(Translated by https://www.hiragana.jp/)
宇宙広場で考える: 2023

2023ねん12月30にち

未成年みせいねんかり放免ほうめんしゃへの在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょかについて 特例とくれい措置そちを「特例とくれい」たらしめているもの


  日本にっぽん入管にゅうかん体制たいせいは、いわば「あべこべな世界せかい」とでもうべきものです。そこでは、「異常いじょう」としかいようのないことがらが「普通ふつうのこと」としてまかりとおっている。「たりまえ」のようにおこなわれていることは、ことごとく「おかしい」。そういう世界せかいです。

 入管にゅうかんかんするニュースにせっするとき、わたしたちはそこでほうじられた出来事できごとが「ニュース」、すなわち新奇しんき出来事できごととしてほうじられるということの異常いじょうさに、しばしばめまいのような感覚かんかくをいだくことになるのです。ほうじられた出来事できごとそのものにおどろくというよりも、そこに「めずらしい」「特異とくいな」「異例いれいな」出来事できごとであるという意味いみあたえている文脈ぶんみゃくのほうにこそ、おどろかされることになります。

 たとえば、つぎのようなニュースにせっしたときに。


「うれしいしおどろきも」タイじん母親ははおやのもとで日本にっぽんまれた高校生こうこうせい中学生ちゅうがくせいあねおとうと在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょか これまでは在留ざいりゅう資格しかくなく「かり放免ほうめん」 | SBC NEWS | 長野ながののニュース | SBC信越放送しんえつほうそう(2023ねん12月26にち(火) 12:09)


 ここでほうじられているのは、高校生こうこうせい中学生ちゅうがくせいあねおとうと在留ざいりゅう資格しかくたという事実じじつです。しかし、そもそもこの事実じじつにニュースとしてほうじるべき価値かち意味いみあたえている文脈ぶんみゃくなになのかということにこそ、着目ちゃくもくしなければならないようにおもいます。

 それは、日本にっぽんまれのひとが、高校生こうこうせい中学生ちゅうがくせい年齢ねんれいにまでなりながら、在留ざいりゅう資格しかくをえられず、退去たいきょ強制きょうせい処分しょぶん対象たいしょうになっていたということ、またそういうことがこりうるのだということです。これは、ほう制度せいどそのもの、あるいはこれまでの入管にゅうかん政策せいさくそのものに根本こんぽんてき欠陥けっかんがあるというほかない事態じたいです。

 ところで、このあねおとうとへの在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょかは、うえ記事きじでもすこしふれられていますが、今年ことし8がつ発表はっぴょうされた政府せいふ方針ほうしんにもとづくものです。入管にゅうかんほう改定かいていほう可決かけつ成立せいりつ(6がつ)をけて、8がつ4にち法務大臣ほうむだいじんは、在留ざいりゅう長期ちょうきしたどもにたいして、家族かぞく一体いったいとして在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょかをし在留ざいりゅう資格しかくあたえる方向ほうこう検討けんとうするとの政府せいふ方針ほうしん発表はっぴょうしました*1

 以下いか画像がぞうは、その法務大臣ほうむだいじん会見かいけん資料しりょうです。

2023.8.4法務大臣ほうむだいじん記者きしゃ会見かいけん資料しりょう

入管にゅうかんほう改定かいていほう施行しこうまでに「今回こんかいかぎり」のいわば特例とくれい措置そちとして
日本にっぽん出生しゅっしょうして
小学校しょうがっこう中学校ちゅうがっこうまた高校こうこう教育きょういくけており、
つづ本邦ほんぽう生活せいかつをしていくことをしん希望きぼうしている
どもとその家族かぞく
対象たいしょうとして在留ざいりゅう資格しかく付与ふよ検討けんとうするとのことです。
 ただし、「おや看過かんかがた消極しょうきょく事情じじょうがある場合ばあい」は除外じょがいするとのこと。


 ここでもやはりうべきなのは、そもそもこの特例とくれい措置そちを「特例とくれい」たらしめている文脈ぶんみゃくなになのかということです。日本にっぽんまれの学齢がくれいどもたちが、在留ざいりゅう資格しかくあたえられずにいわば送還そうかん対象たいしょうとされた状態じょうたいで、200にん以上いじょうもこんにちまで放置ほうちされてきたわけです。これは、入管にゅうかん政策せいさく作為さくいによるものにほかなりません。

 いま「特例とくれい」として在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょかをするかどうか入管にゅうかん検討けんとうするのだといっているのですけれども、そもそも、その検討けんとう対象たいしょうとなっている200にんあまりのどもたちにいまのいままで在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょかを「しない」という方針ほうしんをとってきたのが入管にゅうかんです。おや超過ちょうか滞在たいざいだったり正規せいき入国にゅうこくした経緯けいいがあったりということで、その在留ざいりゅう資格しかくみとめないまま放置ほうちしてきた。この、あきらかにおかしな従来じゅうらい入管にゅうかん方針ほうしんが、今回こんかい特例とくれい措置そちを「特例とくれい」たらしめているのです。常態じょうたいがめちゃくちゃに異常いじょうなので、日本にっぽんまれの学齢がくれいどもの在留ざいりゅう正規せいきしましょう、その日本にっぽんらしていくにあたって家族かぞく分離ぶんりしょうじないよう家族かぞく一体いったい正規せいきしましょうという、ごくごくたりまえ措置そちが「特例とくれい」としてなされることになるのです。

 さて、さきのあねおとうとのケースでは、「2人ふたり母親ははおや過去かこ正規せいき入国にゅうこくした経緯けいいがあ」るということで、今回こんかい措置そちでは在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょかがなされなかったということです。

 うえ画像がぞう法務大臣ほうむだいじん会見かいけん資料しりょうでも、「おや看過かんかがた消極しょうきょく事情じじょうがある場合ばあい」は今回こんかい措置そち対象たいしょうから除外じょがいするとし、その「看過かんかがた消極しょうきょく事情じじょう」のれいとして「不法ふほう入国にゅうこく不法ふほう上陸じょうりく」をあげています。

 このけんにかかわらず、入管にゅうかんは、おな入管にゅうかんほう違反いはんでも、超過ちょうか滞在たいざい入管にゅうかんぶところの「不法ふほう残留ざんりゅう」)とくらべて正規せいき入国にゅうこく入管にゅうかん用語ようごう「不法ふほう入国にゅうこく不法ふほう上陸じょうりく」)をかなりおもくみる方針ほうしんをとっています。しかし、入管にゅうかんがこうしてとっている方針ほうしんについて、それが妥当だとうなのかどうか、市民しみんがわからも批判ひはん検討けんとうされるべきではないかとおもいます。

 今回こんかい報道ほうどうされている東京とうきょう入管にゅうかん措置そちは、あねおとうと在留ざいりゅう資格しかくみとめる一方いっぽうでその母親ははおやにはみとめない(依然いぜん退去たいきょ強制きょうせい処分しょぶんされていない状態じょうたいく)というものですから、家族かぞくをバラバラにくものです。どもたちの在留ざいりゅうみとめてやるが、母親ははおや日本にっぽんからけと。ひどいものです。たんに(とあえていますけども)入国にゅうこくのさいに入管にゅうかんほう規定きていされた手続てつづきにのっとらなかったというだけのことで、国家こっかがその権力けんりょく使つかって家族かぞくをバラバラにするような措置そちをとるのがゆるされるのでしょうか。わたしにはとうていそうはおもえません。

 未成年みせいねんかり放免ほうめんしゃとその家族かぞく在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょかをせよという署名しょめいびかけられています。オンラインでも署名しょめいできます。


オンライン署名しょめい日本にっぽんまれそだった未成年みせいねんかり放免ほうめんしゃとその家族かぞく在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょかを! ・ Change.org


 入管にゅうかんほう改悪かいあくほう可決かけつ成立せいりつ先立さきだつ23ねん5がつ4にちはじまった署名しょめい募集ぼしゅうですが、いまも募集ぼしゅうつづいているので、よかったらぜひ署名しょめい情報じょうほう拡散かくさんをおねがいします。



ちゅう

*1: 法務省ほうむしょう法務大臣ほうむだいじん臨時りんじ記者きしゃ会見かいけん概要がいよう(2023ねんがつにちかね))および画像がぞう会見かいけん資料しりょう送還そうかん忌避きひしゃのうち本邦ほんぽう出生しゅっしょうしたどもの在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょかかんする対応たいおう方針ほうしんについて」(出入国しゅつにゅうこく在留ざいりゅう管理庁かんりちょう参照さんしょう

2023ねん12月14にち

改悪かいあく入管にゅうかんほうむ】監理かんり措置そちとはなにか?〈3〉


改悪かいあく入管にゅうかんほうむ】監理かんり措置そちとはなにか?〈1〉〈2〉からのつづき


1.はじめに

 改悪かいあく入管にゅうかんほう創設そうせつされることになっている監理かんり措置そち制度せいどについての記事きじは、3かいとなる今回こんかい最後さいごです。この制度せいど最大さいだい問題もんだいてんは、「監理かんりじん」として入管にゅうかん選定せんていした人間にんげんに、「監理かんりしゃ」(監理かんり措置そちけて収容しゅうようかれたひと)の生活せいかつ行動こうどう監視かんしさせるというところにあります。監理かんりじん」には入管にゅうかんへの届出とどけで報告ほうこく義務ぎむされ、報告ほうこくをおこたると罰則ばっそく対象たいしょうになります。

 今回こんかい記事きじでは、その「監理かんりじん」について、あたらしい入管にゅうかんほう条文じょうぶんでどう規定きていしているのか、というところからみていきます。



2.「監理かんりじん」について

 改定かいていほうで「監理かんりじん」について規定きていしているのは、監理かんり措置そちAはだい44じょうの3の各項かくこう監理かんり措置そちBはだい52じょうの3の各項かくこうです。この「監理かんりじん」の規定きてい内容ないようは、監理かんり措置そちAと監理かんり措置そちBとでほぼおなじです。なので、ここでは基本きほんてきには監理かんり措置そちBのほうの条文じょうぶんだけをみていくことにします。


(1)監理かんりじん選定せんてい

52じょうの3だい1こう監理かんり措置そちB)

監理かんりじんは、次項じこうからだいこうまでに規定きていする監理かんりじん責務せきむ理解りかい当該とうがい監理かんりしゃ監理かんりじんとなることを承諾しょうだくしているものであつて、その任務にんむ遂行すいこう能力のうりょく考慮こうりょして適当てきとうみとめられるものなかから、監理かんり措置そち決定けっていをする主任しゅにん審査しんさかん選定せんていするものとする。」


 監理かんりじん選定せんていするのは主任しゅにん審査しんさかんかく地方ちほう入管にゅうかんきょく局長きょくちょうなど)です。



(2)監理かんりじん責務せきむ

 うえでみた52じょうの3だい1こうかれているように、どうじょうだい2こうからだい5こうで「監理かんりじん責務せきむ」なるものが規定きていされています*1

 さて、現行げんこうかり放免ほうめん制度せいどにおいては、入管にゅうかんきょくかり放免ほうめん許可きょかするにあたって、おおくの場合ばあい身元みもと保証人ほしょうにんをたてることをもとめてきます。かり放免ほうめんされるひと家族かぞく親族しんぞく友人ゆうじんのほか、支援しえんしゃ弁護士べんごし身元みもと保証人ほしょうにんになっています。監理かんり措置そち制度せいどにおける「監理かんりじん」は、このかり放免ほうめん保証人ほしょうにん一見いっけんているようにみえますが、じつはまったくことなります。

 かり放免ほうめん保証人ほしょうにんは、「下記かきものかり放免ほうめん許可きょかされたうえは、法令ほうれい遵守じゅんしゅする(させる)とともに、かり放免ほうめんされたしたがう(したがわせる)ことを誓約せいやくします」とかれた書面しょめん署名しょめいもとめられます。しかし、そもそも入管にゅうかんほうじょう、「保証人ほしょうにん」についての規定きていなにもありません。

 これにたいし、監理かんり措置そち制度せいどにおける監理かんりじんには、入管にゅうかんほうで「監理かんりじん責務せきむ」なるものが規定きていされているわけです。まずこのてんが、監理かんり措置そちかり放免ほうめんおおきくことなるてんです。

 では、その「責務せきむ」の内容ないようをひとつひとつみていきましょう。


だい52じょうの3だい2こう監理かんり措置そちB)

監理かんりじんは、自己じこ監理かんりする監理かんりしゃによる出頭しゅっとう確保かくほその監理かんり措置そち条件じょうけん遵守じゅんしゅ確保かくほのために必要ひつよう範囲はんいないにおいて、当該とうがい監理かんりしゃ生活せいかつじょうきょう把握はあくならびに当該とうがい監理かんりしゃたいする指導しどうおよ監督かんとくおこなものとする。」


 ここが監理かんり措置そち制度せいど問題もんだい核心かくしん部分ぶぶんです。監理かんり措置そちとは、監理かんりじん監理かんりしゃ生活せいかつじょうきょう監視かんし把握はあくさせ、監理かんり措置そち条件じょうけん違反いはんしていないかその行動こうどう見張みはらせるという制度せいどであるわけです。


だい52じょうの3だい3こう監理かんり措置そちB)

監理かんりじんは、自己じこ監理かんりする監理かんりしゃによる出頭しゅっとう確保かくほその監理かんり措置そち条件じょうけん遵守じゅんしゅ確保かくほするため、当該とうがい監理かんりしゃからの相談そうだんおうじ、当該とうがい監理かんりしゃたいし、住居じゅうきょ維持いじかか支援しえん必要ひつよう情報じょうほう提供ていきょう助言じょげんその援助えんじょおこなうようにつとめるものとする。」


 このこうむと、このあたらしい制度せいど監理かんりじんけるものとして、支援しえんしゃなども想定そうていされているようにおもえます。現行げんこうかり放免ほうめん制度せいどでは、支援しえんしゃ弁護士べんごし身元みもと保証人ほしょうにんけているケースがすくなくありません。入管にゅうかん施設しせつ収容しゅうようされたひとのなかには、かり放免ほうめん保証人ほしょうにんたのめる家族かぞく親族しんぞく日本にっぽんにおらず、たよりにできる同国どうこくじんのコミュニティもないというひとすくなくありません。そうしたひとは、支援しえんしゃ弁護士べんごし保証人ほしょうにんけてもらわなければ、かり放免ほうめん申請しんせいすることができないわけです。

 入管にゅうかん収容しゅうよう収容しゅうようされるひとにとってきわめて過酷かこくなものであること、医療いりょう放置ほうち職員しょくいんによる暴行ぼうこうなどの人権じんけん侵害しんがい事件じけん横行おうこうしていることは、近年きんねんたびたび報道ほうどうされ、おおくのひとるところとなっています。そもそも、このブログでもなんいてきたように、劣悪れつあく環境かんきょうでの長期ちょうき収容しゅうよう入管にゅうかん帰国きこく強要きょうよう手段しゅだんとして意図いとてき戦略せんりゃくてきにもちいてきたのであり、そのことを法務大臣ほうむだいじん入管にゅうかん幹部かんぶらはかくしてすらいません*2

 まぎれもなく入管にゅうかん収容しゅうよう施設しせつでおこなわれていることは拷問ごうもんであり、長期間ちょうきかん収容しゅうようされて心身しんしん破壊はかいされるひとはあとをたたず、難民なんみん申請しんせいしゃ外部がいぶとの通信つうしんをいちじるしく誓約せいやくされた環境かんきょう収容しゅうようされて自分じぶん難民なんみんであることの立証りっしょう作業さぎょう入管にゅうかんによって日々ひび妨害ぼうがいされています。

 支援しえんしゃ弁護士べんごしかり放免ほうめん保証人ほしょうにんけてきたのは、こうした入管にゅうかんによる人権じんけん侵害しんがいゆるせないからであって、またそこに支援しえん切実せつじつ必要ひつようとされているからにほかなりません。入管にゅうかん手先てさきになるために保証人ほしょうにんけている支援しえんしゃ弁護士べんごしなどおりません。

 ところが、監理かんり措置そちにおいては、監理かんりじんはいわば入管にゅうかん手先てさきとして監理かんりしゃ監視かんしし、その行動こうどう監督かんとくすることがその「責務せきむ」としてされるのです。監理かんりしゃにとっては、監理かんり措置そちによって収容しゅうよう施設しせつからることができても、生活せいかつじょうきょう行動こうどう日々ひびどのようにすごしているのか、外出がいしゅつさき家賃やちん医療いりょう生活せいかつなどをそれぞれどうやって捻出ひねりだしているのか、報酬ほうしゅうける活動かつどうをしていないか、など*3)を、入管にゅうかんへの届出とどけで報告ほうこく義務ぎむされた監理かんりじんによってかん監督かんとくされるということになります。

 (1)でみたように、監理かんりじん選定せんていするのは入管にゅうかん主任しゅにん審査しんさかん)ですから、現在げんざいかり放免ほうめん保証人ほしょうにんけている支援しえんしゃのすべてを、入管にゅうかん監理かんりじんとして選定せんていするとはかぎらないわけですけれども、支援しえんしゃにとって、かり放免ほうめん保証人ほしょうにんになるのと監理かんり措置そちにおける監理かんりじんになるのとでは、その意味いみあいはまったくことなってきます。



(3)監理かんりじんされる届出とどけで義務ぎむ

 「監理かんりじん責務せきむ」としてつぎに規定きていされているのは、主任しゅにん審査しんさかんたいする届出とどけで報告ほうこく義務ぎむです。

 まず、届出とどけで義務ぎむについて。どのようなときに監理かんりじんとどをしなければならないとされるのか、以下いかにまとめておきます*4


監理かんり措置そちA(だい44じょうの3だい4こう)

監理かんりしゃがつぎのいずれかに該当がいとうすることをったとき。

  • 逃亡とうぼうし、また逃亡とうぼうするとうたがうにりる相当そうとう理由りゆうがある。
  • 証拠しょうこ隠滅いんめつし、また隠滅いんめつするとうたがうにりる相当そうとう理由りゆうがある。
  • 監理かんり措置そち条件じょうけん違反いはんした。
  • 主任しゅにん審査しんさかん許可きょかけないで報酬ほうしゅうける活動かつどうおこなった、また収入しゅうにゅうともな事業じぎょう運営うんえいする活動かつどうおこなった。
  • 監理かんりしゃされた届出とどけで義務ぎむ(だい44じょうの6)に違反いはんした。

監理かんりしゃ死亡しぼうしたとき。

上記じょうきのほか、監理かんり措置そち継続けいぞくすることに支障ししょうしょうずる場合ばあいとして法務省ほうむしょうれいさだめる場合ばあい該当がいとうするとき。


監理かんり措置そちB(だい52じょうの3だい4こう)

監理かんりしゃがつぎのいずれかに該当がいとうすることをったとき。

  • 逃亡とうぼうし、また逃亡とうぼうするとうたがうにりる相当そうとう理由りゆうがある。
  • 収入しゅうにゅうともな事業じぎょう運営うんえいする活動かつどうしくは報酬ほうしゅうける活動かつどうおこない、またはこれらの活動かつどうおこなうとうたがうにりる相当そうとう理由りゆうがある。
  • 監理かんり措置そち条件じょうけん違反いはんした。
  • 監理かんりしゃされた届出とどけで義務ぎむ(だい52じょうの5)に違反いはんした。

監理かんりしゃ死亡しぼうしたとき。

上記じょうきのほか、監理かんり措置そち継続けいぞくすることに支障ししょうしょうずる場合ばあいとして法務省ほうむしょうれいさだめる場合ばあい該当がいとうするとき。


 前回ぜんかい記事きじべたように、監理かんり措置そちBは全面ぜんめんてき就労しゅうろう禁止きんしされる(例外れいがいなし)のにたいし、監理かんり措置そちAは就労しゅうろう報酬ほうしゅうける活動かつどう)が許可きょかされる場合ばあいがあります。

 監理かんり措置そちAにおいて監理かんりしゃ許可きょかがい就労しゅうろうをした場合ばあい監理かんり措置そちBにおいて監理かんりしゃ就労しゅうろうした場合ばあい監理かんりじん主任しゅにん審査しんさかんにこれをとどなければならないということになります。また、監理かんりしゃの「逃亡とうぼう」や監理かんり措置そち条件じょうけん違反いはんにも監理かんりじん届出とどけで義務ぎむされています。

 なお、うえ監理かんりじん届出とどけで義務ぎむづけられている事項じこうのうち黄色きいろくマークした部分ぶぶんは、監理かんり措置そち取消とりけ事由じゆう監理かんり措置そちA:だい44じょうの4だい2こう, 監理かんり措置そちB:だい52じょうの4だい2こう)にもなっています。したがって、これらを監理かんりじんとど場合ばあい監理かんり措置そちされて監理かんりしゃ収容しゅうようされてしまうということになりえます。

 そして、あとでべるように届出とどけでをしなかったり、虚偽きょぎ届出とどけでをした場合ばあい監理かんりじん罰則ばっそく(10まんえん以下いか過料かりょう)の対象たいしょうとなります。たとえば、監理かんりしゃ自身じしん家族かぞく生活せいかつのためにアルバイトをしたのをったとき、監理かんりじんがこれを入管にゅうかんとどれば監理かんりしゃ収容しゅうようされてしまうでしょう。しかし、とどなければ監理かんりじん自身じしん罰則ばっそくされるかもしれないということです。



(4)監理かんりじんされる報告ほうこく義務ぎむ

 うえ届出とどけで義務ぎむにくわえ、監理かんりじん主任しゅにん審査しんさかんたいする報告ほうこく義務ぎむ規定きていされています。


監理かんり措置そちB:「主任しゅにん審査しんさかんは、監理かんりしゃによる出頭しゅっとう確保かくほその監理かんり措置そち条件じょうけん遵守じゅんしゅ確保かくほのために必要ひつようがあるときは、法務省ほうむしょうれいさだめるところにより、監理かんりじんたいし、当該とうがい監理かんりしゃ生活せいかつじょうきょう監理かんり措置そち条件じょうけん遵守じゅんしゅじょうきょうその法務省ほうむしょうれいさだめる事項じこう報告ほうこくもとめることができる。この場合ばあいにおいては、監理かんりじんは、法務省ほうむしょうれいさだめるところにより、当該とうがい報告ほうこくをしなければならない。」(だい52じょうの3だい5こう)


 監理かんり措置そちAについても、ほぼおな内容ないよう規定きていがあります(だい44じょうの3だい5こう)。

 条文じょうぶんは、「主任しゅにん審査しんさかんは、……監理かんりじんたいし……報告ほうこくもとめることができる」というかたをしているので、一見いっけんしたところ、なにか特別とくべつ場合ばあいにだけ「報告ほうこくもとめる」のかなという印象いんしょうけるのですけれども。しかし、「報告ほうこくもとめる」かどうかの判断はんだん結局けっきょく入管にゅうかんがすることになるので、すべてのケースで監理かんりじん報告ほうこく要求ようきゅうされるとかんがえたほうがよいでしょう。そして、入管にゅうかん主任しゅにん審査しんさかん)がもとめたら、監理かんりじんは「当該とうがい報告ほうこくをしなければならない」とその報告ほうこく義務ぎむづけられます。

