが，邑智おうち，美濃みの3郡ぐんで5万まん0400余よ石せきの浜田はまだ藩はんが成立せいりつした。藩はん領りょうは東部とうぶはほぼ江川えがわをもって石見いわみ銀山ぎんざん領りょうと境さかいするが，江川えがわ舟運しゅううんの要よう津つや銀山ぎんざんの所在地しょざいちは江川えがわを越こえて銀山ぎんざん領りょうに編入へんにゅうされた。西部せいぶと南部なんぶは津和野つわの藩はんと接せっするが，領域りょういき内ないに津和野つわの藩はんの飛地とびちがあるなど不自然ふしぜん複雑ふくざつな領域りょういきを形成けいせいした。49年ねん（慶安けいあん2）松平まつだいら（松井まつい）氏し，1759年ねん（宝たから暦れき9）本多ほんだ氏し，69年ねん（明和めいわ6）再ふたたび松井まつい氏し，1836年ねん（天保てんぽう7）松平まつだいら（越智おち）氏しと領主りょうしゅは交替こうたいし，領域りょういきの増減ぞうげんもたびたびあったが，幕末ばくまつ期きには6万まん1000余よ石せきとなった。領域りょういきの大だい部分ぶぶんは海岸かいがん部ぶに迫せまる山地さんち帯たいが占しめ，狭長きょうちょうな海岸かいがんも多おおくは砂丘さきゅう地ちで生産せいさん力りょくは低ひくく，産米さんまいはつねに不足ふそくしたので，越後えちご米まいや秋田あきた米まいなどの輸入ゆにゅうにまたなければならなかった。その代償だいしょうとして銑鉄せんてつ，半紙はんし，蠟などの特産とくさん物ぶつを奨励しょうれいし，漁業ぎょぎょう振興しんこうを推進すいしんしたが，たびたびの領主りょうしゅの更迭こうてつや凶作きょうさくなどで藩はん財政ざいせいは極度きょくどに逼迫ひっぱくし，年貢ねんぐ先さき納おさめや藩はん発起ほっきの頼母子講たのもしこうなどにより危機ききの回避かいひを図はからなければならなかった。藩主はんしゅ所しょ替がえにまで発展はってんした天保てんぽうの密みつ貿易ぼうえき事件じけん（竹島たけしま事件じけん）も，藩はん財政ざいせいの危機ききを背景はいけいとしたものであった。藩校はんこうは松井まつい氏し時代じだいに長ちょう善よし館かん，越智おち氏し時代じだいは道学どうがく館かんがあった。松井まつい氏し時代じだいは藩主はんしゅ康かん定じょう，康かん任つとむの好学こうがくもあり国学こくがくが興隆こうりゅうし，鈴屋すずや門人もんじん録ろくに士し庶19名めいが名なを連つらね，小篠こしの御ご野ののような碩学せきがくも出でた。1864年ねん（元もと治ち1），66年ねん（慶応けいおう2）の長州ちょうしゅう征伐せいばつにあたっては浜田はまだ藩はんは第だい一線いっせんとなり，益田ますだで戦たたかったが敗退はいたいし，66年ねん7月がつ18日にち浜田はまだ城じょうは炎上えんじょう落城らくじょうした。藩主はんしゅ松平まつだいら武たけ聡さとしは海路かいろ出雲いずもに落おち松江まつえ藩はんを頼たよったが，のち飛地とびちの美作みさく国こく鶴田つるた（たづた）へ移うつった。浜田はまだ藩はん領りょうは長州ちょうしゅうの軍政ぐんせい下かにおかれ，69年ねん（明治めいじ2）大森おおもり県けんの管下かんかに入はいったが，70年ねん3月がつ浜田はまだ県けんとなり，76年ねん4月がつ島根しまね県けんへ統合とうごうされた。
執筆しっぴつ者しゃ：江面えづら 龍雄たつお