 このように、監理かんりじん監理かんりしゃ生活せいかつ行動こうどう日常にちじょうてきかんさせて入管にゅうかん報告ほうこくさせ、監理かんりしゃがアルバイトして報酬ほうしゅうったり監理かんり措置そち条件じょうけんへの違反いはんがあったりすればそれを入管にゅうかんにたれめと要求ようきゅうするのが、この監理かんり措置そち制度せいどです。

 従来じゅうらいかり放免ほうめん制度せいどにおいても、入管にゅうかんは「動静どうせい監視かんし」としょうして、かり放免ほうめんしゃ生活せいかつ行動こうどう調査ちょうさ把握はあくしようとしてきました。この「動静どうせい監視かんし」を民間みんかんじんである監理かんりじんにも一部いちぶアウトソース(外部がいぶ委託いたく)しようというのが、監理かんり措置そち制度せいどであるとえるでしょう。監理かんりじん監理かんりしゃをスパイする役割やくわりわされることになります。

 監理かんりしゃにとってみれば、家族かぞく友人ゆうじん、あるいは支援しえんしゃ弁護士べんごしなど、自分じぶん支援しえんする立場たちば人間にんげんをつうじて、自身じしん行動こうどう監視かんし監督かんとくされるということです。自分じぶんにとって身近みぢか存在そんざい、しかも自分じぶん必要ひつよう生活せいかつじょう資源しげん情報じょうほう提供ていきょうしてくれるものから見張みはられるとなれば、あるめんでは入国にゅうこく警備けいびかんかんされる以上いじょうにその監視かんし強度きょうどたかくなるでしょう。

 入管にゅうかん視点してんからいえば、監理かんりしゃたいする支援しえんしゃらの親密しんみつさや信頼しんらい関係かんけい資源しげんとして利用りようすることで、より強度きょうどたかかん管理かんりをおこなおうというのが、監理かんり措置そち制度せいど創設そうせつした意図いととしてあるでしょう。入管にゅうかんという組織そしきうごかしている連中れんちゅうはん社会しゃかいせい邪悪じゃあくさがよくあらわれています。



(5)監理かんりじんたいする罰則ばっそく行政ぎょうせいばつとしての「過料かりょう」)

 入管にゅうかんほうだい70じょう以下いか罰則ばっそく規定きていとなっています。

 だい77じょうの2は「つぎ各号かくごういずれかに該当がいとうするものは、10まんえん以下いか過料かりょうしょする。」としており、今回こんかいほう改定かいていでは、そのだい2ごうからだい6ごうがそれぞれ監理かんりじん届出とどけで報告ほうこく義務ぎむ違反いはんへの罰則ばっそくとして新設しんせつされました。各号かくごう以下いかのとおりです。


  • だい2ごうだい44じょうの3だい4こう規定きていによる届出とどけでをせず、また虚偽きょぎ届出とどけでをしたもの」(→監理かんり措置そちAについての届出とどけで義務ぎむ違反いはん
  • だい3ごうだい44じょうの3だい5こう規定きていによる報告ほうこくをせず、また虚偽きょぎ報告ほうこくをしたもの」(→監理かんり措置そちAについての報告ほうこく義務ぎむ違反いはん
  • だい4ごうだい44じょうの3だい7こうだい52じょうの3だい6こうにおいて準用じゅんようする場合ばあいふくむ。)の規定きていによる届出とどけでをせず、また虚偽きょぎ届出とどけでをしたもの」(→監理かんり措置そちAおよびBについて、監理かんりじん辞任じにんする場合ばあい届出とどけで義務ぎむ違反いはん
  • だい5ごうだい52じょうの3だい4こう規定きていによる届出とどけでをせず、また虚偽きょぎ届出とどけでをしたもの」(→監理かんり措置そちBについての届出とどけで義務ぎむ違反いはん
  • だい6ごうだい52じょうの3だい5こう規定きていによる報告ほうこくをせず、また虚偽きょぎ報告ほうこくをしたもの」(→監理かんり措置そちBについての報告ほうこく義務ぎむ違反いはん



3.監理かんりしゃたいする罰則ばっそく規定きてい

 今回こんかいほう改定かいてい創設そうせつされた監理かんり措置そち制度せいどでは、監理かんりしゃたいする罰則ばっそく刑事けいじばつ!)が規定きていされています。このてんも、従来じゅうらいかり放免ほうめん制度せいどとのおおきなちがいです。


(1)就労しゅうろうたいする罰則ばっそく

だい70じょう つぎ各号かくごうのいずれかに該当がいとうするもの3ねん以下いか懲役ちょうえきしくは禁錮きんこしくは3ひゃくまんえん以下いか罰金ばっきんしょし、また懲役ちょうえきしくは禁錮きんこおよ罰金ばっきん併科へいかする

……

だい9ごう新設しんせつ) だい44じょうの2だい7こう規定きていする監理かんり措置そち決定けっていけたもので、だい44じょうの5だい1こう規定きていによる許可きょかけないで報酬ほうしゅうける活動かつどうおこなったものまた収入しゅうにゅうともな事業じぎょう運営うんえいする活動かつどうおこなったもの(在留ざいりゅう資格しかくをもって在留ざいりゅうするもののぞく。)

だい10ごう新設しんせつ) だい52じょうの2だい6こう規定きていする監理かんり措置そち決定けっていけたもので、収入しゅうにゅうともな活動かつどうおこなったものまた報酬ほうしゅうける活動かつどうおこなったもの


 だい9ごう監理かんり措置そちA、だい10ごう監理かんり措置そちBについての規定きていです。

 かり放免ほうめんについては、現行げんこうほう改定かいていほういずれにおいても、就労しゅうろうかり放免ほうめん条件じょうけん違反いはんにはわれうるものの、刑事けいじばつ対象たいしょうではありません。今回こんかい創設そうせつされる監理かんり措置そち制度せいどは、就労しゅうろう監理かんり措置そち条件じょうけん違反いはんうだけでなく、これを犯罪はんざいして刑罰けいばつ対象たいしょうにするというてんで、あるしゅ一線いっせんをこえた悪法あくほうだとうべきです。

 ごくごくたりまえのことをいますが、家族かぞくなどをふくめて支援しえんけられる人間にんげん関係かんけいがとぼしいひと、あるいは資産しさんのないひとにとって、就労しゅうろうきていていくのにかせない重要じゅうよう条件じょうけんになることがあります。社会しゃかい保障ほしょうからほとんど排除はいじょされている正規せいき滞在たいざい外国がいこくじんにとっては、なおさらそうです。したがって、就労しゅうろう禁止きんしするということが、ときとして「ね」とっているにひとしい場合ばあい存在そんざいするわけです。就労しゅうろう犯罪はんざい刑事けいじばつ監理かんり措置そち制度せいどは、きること、きようとすること自体じたい犯罪はんざいとしてばっしようとするものです。これは、たかが(とあえていますが)国家こっか出入国しゅつにゅうこく管理かんり業務ぎょうむを、人間にんげん生存せいぞんけんよりも大事だいじにする立法りっぽうであり、物事ものごと軽重けいちょうについての価値かちのつけかたが完全かんぜんくるっているとしかいようがありません。

 なお、2の(3)(4)でべたように、監理かんりじんには届出とどけで報告ほうこく義務ぎむされます。監理かんりじんにとっては、ほう規定きていされた義務ぎむたすことで、なんのつみもない、たんに仕事しごとをしてその対価たいかとして報酬ほうしゅうっただけの監理かんりしゃ刑務所けいむしょおくるということに、なりかねません。



(2)「逃亡とうぼう」にたいする罰則ばっそく

だい72じょう つぎ各号かくごうのいずれかに該当がいとうするものは、1ねん以下いか懲役ちょうえきしくは20まんえん以下いか罰金ばっきんしょし、またはこれを併科へいかする

……

だい3ごう新設しんせつ) だい44じょうの2だい1こうしくはだい6こうまただい52じょうの2だい1こうしくはだい5こう規定きていもとづきされた条件じょうけん違反いはんして、逃亡とうぼうし、また正当せいとう理由りゆうがなくて呼出よびだしにおうじないもの

……

だい6ごう新設しんせつ) だい54じょうだい2こう規定きていによりかり放免ほうめんされたもので、どうこう規定きていもとづきされた条件じょうけん違反いはんして、逃亡とうぼうし、また正当せいとう理由りゆうがなくて呼出よびだしにおうじないもの


 監理かんり措置そち制度せいどにおいては、上記じょうきだい6ごうのとおり、監理かんりしゃの「逃亡とうぼう」についても、監理かんり措置そち条件じょうけん違反いはんうばかりではなく、刑事けいじばつ規定きていされています。

 うえだい3ごうは、かり放免ほうめんしゃの「逃亡とうぼう」についての罰則ばっそく規定きていで、これも今回こんかい改定かいていほう新設しんせつされたものです。現行げんこうほうでは、かり放免ほうめんしゃの「逃亡とうぼう」はかり放免ほうめん条件じょうけん違反いはんわれ、かり放免ほうめん取消とりけし(→収容しゅうよう)の理由りゆうにはなりましたが、刑事けいじばつ対象たいしょうではありませんでした。



4.おわりに

 以上いじょう監理かんり措置そち制度せいど問題もんだいてんをみてきました。改悪かいあく入管にゅうかんほうは2024ねん6がつまでの施行しこう予定よていされているわけですけれど、ここで創設そうせつされる監理かんり措置そち制度せいどもまた、この法律ほうりつ施行しこうゆるしてはならない重要じゅうよう理由りゆうのひとつとえます。

 監理かんり措置そちについては、入管にゅうかん民族みんぞく差別さべつ人権じんけん侵害しんがいたたか全国ぜんこく市民しみん連合れんごうが「人間にんげん破壊はかいの『監理かんり措置そち制度せいど導入どうにゅう反対はんたい入管にゅうかんへの要請ようせい」とだいする反対はんたい声明せいめいしています。みじか文章ぶんしょうでわかりやすく監理かんり措置そち問題もんだいせい指摘してきしていますので、一読いちどくをおすすめします。

監理かんり措置そち制度せいど反対はんたい  声明せいめいぶん | 入管にゅうかん闘争とうそう市民しみん連合れんごう



ちゅう

*1: 監理かんり措置そちAにおいてはだい44じょうの3だい2こうからどう5こうで「監理かんりじん責務せきむ」が規定きていされています。条文じょうぶん内容ないよう監理かんり措置そちBのそれとほぼおなじ。 

*2: 入管にゅうかん長期ちょうき収容しゅうよう帰国きこく強要きょうよう手段しゅだんとして意図いとてき戦略せんりゃくてきにもちいてきたということは、以下いか記事きじなどでべました。 
「すがってはいけないワラ」とかうならでもげてだすけろよ 入管にゅうかんほう審議しんぎでの維新いしん梅村うめむら発言はつげんについて(2023ねん5がつ13にち
強制きょうせい送還そうかん忌避きひ」させないための期限きげん収容しゅうよう 入管にゅうかんちょう西山にしやま次長じちょう国会こっかい答弁とうべん憲法けんぽう36じょうへの挑戦ちょうせんではないのか?(2023ねん4がつ21にち
送還そうかん忌避きひしゃ発生はっせい抑制よくせいする適切てきせつ処遇しょぐう」とはなにか? 国家こっか犯罪はんざいとしての入管にゅうかん収容しゅうよう(2021ねん10がつ28にち
公然こうぜんされつつある拷問ごうもん――出国しゅっこく強要きょうよう手段しゅだんとしての期限きげん長期ちょうき収容しゅうよう(2021ねん4がつ3にち

*3: ここであげたれいは、いずれも現行げんこうかり放免ほうめん制度せいどにおいて、入国にゅうこく警備けいびかんが、自宅じたく訪問ほうもん隠密おんみつにおこなうかん尾行びこう本人ほんにんとの面接めんせつなどをつうじて、げん調査ちょうさしている事項じこうです。つまり、収容しゅうようかれたひとについてこういったことを入管にゅうかん把握はあくしたいということであって、それは監理かんり措置そちにおいても同様どうようだと推測すいそくできます。 

*4: 条文じょうぶんをそのままくとややわずらわしいので、言葉ことばをかえたり省略しょうりゃくしたりしながらまとめています。

2023ねん12月6にち

改悪かいあく入管にゅうかんほうむ】監理かんり措置そちとはなにか?〈2〉


改悪かいあく入管にゅうかんほうむ】監理かんり措置そちとはなにか?〈1〉のつづき


1.はじめに

 施行しこうをひかえた*1改定かいてい入管にゅうかんほうでは、従来じゅうらいからあるかり放免ほうめん制度せいど一応いちおう維持いじされるいっぽうで、監理かんり措置そちという収容しゅうよう解除かいじょのためのあたらしい制度せいど創設そうせつされることになります。前回ぜんかい記事きじでは、改定かいていほう条文じょうぶんきながら、かり放免ほうめん制度せいどについての変更へんこうてんをみました。あらたな入管にゅうかんほうでは、かり放免ほうめんはきわめて限定げんていてき場合ばあいにのみ適用てきようされる例外れいがいてき措置そち位置いちづけられており、収容しゅうよう解除かいじょ制度せいどとしては監理かんり措置そち事実じじつじょう一本いっぽんをしたいというのが入管にゅうかん意図いとなのだろうとかんがえられます。

 今回こんかい記事きじでは、その監理かんり措置そちという制度せいどがいかに深刻しんこく問題もんだいをはらんでいるのか、改定かいてい入管にゅうかんほう条文じょうぶん参照さんしょうしつつ、みていきます。



2.原則げんそく収容しゅうよう」の例外れいがいとしての監理かんり措置そち

 さて、監理かんり措置そちがどういう制度せいどなのかをみていくまえに、収容しゅうよう制度せいどについて、おおまかに理解りかいしておく必要ひつようがあります。入管にゅうかんほうじょうの「収容しゅうよう」にはふたつの種類しゅるいがあります。


A)違反いはんの「容疑ようぎ」を審査しんさするための収容しゅうよう収容しゅうよう令書れいしょにもとづく収容しゅうよう

  • 最大さいだい60日間にちかん
  • 退去たいきょ強制きょうせい手続てつづき(違反いはん審査しんさ口頭こうとう審理しんり異議いぎもうて、法務大臣ほうむだいじん裁決さいけつ)をへて、「放免ほうめん在留ざいりゅう継続けいぞく)」「在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょか」「退去たいきょ強制きょうせい令書れいしょ退すされいはつづけ」のいずれかの処分しょぶんけっする。

B)退去たいきょ強制きょうせい処分しょぶんけたひとの収容しゅうよう退去たいきょ強制きょうせい令書れいしょにもとづく収容しゅうよう

  • 収容しゅうよう期間きかん上限じょうげんなし。
  • 送還そうかんのための身体しんたい拘束こうそく


 Aの収容しゅうようは、退去たいきょ強制きょうせい強制きょうせい送還そうかん)すべきかどうかをめる手続てつづきをおこなうための収容しゅうようです。その手続てつづきのやりかたなどについては非常ひじょうおおきな問題もんだいがあるのですが、この記事きじではふれません。

 Bの収容しゅうようは、Aの結果けっか退去たいきょ強制きょうせい処分しょぶんまったひとをただちに送還そうかんできないときに、「送還そうかん可能かのうなときまで」収容しゅうようするというものです(現行げんこうほうだい52じょうだい5こう改定かいていほうだい52じょうだい7, 8こう)。収容しゅうよう期間きかん上限じょうげんはさだめられておらず、そのことが長期ちょうき収容しゅうよう問題もんだいおおきな原因げんいんとなっています。

 ABいずれについても、入管にゅうかんほうじょう収容しゅうようすること(監禁かんきんして自由じゆううばうこと)が原則げんそくとなっており、収容しゅうようくための監理かんり措置そち(あるいはかり放免ほうめん)は、あくまでも例外れいがいてき措置そちとして位置いちづけられています野蛮やばん制度せいどですね。

 この「収容しゅうよう身体しんたい拘束こうそく)が原則げんそく」「収容しゅうよう解除かいじょ例外れいがい」という構図こうずは、現行げんこうほう改定かいていほうともわりません。



3.監理かんり措置そちAと監理かんり措置そちB

 このAとBの収容しゅうよう対応たいおうして、監理かんり措置そちにも2種類しゅるいあります。ここでは便宜上べんぎじょう監理かんり措置そちA」と「監理かんり措置そちB」とぶことにします(法律ほうりつに「A」とか「B」とかいてあるわけではありません)。改定かいていほうにおいてそれぞれを規定きていする条文じょうぶん番号ばんごうもあげておきます。


監理かんり措置そちA:退去たいきょ強制きょうせい手続てつづちゅう退すされい未発みはつづけ)の監理かんり措置そち
  • だい44じょうの2(収容しゅうようわる監理かんり措置そち
  • だい44じょうの3(監理かんりじん
  • だい44じょうの4(監理かんり措置そち決定けってい取消とりけし)
  • だい44じょうの5(報酬ほうしゅうける活動かつどう許可きょかとう
  • だい44じょうの6(監理かんりしゃによる届出とどけで
  • だい44じょうの7(違反いはん事件じけん引継ひきつぎ)
  • だい44じょうの8(監理かんり措置そち決定けってい失効しっこう
  • だい44じょうの9(事実じじつ調査ちょうさ

監理かんり措置そちB:退去たいきょ強制きょうせいけるもの退すされいはつづけしゃ)の監理かんり措置そち
  • だい52じょうの2(収容しゅうようわる監理かんり措置そち
  • だい52じょうの3(監理かんりじん
  • だい52じょうの4(監理かんり措置そち決定けってい取消とりけし)
  • だい52じょうの5(監理かんりしゃによる届出とどけで
  • だい52じょうの6(監理かんり措置そち決定けってい失効しっこう
  • だい52じょうの7(事実じじつ調査ちょうさ


 入管にゅうかんほうじょう位置いちづけのことなるふたつの収容しゅうよう対応たいおうして、監理かんり措置そちAと監理かんり措置そちBがあるわけなので、上記じょうきのようにその決定けっていであったり取消とりけしであったりといった手続てつづきはそれぞれ別々べつべつ条文じょうぶん規定きていされています。

 監理かんり措置そちけて収容しゅうよう解除かいじょされるひと(「監理かんりしゃ」といいます)にとってのおおきなちがいは、監理かんり措置そちAは、就労しゅうろう報酬ほうしゅうける活動かつどう)が許可きょかされる場合ばあいがあるというてんです*2

 もういっぽうの監理かんり措置そちBは、就労しゅうろう禁止きんしであり、そこに例外れいがいはありません。就労しゅうろうみとめられないのはかり放免ほうめんおなじなのですが、これにかんして監理かんり措置そちかり放免ほうめんおおきなちがいがあります。それはあとで(次回じかい記事きじで)べます。

 では、監理かんり措置そちがどのような制度せいどなのか、以下いか条文じょうぶんをみていくことにします。



4.だれがどんなときに監理かんり措置そち決定けっていするのか?

 監理かんり措置そち決定けっていは、主任しゅにん審査しんさかんがします(監理かんり措置そちA:だい44じょうの2だい1こう, 監理かんり措置そちB:だい52じょうの2だい1こう)。「主任しゅにん審査しんさかん」というのは、地方ちほう入管にゅうかんきょく東京とうきょう入管にゅうかん名古屋なごや入管にゅうかん大阪おおさか入管にゅうかんとう)の局長きょくちょう次長じちょうなどです。

 その主任しゅにん審査しんさかんがどのようなときに監理かんり措置そち決定けっていをするのかは、つぎのように規定きていされています。


監理かんり措置そちA:「容疑ようぎしゃ逃亡とうぼうし、また証拠しょうこ隠滅いんめつするおそれの程度ていど収容しゅうようにより容疑ようぎしゃける不利益ふりえき程度ていどその事情じじょう考慮こうりょし、容疑ようぎしゃ収容しゅうようしないでこのしょう規定きていする退去たいきょ強制きょうせい手続てつづきおこなうことが相当そうとうみとめるとき」(だい44じょうの2だい1こう, どうだい6こう)

監理かんり措置そちB退去たいきょ強制きょうせいけるものが「逃亡とうぼうし、また不法ふほう就労しゅうろう活動かつどうをするおそれの程度ていど収容しゅうようによりそのものける不利益ふりえき程度ていどその事情じじょう考慮こうりょし、送還そうかん可能かのうのときまでそのもの収容しゅうようしないことが相当そうとうみとめるとき」(だい52じょうの2だい1こう, どうだい5こう)


 監理かんり措置そち決定けっていするのは、主任しゅにん審査しんさかんが「相当そうとうみとめるとき」ということであって、結局けっきょくのところ入管にゅうかん判断はんだんしだいということになりますね。

 なお、監理かんり措置そち収容しゅうようしゃがこれを主任しゅにん審査しんさかん請求せいきゅうできるということも規定きていされています(監理かんり措置そちA:だい44じょうの2だい4こう, 監理かんり措置そちB:だい52じょうの2だい4こう)。つまり、監理かんり措置そちは、請求せいきゅう申請しんせい)をけて主任しゅにん審査しんさかん決定けっていする場合ばあいと、請求せいきゅう申請しんせい)をたずに主任しゅにん審査しんさかん職権しょっけん決定けっていする場合ばあいがあるということになります。職権しょっけんのと請求せいきゅうのがあるてんは、かり放免ほうめんおなじです。



5.監理かんり措置そち条件じょうけん違反いはんすると監理かんり措置そち取消とりけし保証ほしょうきん没取ぼっしゅ

 監理かんり措置そち決定けっていする場合ばあい主任しゅにん審査しんさかんは「監理かんり措置そち条件じょうけん」というものをけることになっています(監理かんり措置そちA:だい44じょうの2だい1こう, 監理かんり措置そちB:だい52じょうの2だい1こう, どうだい5こう)。

 「監理かんり措置そち条件じょうけん」とは、つぎのようなものです。


監理かんり措置そちA:「住居じゅうきょおよ行動こうどう範囲はんい制限せいげん呼出よびだしにたいする出頭しゅっとう義務ぎむその逃亡とうぼうおよ証拠しょうこ隠滅いんめつ防止ぼうしするために必要ひつようみとめる条件じょうけん」(だい44じょうの2だい1こう)

監理かんり措置そちB:「住居じゅうきょおよ行動こうどう範囲はんい制限せいげん呼出よびだしにたいする出頭しゅっとう義務ぎむその逃亡とうぼうおよ不法ふほう就労しゅうろう活動かつどう防止ぼうしするために必要ひつようみとめる条件じょうけん」(だい52じょうの2だい1こう)


 あとでみるようにこの「条件じょうけん」には、違反いはんした場合ばあいのいわば事実じじつじょうのペナルティが規定きていされています。監理かんり措置そち取消とりけし保証ほしょうきん没取ぼっしゅです。監理かんり措置そちされるということは、収容しゅうようされるということを意味いみします。

 つまり、収容しゅうよう監禁かんきん)という事実じじつじょうのペナルティをおどしにして、収容しゅうよう解除かいじょされたひと行動こうどうをコントロールしようというのが、この「監理かんり措置そち条件じょうけん」というものだとってよいでしょう。「条件じょうけんまもらなかったら収容しゅうようするぞ」というわけです。

 従来じゅうらいからあるかり放免ほうめん制度せいども、同様どうように「条件じょうけんまもらなかったら収容しゅうようするぞ」というおどしをもちいながら、収容しゅうようかれたひとをコントロールしようという仕組しくみになっています。

 かり放免ほうめん許可きょかされたひとには、そのひと名前なまえ顔写真かおじゃしん国籍こくせき住所じゅうしょなどがしるされた「かり放免ほうめん許可きょかしょ」という書面しょめん個々人ここじんごとに交付こうふされます。その裏面りめんに「かり放免ほうめん条件じょうけん」が記載きさいされています。以下いかは、大村おおむら入管にゅうかんセンターからかり放免ほうめんされたひとかり放免ほうめん許可きょかしょ裏面りめん記載きさいされた「かり放免ほうめん条件じょうけん」のれいです(個人こじん特定とくていできないよう内容ないよう一部いちぶ改変かいへんするとともに伏字ふせじにしています)。


(1)住居じゅうきょ

大阪おおさか●●●●1丁目ちょうめ●‐● 203号室ごうしつ

(2)行動こうどう範囲はんい

長崎ながさきけんから住居じゅうきょ存在そんざいする大阪おおさかまでの経路けいろ住居じゅうきょ到着とうちゃくするまでにかぎる)およ住居じゅうきょ存在そんざいする大阪おおさか

(3)出頭しゅっとうめいじられたときは、指定していされた日時にちじおよ場所ばしょ出頭しゅっとうしなければなりません。

(4)かり放免ほうめん期間きかん

れいとしつきにちかられいとしつき1700ふんまで

(5)その

れいとしつき1300ふん大阪おおさか入国にゅうこく管理かんりきょく審判しんぱん部門ぶもん出頭しゅっとうすること。
職業しょくぎょうまた報酬ほうしゅうける活動かつどう従事じゅうじできない。


かり放免ほうめん許可きょかしょ裏面りめんれい
かり放免ほうめん条件じょうけん」が記載きさいされている。

 これら「かり放免ほうめん条件じょうけん」に違反いはんした場合ばあいは、かり放免ほうめん取消とりけし(→収容しゅうよう)と保証ほしょうきん没取ぼっしゅ対象たいしょうになります。このうち保証ほしょうきん没取ぼっしゅについては、前回ぜんかい記事きじべたように今回こんかいほう改定かいてい保証ほしょうきんについての規定きていそのものものが削除さくじょされることになったので、改定かいていほう施行しこうかり放免ほうめんされるときに保証ほしょうきん納付のうふもとめられることがなくなるはずです。

 さて、あたらしく創設そうせつされる監理かんり措置そちの「条件じょうけん」も、さきの条文じょうぶんをみるかぎりでは、「かり放免ほうめん条件じょうけん」と同様どうようのものがけれれるのではないかとおもわれます。

 では、監理かんり措置そち条件じょうけん違反いはんした場合ばあいにどうなるのか。条文じょうぶんにどうかれているのか、みておきます。

 だい1に、保証ほしょうきん没取ぼっしゅ対象たいしょうとなります。今回こんかい入管にゅうかんほう改定かいていにおいて、かり放免ほうめんにともなって保証ほしょうきん納付のうふさせる制度せいど廃止はいしされましたが、あたらしく創設そうせつされた監理かんり措置そち制度せいどにおいては、主任しゅにん審査しんさかんは「3ひゃくまんえんえない範囲はんいない法務省ほうむしょうれいさだめるがく保証ほしょうきん」を納付のうふさせることができると規定きていされています(監理かんり措置そちA:だい44じょうの2だい2こう, どうだい6こう監理かんり措置そちB:だい52じょうの2だい2こう, どうだい5こう)。監理かんりしゃ監理かんり措置そち条件じょうけん違反いはんした場合ばあい主任しゅにん審査しんさかん保証ほしょうきん全部ぜんぶまた一部いちぶ没取ぼっしゅするものとする」規定きていされています(監理かんり措置そちA:だい44じょうの4だい5こう, 監理かんり措置そちB:だい52じょうの4だい4こう)。

 だい2に、「監理かんり措置そち条件じょうけん」に違反いはんした場合ばあい主任しゅにん審査しんさかん監理かんり措置そちすことができる規定きていされています(監理かんり措置そちA:だい44じょうの4だい2こう, 監理かんり措置そちB:だい52じょうの4だい2こう)。この場合ばあい監理かんり措置そち取消とりけしは、収容しゅうようされるということを意味いみします。


 以上いじょう今回こんかい記事きじでは、

  • 収容しゅうよう」を原則げんそくとする制度せいどにおいて、例外れいがいてき収容しゅうよう解除かいじょとして、監理かんり措置そち位置いちづけられている
  • 監理かんり措置そちには「監理かんり措置そち条件じょうけん」がけられ、これに違反いはんした場合ばあい事実じじつじょうのペナルティとして監理かんり措置そちされることがある

といったことをみてきたわけですが、これらは従来じゅうらいからあるかり放免ほうめんとも共通きょうつうしたてんであります。

 監理かんり措置そち制度せいどのはらむ深刻しんこく問題もんだいは、これからべるにあります。次回じかい記事きじで、かり放免ほうめんとも比較ひかくしながら、監理かんり措置そち問題もんだいせいをみていきたいとおもいます。


改悪かいあく入管にゅうかんほうむ】監理かんり措置そちとはなにか?〈3〉につづく



ちゅう

*1: 施行しこう改定かいていほう附則ふそくだいじょうに「この法律ほうりつは、公布こうふから起算きさんして1ねんえない範囲はんいないにおいて政令せいれいさだめるから施行しこうする」と規定きていされています。公布こうふが2023ねん6がつ16にちなので、そこから「起算きさんして1ねんえない範囲はんいない」のどこかで施行しこうされることになっています。 

*2: だい44じょうの5だい1こう主任しゅにん審査しんさかんは、監理かんりしゃ生計せいけい維持いじするために必要ひつようであつて、相当そうとうみとめるときは、監理かんりしゃ申請しんせい監理かんりじん同意どういがあるものにかぎる。)により、その生計せいけい維持いじ必要ひつよう範囲はんいないで、監理かんりじんによる監理かんりしたに、主任しゅにん審査しんさかん指定していする本邦ほんぽう公私こうし機関きかんとの雇用こようかんする契約けいやくもとづいておこな報酬ほうしゅうける活動かつどうとして相当そうとうであるものをおこなうことを許可きょかすることができる。この場合ばあいにおいて、主任しゅにん審査しんさかんは、当該とうがい許可きょか必要ひつよう条件じょうけんすることができる。」


2023ねん12月2にち

改悪かいあく入管にゅうかんほうむ】監理かんり措置そちとはなにか?〈1〉


1.はじめに

 6がつ国会こっかい強行きょうこう採決さいけつされた改悪かいあく入管にゅうかんほう公布こうふから1ねん以内いない来年らいねん6がつ16にちまでのどこか)に施行しこうされることになっています。

 この改悪かいあく入管にゅうかんほうは、3かい以降いこう難民なんみん申請しんせいしゃ強制きょうせい送還そうかん可能かのうにするてんなどが、おおきな問題もんだいとしてひろ認識にんしきされているとおもいます。しかし、それとくらべるとあまり共有きょうゆうされていないですが、「監理かんり措置そち」というあらたにつくられた制度せいどもまた相当そうとう深刻しんこく問題もんだいてんをはらんでいます。

 「監理かんり措置そち制度せいど問題もんだい深刻しんこくさを理解りかい共有きょうゆうするうえでやっかいなのは、この制度せいど入管にゅうかんがどのように運用うんようするつもりなのか、いまだによくみえてこないというところです。国会こっかい審議しんぎでも、また強行きょうこう採決さいけついまにいたるまでも、政府せいふ入管にゅうかんちょうはそこを十分じゅうぶん説明せつめいしてきたとはいえません。

 そこで、改悪かいあくほう条文じょうぶんみながら、「監理かんり措置そち制度せいど条文じょうぶんでどのように規定きていされているのかを確認かくにんし、それが入管にゅうかんによってどのように運用うんようされうる制度せいどなのか、かんがえる材料ざいりょう共有きょうゆうできたらとおもいます。



2.「かり放免ほうめん」と「監理かんり措置そち」――ふたつの制度せいど併存へいそん

 従来じゅうらい入管にゅうかん制度せいどにおいても、「かり放免ほうめん」という、収容しゅうよう解除かいじょして施設しせつから出所しゅっしょさせる制度せいどがすでにあります。改定かいてい入管にゅうかんほうでは、このかり放免ほうめん制度せいど一応いちおうのこされるいっぽうで、あらたに監理かんり措置そちという制度せいど設置せっちされました。 つまり、かり放免ほうめん監理かんり措置そちという2つの収容しゅうよう解除かいじょのための制度せいど併存へいそんするということになります。 そういうわけで、以下いかのようなところが疑問ぎもんてんとしてうかんできます。


(1)監理かんり措置そちかり放免ほうめんとどうちがうの?(監理かんり措置そちのなにが問題もんだいなのか?)

(2)監理かんり措置そちはどのようなケースに適用てきようされるのか?

(3)かり放免ほうめんはどのようなケースに適用てきようされるのか?(現行げんこうほうかり放免ほうめんされているひとは、改定かいていほう施行しこうかり放免ほうめんが「更新こうしん延長えんちょう)」されるのか?)


 このブログ記事きじでは、(1)(2)(3)の疑問ぎもんてん念頭ねんとうに、改定かいていほう現行げんこうほうとどうわったのか、条文じょうぶんをみていきます。

 ただし、条文じょうぶん文言もんごんだけでは、改定かいていほう施行しこう入管にゅうかんがそれをどう運用うんようしていくのか、わかりません。また、入管にゅうかんがどのようにほう運用うんようするのかは、さまざまな要因よういん対抗たいこう運動うんどう世論せろん動向どうこうなどもふくむ)によってわってくるということも、重要じゅうようです。そうしたところをあたまれて、今後こんごおきてくる事態じたいにどうのぞんだらよいのか、かんがえていく必要ひつようがあります。



3.かり放免ほうめんについて変更へんこうてん

 さて、このブログ記事きじでは監理かんり措置そちというあらたな制度せいどがどのように改定かいてい入管にゅうかんほう規定きていされているのかをみていくのですけれど、そのまえに、かり放免ほうめんについての規定きていがどうわったのか、ということをおさえておきましょう。

 かり放免ほうめん制度せいど自体じたいは、改定かいていされた入管にゅうかんほうにおいてもいちおう維持いじされます。入管にゅうかん施設しせつ収容しゅうようされているひとやその代理人だいりにんらがかり放免ほうめん請求せいきゅう申請しんせい)できること(だい54じょうだい1こう)、また、入国にゅうこくしゃ収容しゅうよう所長しょちょうらがその請求せいきゅう申請しんせいを)たずに職権しょっけんでのかり放免ほうめんもできるということ(だい54じょうだい2こう)も、改定かいていほうわりません。

 しかし、以下いかだい54じょうだい2こう変更へんこうは、今回こんかいほう改定かいていをすすめてきた入管にゅうかんちょう意図いとがよくあらわれているようにもみえ、今後こんごあたらしい入管にゅうかんほう入管にゅうかんちょうがどのように運用うんようしようとしているのかみとるうえでも重要じゅうようなところだとおもわれます。


現行げんこうほう だい54じょうだい2こう
入国にゅうこくしゃ収容しゅうよう所長しょちょうまた主任しゅにん審査しんさかんは、前項ぜんこう請求せいきゅうによりまた職権しょっけんで、法務省ほうむしょうれいさだめるところにより、収容しゅうよう令書れいしょまた退去たいきょ強制きょうせい令書れいしょはつづけけて収容しゅうようされているもの情状じょうじょうおよかり放免ほうめん請求せいきゅう理由りゆうとなる証拠しょうこならびにそのもの性格せいかく資産しさんとう考慮こうりょして3ひゃくまんえんえない範囲はんい法務省ほうむしょうれいさだめるがく保証ほしょうきん納付のうふさせ、かつ、住居じゅうきょおよ行動こうどう範囲はんい制限せいげん呼出よびだしにたいする出頭しゅっとう義務ぎむその必要ひつようみとめる条件じょうけんして、そのものかり放免ほうめんすることができる。」
改定かいていほう だい54じょうだい2こう
入国にゅうこくしゃ収容しゅうよう所長しょちょうまた主任しゅにん審査しんさかんは、前項ぜんこう請求せいきゅうによりまた職権しょっけんで、収容しゅうよう令書れいしょまた退去たいきょ強制きょうせい令書れいしょはつづけけて収容しゅうようされているものについて、健康けんこうじょう人道じんどうじょうそのほかこれにじゅんずる理由りゆうによりその収容しゅうよう一時いちじてき解除かいじょすることを相当そうとうみとめるときは、法務省ほうむしょうさだめるところにより、期間きかんさだめて、かつ、住居じゅうきょおよ行動こうどう範囲はんい制限せいげん呼出よびだしにたいする出頭しゅっとう義務ぎむその必要ひつようみとめる条件じょうけんして、そのものかり放免ほうめんすることができる。」


 おおきなちがいはふたつあります。


(1)許否きょひ判断はんだんにおける考慮こうりょ要素ようそ

 まず、許否きょひ判断はんだんにおける考慮こうりょ要素ようそ許可きょか許可きょか判断はんだんするうえでなに考慮こうりょするのか?)について、以下いかのようにわっています。


現行げんこうほう収容しゅうようされているもの情状じょうじょうおよかり放免ほうめん請求せいきゅう理由りゆうとなる証拠しょうこならびにそのもの性格せいかく資産しさんとう考慮こうりょして

   ↓

改定かいていほう健康けんこうじょう人道じんどうじょうそのほかこれらにじゅんずる理由りゆうによりその収容しゅうよう一時いちじてき解除かいじょすることを相当そうとうみとめるとき


 うえ現行げんこうほうは、よくもわるくも、この考慮こうりょ要素ようそがあいまいで漠然ばくぜんとしか規定きていされていなかったとえます。

 これが改定かいていほうになると、健康けんこうじょう人道じんどうじょうそのほかこれらにじゅんずる理由りゆう」とかなり明示めいじてき限定げんていてきになっています。「健康上けんこうじょう」というのは、収容しゅうよう送還そうかんにたえられない重病じゅうびょうじん、「人道じんどうじょう」はたとえば未成年みせいねんしゃなどが想定そうていされているのでしょうか。

 しかし、従来じゅうらいかり放免ほうめん制度せいど運用うんよう実態じったいをみると、もっとひろ要素ようそ考慮こうりょされてきたのはたしかです。

 たとえば、難民なんみん申請しんせいしているひとが、難民なんみん該当がいとうせい立証りっしょう作業さぎょう理由りゆうかり放免ほうめん申請しんせいし、これがみとめられてかり放免ほうめん許可きょかされたとかんがえられるケースは多々たたみうけられます。難民なんみん認定にんてい手続てつづきにおいて、難民なんみん申請しんせいしゃ難民なんみん該当がいとうすることを立証りっしょうする責任せきにんは、申請しんせいしゃ本人ほんにんされています。証拠しょうこ資料しりょうなどは申請しんせいしゃ自分じぶん収集しゅうしゅうしてきて提出ていしゅつしろということがもとめられているわけです。ところが、収容しゅうよう(=監禁かんきん)によって自由じゆうをうばわれ、ひとうことも家族かぞく親族しんぞく知人ちじんとの通信つうしんもいちじるしく制限せいげんされ、インターネットに接続せつぞくすることすらできない環境かんきょうで、立証りっしょう作業さぎょうなどできるわけがありません。収容しゅうようは、入管にゅうかん難民なんみん申請しんせいしゃたいする立証りっしょう妨害ぼうがいえます。そこで、難民なんみん該当がいとうせい立証りっしょうのために必要ひつようであるということが、難民なんみん申請しんせいしゃにとってかり放免ほうめん請求せいきゅうする理由りゆうになるわけです。

 ところが、改定かいていほう規定きていむかぎりでは、こうした理由りゆうでのかり放免ほうめん想定そうていしていないようにおもわれます。この立法りっぽうおおきく関与かんよしてもきた入管にゅうかん役人やくにん想定そうていでは、かり放免ほうめん重病じゅうびょうじんなど収容しゅうよう継続けいぞくできないと入管にゅうかん判断はんだんした場合ばあいにのみ適用てきようし、難民なんみん該当がいとうせい立証りっしょう作業さぎょう訴訟そしょう準備じゅんび理由りゆうとする収容しゅうよう解除かいじょ監理かんり措置そちでおこなうといった使つかけをかんがえているのではないかと想像そうぞうできます。


(2)保証ほしょうきんについての規定きてい削除さくじょされている

 さきにみただい54じょうだい2こうのもうひとつ重要じゅうよう変更へんこうてんは、現行げんこうほうにある「3ひゃくまんえんえない範囲はんい法務省ほうむしょうれいさだめるがく保証ほしょうきん納付のうふさせ」という保証ほしょうきんについての規定きてい削除さくじょされていることです。

 現行げんこうかり放免ほうめん制度せいど運用うんようでは、請求せいきゅう申請しんせい)によるかり放免ほうめん場合ばあい保証ほしょうきん納付のうふ入管にゅうかんから要求ようきゅうされています(入国にゅうこくしゃ収容しゅうよう所長しょちょうらの職権しょっけんでのかり放免ほうめん場合ばあいは、保証ほしょうきん納付のうふ要求ようきゅうされていないようです)。かり放免ほうめんされたひとが「逃亡とうぼう」した場合ばあい納付のうふされた保証ほしょうきん没取ぼっしゅするとの規定きていだい55じょうだい3こうにあります*1。この保証ほしょうきんには、「逃亡とうぼう」に事実じじつじょうのペナルティをし、これを防止ぼうしするという意味いみあいがあるわけです。

 ところが改定かいてい入管にゅうかんほうでは、かり放免ほうめん保証ほしょうきんかんする規定きていは、その没取ぼっしゅ規定きていもふくめ、すべて削除さくじょされています。なお、「保証書ほしょうしょ」というものを規定きていした条文じょうぶん現行げんこうほうにはあるのですが(かり放免ほうめんされるひと以外いがいひと保証書ほしょうしょによって保証ほしょうきんえることができるというもの。だい54じょうだい3こう*2)、これも改定かいていほうでは削除さくじょされています。

 いっぽうで、あたらしくつくられた監理かんり措置そちについては、あとでみるように主任しゅにん審査しんさかんは「さんひゃくまんえんえない範囲はんいない法務省ほうむしょうれいさだめるがく保証ほしょうきん」の納付のうふ監理かんり措置そち条件じょうけんとすることができるという規定きていがもうけられています(だい44じょうの2だい2こうだい52じょうの2だい2こう)。


(1)(2)から推測すいそくできること――かり放免ほうめん例外れいがいてき措置そちに?

 こういったところをみると、改定かいていほう施行しこうは、かり放免ほうめん制度せいど入管にゅうかん収容しゅうようして面倒めんどうをみきれない重病じゅうびょうじんなどの収容しゅうよう解除かいじょする(「ほうす」という表現ひょうげん適切てきせつかもしれません)場合ばあいなど、きわめて例外れいがいてき限定げんていてき場面ばめんでしか適用てきようしないということが、入管にゅうかん当局とうきょく想定そうていとしてはあるのではないかとかんがえられます。考慮こうりょ要素ようそを「健康けんこうじょう人道じんどうじょうそのほかこれらにじゅんずる理由りゆう」とせまく限定げんていして規定きていしたのも、また、保証ほしょうきん納付のうふかり放免ほうめんについては不要ふようとするのも、かり放免ほうめんはあくまでも例外れいがいてき措置そち位置いちづけ、収容しゅうよう解除かいじょ監理かんり措置そち事実じじつじょう一本いっぽんをしたいという入管にゅうかん意図いとのあらわれではないでしょうか

 ただし、この記事きじ最初さいしょのほうでもべたように、法律ほうりつがどのように運用うんようされるのかということは、それを運用うんようする入管にゅうかん意図いとだけでまるものではなく、世論せろん動向どうこうなどをふくんださまざまな要素ようそによってもわってきます。つぎの記事きじでは、そのてんをふまえながら、今回こんかいほう改定かいてい創設そうせつされることになった「監理かんり措置そち」とはどういう制度せいどなのか、入管にゅうかんほう条文じょうぶんをみていきます。


改悪かいあく入管にゅうかんほうむ】監理かんり措置そちとはなにか?〈2〉につづく



ちゅう】 

*1: 現行げんこうほうだい55じょうだい3こう入国にゅうこくしゃ収容しゅうよう所長しょちょうまた主任しゅにん審査しんさかんは、逃亡とうぼうし、また正当せいとう理由りゆうがなくて呼出よびだしおうじないことを理由りゆうとするかり放免ほうめん取消とりけしをしたときは保証ほしょうきん全部ぜんぶ、その理由りゆうによるときはその一部いちぶ没取ぼっしゅするものとする。」

*2: 現行げんこうほうだい54じょうだい3こう入国にゅうこくしゃ収容しゅうよう所長しょちょうまた主任しゅにん審査しんさかんは、適当てきとうみとめるときは、収容しゅうよう令書れいしょまた退去たいきょ強制きょうせい令書れいしょはつづけけて収容しゅうようされているもの以外いがいものした保証書ほしょうしょをもつて保証ほしょうきんえることをゆるすことができる。保証書ほしょうしょには、保証ほしょう金額きんがくおよびいつでもその保証ほしょうきん納付のうふするむね記載きさいしなければならない。」

2023ねん9がつ25にち

懸賞けんしょう生活せいかつ」のこととか


  以下いか記事きじ興味深きょうみぶかんだ。


「『電波でんぱ少年しょうねん懸賞けんしょう生活せいかつ一種いっしゅ洗脳せんのう自殺じさつかんがえるほど苦悩くのう」なすびげきしろ、イギリスで半生はんせい映画えいがいまとは | 女子じょしSPA!(2023.09.21)


 「懸賞けんしょう生活せいかつ」は、「電波でんぱ少年しょうねん」という番組ばんぐみ日本にほんテレビ)ないのコーナーとして1998ねん1がつから翌年よくねん4がつまで放送ほうそうされた企画きかくとのこと。

 わたし当時とうじ、テレビのチャンネルをえるときにこれをちらっとかけたことはあるようながするが、ちらっと一瞬いっしゅんだけ以上いじょうのことはなかったとおもう。なので、うえ記事きじんで、またネットじょう検索けんさくして、どういう番組ばんぐみだったのか概要がいよういまになってったのだけど、ひどいものですね。

 「ひと懸賞けんしょうだけできていけるか?」というテーマで、芸人げいにんをアパートに監禁かんきんし、ていた衣服いふくもすべて没収ぼっしゅうし、ハガキをいて応募おうぼしてたった懸賞けんしょうだけで生活せいかつさせるというもの。こうした生活せいかつつづけることが、懸賞けんしょう品物しなもの価格かかく一定いっていがくたっするまでいられる。

 拷問ごうもんとか虐待ぎゃくたいぶほかないような行為こういをみせものとしてテレビでながすのは、倫理りんりてきなタガがはずれているようでこわい。おまけに、撮影さつえいされている映像えいぞうがテレビで放送ほうそうされていることは本人ほんにんらされていなかったという。放送ほうそう倫理りんりてきにめちゃくちゃにもほどがある。

 うえ記事きじは、「懸賞けんしょう生活せいかつ」に出演しゅつえん(というのか?)していたなすびさんのインタビューで、当時とうじのつらかった記憶きおくかたられている。つぎのくだりが印象いんしょうてきだった。


――そこまでのレベルでつら企画きかくだったことをわたしいまりました。

「やってることはほぼ拷問ごうもん(ごうもん)でしょ。スタッフがあの生活せいかついて、一人ひとり人間にんげんを貶(おとし)めることができるという恐怖きょうふわったのちかんじました。

視聴しちょうしゃから『またやってください』ってわれることもこわかった。『あれをわらっててたの?』『まだたいとおもうの?』って、正直しょうじきかなり人間にんげん不信ふしんにもなりましたね」


 あからさまに残虐ざんぎゃく行為こういがおこなわれていることをわたしたちははっきりとていながら、その出来事できごとをみせものとしてわたしたちの世界せかいから切断せつだんすることができるということ。おそろしいものをにしながら、それをおそろしいとかんじずにわらってみていられるのだということ。そういった自身じしん認識にんしき感情かんじょう操作そうさを、わたしたちはとくに意識いしきもせずにやってのけてしまうのだということに、おそろしさをかんじる。

 ただ、海外かいがいではこれをてドンきしているひとおおいみたい。「懸賞けんしょう生活せいかつ」の映像えいぞうはネットじょうにちらばっており、これを海外かいがいメディアからなすびさんにインタビューや取材しゅざいのオファーがたびたびあるのだという。なすびさんの半生はんせいったドキュメンタリー映画えいが制作せいさくされ、トロント国際こくさい映画えいがさい上映じょうえいされたところだとのこと。


――いまこうして海外かいがいからの反響はんきょうけて、当時とうじかえってあらためておもうことは?

「『電波でんぱ少年しょうねんてき懸賞けんしょう生活せいかつ』っていまでいうとリアリティーショーやYouTubeのはしりなんですよね。げていくと、あの番組ばんぐみ現在げんざいでは身近みぢか企画きかくのパイオニアだったんだとおもいます。

海外かいがいとのおおきなちがいとしては、あれは日本にっぽんではあくまでもバラエティ番組ばんぐみ面白おもしろおかしいものとしてれられていた。でも、予備よび知識ちしきのない海外かいがいほうからすると、かなりネガティブな意味いみでの衝撃しょうげき映像えいぞうだったみたいです」


――おわらいとしては捉(とら)えられていない?

「ものすご真剣しんけんてますね。『こんな過酷かこくなことをいるなんてしんじられない』『テレビで放送ほうそうしちゃいけないもの』『拉致らち隔離かくり、これは犯罪はんざいだ』なんてわれてますよ。

過去かこ取材しゅざいをしてくれた海外かいがいメディアも、だいたいが『テレビ局てれびきょくうったえたほうがいい』というくちなんです。人権じんけん侵害しんがいだ、と。海外かいがいひとたちにとっては相当そうとうなカルチャーショックだったみたいですね」


 わなければならないのは、なぜ海外かいがいひとにはネガティブな衝撃しょうげき映像えいぞうけとられるのかということより、反対はんたいに、なぜ日本にっぽんでは「バラエティ番組ばんぐみ」「面白おもしろおかしいもの」として通用つうようしてしまう(してしまった)のか、ということだとおもう。なぜなんでしょうかね。

 海外かいがいひとなら「拉致らち隔離かくり、これは犯罪はんざいだ」とうような出来事できごとが、なぜ日本にっぽんでは「バラエティ番組ばんぐみ」として娯楽ごらく対象たいしょうとなるのか。どうして「人権じんけん侵害しんがいだ」とはなかなかならないのか。

 海外かいがいひとびと(ってひとくくりにかたろうとするのはムチャすぎるのだけど)はどうなのからないが、日本にっぽんひとびとには、冗談じょうだんとしてられるべき行為こういは、人権じんけん侵害しんがい加害かがい行為こういとみなさないという不思議ふしぎ思考しこうがなにか常識じょうしきのように共有きょうゆうされている。冗談じょうだんなのだからシリアスにるな、くじらをたてるなというわけだ。そして、なにが冗談じょうだんでなにがそうでないのかを決定けっていするのは、そのおおきな権力けんりょくをもっているものやマジョリティである。

 陸上りくじょう自衛隊じえいたい郡山こおりやま駐屯ちゅうとんでの強制きょうせいわいせつ事件じけん刑事けいじ裁判さいばんで、被告人ひこくにんもと自衛じえいかんのひとりは「(被害ひがいしゃを)たおしたあと、こしるなどのうごきをしたが、下半身かはんしん接触せっしょくしておらず、周囲しゅういわらいをるためでわいせつなことをしようとはおもわなかった」と証言しょうげんし、無罪むざい主張しゅちょうしている*1弁明べんめいとしてつわけのないバカげた主張しゅちょうだが、このひとは(その弁護人べんごにんも)「わらいをるため」という動機どうきが、自身じしん行為こうい加害かがいせい根拠こんきょとして説得せっとくりょくをもつとかんがえているからこそ、こんな主張しゅちょう堂々どうどう法廷ほうていでするのだろう。そして残念ざんねんながら、ある行為こうい冗談じょうだんとしておこなわれたのだとその多数たすう解釈かいしゃくすれば、その行為こうい加害かがいせい深刻しんこくめられなくなるのが、日本にっぽん社会しゃかいである。だからこのばかばかしい弁明べんめいは、日本にっぽん社会しゃかいのコードにしたがったものでもある。

 ところで、さきのインタビュー記事きじは「前編ぜんぺん」で、そのつづきの「後編こうへん」があるのだけど、これがんでなかなかもやもやする。


懸賞けんしょう生活せいかついたなすび「『電波でんぱ少年しょうねん』のつら経験けいけんがあったから…」エベレストにいどつづけ4かい登頂とうちょう成功せいこう売名ばいめいたたかれても | 女子じょしSPA!(2023.09.22)


 タイトルのとおり、この後編こうへん記事きじでは「『電波でんぱ少年しょうねん』のつら経験けいけん」は、そののなすびさんの「かて」となったできごととして、位置いちづけられている。そういうふうになすびさん本人ほんにん自身じしん過去かこ現在げんざいかたることをめることはもちろんできない。でも、他者たしゃであるわたしたち(それもその人権じんけん侵害しんがいをみせものとして鑑賞かんしょうする位置いちにあったもの)が、そのかたりをそのままなぞるようにんでしまってよいのだろうか。

 なすびさんにとってそのの「かて」になったのだからと、そのけた被害ひがい(とうべきでしょう)をわれわれがポジティブに意味いみづけしてしまうのは、人権じんけん侵害しんがい加害かがいせい消去しょうきょすることではないのか。

 のちのち被害ひがいしゃの「かて」になろうがなるまいが、人権じんけん侵害しんがい人権じんけん侵害しんがい加害かがい行為こうい加害かがい行為こういである。そう認識にんしきすることをはばむ磁場じばのようなちからはたらきがある社会しゃかいだからこそ、無粋ぶすい(ぶすい)にみえてもいちいちっていかないといけないのだとおもう。



ちゅう

*1: こしうごきはわらいをるため」謝罪しゃざいから一転いってん被告ひこく3にん無罪むざい主張しゅちょう里奈りなさんせい被害ひがい事件じけんはつ公判こうはん詳報しょうほう】 | TBS NEWS DIG(2023ねん6がつ30にち(金)きん 11:30)

2023ねん9がつ17にち

すべてのお弁当べんとう定食ていしょく福島ふくしまのおさかなをもれなくもりつけます」(府庁ふちょう食堂しょくどう

  大阪おおさかさきしゅう(さきしま)庁舎ちょうしゃ食堂しょくどう入管にゅうかんったときにたまにランチにるのですが、先日せんじつみたらこんなの(↓)をやってました。


福島ふくしまのみんなを応援おうえんしよう.

がんばろう福島ふくしま そして頑張がんば知事ちじ

キャンペーン! パート1

みんなで福島ふくしまのおさかなべよう!!

すべてのお弁当べんとう定食ていしょく福島ふくしまのおさかな

もれなくもりつけます


 東京電力とうきょうでんりょくかく燃料ねんりょう接触せっしょくした汚染おせんすいながしている福島ふくしま近海きんかいでとれたさかなを、「もれなくもりつけ」てくれるのだそうだ。どの弁当べんとう定食ていしょくえらんでも、「福島ふくしまのおさかな」からのがれることはできない。大阪おおさか府庁ふちょう食堂しょくどう食事しょくじをするかぎり、「福島ふくしまのおさかな」のはいっていないメニューは選択せんたくできないのである*1

 なんというか、この「福島ふくしまのおさかな」を忌避きひするなんてゆるさないぞてき姿勢しせいが、不気味ぶきみすぎる。ぜんメニューに「もれなくもりつけます」というこの執念しゅうねんは、どこからくるの?

 そもそも、福島ふくしまのおさかなべることで福島ふくしまのみんなを応援おうえんしようといういようが、倒錯とうさくしているにもほどがある。福島ふくしま漁業ぎょぎょう関係かんけいしゃ損害そんがいをあたえているのはだれか。東京電力とうきょうでんりょく日本にっぽん政府せいふである。東京電力とうきょうでんりょくによるかく汚染おせんすい海洋かいよう投棄とうきについて、政府せいふ地元じもと漁業ぎょぎょうしゃ反対はんたい無視むししてゴーサインをした。そのことが中国ちゅうごく禁輸きんゆ措置そちをまねいて漁業ぎょぎょうしゃだい打撃だげきあたえたのである。「福島ふくしまのみんなを応援おうえん」したいなら、日本にっぽん政府せいふ東京電力とうきょうでんりょく汚染おせんすい海洋かいよう投棄とうきをやめさせる以外いがいにない。

 それに、禁輸きんゆ措置そち損害そんがいをこうむっている漁業ぎょぎょうしゃは、福島ふくしまのそれにはかぎらないのであって、なんで「福島ふくしまのみんなを応援おうえんしよう」「みんなで福島ふくしまのおさかなべよう」となるのか。しかし、ここは、あんがい重要じゅうようなポイントであるようながする。

 この「べて応援おうえん」キャンペーンとは、健康けんこう被害ひがい懸念けねんたか食品しょくひんけようという市民しみん意思いし行動こうどうたいする憎悪ぞうお動機どうきづけられているのではないだろうか。だから、禁輸きんゆ措置そち損害そんがいけた日本にっぽん漁業ぎょぎょうしゃ全般ぜんぱんではなく、「福島ふくしまのみんな」を応援おうえんしようというかたちをとるのではないのか。

 問題もんだいとされているのは、漁業ぎょぎょうしゃなどがげんにこうむっている損害そんがいではなく、放射能ほうしゃのう汚染おせんされた食品しょくひんけようという行動こうどうをとる市民しみん存在そんざいであり、そうした市民しみんえていくことの懸念けねんである。そうかんがえると、なぜキャンペーンが「福島ふくしまのおさかなべよう」というかたちになるのか、理解りかいができる。これは福島ふくしま応援おうえんではなく、「福島ふくしまのおさかなを(公然こうぜんと)忌避きひするやつはゆるさない」「汚染おせん問題もんだいする言説げんせつはゆるさない」というキャンペーンなのではないか。

 「すべての弁当べんとう定食ていしょく福島ふくしまのおさかなもれなくもりつけます」という、この執拗しつようさもおな動機どうきから説明せつめいできるのではないだろうか。食品しょくひん放射能ほうしゃのう汚染おせん健康けんこうへの影響えいきょう関心かんしんをもつこと、そうした関心かんしんにもとづいて自分じぶんたちのくちはいるものを選択せんたくしようという意思いし行動こうどうへの憎悪ぞうおのあらわれこそが、この「もれなくもりつけます」なのではないか。

 ところで、さきの「福島ふくしまのみんなを応援おうえんしよう」のポップ、「がんばろう福島ふくしま」はともかく、そのうしろの「そして頑張がんば知事ちじ」はなに? 知事ちじって吉村よしむらのことか? 府庁ふちょう食堂しょくどう業者ぎょうしゃ府知事ふちじになにか忖度そんたくしようとしているんだろうなというのがみえ、ここにも維新いしん府政ふせい腐臭ふしゅうがただよってるのでした。






ちゅう

*1: ただし、じつはわたしおこなったは「唐揚からあ定食ていしょく」(460えん)というのがありました。ぜんメニューのうちこれだけはさかなはいっていないようだったので、これをえらんでべました。こっそり「みち」を用意よういしておいたということなのか。



関連かんれん

大阪おおさか報道ほうどう発表はっぴょう資料しりょう府庁ふちょう食堂しょくどう福島ふくしまけんさん魚介ぎょかいるい使用しようしたメニューを提供ていきょうします!

宇宙うちゅう広場ひろばかんがえる: 全国ぜんこく社説しゃせつがどれが産経新聞さんけいしんぶん区別くべつがつかなくなっているけん かく汚染おせんすい海洋かいよう投棄とうきをめぐって(2023ねん8がつ28にち)

2023ねん8がつ28にち

全国ぜんこく社説しゃせつがどれが産経新聞さんけいしんぶん区別くべつがつかなくなっているけん かく汚染おせんすい海洋かいよう投棄とうきをめぐって

  24にち午後ごご岸田きしだ内閣ないかく閣議かくぎ決定けっていけて、東京電力とうきょうでんりょく福島ふくしまだいいち原発げんぱつ汚染おせんすい海洋かいようへの投棄とうきをはじめた。25にち中国ちゅうごく政府せいふは、日本にっぽんからの水産物すいさんぶつについて全面ぜんめんてき禁輸きんゆ措置そちをとると発表はっぴょう

 で、よく26にち全国ぜんこく社説しゃせつは、いっせいに中国ちゅうごくたたきで足並あしなみをそろえている。読売よみうり産経さんけいだけでなく、朝日あさひ毎日まいにちも。もとよりこれら各紙かくしのあいだには「みぎひだりか」あるいは「みぎひだりも」とえるような差異さい個性こせいはなかったのだけれども。とはいえそれにしても、ここまで論調ろんちょう一致いっちするのはなかなかないことなのではないだろうか。タイトルだけならべてみても、なかなかすごいものがある。


社説しゃせつ中国ちゅうごく水産物すいさんぶつ全面ぜんめん禁輸きんゆ 即時そくじ撤回てっかい外交がいこう強化きょうかを | 毎日新聞まいにちしんぶん(2023/8/26 東京とうきょう朝刊ちょうかん )

社説しゃせつ中国ちゅうごく禁輸きんゆ すじとおらぬ威圧いあつやめよ:朝日新聞あさひしんぶんデジタル(2023ねん8がつ26にち 500ふん)

社説しゃせつ水産物すいさんぶつ禁輸きんゆ 中国ちゅうごく不当ふとう措置そち撤回てっかいせよ : 読売新聞よみうりしんぶん(2023/08/26 05:00)

主張しゅちょう中国ちゅうごく水産物すいさんぶつ禁輸きんゆ 科学かがく無視むし暴挙ぼうきょをやめよ - 産経さんけいニュース(2023/8/26 05:00)


 うえのそれぞれのタイトルをみてもわかるように、中国ちゅうごく禁輸きんゆ措置そち不当ふとうであり撤回てっかいすべきだという結論けつろんで4一致いっちしているが、その内容ないようにおいても差異さいはきわめてちいさい。かみめいをかくして文章ぶんしょうだけんで、それぞれがどこの社説しゃせつなのかてるのは、なかなかむずかしいのではないか。

 どの社説しゃせつも、中国ちゅうごく禁輸きんゆ措置そちには科学かがくてき根拠こんきょはないとめつけるいっぽうで、日本にっぽん政府せいふの「処理しょりすい放出ほうしゅつ決定けっていたいしてはまったくの批判ひはん追従ついしょうするというものになっている。政府せいふ主張しゅちょうをなぞるだけだから、どのしゃおなじような内容ないようになる、ということなのだろう。

 そして、こっけいなのが、どの社説しゃせつ禁輸きんゆ措置そちめた中国ちゅうごく主張しゅちょう科学かがくてき根拠こんきょがないのだとうのだけれど、そのいいぶんがいずれも、すでに中国ちゅうごくがわから反論はんろんずみの日本にっぽん政府せいふ主張しゅちょうをくりがえしたものにすぎないてんである。

 以下いかのリンクさきちゅうにち中国ちゅうごく大使館たいしかん報道ほうどうかん声明せいめい(7がつ4にち)である(日本語にほんごかれています)。これと上記じょうきの4社説しゃせつくらべてみるとおもしろい。


ちゅうにち中国ちゅうごく大使館たいしかん報道ほうどうかん日本にっぽん福島ふくしま放射能ほうしゃのう汚染おせんすい海洋かいよう放出ほうしゅつ問題もんだいについて立場たちば表明ひょうめい - 中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくちゅう日本国にっぽんこく大使館たいしかん


 たとえば、毎日まいにち産経さんけいのつぎの記述きじゅつ


 放射ほうしゃせい物質ぶっしつトリチウムをふくみずは、中国ちゅうごくなど各国かっこく原子力げんしりょく施設しせつからうみ河川かせん放出ほうしゅつされている。日本にっぽん政府せいふは、処理しょりすいのトリチウム年間ねんかん放出ほうしゅつりょう中国ちゅうごく主要しゅよう原発げんぱつおおきく下回したまわると強調きょうちょうしている。[毎日新聞まいにちしんぶん


 トリチウムは放射ほうしゃせい元素げんそだがはっする放射線ほうしゃせん生物せいぶつへの影響えいきょう無視むしできるほどよわい。しかもくちから摂取せっしゅした魚介ぎょかいるい人体じんたいからもすみやかに排出はいしゅつされる。 

 そもそもトリチウムは、宇宙うちゅうせん大気たいき作用さよう自然しぜん発生はっせいし、日本にっぽんに1年間ねんかんあめにはやく220ちょうベクレルがふくまれている。それにたいして今後こんごだい原発げんぱつから計画けいかくてき放出ほうしゅつされるトリチウムのりょう年間ねんかん22ちょうベクレル未満みまんにすぎない。それを海水かいすい大幅おおはばうすめて放出ほうしゅつするので、生態せいたいけいなどへの影響えいきょうきようがない。しかも中国ちゅうごく原発げんぱつ大量たいりょうのトリチウムを放出ほうしゅつしているではないか。[産経新聞さんけいしんぶん


 ここでわれていることのひとつは、中国ちゅうごくなどの原発げんぱつだってトリチウムを放出ほうしゅつしているではないか、なぜ日本にっぽん放出ほうしゅつだけが問題もんだいにされなければならないのか、というものだ。しかし、このてんは、さきの中国ちゅうごく大使館たいしかん報道ほうどうかん声明せいめいですでに反論はんろんされている。


 日本にっぽんがわ福島ふくしまかく汚染おせんすいのトリチウムりょう原発げんぱつ正常せいじょう排出はいしゅつされる冷却れいきゃくすいのそれと同列どうれつあつかうのは、ストローマン論法ろんぽうであり、故意こい世論せろんをミスリードするようにえる。福島ふくしまかく事故じこによって発生はっせいしたかく汚染おせんすい原発げんぱつ正常せいじょう運行うんこうによる排出はいしゅつすいとは本質ほんしつてきちがうのは基本きほん科学かがくてき常識じょうしきである。両者りょうしゃには発生はっせいげんも、放射ほうしゃせい核種かくしゅ種類しゅるいことなり、くらものにはなれない。原発げんぱつ事故じこでの融解ゆうかいしん直接ちょくせつ接触せっしょくした福島ふくしま汚染おせんすいには猛毒もうどくとされているプルトニウム、アメリシウムなどちょうウラン核種かくしゅふくまれ、それらを海洋かいよう放出ほうしゅつする前例ぜんれいはない。一方いっぽうで、世界中せかいじゅう原発げんぱつなんじゅうねん安全あんぜん運行うんこうし、信頼しんらいされているシステムで処理しょりした原発げんぱつ排出はいしゅつすいはそれとまったくべつのものである。


 融解ゆうかいしん接触せっしょくした福島ふくしま汚染おせんすいにはトリチウム以外いがい核種かくしゅがふくまれるのであって、その放出ほうしゅつは、融解ゆうかいしん接触せっしょくしない冷却れいきゃくすい放出ほうしゅつ同一どういつすることはできない、というわけだ。

 上記じょうき毎日まいにち産経さんけい主張しゅちょうは、論点ろんてんをトリチウムのみに限定げんていすることで、その放出ほうしゅつによる環境かんきょうへの影響えいきょうちいさくみつもろうとしているが、東京電力とうきょうでんりょく放出ほうしゅつしようとする「処理しょりすい」には核種かくしゅもふくまれる。中国ちゅうごく大使館たいしかん報道ほうどうかんは、そのトリチウム以外いがい核種かくしゅについては有効ゆうこう処理しょり技術ぎじゅつがないものがおお存在そんざいし、今後こんごそれらが大量たいりょう長期ちょうきにわたり放出ほうしゅつされることによる環境かんきょうへの影響えいきょう楽観らっかんてき評価ひょうかすることはできない、ということを指摘してきしている。


 福島ふくしまかく汚染おせんすい福島ふくしま原発げんぱつ事故じこ融解ゆうかいした原子げんし炉心ろしん直接ちょくせつ接触せっしょくしたもので、60種類しゅるい以上いじょう核種かくしゅふくまれる。トリチウム以外いがいにも有効ゆうこうせいみとめられる浄化じょうか技術ぎじゅつがない核種かくしゅ多数たすうある。そのうち、半減はんげんなが核種かくしゅによって、 海流かいりゅうによる拡散かくさん、そして生物せいぶつ濃縮のうしゅく発生はっせいし、環境かんきょうちゅう放射ほうしゃせい核種かくしゅ全体ぜんたいりょう過剰かじょう増加ぞうかまねきかねない。福島ふくしま原発げんぱつ事故じこいままで130まんトン以上いじょうかく汚染おせんすい形成けいせいしており、これほど莫大ばくだいりょうの、さらに成分せいぶん複雑ふくざつであるかく汚染おせんすい処理しょりには前例ぜんれいがない。海洋かいよう放出ほうしゅつが30ねん、ひいてはもっとながつづき、将来しょうらいにはあらたなかく汚染おせんすい大量たいりょう発生はっせい予想よそうされるなか、ALPSの有効ゆうこうせい完成かんせい第三者だいさんしゃによる評価ひょうかてないため、装置そうち長期ちょうきにわたる信憑しんぴょうせいがまだまだうたぐあいだのこっている。


 あと、うえ引用いんようした産経さんけい社説しゃせつにある「海水かいすい大幅おおはばうすめて放出ほうしゅつするので、生態せいたいけいなどへの影響えいきょうきようがない」などというバカげた日本にっぽんがわ主張しゅちょうについても、中国ちゅうごく報道ほうどうかんはつぎのように批判ひはんしている。


日本にっぽんがわ希釈きしゃくかく汚染おせんすい放射ほうしゃせい物質ぶっしつ濃度のうどげようとしているが、ぜん放射ほうしゃせい核種かくしゅたいして全体ぜんたいりょうのコントロールをおこなわず、海洋かいよう放出ほうしゅつ危害きがいせい軽減けいげん隠蔽いんぺいしようとしていることこそ、科学かがく精神せいしんやプロフェショナリズムにけるあらわれである。


 はい、ごもっともですね。としかいようがない。

 毎日まいにち朝日あさひ読売よみうり産経さんけいの8がつ26にち社説しゃせつは、どれも日本にっぽん政府せいふのいいぶん批判ひはん追従ついしょうしながら、中国ちゅうごく主張しゅちょう科学かがくてき根拠こんきょいているなどとべたてている。しかしその、これら4論説ろんせつはすでに中国ちゅうごくがわから反論はんろんされた主張しゅちょうをくりがえしているにすぎない。いわば、中国ちゅうごくからの反論はんろんこえないふりをして、そのすでに反論はんろんずみの日本にっぽん政府せいふ主張しゅちょうをワーワーわめきたてているにすぎないのだ。

 口先くちさきではいさましく中国ちゅうごく罵倒ばとうする文句もんくをつらねているが、しかしまったく中国ちゅうごくたい失礼しつれいなうえに内容ないようにおいて通用つうようするはずもない主張しゅちょうを、国内こくない読者どくしゃむけにきたてている。一見いっけんしたところ中国ちゅうごくにむかってなにかっているようにみえながら、実施じっしのところは完全かんぜんうちきのパフォーマンスをしているにすぎない。これが、全国ぜんこくとよばれる4つの新聞しんぶんが26にち発表はっぴょうした社説しゃせつしつである。想像そうぞうぜっする恥知はじしらずぶりにあきれると同時どうじに、なんとまあ読者どくしゃもバカにされたものよね、とびっくりする。朝日新聞あさひしんぶんは「中国ちゅうごく居丈高いたけだか対応たいおう」などといてるけど、「居丈高いたけだか」なのはどっちだろうね。

 朝日あさひは「科学かがくもとづいた協議きょうぎびかけにおうじてこなかったのは中国ちゅうごくほうだ」とき、毎日まいにちは「日本にっぽん政府せいふ専門せんもんによる協議きょうぎびかけたが、中国ちゅうごくこばんできた。科学かがくてき検証けんしょうする必要ひつようがあるならおうじるべきだろう」とく。これも、この社説しゃせつかれるまえさき中国ちゅうごく報道ほうどうかんによってとっくに反論はんろんみの言説げんせつである。


 日本にっぽんがわのいわゆる中国ちゅうごくがわ協議きょうぎしたいといういいかたから誠意せいいかんじられない。いままでバイやマルチの日本にっぽんがわ交流こうりゅうし、専門せんもん機関きかん意見いけん懸念けねんかさねて表明ひょうめいしたにもかかわらず、中国ちゅうごくがわ立場たちばかえりみず、規定きていのスケジュールで海洋かいよう放出ほうしゅつをかたくなにすすめている。もし日本にっぽんがわ今夏こんか放出ほうしゅつ開始かいし協議きょうぎ前提ぜんていとして、みずからの主張しゅちょう中国ちゅうごくがわけようとするのなら、このような協議きょうぎ実質じっしつ意義いぎがないようにおもわれる。もし本当ほんとう協議きょうぎする誠意せいいがあるのなら、まず海洋かいよう放出ほうしゅつ計画けいかくただちに中止ちゅうしにし、それ以外いがいあらゆる可能かのう対策たいさく検討けんとうすることや、利益りえき関係かんけいしゃによる独自どくじのサンプリングと分析ぶんせき容認ようにんすることなど、確実かくじつかく方面ほうめん懸念けねん払拭ふっしょくするべきである。


 これまた、いちいちごもっともとしかいようがないのではないか。

 「処理しょりすい放出ほうしゅつにはすでにさまざまな懸念けねんしめされており、そのなかには「科学かがくてき論拠ろんきょもとづかない」(毎日まいにち)などと一蹴いっしゅうはできない懸念けねんも、ふくまれているはずである。また、海洋かいよう放出ほうしゅつ以外いがいのオプションも、指摘してき提案ていあんされてきた。以下いか引用いんようも、上記じょうきリンクさき中国ちゅうごく大使館たいしかん報道ほうどうかん声明せいめいから。


日本にっぽんがわ周辺しゅうへん近隣きんりんこくなど利益りえき関係かんけいしゃ効果こうかてき協議きょうぎず、一方いっぽうてき海洋かいよう放出ほうしゅつというあやまった決定けっていくだし、一方いっぽうてきにそれを発表はっぴょうするやりかた実際じっさい海洋かいよう放出ほうしゅつ唯一ゆいいつのオプションとして各国かっこくけようとしている。しかし、海洋かいよう放出ほうしゅつ唯一ゆいいつのオプションでも、もっと安全あんぜんで、最善さいぜん対策たいさくでもない。海洋かいよう放出ほうしゅつのほか、地層ちそう注入ちゅうにゅう水蒸気すいじょうき放出ほうしゅつ水素すいそ放出ほうしゅつ地下ちか埋設まいせつなどの対策たいさく提起ていきされ、長期ちょうき保存ほぞんという方法ほうほう提案ていあんする専門せんもんもいたにもかかわらず、全部ぜんぶ日本にっぽんがわ無視むしされてきた。


 これまでさまざまな懸念けねん代替だいたいあんしめされてきたにもかかわらず、それらを検討けんとうしたうえで反論はんろんふくめてこたえていくことをせず、こえないふりをして、海洋かいよう放出ほうしゅつ強行きょうこうした。これが日本にっぽん政府せいふ東京電力とうきょうでんりょくがたどった過程かていであり、これに追従ついしょうして、やはり中国ちゅうごくしめ懸念けねん代替だいたいあんについてこえないふりをして、日本にっぽん政府せいふまとはずれな中国ちゅうごく批判ひはんをなぞってみせたのが、8がつ26にち全国ぜんこく4社説しゃせつである。

 さて、4社説しゃせつんでいてもうひとつ興味深きょうみぶかいのは、それらがそろって、中国ちゅうごく禁輸きんゆ動機どうき矮小わいしょうしようと躍起やっきになっているようにみえることである。つまり、中国ちゅうごく禁輸きんゆ措置そちをとるのは、外交がいこうてきな、あるいは貿易ぼうえきじょう戦略せんりゃくからそうしているのだ、と。


中国ちゅうごくによる禁輸きんゆ措置そちは]巨大きょだい市場いちば武器ぶきに、貿易ぼうえき他国たこく圧力あつりょくをかける「経済けいざいてき威圧いあつ」にもひとしいふるまいだ。[朝日新聞あさひしんぶん


先端せんたん半導体はんどうたい関連かんれん輸出ゆしゅつ規制きせい台湾たいわん問題もんだいめぐり、にちちゅう関係かんけいがぎくしゃくするなか今回こんかい禁輸きんゆ外交がいこうカードとして使つかっているとられても仕方しかたあるまい。[毎日新聞まいにちしんぶん


 台湾たいわん問題もんだい半導体はんどうたい関連かんれん輸出ゆしゅつ規制きせいなどで、米国べいこく連携れんけいつよめる日本にっぽんたいし、さぶりをかけようとする意図いとがうかがえる。

 国際こくさい社会しゃかい中国ちゅうごくたいして懸念けねんしている、貿易ぼうえき制限せいげん相手あいてこく圧力あつりょくをかける「経済けいざいてき威圧いあつ」にほかならず、到底とうてい容認ようにんできない。[読売新聞よみうりしんぶん


 理由りゆうは「中国ちゅうごく消費しょうひしゃ健康けんこうまもり、輸入ゆにゅう食品しょくひん安全あんぜん確保かくほするため」というが、不当ふとう禁輸きんゆ日本にっぽん水産すいさんぎょう多大ただい経済けいざいてき打撃だげきあたえる暴挙ぼうきょならない。岸田きしだ文雄ふみお首相しゅしょう即時そくじ撤廃てっぱいもうれたのは当然とうぜんだ。[産経新聞さんけいしんぶん


 これらの社説しゃせつがなにをいたいのか、あきらかだろう。中国ちゅうごくは「中国ちゅうごく消費しょうひしゃ健康けんこうまもり、輸入ゆにゅう食品しょくひん安全あんぜん確保かくほするため」というけれど、それは表向おもてむきのタテマエにすぎず、ほんとうの動機どうきはそこじゃないですよ、と。ほんとうは日本にっぽん圧力あつりょくをかけ対抗たいこうしていくための戦略せんりゃくてき手段しゅだんとして禁輸きんゆ措置そちをとってるにすぎないんですよ、と。そういたいわけである。

 そのいっぽうで、かく汚染おせんすい海洋かいよう投棄とうきをめぐってかれたこの8がつ26にち朝日あさひ毎日まいにち読売よみうり産経さんけい社説しゃせつにおいて、環境かんきょうしょく安全あんぜんという観点かんてんはいっさい考慮こうりょされていない。4社説しゃせつのすみからすみまでんでも、環境かんきょう汚染おせんしょく安全あんぜんせいという論点ろんてんには、たったの一言ひとこと言及げんきゅうもないのである。

 放射ほうしゃせい物質ぶっしつをふくんだみず大量たいりょう長期間ちょうきかんにわたってうみてるというはなしをしてるんですよ。なのに、禁輸きんゆ措置そちや「風評ふうひょう被害ひがい」による漁業ぎょぎょうしゃ損失そんしつについてはかたられても、環境かんきょう破壊はかい水産物すいさんぶつ汚染おせん人間にんげん健康けんこう被害ひがいについての懸念けねんはひとっこともふれられない。よっつの新聞しんぶん社説しゃせつをぜんぶんでも、まるでかたられない。

 これらの社説しゃせつきぶりには、じゅう意味いみでおどろくべき関心かんしんがおおっている。ひとつには、人間にんげん健康けんこう生命せいめいへの関心かんしんわたしたちの健康けんこう生命せいめいにダイレクトにかかわる環境かんきょう食品しょくひん問題もんだいなのに、そこについての言及げんきゅうがいっさいない。

 だい2に、さきにみてきたように、他者たしゃがなにをかんがえ、どのような理由りゆうから日本にっぽん政府せいふ措置そち反対はんたいしているのか、そのことにまったく関心かんしんをはらおうとしない。相手あいて反論はんろん無視むしし、こえないふりをしながら、しかし中国ちゅうごく措置そち不当ふとうであると見当けんとうはずれな主張しゅちょうきたてている。見当けんとうはずれな主張しゅちょうになるのも当然とうぜんである。だって、すでになされている相手あいて反論はんろんをぜんぜんふまえようとしない、こうともしないわけだから。

 このじゅう関心かんしんのなかで、中国ちゅうごくなるものへの敵対心てきたいしんだけがどんどんあおられている。たいへんに不気味ぶきみでおそろしい状況じょうきょうだとおもう。


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 汚染おせんすい海洋かいよう放出ほうしゅつについて、このあいだ、オンラインじょうんだ記事きじで、勉強べんきょうになったもの、参考さんこうになったものをリンクしておきます。


IAEA報告ほうこくしょは「処理しょりすい海洋かいよう放出ほうしゅつ」を承認しょうにんしていない。中国ちゅうごくを「科学かがくてき」とてる日本にっぽん傲慢ごうまん | Business Insider Japan(Jul. 28, 2023, 07:15 AM)

議論ぎろん再燃さいねん。「処理しょりすい海洋かいよう放出ほうしゅつ」はなにがまずいのか? 科学かがくてきファクトにもとづき論点ろんてん整理せいりする | ハーバー・ビジネス・オンライン(2019.09.27)

原発げんぱつ処理しょりすい放出ほうしゅつ問題もんだい科学かがくデータではなく東電とうでん体質たいしつ|ニューズウィーク日本にっぽんばん オフィシャルサイト(2023ねん08がつ25にちかね)2205ふん)

【Q&A】ALPS処理しょり汚染おせんすいさえておきたい14のポイント | 国際こくさい環境かんきょうNGO FoE Japan(2023ねん8がつ1にち作成さくせい 2023ねん8がつ21にち更新こうしん)


2023ねん7がつ31にち

産経新聞さんけいしんぶんがクルドじんへのヘイトスピーチをらしているけん

 

 以下いか産経さんけい記事きじだが、これは典型てんけいてき差別さべつ扇動せんどうである。


【「移民いみん」と日本人にっぽんじん病院びょういんでクルドじん「100にんさわぎ、救急きゅうきゅうれ5あいだはん停止ていし 埼玉さいたま川口かわぐち - 産経さんけいニュース(2023/7/30 13:30)


 この記事きじつたえている事実じじつは、おもにふたつである。ひとつは、クルドじん多数たすうあつまったということ。もうひとつは、それでさわぎになったということである。

 ひと多数たすうあつまり、騒動そうどうになった、と。たんにそれだけのことを、なんの意味いみがあってわざわざ報道ほうどうするのだろうか。多数たすうあつまったのがクルドじんだとなに報道ほうどうする価値かちてくるということなのだろうか。

 記事きじ以下いかのくだりなども、異様いようとしかいようがない。


 関係かんけいしゃによると、今月こんげつにち午後ごごごろから、どう市内しない総合そうごう病院びょういん川口かわぐち市立しりつ医療いりょうセンター」周辺しゅうへんやく100にんとみられる外国がいこくじんあつまりはじめた。いずれもトルコ国籍こくせきのクルドじんとみられ、よくにち午前ごぜんごろまでさわぎがつづいたという。

 きっかけは、女性じょせいをめぐるトラブルとみられ、4にち午後ごご時半じはんごろ、トルコ国籍こくせきの20だい男性だんせい市内しない路上ろじょう複数ふくすうのトルコ国籍こくせきおとこらにおそわれ刃物はものりつけられた。その男性だんせい救急きゅうきゅう搬送はんそうきつけた双方そうほう親族しんぞく仲間なかまらが病院びょういんあつまり、救急きゅうきゅう外来がいらいくちとびらけようとしたり、大声おおごえしたりしたという。病院びょういんがわさわぎをけて警察けいさつ通報つうほう。その救急きゅうきゅう搬送はんそうれを停止ていしした。


 「トルコ国籍こくせきのクルドじんみられ」る「やく100にんみられる外国がいこくじん」が、なぜ病院びょういん周辺しゅうへんあつまったのか。その原因げんいん背景はいけいについて、「きっかけは、女性じょせいをめぐるトラブルとみられ、4にち午後ごご時半じはんごろ、トルコ国籍こくせきの20だい男性だんせい市内しない路上ろじょう複数ふくすうのトルコ国籍こくせきおとこらにおそわれ刃物はものりつけられた」(「みられる」ばっかりだな)という以上いじょう情報じょうほうは、2000ほどもある記事きじ全体ぜんたいんでもなにもてこない。

 また、病院びょういんにかけつけたひとたちのなかに、どうして「救急きゅうきゅう外来がいらいくちとびらけようとしたり、大声おおごえしたりした」にんがいたのか、産経さんけい記事きじんでもさっぱりわからない。記者きしゃ関心かんしんをもたなかったし、読者どくしゃもそんなことに関心かんしんをいだかないだろうと記者きしゃかんがえたから、取材しゅざいしなかった、あるいは取材しゅざいしていてもかなかった、ということなのだろうか。

 そのいっぽうで、記事きじでは「午前ごぜんごろまでさわぎがつづいたという」「救急きゅうきゅう外来がいらいくちとびらけようとしたり、大声おおごえしたりしたという」と、(クルドじんではない)近隣きんりん住民じゅうみん証言しょうげんをひろったとおもわれる、伝聞でんぶん表現ひょうげんの「という」がくりかえされる。

 では、この騒動そうどうでなにか重大じゅうだい被害ひがいなり問題もんだいなりがきたのかというと、記事きじむかぎりでは、とりたてて問題もんだいにすべき深刻しんこく事態じたいなどなにもきていないのである。うえ引用いんようした「病院びょういんがわさわぎをけて警察けいさつ通報つうほう。その救急きゅうきゅう搬送はんそうれを停止ていしした」ということについても、騒動そうどうによってしょうじた深刻しんこく事態じたいなど産経さんけい発見はっけんできなかったようである。


 どう病院びょういん埼玉さいたま南部なんぶ川口かわぐち戸田とだわらび(わらび)の3唯一ゆいいついのちかかわる重症じゅうしょう患者かんじゃれる「3救急きゅうきゅう」に指定していされている。

 地元じもと消防しょうぼうによると、停止ていしとなった時間じかんは4にち午後ごご11時半じはんごろからよくにち午前ごぜんごろのやくあいだはん。このあいだ、3市内しないでの救急きゅうきゅう搬送はんそうけい21けんあった。このうち搬送はんそうさきが30ふん以上いじょうまらないなどの「救急きゅうきゅう搬送はんそう困難こんなん事案じあん」は1けんだが、さいわいにもいのちにかかわる事案じあんにはいたらなかったという。


 結局けっきょくのところ、産経さんけいがこの記事きじほうじている事実じじつは、「クルドじんとみられるひとが、仲間なかまはこまれた病院びょういんに100にんほどあつまって、騒動そうどうになった」ということにすぎない。では、この場合ばあいの「騒動そうどう」とはいったいなにだろうか。

 産経さんけい消防署しょうぼうしょ電話でんわしたりして被害ひがい事実じじつ一所懸命いっしょけんめいさがしだそうとしたようだが、深刻しんこく問題もんだいはとくにみつけられなかった。とどのつまり、産経さんけいがこのけんに「騒動そうどう」としていちいち報道ほうどうする意義いぎなり価値かちなりをみいだすとすれば、それは以下いかのところにしかない。


 さわぎを目撃もくげきした飲食いんしょくてん女性じょせいは「おとこたちがわずかな時間じかん次々つぎつぎあつまってきた。サイレンがひびき、外国がいこくさけごえこえた。とんでもないことがきたとおもい、こわかった。こんなさわぎははじめて。入院にゅういんしているほうやすむどころではなかったのではないか」。

 べつ住民じゅうみん男性だんせい(48)は「背丈せたけが2メートルくらいのクルドじん若者わかものが、片言かたこと日本語にほんごで『親戚しんせきされた』とさけんでいた。病院びょういんまえ道路どうろにどんどんくるまあつまってきた」とはなした。


 近隣きんりん住民じゅうみんがこわがっている、だから大変たいへんだ、というわけである。

 それにしても、産経新聞さんけいしんぶん住民じゅうみんのこんなごえをひろいあげて記事きじいて、なにをやりたいのか。「わずかな時間じかん次々つぎつぎあつまってきた」のが日本人にっぽんじんではなく外国がいこくじん(にみえるひと)たちだったり、日本語にほんごではない「外国がいこくさけごえこえた」りすると、マジョリティの住民じゅうみん日本人にっぽんじんだったり日本語にほんごネイティブだったりするひと)にとって「こわかった」という感想かんそうになるのは、素朴そぼく感情かんじょうとしてわからなくはない。でも、それは差別さべつてき偏見へんけん反映はんえいしての「こわかった」なわけで、そういう感情かんじょうをいだくことがさも当然とうぜんであるかのように新聞しんぶんいてよいうのかというと、それはちがうだろう。

 「背丈せたけが2メートルくらいのクルドじん若者わかものが、片言かたこと日本語にほんごで」というところも、これをいちいち記事きじくのは、クルドのひとたちにたいする読者どくしゃ恐怖きょうふをあおろうとしているのだとしかかんがえられない。下劣げれつにもほどがある。

 この記事きじはあきらかにつぎのようなメッセージを読者どくしゃはっしている。すなわち、「クルドじんはこわい。また、地域ちいき住民じゅうみん(クルドじん以外いがいの)がクルドじんをこわがるのは、おかしくはない」というものだ。これが差別さべつ扇動せんどうではなくてなんだろう。

 産経さんけい記事きじは、「外国がいこくさけごえ」や「背丈せたけが2メートルくらいのクルドじん若者わかもの」のはっする「片言かたこと日本語にほんご」に恐怖きょうふするマジョリティ(多数たすう地域ちいき住民じゅうみんぞくじょうに、ちからいっぱいおもねってみせている。他方たほうで、クルドのひとたちがそれぞれなにをかんが病院びょういんにあつまってきたのか、あるいは川口かわぐちわらび地域ちいき社会しゃかいにどんなおもいをいだいているのか、まったく関心かんしんをよせるそぶりすらみせない。この下劣げれつ記事きじなかで、クルドじん多数たすう住民じゅうみん視点してんとおして、あくまでも恐怖きょうふすべき対象たいしょうとしてえがかれている。しかし、脅威きょういなのはむしろ多数たすう住民じゅうみんのほうなのではないのか。

 産経さんけいは、「同市どうし[川口かわぐち]は全国ぜんこくもっと外国がいこくじん住民じゅうみんおお自治体じちたいで、クルドじん国内こくない最大さいだいしゅうじゅう」であるとく。そして、つぎのように、川口かわぐち人口じんこうにしめる外国がいこくじん、またクルドじん割合わりあいたかいのだということを強調きょうちょうしている。


 川口かわぐち人口じんこうやく60まんにんのうち外国がいこくじん住民じゅうみんすうやくまんせんにん人口じんこうの6・5%をめ、れいねんからは東京とうきょう新宿しんじゅくいて全国ぜんこくもっと外国がいこくじん住民じゅうみんおお自治体じちたいになった。トルコ国籍こくせきしゃ国内こくない最多さいたやく1200にんんでおり、その大半たいはんがクルドじんとみられるが、内訳うちわけ実態じったい行政ぎょうせい把握はあくできていない。


 産経さんけい記事きじはこのような文脈ぶんみゃくにおいて、「同市どうしでは近年きんねん、クルドじん地域ちいき住民じゅうみんとの軋轢あつれき(あつれき)が表面ひょうめんしている」とくわけだから、クルドじんおおい、あるいはえていることによって、あつれきがしょうじているのだといたいのだろう。

 しかし、おおい、えている、とはいっても、60まんにん川口かわぐち人口じんこうのうちクルドじんは1200にん、わずか0.2%にすぎない。客観きゃっかんてき事実じじつとして、クルドじん圧倒的あっとうてき少数しょうすうなのである。記事きじべられているように、わらび川口かわぐちはクルドがしゅうじゅうしていることから「ワラビスタン」などとよばれるが、この地域ちいき圧倒的あっとうてき多数たすう日本人にっぽんじんである。

 この地域ちいきのクルドのひとたちが有志ゆうし清掃せいそう見回みまわりのボランティア活動かつどう継続けいぞくしてきたことは、よくられているとおもう。少数しょうすうしゃである自分じぶんたちが地域ちいき社会しゃかいれられるためにかなりの神経しんけい労力ろうりょくをつかわざるをえないのだ。それほど圧倒的あっとうてき権力けんりょくがあるということだ。

 ところが、今回こんかい産経さんけい記事きじは、そこをあべこべにひっくりかえして、圧倒的あっとうてき多数たすう住民じゅうみん少数しょうすうしゃ恐怖きょうふするのがあたかも自然しぜんであるかのように認識にんしき転倒てんとうさせる。まるで少数しょうすうしゃ(マイノリティ)が多数たすうしゃ(マジョリティ)をおびやかす脅威きょういであるかのように。そのはてにあるのは、少数しょうすうしゃ暴力ぼうりょくをふるうことの正当せいとうである。そういうわけで、この報道ほうどう看過かんかできない。



 この産経さんけい記事きじには、ほかにも批判ひはんすべきてんがいくつもあるのですが、キリがないので、余力よりょくがあるときにけたらまたこのブログにくことにします。


2023ねん7がつ28にち

大阪おおさか刑務所けいむしょ弱視じゃくし受刑じゅけいしゃにルーペの使用しよう許可きょかしなかったということについて


 大阪おおさか弁護士べんごしかいが、大阪おおさか刑務所けいむしょもと受刑じゅけいしゃたいする処遇しょぐうについて人権じんけん侵害しんがいであるとの警告けいこくをおこなったということが、報道ほうどうされている。


重度じゅうど弱視じゃくし ルーペ使用しようみとめず 大阪おおさか刑務所けいむしょ大阪おおさか弁護士べんごしかい警告けいこく|NHK 関西かんさいのニュース(07がつ27にち 1608ふん)

視力しりょく0・01以下いか受刑じゅけいしゃのルーペ使用しよう大阪おおさか刑務所けいむしょふたたみとめず…弁護士べんごしかい人権じんけん侵害しんがい」と警告けいこく : 読売新聞よみうりしんぶん(2023/07/28 07:05)


 警告けいこくしょ概要がいよう本文ほんぶんは、大阪おおさか弁護士べんごしかいのウェブサイトでむことができる。


刑務所けいむしょない重度じゅうど視覚しかく障害しょうがいゆうする受刑じゅけいしゃ自弁じべんルーペの使用しよう許可きょかとされたことにかんする警告けいこく - 大阪おおさか弁護士べんごしかい(2023ねん7がつ25にち)


 大阪おおさか刑務所けいむしょ重度じゅうど弱視じゃくしもと受刑じゅけいしゃにルーペの使用しよう許可きょかしなかった理由りゆうは、ルーペの金属きんぞく部分ぶぶんするど加工かこうしたり、レンズを使つかって発火はっかさせたりする危険きけんがあるというもの。しかし、弁護士べんごしかい警告けいこくしょ以下いかのように指摘してきするとおり、これはまったく理由りゆうになっていない。


……金属きんぞくせいいた研磨けんまするひとしにより悪用あくようされることをふせぐためには、ルーペの使用しよう回収かいしゅうするなど、適切てきせつ保管ほかん方法ほうほうをとればりる。また、レンズによる発火はっかは、直射ちょくしゃ日光にっこうなどつよ自然しぜんこう必要ひつようかんがえられるところ、ルーペの使用しよう場所ばしょ使用しよう時間じかん別途べっと管理かんりするなどの方法ほうほうにより危険きけんけることができる。


 ところで、このけん大阪おおさか弁護士べんごしかい大阪おおさか刑務所けいむしょ対立たいりつする争点そうてんとなっているのは、刑事けいじ収容しゅうよう施設しせつおよ収容しゅうようしゃとう処遇しょぐうかんする法律ほうりつだい41じょうについてのようである。どうじょうでは、「眼鏡めがねその補正ほせい器具きぐとうについて「刑事けいじ施設しせつ規律きりつおよ秩序ちつじょ維持いじその管理かんり運営上うんえいじょう支障ししょうしょうずるおそれがある場合ばあいのぞき、自弁じべんのものを使用しようさせるものとする。」としている。刑務所けいむしょがわはルーペの使用しようが「刑事けいじ施設しせつ規律きりつおよ秩序ちつじょ維持いじその管理かんり運営上うんえいじょう支障ししょうしょうずるおそれがある」として許可きょかにし、これにたいして弁護士べんごしかいがそのおそれはないと反論はんろんしているのがさき引用いんよう箇所かしょである。

 でも、法律ほうりつのドシロウトの感覚かんかくわれるかもしれないけれど、この「刑事けいじ施設しせつ規律きりつおよ秩序ちつじょ維持いじその管理かんり運営上うんえいじょう支障ししょうしょうずるおそれがある場合ばあいのぞき」という規定きていがひどい、とおもう。

 文字もじんで情報じょうほうをえたり、手紙てがみなどで外部がいぶひと通信つうしんしたりできることは、基本きほんてき人権じんけんである。刑務所けいむしょがまずは尊重そんちょうすべきなのはそこだろう。「眼鏡めがねその補正ほせい器具きぐ」(弱視じゃくししゃにとってルーペは当然とうぜんここにふくまれるだろう)の使用しよう原則げんそくとして制限せいげんされてはならないはずだ。ところが、「刑事けいじ施設しせつ規律きりつおよ秩序ちつじょ維持いじその管理かんり運営上うんえいじょう支障ししょうしょうずるおそれがある」という口実こうじつをつけて、基本きほんてき人権じんけん制限せいげん侵害しんがい)するということがげんにおこなわれている。

 入管にゅうかん収容しゅうよう施設しせつなんかも同様どうようで、「保安ほあんじょう支障ししょうがある」という口実こうじつで、収容しゅうようしゃのあらゆる人権じんけん制限せいげんされる。

 人権じんけん保障ほしょうは、「保安ほあんじょう支障ししょう」やら「施設しせつ規律きりつおよ秩序ちつじょ維持いじ」やらよりも、より上位じょうい位置いちづけられるべきもののはずだけど、刑務所けいむしょ入管にゅうかん施設しせつではそこが完全かんぜん転倒てんとうしている。そしてその転倒てんとう常態じょうたいし、いわば「ふつうのこと」になっている。刑務所けいむしょ入管にゅうかん施設しせつ収容しゅうようしゃが「ここには(そと社会しゃかいとちがって)人権じんけんはない」としばしばかたるのは、そういうことではないのか。この転倒てんとうをあたりまえにしてはならない、とおもう。


2023ねん7がつ3にち

病院びょういんがオーバーステイの患者かんじゃ通報つうほうするのはだい問題もんだい


  鹿児島かごしま県内けんない病院びょういんが、診察しんさつけに外国がいこくじん患者かんじゃ警察けいさつ通報つうほう警察けいさつがこのひとを「不法ふほう残留ざんりゅう」の容疑ようぎ逮捕たいほしたという記事きじんだ。

 6月19にちみなみ日本にっぽん新聞しんぶんがオンラインでほうじている。ただ、記事きじ掲載けいさいしているのが、コメントらんでの差別さべつみを放置ほうちし、差別さべつ主義しゅぎしゃ積極せっきょくてきむことで「炎上えんじょう騒動そうどうこしページビューをかせぐという差別さべつ便乗びんじょう商法しょうほうをとっている「Yahoo!ニュース」なので、記事きじへのリンクはりません。みなみ日本にっぽん新聞しんぶんのサイトにおな記事きじ掲載けいさいされていれば、そちらのリンクを紹介しょうかいすることもできるのですが、どうもそっちには掲載けいさいされてないようなので。

 まあそれはともかく、みなみ日本にっぽん新聞しんぶんほうじるところによると、6月19にち、この患者かんじゃ受診じゅしんしたさいに身分みぶんしょう提示ていじしなかったため、病院びょういん通報つうほうしたのだそうだ。このひと在留ざいりゅう期間きかんは16にちまでで、3にちほどオーバーステイになっていたので、警察けいさつ逮捕たいほした、と。

 こういうニュースにせっしてまずおもうのは、「不法ふほう残留ざんりゅう」とか「不法ふほう滞在たいざい」といった言葉ことばがいかに正規せいき滞在たいざい外国がいこくじん在留ざいりゅう期間きかんがすぎたり、あるいは在留ざいりゅう資格しかくされたりした外国がいこくじん)への偏見へんけんをもたらしているかということである。

 在留ざいりゅう資格しかくがないというのは、たんに入管にゅうかんきょくという行政ぎょうせい機関きかん在留ざいりゅう資格しかく許可きょかしていないということにすぎない。診療しんりょうけに患者かんじゃをいちいち病院びょういん警察けいさつ通報つうほうしなければならない理由りゆうになるわけがない。そんなもんわざわざ通報つうほうするなら、日本人にっぽんじんなんてだれひとりとして日本にっぽんでの在留ざいりゅう資格しかくなんてってない。診察しんさつけに日本人にっぽんじんみんな警察けいさつすんですか、というはなしである。日本人にっぽんじん患者かんじゃ入管にゅうかんきょくみとめる在留ざいりゅう資格しかくなんかなくても通報つうほうしないのに、外国がいこくじん患者かんじゃ場合ばあいだけは在留ざいりゅうカードを提示ていじできなかったら警察けいさつすとか、そこに合理ごうりてき理由りゆうなんてありようがない。ところが、「不法ふほう残留ざんりゅう」「不法ふほう滞在たいざい」という言葉ことばとともに、それがさも危険きけん犯罪はんざいであるかのようなイメージがひろがっているために、警察けいさつ通報つうほうなどという無用むよう行為こうい病院びょういんなどがしてしまうのではないのか。

 深刻しんこくなのは、こうして病院びょういん正規せいき滞在たいざい外国がいこくじん警察けいさつ通報つうほうするということをやってしまうと、正規せいき滞在たいざいひとは、通報つうほうされることを覚悟かくごしないと病院びょういんけなくなってしまう、ということである。ひとににかかわることなので、医療いりょう機関きかんはよくよくかんがえてほしいとおもう。



 以前いぜんこのブログにいた記事きじしたにリンクしておきます。

 うえいたようなこととともに、国公立こっこうりつであれ民間みんかんであれ、医療いりょう機関きかんには、オーバーステイの外国がいこくじん受診じゅしんしにきた場合ばあい通報つうほうしなくてもよいと、入管にゅうかんちょうですらってますよということも、いてあります。

不法ふほう残留ざんりゅう」の通報つうほうは、人命じんめい感染かんせんしょう対策たいさくよりも重要じゅうようなのですか?

2023ねん6がつ29にち

大村おおむら入管にゅうかん死亡しぼう事件じけんについて 6・24全国ぜんこく集会しゅうかいでの発言はつげん



 

 6月24にちに「これからのたたかいにけた全国ぜんこく集会しゅうかい」(主催しゅさい入管にゅうかん民族みんぞく差別さべつ人権じんけん侵害しんがいたたか全国ぜんこく市民しみん連合れんごう)というのに参加さんかしてきました。改悪かいあく入管にゅうかんほうが6がつ9にち可決かけつ成立せいりつしてしまったことをけ、これからのたたかいをどう構想こうそうしていくのか、というテーマの集会しゅうかいです。

 ここで「大村おおむら入管にゅうかん死亡しぼう事件じけんについて」とだいして、すこしはなしをさせてもらいました。大村おおむら入管にゅうかんがナイジェリアじん男性だんせい餓死がしするにいたるまで放置ほうちした(見殺みごろしにした)背景はいけいには、入管にゅうかんちょう収容しゅうよう送還そうかんをめぐるどのような方針ほうしん指示しじがあったのか。また、その方針ほうしん指示しじはこの見殺みごろ事件じけんのあと、かわったのか、かわらなかったのか。そういったことをおはなししました。

 そうしてはなした内容ないようは、記録きろくとしてのちに参照さんしょうできるようにしておく意義いぎもあるのではないかとおもい、このブログにのっけておきます。ただ、当日とうじつ途中とちゅうまでしか原稿げんこうつくっていかなかったので、冒頭ぼうとうの3ぶんの1ぐらいをのぞいて、記憶きおく再現さいげんしています。実際じっさいにしゃべった内容ないようとは、すこしずれているとおもいます。



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死亡しぼう事件じけん」ではなく「殺人さつじん事件じけん

 今日きょうは6がつの24にちですが、4ねんまえ、2019ねんの6がつ24にちに、長崎ながさき大村おおむら入管にゅうかんセンターで、Aさんというナイジェリアじん男性だんせいくなりました。この4ねんまえ今日きょうこった事件じけんわすれてはならない、しんきざまなければならないとおもい、今日きょうはそのはなしをさせていただきます。

 「死亡しぼう事件じけん」とよくわれるんですけど、Aさんの事件じけんにしろ、ウィシュマさんの事件じけんにしろ、「見殺みごろ事件じけん」とぶべきじゃないかとおもいます。どちらも、死亡しぼうしつつあるひとを「たすけられなかった」という事件じけんではないんです。だって、たすけようとしなかったんだから。たすけられる手段しゅだんはあって、それはぜんぜんむずかしいことじゃなかった。でも、そのたすける手段しゅだんをとらずに見殺みごろしにした。それは「死亡しぼう事件じけん」というより、「見殺みごろ事件じけん」とか「殺人さつじん事件じけん」とぶのにふさわしいんじゃないでしょうか。

 具体ぐたいてきはなします。Aさんは、大阪おおさか入管にゅうかん大村おおむら入管にゅうかんセンターとあわせて、通算つうさんねんはんものあいだ入管にゅうかん施設しせつ収容しゅうようされていました。で、ここからしてほしいとハンガーストライキ、それもみずすらまない絶食ぜっしょくをおこなって、くなってしまったわけです。

 入管にゅうかんちょうは、そのとしの10がつ調査ちょうさ報告ほうこくしょ(「大村おおむら入国にゅうこく管理かんりセンター収容しゅうようしゃ死亡しぼう事案じあんかんする調査ちょうさ報告ほうこくしょ」)をしています。これは入管にゅうかん対応たいおう問題もんだいはなかったというようなことをっている報告ほうこくしょなのですが、Aさんが長期間ちょうきかん拘束こうそくされて自由じゆうがないということをって、「かり放免ほうめんでも強制きょうせい送還そうかんでもいいので、ここからしてください」と、そううったえてハンストをしていたことが記録きろくされているんです。なぜAさんがみずすらまず完全かんぜん絶食ぜっしょくをしていたのか、大村おおむら入管にゅうかん把握はあくしていた、ということです。ということは、入管にゅうかんは、かり放免ほうめん許可きょか検討けんとうするからハンストを中止ちゅうしして、医者いしゃ診察しんさつもうけてくださいと説得せっとくすることができたし、そう説得せっとくすればAさんがハンストを中止ちゅうしする可能かのうせいたかかったはずです。

 実際じっさい、ハンストなどで危険きけん状態じょうたいにある収容しゅうようしゃたいして、入管にゅうかんかり放免ほうめん許可きょかをするからとって食事しょくじをとるように説得せっとくするというれいはぜんぜんめずらしくはないです。入管にゅうかん収容しゅうようして自由じゆう制限せいげんしているひといのちさい優先ゆうせんするなら、そうするしかないわけです。ところが、大村おおむらのセンターは、そうしなかったんです。みずんでないわけだからそのまま放置ほうちしてたら1週間しゅうかん10日とおかぬことはかりきったことなのに、ほったらかしにした。これは見殺みごろしです。入管にゅうかんは「死亡しぼう事案じあん」とんでいるのですが、「見殺みごろ事件じけん」「殺人さつじん事件じけん」とぶべきだとおもいます。



見殺みごろ事件じけん方針ほうしんをかえなかった入管にゅうかんちょう

 ウィシュマさんが見殺みごろしにされた事件じけんおなじですよね。ウィシュマさんはハンストではなく、べたくてもべられない状態じょうたいになっていたということでAさんとはちがうのですけど、さきほどSTARTの支援しえんしゃのおはなしにもあったように、いのちすく方法ほうほうがはっきりしていた、それもぜんぜんむずかしいことではなかった、でも入管にゅうかんはその方法ほうほうをとらなかった、それで見殺みごろしにしたということです。入管にゅうかんはAさんやウィシュマさんのいのちかるくあつかいました。ではなにを入管にゅうかん重視じゅうししたのかといえば、収容しゅうよう継続けいぞくするということだったわけです。

 この、収容しゅうよう継続けいぞく重視じゅうしして、いのちかるくあつかうという入管にゅうかん姿勢しせいは、Aさん事件じけんのあとの入管にゅうかん対応たいおうにはっきりとあらわれています。Aさんが6がつ24にちくなり、その3週間しゅうかんの7がつ17にちに、入管にゅうかんちょう長官ちょうかん佐々木ささき聖子せいこさんというひと日本にっぽん記者きしゃクラブで記者きしゃ会見かいけんをしました*1佐々木ささき長官ちょうかんはここで「長期ちょうき収容しゅうようというのが非常ひじょう問題もんだいだという認識にんしき非常ひじょうつよって」いるとしつつも、「なんとしても送還そうかん迅速じんそくにおこなうことで長期ちょうき収容しゅうよう解消かいしょうしたいというのが入管にゅうかん基本きほんてきかんがえ」であるとべました。迅速じんそく送還そうかんによって、長期ちょうき収容しゅうよう解消かいしょうしようというのが入管にゅうかんかんがえだとったわけです。

 これは、ちょっとややこしい説明せつめいがいるんですけど、Aさんの事件じけんのあとも、入管にゅうかんはこれまでの方針ほうしん維持いじしますよという宣言せんげんです。入管にゅうかんは、2010ねんから15ねんまでのあいだは、長期ちょうき収容しゅうようかり放免ほうめんについて、いまとすこちが方針ほうしんをとっていました。それはどういうことかというと、「長期ちょうき収容しゅうよう問題もんだいだ」ということがまずあって、その長期ちょうき収容しゅうよう回避かいひするためにかり放免ほうめん制度せいど柔軟じゅうなん活用かつようしますと。そういう通達つうたつ入管にゅうかん内部ないぶ*2、プレスリリースも*3国会こっかい答弁とうべん国連こくれんなんかにもそうっていたんです。かり放免ほうめん柔軟じゅうなん活用かつようして長期ちょうき収容しゅうよう回避かいひするんだと。それが入管にゅうかん公式こうしき立場たちばでした。

 ところが、2015ねん9がつにその通達つうたつ廃止はいしされました*4かり放免ほうめん制度せいど活用かつようして長期ちょうき収容しゅうよう回避かいひするという通達つうたつ廃止はいしされ、それで、あくまでも送還そうかんによって長期ちょうき収容しゅうよう解消かいしょうするんだという方針ほうしんになったわけです。結局けっきょくそれはムチャなはなしで、この方針ほうしんによって2015ねん以降いこう全国ぜんこく入管にゅうかん施設しせつでどんどん収容しゅうよう長期ちょうきしていったということは、みなさんごぞんじのとおりですよね。この方針ほうしんにのっとって、大村おおむら入管にゅうかん瀕死ひんしのAさんにかり放免ほうめん許可きょか打診だしんをしなかった、そして見殺みごろしにしたのです。

 ところが、入管にゅうかんちょう長官ちょうかんは、こういういたましい事件じけんがあってもなお、これまでの方針ほうしんえません、維持いじしますと宣言せんげんした。反省はんせいしなかった。見直みなおさなかった。そうして、ウィシュマさんの事件じけんがあったということです。Aさんを見殺みごろしにした事件じけん再発さいはつ防止ぼうし失敗しっぱいしたのです。



本庁ほんちょう指示しじにもとづく現場げんばでの蛮行ばんこう

 収容しゅうよう長期ちょうきになってもかり放免ほうめんはしないんだと、あくまでも送還そうかんだいいちであってそのために収容しゅうよう継続けいぞくするんだと、そうした方針ほうしんのもとで、Aさんが見殺みごろしにされました。で、Aさんのがあっても、入管にゅうかんちょう長官ちょうかんはこの方針ほうしんあらためない、維持いじすると記者きしゃ会見かいけん宣言せんげんしました。

 では、佐々木ささき長官ちょうかんのこの宣言せんげんけて、入管にゅうかんセンターなどの現場げんばはどう対応たいおうしたのか、ということをおはなしします。

 このときに入管にゅうかんがおこなった行為こういは、日本にっぽん政府せいふによる蛮行ばんこう残虐ざんぎゃく行為こういとして歴史れきしのこり、なんひゃくねんかたがれるとおもいます。

 2019ねんの5がつ、6がつごろ――Aさんが大村おおむらでハンストをおこなったのとどう時期じきですが――牛久うしく東日本ひがしにっぽん入管にゅうかんセンター)でも、ぬのを覚悟かくごしてのいのちがけのハンストをやるひと複数ふくすうてきていました*5。2015ねんぐらいからはじまる収容しゅうよう長期ちょうきが、このころには収容しゅうようしゃたちにとって心身しんしん限界げんかいにきていたということです。そして、Aさんの死後しごも、かり放免ほうめんしないならぬまでつづけるという覚悟かくごでのハンストをするひとは、牛久うしくでも大村おおむらでもつぎつぎにてきて、やみませんでした。

 これにたいし、入管にゅうかんは「かり放免ほうめんします」とってハンストを中止ちゅうしするよう説得せっとくし、ハンストしゃがハンストをやめると、自力じりきでなんとか歩行ほこうできるぐらいまで体力たいりょく回復かいふくするのをってかり放免ほうめんするという対応たいおうをとりました。

 ところが、かり放免ほうめん収容しゅうようくのはたったの2週間しゅうかんだけ。2週間しゅうかんにふたたび収容しゅうようするという措置そち入管にゅうかんはとりました。こうしてまた収容しゅうようされたひとがふたたび、あるいはみたびハンストすると、入管にゅうかんは2週間しゅうかんだけかり放免ほうめんしてまた収容しゅうようするということを、くりかえしたのです*6

 一度いちど収容しゅうよういて希望きぼうをもたせ、それをたたきつぶすということを、入管にゅうかんはくりがえしやったわけです。収容しゅうよう長期ちょうきしてもかり放免ほうめんはしない、あくまでも収容しゅうよう継続けいぞくし、送還そうかん帰国きこくむんだという2015ねん以来いらい方針ほうしんは、2019ねんにAさんの事件じけんがあってもかわらなかった。この方針ほうしんにのっとって、2週間しゅうかんだけかり放免ほうめんしてまたつかまえるという、魚釣さかなつりのキャッチ・アンド・リリースみたいなすさまじい蛮行ばんこうが、現場げんばではおこなわれました。

 Aさんの事件じけんから、入管にゅうかんはある意味いみでは教訓きょうくんをえたといえばえたのです。ただし、それは、ころすところまでんでしまったのはマズイということにすぎなかった。ころさない程度ていどいためつけろという入管にゅうかんかんがえが、この2週間しゅうかんかり放免ほうめんさい収容しゅうようのくりがえしにはあらわれています。



改悪かいあく入管にゅうかんほう成立せいりつ連帯れんたい

 2020ねん以降いこう、コロナの感染かんせん拡大かくだいで、収容しゅうようしゃすうらすという入管にゅうかん方針ほうしんがあり、これにおうじて収容しゅうよう長期ちょうきはある程度ていど解消かいしょうしてはいます。しかし、さきにべた人命じんめい軽視けいし方針ほうしんつづいていることは、ウィシュマさんの事件じけんからもあきらかです。

 で、今回こんかい成立せいりつした改悪かいあく入管にゅうかんほう。これは、いまべてきたような送還そうかん強硬きょうこう方針ほうしん延長線えんちょうせんじょうにあるものです。この法律ほうりつ成立せいりつしてしまったということは、その以前いぜんからの送還そうかん強硬きょうこう方針ほうしん入管にゅうかん今後こんごつづけていくのを後押あとおしすることになるとおもいます。そして、入管にゅうかん送還そうかん強硬きょうこうにすすめていこうとしたときに、そのおもな方法ほうほうは、収容しゅうようです。かり放免ほうめんしゃさい収容しゅうようする、長期ちょうき収容しゅうようする、そうしていためつけて、帰国きこく強要きょうようする、ということを今後こんごますます強化きょうかしてくる可能かのうせいたかい。

 しかし、今回こんかい入管にゅうかんほう改悪かいあく反対はんたいする運動うんどうおおきくがり、たくさんのひと入管にゅうかん差別さべつ人権じんけん侵害しんがい問題もんだい関心かんしんをもち、さらに行動こうどうにうつすのをにして、とても勇気ゆうきづけられました。入管にゅうかん包囲ほういするわたしたちの連帯れんたいは、いままでになくつよくなっているとおもいます。長期ちょうき収容しゅうようさせない。さい収容しゅうようさせない。送還そうかんさせない。入管にゅうかんが「送還そうかん忌避きひしゃ」とぶ、送還そうかん拒否きょひせざるをえないひとびとについて、難民なんみん認定にんてい審査しんさ適正てきせい在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょかによって入管にゅうかん在留ざいりゅう資格しかくさせる。そのために知恵ちえい、ともにちからわせましょう。



ちゅう

*1: 会見かいけん動画どうがは、以下いかのページにリンクされている。
 佐々木ささき聖子せいこ出入国しゅつにゅうこく在留ざいりゅう管理庁かんりちょう長官ちょうかん 会見かいけん | 日本にっぽん記者きしゃクラブ JapanNationalPressClub (JNPC) 

*2: 2010ねん7がつ27にち法務省ほうむしょう入国にゅうこく管理かんりきょくきょく長長ながなが退去たいきょ強制きょうせい令書れいしょにより収容しゅうようするものかり放免ほうめんかんする検証けんしょうとうについて(通達つうたつ)」   

*3: 2010ねん7がつ30にち法務省ほうむしょう入国にゅうこく管理かんりきょく「プレスリリース 退去たいきょ強制きょうせい令書れいしょにより収容しゅうようするものかり放免ほうめんかんする検証けんしょうとうについて」   

*4: 2015ねん9がつ18にち退去たいきょ強制きょうせい令書れいしょにより収容しゅうようするものかり放免ほうめん措置そちかか運用うんよう動静どうせい監視かんしについて(通達つうたつ)」 

 *5: 2019ねん5がつごろから東日本ひがしにっぽん入管にゅうかんセンターでいのちがけのハンストを実行じっこうする収容しゅうようしゃてきたことについて、以下いかかり放免ほうめんしゃかいによる記録きろく
 長期ちょうき収容しゅうようへの抗議こうぎを!(東日本ひがしにっぽん入管にゅうかんでのハンストをめぐって)(2019ねん6がつ19にち)
 東日本ひがしにっぽん入管にゅうかんセンターでのハンスト、50にちちかくになるひと(2019ねん6がつ25にち

 *6: 以下いかは、2週間しゅうかんかり放免ほうめん収容しゅうようのくりがえしについて、東日本ひがしにっぽんおよび大村おおむら入管にゅうかんセンターにたいする抗議こうぎ記録きろく
 抗議こうぎ声明せいめい入管にゅうかんによるせしめ・恫喝どうかつ目的もくてきとしたさい収容しゅうようについて(2019ねん7がつ29にち)
 東日本ひがしにっぽん入管にゅうかんセンターに抗議こうぎしました――かり放免ほうめん2週間しゅうかんののちのさい収容しゅうようについて(2019ねん8がつ6にち)
 さい収容しゅうようおよび長期ちょうき収容しゅうようについて抗議こうぎもうれ(8/21、東日本ひがしにっぽん入管にゅうかんセンターに)(2019ねん8がつ27にち)
 抗議こうぎのよびかけ】人命じんめいをもてあそぶ入管にゅうかんによる再々さいさい収容しゅうようについて(2019ねん10がつ29にち)
 10月30にち 大村おおむら入管にゅうかんセンターに抗議こうぎもうれ(収容しゅうようしゃ死亡しぼう事件じけんとハンストしゃさい収容しゅうようとうについて)(2019ねん11月5にち)

2023ねん6がつ16にち

「ルールをやぶもののせいで」とうまえに


  今回こんかいもまた入管にゅうかんほう改悪かいあく関係かんけいするはなしですが。

 山本やまもと太郎たろう参議院さんぎいん議員ぎいんが、8にち参院さんいん法務ほうむ委員いいんかいでの法案ほうあん採決さいけつのさい、委員いいんちょうせきのほうにびかかるような動作どうさをしたことが問題もんだいにされている。

 9にちには与党よとう自民じみん公明こうめい、「ゆ」とう維新いしん国民こくみん民主みんしゅばかりか、野党やとう立憲りっけんまでもがをつらねるかたちで、山本やまもとたいする懲罰ちょうばつ動議どうぎ共同きょうどう提出ていしゅつされた。採決さいけつにいたる法務大臣ほうむだいじんはじめ政府せいふがわ国会こっかい審議しんぎでの不誠実ふせいじつさ(立法りっぽう事実じじつにいくつもの重大じゅうだい疑念ぎねんがつきつけられているのに、げまわってまともに応答おうとうしなかった)がわれないいっぽうで、これをからだ使つかって阻止そししようとした山本やまもと行動こうどうばかりが問題もんだいにされるのは、ほとんど「あべこべ」とうしかないほどバランスをいている。

 この懲罰ちょうばつ動議どうぎうごきにたいしては、「入管にゅうかん事件じけんたたか大阪おおさか弁護士べんごし有志ゆうしかい」がいちはや批判ひはん声明せいめいしている。

れいわ新選しんせんぐみ代表だいひょう山本やまもと太郎たろう議員ぎいんたいして懲罰ちょうばつしないことをもとめる声明せいめい


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 さて、ここまでがぜんり。ここから本題ほんだいです。

 山本やまもと行動こうどうたいしては、入管にゅうかんほう改悪かいあくへの反対はんたい運動うんどうんできたひとのなかからも、批判ひはんている。批判ひはんること自体じたいはあたりまえなのだけど、そのなかには「こういう批判ひはんはまずいのではないか」とおもうものがあった。

 それは、山本やまもと行動こうどうを「ルールをやぶる」ものだというてん批判ひはんするものである。いわく、ルールをまもってそのわくのなかでやってきたおおくの地道じみち活動かつどうが、山本やまもとの「ルールをやぶる」行動こうどうのせいで、これと同一どういつされレッテルりをされ否定ひていされてしまうのだ、と。

 これはほんとうにまずい批判ひはんだとおもう。そして、同様どうようのロジックによる批判ひはんは、今後こんごともくりがえてくるのではないかと、危惧きぐしている。

 そういうわけで、今回こんかい山本やまもと行動こうどうについての評価ひょうかとはべつに、上記じょうきのようなロジックでの批判ひはんをどうとらえたらよいのか、今後こんごのためにすこ考察こうさつしておきたいとおもう。具体ぐたいてきなことはこういう特定とくてい多数たすうひとがアクセスできるところにはきにくいのできませんが、そこは想像そうぞうりょくとかでおぎなってんでもらえるとありがたいです、すみませんが。


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 さて、この批判ひはんしゃの、自分じぶん(たち)はルールのわくないでやりたいという意思いしはもちろん否定ひていすべきものではないです。わたしも、できるかぎりルールのなかでやりたいとおもうし、実際じっさい、そうおもっていままでやってきました。ルールからはずれると、権力けんりょくからの弾圧だんあつこしやすいだけでなく、自分じぶん身近みぢかにいるひとたちとのあつれきをむこともおおい。

 でも、入管にゅうかん問題もんだい正規せいき滞在たいざいひと支援しえんんでいると(みでもおおかれすくなかれ同様どうようのことはあるのかもだけど)、ルールのわくないでやろうにも、それだけではどうにもならないという場面ばめんてきたりもする。いま危機ききにさらされてるいのちまもるには、ルールなんかまもってられないということもありうる。ここでわたしっている「ルール」には、違反いはんすると刑罰けいばつされることもあるような法令ほうれいもふくむ。警察けいさつ社会しゃかい運動うんどう弾圧だんあつしようとするさいには、まったく違法いほう行為こういなどなくても平気へいきでこれをでっちげることさえするくらいなのだから、支援しえんしゃをなんらかの口実こうじつをつけて違法いほう行為こういうことなど、弾圧だんあつするがわからしたらいくらでもきなようにできる。

 しかも、さきの批判ひはんしゃ理屈りくつだと、なにをもって「ルールをやぶる」行動こうどうとするのかは、世間せけん多数たすうしゃ見方みかた評価ひょうか依存いぞんするということにもなってしまう。入管にゅうかん問題もんだいもの一部いちぶが「ルールをやぶる」行動こうどうをとることで、そうした活動かつどうをしているひと全体ぜんたいがレッテルりをされ、世間せけんから否定ひていてきにみられてしまうのが問題もんだいだというわけだから。このように世間せけん見方みかた依存いぞんするかたちで、「ルールをやぶる」行動こうどうはつつしまなければならないということがつよわれるようになれば、運動うんどう支援しえん萎縮いしゅくせざるをえないし、それが実現じつげんしうる可能かのうせいをみずからせばめてしまうことにもなるだろう。そこでは世間せけん(マジョリティ)が反発はんぱつしそうなことは、なかなかできなくなる。それはマイノリティの権利けんり獲得かくとくしていこうとする運動うんどうにおいて、自殺じさつ行為こういとすらえるのではないか。

 それに、ルールそのものがかならずしも公平こうへいではなく、よりおおきな権力けんりょくったもの有利ゆうりにつくられているということも、しばしばある。ちから権利けんりをうばわれているものほど、きていくなかでルールを侵犯しんぱんしたとみなされるリスクがあちらこちらにころがっている。これを支援しえんしようとするものも、当事とうじしゃほどではもちろんないにせよ、多少たしょうはそのリスクをかかえこむことになる。さらに、支援しえんしゃ自身じしんがマイノリティ属性ぞくせい多分たぶんにもつ場合ばあいすくなくないのであって、自身じしんよりよわ立場たちばにあるひとけようとしたばかりに、自身じしんも「ルール違反いはん」にわれ、のっぴきならない状況じょうきょうまれてしまうということも、たびたびおこっている。

 今回こんかい国会こっかい成立せいりつしてしまった改悪かいあく入管にゅうかんほうは、「送還そうかん忌避きひ」を犯罪はんざい」することで、在留ざいりゅう資格しかく付与ふよされていない外国がいこくじんはもちろん、さらにその支援しえんしゃ共犯きょうはんしゃとして、処罰しょばつあみにかけようとするものでもある。「ルールをやぶる」行動こうどう入管にゅうかん問題もんだい運動うんどう全体ぜんたいへの世間せけんのイメージ悪化あっかをもたらし、そのあしをひっぱっているのだ、というような非難ひなんをしているようでは、それこそ「てきおもうつぼ」ではないだろうか。


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 くりがえいますが、もちろん、ルールを侵犯しんぱんせずにできるだけ穏当おんとう運動うんどうをやりたいという意思いしは、否定ひていされるべきものではない。自分じぶん比較的ひかくてき安全あんぜん場所ばしょにいてそこから抗議こうぎしようということは、められるようなことでない。ひとそれぞれおかれている立場たちば状況じょうきょうはちがうのであって、ルールを侵犯しんぱんしているとみなされるリスク、そうみなされたときにこうむる損害そんがいもちがう。

 しかし、自分じぶんたちはルールをまもって「地道じみちに」「まっとうに」やっているのに、ルールをやぶるあいつらのせいで、うちらのイメージもわるくなるじゃあないか、というふうに、自分じぶんたちとあいつらを切断せつだんしてしまうのは、まずいとおもう。そこをあっさり切断せつだんしてしまうのではなく、つながる経路けいろのこしながら連動れんどうし、ゆるやかであっても連帯れんたいしていくことができればなあと、わたしおもう。そのための知恵ちえ実践じっせん今後こんご、つみかさねていきたいものです。




2023ねん6がつ13にち

保安ほあんじょう支障ししょうがある」との理由りゆう難民なんみん認定にんてい申請しんせいしょ差入さしいれを許可きょかにした事例じれい大阪おおさか入管にゅうかん

 

 ツイッターで、東京とうきょう入管にゅうかん職員しょくいん収容しゅうようしゃ難民なんみん申請しんせい妨害ぼうがいしているとの投稿とうこうがあった。


昨日きのう東京とうきょう入管にゅうかんってかったことだが、現在げんざい女性じょせい収容しゅうようしゃのブロックでは難民なんみん申請しんせいのための書類しょるい職員しょくいんわたすのを拒否きょひしている。

外部がいぶひとれたものを記入きにゅう提出ていしゅつしようとしても職員しょくいんに「受理じゅりしない」とわれるという。

たった1ヶ月かげつまえ男性だんせい収容しゅうようしゃ面会めんかいしたときはその申請しんせい書類しょるいもらえた。

https://twitter.com/Tommyhasegawa/status/1667303311828217856


 わたしも1ねんはんほどまえ(2021ねん12がつ)に、大阪おおさか入管にゅうかんたようなケースにくわしたことがある。やはり処遇しょぐう部門ぶもん職員しょくいん入国にゅうこく警備けいびかん)が難民なんみん申請しんせいしょわたすのを拒否きょひしたという事例じれいだ。

 ただし、上記じょうきのツイッターのケースは難民なんみん申請しんせいをする意思いしのある収容しゅうようしゃ申請しんせい用紙ようし手渡てわたすのを拒否きょひしたというのにたいし、わたしくわした大阪おおさかでのケースは、わたし本人ほんにん難民なんみん申請しんせい用紙ようしれようとしたのを、大阪おおさか入管にゅうかんが「保安ほあんじょう理由りゆう」で許可きょかしなかったというものであって、そこはおなじではない。

 あとでうように、大阪おおさか入管にゅうかん面会めんかい許可きょかせずに翌日よくじつには送還そうかん実施じっししたため、わたし結局けっきょくこのかたにえず、難民なんみん申請しんせいをしたかったのかどうかの意思いし確認かくにんができなかった。それで、このけん当時とうじちゃんと問題もんだいしようとしなかったのだけど、やはりすごせない問題もんだいがある。ということで、ここにとりあえず記録きろくし、公開こうかいすることにしました。



 ことの経緯けいい以下いかのとおり。

 2021ねん12月17にちひるごろ、かり放免ほうめんちゅう女性じょせい難民なんみん申請しんせい審査しんさ請求せいきゅう棄却ききゃくされて大阪おおさか入管にゅうかん収容しゅうようされたとの情報じょうほうが、同国どうこくじんのコミュニティからせられた。このひと妊娠にんしんしているということであった。

 妊娠にんしんしているにもかかわらず収容しゅうようしたということは、入管にゅうかん収容しゅうよう長引ながびくのを想定そうていしていないはずで、つまり即日そくじつあるいは近日きんじつちゅう送還そうかんする準備じゅんび航空こうくうけん渡航とこうしょうなど)をすでにえているだろうとかんがえられた。

 本人ほんにん帰国きこくしても危険きけんがなく送還そうかん同意どういしているのであればいいが、わたしとしては、このかたが難民なんみん申請しんせいしていたらしいという情報じょうほうになった。帰国きこくしても危険きけんはないのだろうか、と。

 また、入管にゅうかん職員しょくいんが「難民なんみん申請しんせいは2かいまでしかできない」という虚偽きょぎ説明せつめい実際じっさい申請しんせいできる回数かいすう上限じょうげんはない)をしたというはなしを、この時期じき複数ふくすうかり放免ほうめんしゃからいていたので、この女性じょせい虚偽きょぎ説明せつめいけて不本意ふほんいながらさい申請しんせい断念だんねんしている可能かのうせいもありうるとかんがえた。

 そういうわけで、このかたに面会めんかいして難民なんみん認定にんてい申請しんせいさい申請しんせいができることをつたえたうえで、そうしたいとの意思いし確認かくにんができれば、大阪おおさか入管にゅうかん送還そうかん中止ちゅうしして申請しんせいけるようにもうれよう、と。そのつもりで面会めんかい申出もうしでしょ大阪おおさか入管にゅうかんした。おなじ17にちの16すこしまえであった。同時どうじに、わたし名刺めいし難民なんみん認定にんてい申請しんせいしょ入管にゅうかんちょうのウェブサイトからダウンロードして印刷いんさつしたもの)をれた。

 ところが、40ふん以上いじょうたされたのち職員しょくいんてきて、面会めんかいれも保安ほあんじょう理由りゆう許可きょかしないとわれた。面会めんかいはともかく、名刺めいし申請しんせいしょといったかみきれがどうして「保安ほあんじょう」の支障ししょうがあるのか説明せつめいしてほしいとくりかえしもとめたが、職員しょくいんはいっさいの説明せつめいをこばんだ。入管にゅうかん施設しせつは、ひとじこめて自由じゆうをうばう施設しせつなので、「逃亡とうぼう」につながるようなもの、あるいはきず行為こういにつながったり武器ぶきになりうるような危険きけんぶつ外部がいぶからのれは、「保安ほあんじょう支障ししょう」があるので許可きょかできないという理屈りくつ理解りかいできる。しかし、難民なんみん申請しんせいしょがどう「保安ほあんじょう問題もんだいになるのか、まったく理解りかいができない。

 結局けっきょく、この面会めんかい難民なんみん認定にんてい申請しんせいしょれも許可きょかされなかったためできなかった。そして、このかたはよく18にち便びん飛行機ひこうき送還そうかんされてしまった。



 以上いじょう経緯けいいからみるに、大阪おおさか入管にゅうかんわたし面会めんかい難民なんみん認定にんてい申請しんせいしょ差入さしいれを許可きょかしなかった理由りゆうは、収容しゅうようしゃ難民なんみん申請しんせいをして翌日よくじつ送還そうかん中止ちゅうしせざるをえなくなることを危惧きぐしたからだとかんがえるしかない。ということは、このかたがあらためて難民なんみんとして保護ほごもとめる可能かのうせいがあると大阪おおさか入管にゅうかん認識にんしきしたうえで、送還そうかん強行きょうこうしたということだ。

 なお、わたしとはべつの、仲間なかま支援しえんしゃ抗議こうぎ電話でんわをかけてくれたのだが、大阪おおさか入管にゅうかんはこの支援しえんしゃに「らないひとからの面会めんかいれということで、収容しゅうようしゃ本人ほんにんがことわったのです」と説明せつめいしたそうだ。職員しょくいん処遇しょぐう部門ぶもん面会めんかい担当たんとう)がわたし説明せつめいした「保安ほあんじょう理由りゆう」で「(大阪おおさか入管にゅうかんが)許可きょかしなかった」というはなし完全かんぜん矛盾むじゅんする。

 後日ごじつ大阪おおさか入管にゅうかん保有ほゆう個人こじん情報じょうほう開示かいじ請求せいきゅうをかけてみたら、以下いか画像がぞうをのせた文書ぶんしょ開示かいじされた(くろりは大阪おおさか入管にゅうかんが、あおりはわたしがマスキングしたところ)。保安ほあんじょう支障ししょうがあるとして、面会めんかいおよ差入さしいれのいずれも許可きょか処分しょぶんとし」たと、はっきりいてある。「(入管にゅうかん許可きょかしたけれど)収容しゅうようしゃ本人ほんにんがことわった」というはなしとはぜんぜんちがう。職員しょくいん、しれっとウソつくなよなあ。びっくりするわ。

「〇〇〇〇の収容しゅうようしゃたいする支援しえんしゃ
面会めんかいとう申出もうしでかか対応たいおうについて」


 ところで、これも画像がぞう記事きじ末尾まつび)でしめしたように、「電話でんわ記録きろくしょ」という文書ぶんしょ開示かいじされた。大阪おおさか入管にゅうかん本庁ほんちょう入管にゅうかんちょう警備けいびとのあいだの電話でんわ内容ないよう記録きろくした文書ぶんしょのようである。(ほん記事きじ紹介しょうかいした文書ぶんしょはいずれも「大阪おおさか出入国しゅつにゅうこく在留ざいりゅう管理かんりきょく保有ほゆうするれい3ねん12月17にち開示かいじ請求せいきゅうしゃ本人ほんにん提出ていしゅつした面会めんかい物品ぶっぴん授与じゅよ許可きょか申出もうしでしょかか警備けいび処遇しょぐう関係かんけい報告ほうこくしょ開示かいじ請求せいきゅうしゃ本人ほんにん個人こじん情報じょうほうふくまれない書類しょるいのぞく。)」として大阪おおさか入管にゅうかんから開示かいじされたものである)

 れいによって内容ないようはすべてくろりにで日付ひづけすらかくされているが、わたしが12月17にち面会めんかい差入さしいれのもうをしたのにたいして、大阪おおさか入管にゅうかん本庁ほんちょう指示しじをあおいだ電話でんわ会話かいわ内容ないよう記録きろくされているとかんがえてまちがいないだろう。だとすると、本庁ほんちょう監督かんとくのもと大阪おおさか入管にゅうかんは「保安ほあんじょう支障ししょうがある」との理由りゆうで、難民なんみん申請しんせいしょ収容しゅうようしゃにわたるのを阻止そししたということになる。

 冒頭ぼうとうのツイッターに投稿とうこうされた東京とうきょう入管にゅうかんのケースもそうだが、送還そうかん強行きょうこうするために難民なんみん申請しんせいしょ収容しゅうようしゃにわたらないようにしているということであって、つまり入管にゅうかん収容しゅうようして身体しんたい拘束こうそくしているひと申請しんせい妨害ぼうがいし、その権利けんりをうばっているのだ。

電話でんわ記録きろくしょ」1ページ

電話でんわ記録きろくしょ」2ページ

電話でんわ記録きろくしょ」3ページ


2023ねん6がつ12にち

入管にゅうかんほう改悪かいあくあん可決かけつ成立せいりつをうけて 「しみ」ではなく

  入管にゅうかんほう改悪かいあくあんが9にち参議院さんぎいんほん会議かいぎ強行きょうこう採決さいけつされ成立せいりつし、3にちたちました。

 「落胆らくたんしていない」とえばウソになります。つよがるつもりはないし、しみをうつもりもない。

 だけど、たんにろうというかたをするのではないのなら、けないというわけにはいかないのであって、けながらも自身じしん意志いしをたもち、けながらも意志いしをともにするものとの連帯れんたいをきずき、けてくやしがりながらもくやしがることをやめない、というふうにつづけていくしかないのだとおもいます。

 あと、ける過程かていられるものもすくなくはないのだということも、しみでうのではなく、今回こんかいけをとおしてわかりました。まだまだいけるぞ、と、けることでかえってそういう気持きもちになりました。



 法案ほうあんとおったフェイスブックに投稿とうこうした文章ぶんしょうを、以下いかにのせておきます。


 くやしいことに、入管にゅうかんほう改悪かいあくあん今日きょう参議院さんぎいんほん会議かいぎ可決かけつ成立せいりつしました。

 しかし、わたしたちの仲間なかまいのち人生じんせいがかかっていることであって、「あきらめる」という選択肢せんたくしなどありません。

 まだまだやれること、やるべきことはあります。

 ほう施行しこうまでまだ1ねんあります。改悪かいあく法案ほうあん廃止はいしするためのたたかいもできる。

 そして、入管にゅうかんが「送還そうかん忌避きひしゃ」とひとたちを送還そうかんからまもるためのたたかいもこれから。そのための有効ゆうこう手段しゅだんは、このひとたちの在留ざいりゅう資格しかく獲得かくとくすることです。入管にゅうかんにそれをみとめさせることです。

 このあいだたたかいで、入管にゅうかん難民なんみん審査しんさのイカサマとしかいようのない実態じったい収容しゅうよう施設しせつ医療いりょう体制たいせいのひどさ、職員しょくいんによる収容しゅうようしゃへの暴行ぼうこう常態じょうたいなど、さまざまな問題もんだい暴露ばくろされました。

 全国ぜんこく各地かくち改悪かいあく法案ほうあん反対はんたいのアクションがおこり、入管にゅうかん人権じんけん侵害しんがいにいきどおるひとたちがそれぞれうごはじめています。

 改悪かいあく法案ほうあん廃止はいしにむけて、在留ざいりゅう資格しかく獲得かくとくにむけて、人権じんけん侵害しんがいをすすめてきたものたちの責任せきにん追及ついきゅう処罰しょばつにむけて、いままでになくおおきなちから可能かのうせいわたしたちはちつつあるとおもいます。

 法案ほうあん成立せいりつにめげずにまず各地かくちでまたあつまりましょう。大阪おおさかではとりあえず今日きょう梅田うめだヨドバシカメラまえで19:00からアクション(街宣がいせん)があります。今後こんごのことをはなしましょう。


 

2023ねん6がつ9にち

大阪おおさか入管にゅうかん現役げんえき職員しょくいんの「げきしろ」について

 


 MBS(毎日放送まいにちほうそう)がこんな記事きじ公開こうかいしている。


独自どくじ大阪おおさか入管にゅうかん現役げんえき職員しょくいんげきしろ 入管にゅうかんほう改正かいせいあんは『どうでもいいかな。現場げんばなにわらない』『命令めいれいには絶対ぜったい服従ふくじゅうかた組織そしき実態じったいは | 特集とくしゅう | MBSニュース(23/06/08 17:30)


 動画どうがでは、職員しょくいん入国にゅうこく警備けいびかん)の肉声にくせい加工かこうされていないようだし、かたっている内容ないようをみても、まあ入管にゅうかん仕込しこみとみてまちがいないだろう。大阪おおさか入管にゅうかん常勤じょうきん医師いしによるさけ診察しんさつがあきらかになり、入管にゅうかん施設しせつ医療いりょう体制たいせい問題もんだい批判ひはんがむけられているので、これにたいする火消ひけしのために職員しょくいんにしゃべらせているということだろう。「お、内部ないぶ告発こくはつか?」と一瞬いっしゅんだけ期待きたいしてそんしちゃった。

 “さけ医師いし”など問題もんだいされている大阪おおさか入管にゅうかん医療いりょう体制たいせいについてはどうおもうかかれて、職員しょくいん、こうこたえている。

いまはめちゃめちゃむかしくらべたら充実じゅうじつしているなとおもいます。わたしらが採用さいようころはいませんでしたから、お医者いしゃさん。そとれていくしかないんで。これは本庁ほんちょうからも通達つうたつていまして『自分じぶん判断はんだんはするな』と。『躊躇ちゅうちょせずに救急きゅうきゅうしゃびなさい』というおたっしがありますので、そこは我々われわれりますね。素人しろうと判断はんだんはしない」

 さけ医師いしのことでさわがれてるけど入管にゅうかん医療いりょう体制たいせいはちゃんとしてるんですよというアピールをしているわけだが、げん医療いりょうネグレクトによる死亡しぼう事故じこ頻繁ひんぱんきているという現実げんじつをもうすこしまじめにふまえたコメントをしてほしいものである。

 たしかに、この職員しょくいんっているような通達つうたつ本庁ほんちょうからされてはいる(以下いか太字ふとじ強調きょうちょう引用いんようしゃ)。


 収容しゅうようしゃから体調たいちょう不良ふりょううったえがあった場合ばあいは、その内容ないよう十分じゅうぶん聴取ちょうしゅするとともに、体温たいおん測定そくてい血圧けつあつ測定そくていにより身体しんたい状況じょうきょう的確てきかく把握はあくしたうえ診察しんさつようについて医師いしとう判断はんだんあおまたすみやかに医師いし診断しんだんけさせるなど病状びょうじょうおうじた適切てきせつ措置そちこうじること。時間じかんたいにより看守かんしゅ責任せきにんしゃとう当該とうがい収容しゅうようしゃへの対応たいおう判断はんだんせざるをない場合ばあいは、体温たいおん測定そくていとう結果けっか異状いじょうられなくとも、安易あんいじゅうあつし症状しょうじょうにはないと判断はんだんせず、ちゅうちょすることなく救急きゅうきゅうしゃ出動しゅつどう要請ようせいすること

(2018ねん3がつ5にちづけ法務省ほうむしょう入国にゅうこく管理かんり局長きょくちょう指示しじ収容しゅうようしゃ健康けんこう状態じょうたいおよ動静どうせい把握はあく徹底てっていについて」)


 ちゅうちょせず救急きゅうきゅうしゃべとかれているけれど、これは2018ねん通達つうたつである。この通達つうたつがあっても、3ねんの2021ねん3がつ名古屋なごや入管にゅうかんでウィシュマ・サンダマリさんは、あきらかにじゅうあつし症状しょうじょうにあったにもかかわらず、救急きゅうきゅうしゃばれることなく見殺みごろしにされた。この通達つうたつ結局けっきょくはこの見殺みごろ事件じけんをふせげなかたのである。

 そんな通達つうたつ存在そんざいしめして、「いまはめちゃめちゃむかしくらべたら[医療いりょう体制たいせいが]充実じゅうじつしているなとおもいます」とか、ふざけないでほしいとおもう。なぜこの通達つうたつがあってもウィシュマさんのをふせげなかったのか、ということこそ、真剣しんけん検討けんとうすべき課題かだいでなないのか。

 それはたんに医療いりょう体制たいせい問題もんだいなのか? 収容しゅうよう送還そうかんをめぐる入管にゅうかん政策せいさく方針ほうしんをもわなければならないのではないのか?

 まあ、毎日放送まいにちほうそうのニュースで「げきしろ」している現役げんえき職員しょくいん攻撃こうげきしたいわけではない。このかたがしゃべってるのは、組織そしきかんがかただからね。大阪おおさか入管にゅうかんはこういうふうに匿名とくめい職員しょくいんかたらせるのではなく、局長きょくちょうなりせめて首席しゅせき警備けいびかんなりが堂々どうどうとカメラのまえてきてしゃべれよな、とおもいました。広報こうほうのしかたが姑息こそくすぎる。


 ところで、入管にゅうかん施設しせつ医療いりょう体制たいせいについて「施設しせつ医師いしがいないのがなやみだといいます」とわれたのにたいする以下いか職員しょくいんこたえ。これなんかも、まさしく入管にゅうかん主張しゅちょうにそったものである。

先生せんせい医師いし)がこれちゃんとやりなさいとってもちゃんとやらないひととか、先生せんせい悪態あくたいをつくひととか結構けっこうおおいんで。先生せんせい疲弊ひへいしていくかんじはみてとれます」

 医者いしゃがすぐにやめちゃってなかなか確保かくほできないのは、患者かんじゃ収容しゅうようしゃ)のせいなんだって! 責任せきにん転嫁てんか屁理屈へりくつとしかいようがない。これもまさしく入管にゅうかんかんがえであって、ウィシュマさん事件じけん法務大臣ほうむだいじん設置せっちした有識者ゆうしきしゃ会議かいぎによる報告ほうこくしょ入管にゅうかん収容しゅうよう施設しせつにおける医療いりょう体制たいせい強化きょうかかんする提言ていげん(2022ねんがつ28にち)がまさしくこの責任せきにん転嫁てんか姿勢しせいかれている。つまり、医師いし判断はんだん指示しじしたがわない収容しゅうようしゃこばめしょくきず行為こういをする収容しゅうようしゃがいるから、医師いし確保かくほがままならなくなっているのだと、そういうことをっているのである。

 一方いっぽうでこの報告ほうこくしょ収容しゅうようしゃ収容しゅうよう経験けいけんしゃはなしくなどして、なぜ収容しゅうようしゃ医師いし判断はんだん指示しじ信用しんようできないのか、どうして医師いし患者かんじゃあいだ信頼しんらい関係かんけいがなかなかきずかれないのか、どういうわけでこばめしょくきず行為こういをするひとがあとをたたないのか、といったことはまったく調しらべもせず、いもしない。

 このあたりのいというのは、まさしく入管にゅうかん収容しゅうよう送還そうかんをめぐるほう制度せいど政策せいさく方針ほうしん関係かんけいしてくるもので、「医療いりょう体制たいせい」というところをかんがえるだけではくことができない問題もんだいである。


 ウィシュマさん事件じけんは、入管にゅうかん施設しせつの「医療いりょう体制たいせい問題もんだいとしてのみたのでは、まったく空虚くうきょ議論ぎろんしかできませんよ、ということは、「入管にゅうかん民族みんぞく差別さべつ人権じんけん侵害しんがいたたか全国ぜんこく市民しみん連合れんごう」のホームページで公開こうかいされている以下いか声明せいめいで、批判ひはんされている。さきの有識者ゆうしきしゃ会議かいぎ報告ほうこくしょたいする批判ひはんである。



 「入管にゅうかん収容しゅうようしゃ生命せいめい尊重そんちょうしようとしたが、医療いりょう体制たいせい不十分ふじゅうぶんだったためにウィシュマさんがくなった」のではない。収容しゅうようしゃ生命せいめいよりも収容しゅうよう送還そうかん執行しっこう優先ゆうせんする方針ほうしんのもとで、ウィシュマさんは「医療いりょう放置ほうち」「医療いりょうネグレクト」によって見殺みごろしにされたのである。こうした方針ほうしんあらためられることなく、「医療いりょう体制たいせい」が「強化きょうか」されたところで、ウィシュマさんのように入管にゅうかん医療いりょう放置ほうちによりいのちとす犠牲ぎせいしゃ今後こんごもなくなることはないであろう。
 ウィシュマさん事件じけんは、けっして「医療いりょう体制たいせい」の問題もんだいではない。名古屋なごや入管にゅうかん現場げんば職員しょくいん問題もんだいにもとどまりません。上記じょうき方針ほうしんのもとで退去たいきょ強制きょうせい業務ぎょうむをすすめてきた政府せいふ与党よとうおよび入管にゅうかんちょうきゅう法務省ほうむしょう入国にゅうこく管理かんりきょく幹部かんぶ責任せきにんわれるべき問題もんだいである。

入管にゅうかん収容しゅうよう施設しせつにおける医療いりょう体制たいせい強化きょうかかんする提言ていげん」にたいする見解けんかい


 今日きょう参院さんいんほん会議かいぎ採決さいけつされようとしている入管にゅうかんほう改悪かいあくあんは、まさにこのウィシュマさんをころした「収容しゅうようしゃ生命せいめいよりも収容しゅうよう送還そうかん執行しっこう優先ゆうせんする」入管にゅうかん体制たいせい温存おんぞんし、さらにこれを強化きょうかするものである。成立せいりつ、また施行しこうさせては絶対ぜったいにいけない。


2023ねん6がつ8にち

入管にゅうかんほう改悪かいあく反対はんたい 緊急きんきゅう 大阪大おおさかだい街宣がいせん参加さんかしました


 あす(8にち参議院さんぎいん法務ほうむ委員いいんかいでの強行きょうこう採決さいけつのおそれあり、ということで、「入管にゅうかんほう改悪かいあく反対はんたい 緊急きんきゅう 大阪大おおさかだい街宣がいせん」にってきました。

 法案ほうあん参議院さんぎいんおくられて以降いこう法案ほうあん前提ぜんていおおきくずれる情報じょうほうが、連日れんじつつぎからつぎへとあきらかになっています。難民なんみん審査しんさ参与さんよいん制度せいど破綻はたんしており、入管にゅうかん職員しょくいんによるいち審査しんさをたんに追認ついにんするだけのものになっていること。大阪おおさか入管にゅうかん発覚はっかくした常勤じょうきん医師いしさけった状態じょうたい収容しゅうようしゃ診察しんさつしていた問題もんだいを、法務大臣ほうむだいじん入管にゅうかんちょうかくして国会こっかい審議しんぎにのぞんでいたこと。これらが野党やとう議員ぎいんたち(維新いしん国民こくみん民主みんしゅのぞく)の追及ついきゅうをとおして、国会こっかい暴露ばくろされてきたのです。

 ところが、与党よとうらは6にち)の強行きょうこう採決さいけつをくわだて、これは立憲りっけん民主党みんしゅとう法務大臣ほうむだいじん問責もんせき決議けつぎあん提出ていしゅつして阻止そし。しかし、7にち参院さんいんほん会議かいぎ問責もんせき決議けつぎあん否決ひけつされ、暴露ばくろされたもろもろの問題もんだい審議しんぎされないまま与党よとうらによってフタをされ、よくにち強行きょうこう採決さいけつがあやぶまれている。

 そういう状況じょうきょうで、なんとか強行きょうこう採決さいけつをふたたび阻止そししなければというおもいで、アクションには参加さんかしました。

 ありがたいことに、3ふんほどスピーチするときあいだをいただきました。街宣がいせんしゃうえってマイクでしゃべらせてもらったのですが、参加さんかしゃみんなの熱気ねっきがすごかった。なんとか強行きょうこう採決さいけつ阻止そしして廃案はいあんみたいというつよおもいが共有きょうゆうできたとおもいます。

 今回こんかいは3ふんというタイトな時間じかん制限せいげんがあったので、まえもって原稿げんこうをつくっていきました。こんなことをしゃべりました、というのを、せっかくなので最後さいごせておきます。

 ちなみに、参加さんかしゃは300めいとの主催しゅさいしゃ発表はっぴょうです。このあいだ一連いちれん大阪おおさかでの入管にゅうかんほう改悪かいあく反対はんたい行動こうどうでは、5がつ20にち扇町おうぎまち公園こうえん梅田うめだOSデモが500めいでしたが、街宣がいせんとしては今回こんかい最大さいだい規模きぼではなかったかとおもいます。


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 こんにちは。永井ながいもうします。入管にゅうかん施設しせつ収容しゅうようされたひとかり放免ほうめんしゃ支援しえんする活動かつどうじゅうなんねんかしております。

 最近さいきん入管にゅうかんほう国会こっかい審議しんぎのなかで、入管にゅうかんほう改悪かいあく法案ほうあん前提ぜんていとなる事実じじつがウソだったり隠蔽いんぺいされていたりということが、野党やとう追及ついきゅうなどによってつぎつぎとあきらかになっています。くわしいはなしはみなさんされるとおもうので、わたしからはここでははなしません。

 ただ、最初さいしょ最初さいしょから、この入管にゅうかんほう改悪かいあくうごきはデタラメだったということを、いまここでかえってみたいとおもいます。

 最初さいしょに、法務省ほうむしょう入管にゅうかん法律ほうりつえなければいけないとしたのは、長期ちょうき収容しゅうよう問題もんだい解決かいけつしなければならないということでした。で、長期ちょうき収容しゅうよう問題もんだいきるのは、「送還そうかん忌避きひしゃ」――そう入管にゅうかんんでるんですが――送還そうかんをこばんでいるひとのせいだというのが入管にゅうかん理屈りくつでした。そして、「送還そうかん忌避きひしゃ」は、難民なんみん制度せいど悪用あくよう濫用らんようしてくりがえ難民なんみん申請しんせいするのがけしからん、だからくりがえしの難民なんみん申請しんせいしゃ強制きょうせい送還そうかんしてもよいことにしよう、と。これが入管にゅうかん主張しゅちょうです。

 でも、これ全部ぜんぶデタラメです。まず長期ちょうき収容しゅうよう問題もんだいはなぜきるのか? 入管にゅうかんのせいでしょう? 入管にゅうかん長期ちょうき収容しゅうようするから長期ちょうき収容しゅうよう問題もんだいきるんです。入管にゅうかん長期ちょうき収容しゅうようしなければ、長期ちょうき収容しゅうよう問題もんだいきません。

 そして、「送還そうかん忌避きひしゃ」と入管にゅうかんひとは、どうしてしょうじるんですか? ひとつには、難民なんみんみとめないからでしょう。もうひとつには、在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょか制度せいどをちゃんと運用うんようしないで、退去たいきょ強制きょうせい処分しょぶんをドカドカとしまくるからでしょう。

 長期ちょうき収容しゅうよう問題もんだいも、いわゆる「送還そうかん忌避きひしゃ」なるものも、入管にゅうかんつくしているのです。しかし、入管にゅうかんはいつもそうなんですが、あべこべに送還そうかん忌避きひしゃのせいだ、外国がいこくじんがわるいと、責任せきにん転嫁てんかします。自分じぶんたちのことはタナにあげて、なんでもかんでもひとのせい、外国がいこくじんのせい、これが入管にゅうかんのいつもの主張しゅちょうです。それで、難民なんみん認定にんてい制度せいどをいま以上いじょう骨抜ほねぬきにしたり、「送還そうかん忌避きひしゃ」に刑罰けいばつしたりしよう、というのが今回こんかい入管にゅうかんほう改悪かいあくあん内容ないようですよね。

 でも、本当ほんとうわらなければならないのは、入管にゅうかんのやりかたです。それをえさせるためのちからわたしたちにあるということが、この場所ばしょあつまっているみなさんの熱気ねっき全国ぜんこくでおこなわれている入管にゅうかんほう改悪かいあく反対はんたいのアクションの熱気ねっきからかんることができるとおもいます。

 この改悪かいあく入管にゅうかん法案ほうあんをみんなのちからでつぶしましょう。そして、入管にゅうかんが「送還そうかん忌避きひしゃ」などとんでいる存在そんざいは、わたしたちにとっては隣人りんじんです。ともにこの日本にっぽん社会しゃかいつくっている隣人りんじんです。現状げんじょうは、難民なんみん認定にんていも、退去たいきょ強制きょうせい手続てつづきも、入管にゅうかん自分じぶんたちだけの都合つごう勝手かって運用うんようし、牛耳ぎゅうじっています。しかし、わたしたちの隣人りんじんたちのことをおまえら入管にゅうかんだけで勝手かってめるんじゃない、難民なんみん審査しんさ国際こくさい基準きじゅんにきちんとのっとれ、われわれの隣人りんじん勝手かって排除はいじょするな、送還そうかんするなとともにこえをあげていきましょう。世紀せいき悪法あくほうをつぶしたうえで、この熱気ねっきをたもち、ともにきる社会しゃかいをいっしょにつくっていきましょう。

 以上いじょうです。


2023ねん6がつ4にち

大阪おおさか入管にゅうかん常勤じょうきん不法ふほう滞在たいざいなんだからはやかえりなさい」発言はつげん考察こうさつ

 

 大阪おおさか入管にゅうかん常勤じょうきん医師いしけんについて、以下いか毎日新聞まいにちしんぶん報道ほうどうをもとにかんがえたい。

医師いしさけいで診察しんさつうたがい 野党やとう国会こっかい議員ぎいん大阪おおさか入管にゅうかん視察しさつ | 毎日新聞まいにちしんぶん(2023/6/3 16:16)

 大阪おおさか出入国しゅつにゅうこく在留ざいりゅう管理かんりきょく大阪おおさか入管にゅうかん大阪おおさか住之江すみのえ)で勤務きんむする女性じょせい医師いしさけって診察しんさつしたうたがいがもたれている問題もんだいで、野党やとう国会こっかい議員ぎいんら6にんが2にち大阪おおさか入管にゅうかん視察しさつした。同局どうきょく女性じょせい医師いしを1がつ20日はつか検査けんさし、呼気こきから一定いっていのアルコールを検出けんしゅつしたことを議員ぎいんらにあきらかにした。1がつちゅうには出入国しゅつにゅうこく在留ざいりゅう管理庁かんりちょうに、2がつ下旬げじゅんには斎藤さいとうけん法相ほうしょう女性じょせい医師いし問題もんだいつたえられたが、入管にゅうかんほう改正かいせいあん審議しんぎつづ国会こっかいには報告ほうこくされなかった。


 2がつ下旬げじゅんには法務大臣ほうむだいじんっていたということなので、法務大臣ほうむだいじんおよび入管にゅうかんちょうはこの問題もんだいを3かげつ以上いじょうにわたり隠蔽いんぺいしながら入管にゅうかんほう審議しんぎにあたっていたということになる。

 2021ねん3がつ6にち名古屋なごや入管にゅうかんでのウィシュマさん死亡しぼう事件じけんけ、入管にゅうかんちょう医療いりょう体制たいせい強化きょうかむとしており、その成果せいかのひとつとして自賛じさんしてきたのが常勤じょうきん確保かくほということであった(した画像がぞう参照さんしょう画像がぞう出入国しゅつにゅうこく在留ざいりゅう管理庁かんりちょうのウェブサイト公開こうかいされている資料しりょう改善かいぜんさく取組とりくみ状況じょうきょう」2003ねん4がつより)。

 その収容しゅうよう施設しせつにおける医療いりょう体制たいせい強化きょうかへのみは、今回こんかい法案ほうあん成立せいりつさせるための重要じゅうよう前提ぜんていのひとつでもあったはずだ。ところが、大阪おおさか入管にゅうかんでは常勤じょうきん確保かくほできても「医療いりょう体制たいせい強化きょうか」につながっていない。それどころか、あらたに確保かくほした常勤じょうきん収容しゅうようしゃ生命せいめい健康けんこうをおびやかしている。今回こんかいさけ診察しんさつけんからあきらかになったのは、そうした実態じったいである。これを3かげつ以上いじょうにわたってかくしながら法案ほうあん審議しんぎ対応たいおうしていた法務大臣ほうむだいじんは、解任かいにんすべきだろう。


 さて、この常勤じょうきん問題もんだいは、さけった状態じょうたい診療しんりょうにあたっていたということにはとどまらない。上記じょうき記事きじよりもう1かしょ引用いんようする。


 議員ぎいんらは入管にゅうかん訪問ほうもんについて報告ほうこく関西かんさい難民なんみん外国がいこくじん支援しえんにかかわる団体だんたい意見いけん交換こうかんした。支援しえん団体だんたいからは、昨年さくねん9がつ以降いこう収容しゅうようちゅう複数ふくすう外国がいこくじんから女性じょせい医師いしへの不満ふまん相次あいついでいたことが報告ほうこくされた。「不法ふほう滞在たいざいなんだからはやかえりなさい」などの暴言ぼうげんをはかれたり、不適切ふてきせつくすり処方しょほうされて体調たいちょう悪化あっかしたりしたなどのうったえがあったという。


 暴言ぼうげん不適切ふてきせつくすり処方しょほうは、さけ診療しんりょうにおとらず収容しゅうようしゃ生命せいめい健康けんこうをおびやかしかねない深刻しんこく問題もんだいであって、徹底的てっていてき実態じったい調査ちょうさ解明かいめいすべきものだ。それなしに法案ほうあん採決さいけつなどありえない。

 なお、入管にゅうかん医療いりょうにおいては、診察しんさつはかならず入管にゅうかん職員しょくいん入国にゅうこく警備けいびかん)がっておこなわれるというてん重要じゅうようだ。つまり、診察しんさつ医師いし言動げんどうについて、入管にゅうかんが「らなかった」ということはありえない、ということである。

 このてんをふまえたうえで、うえ毎日新聞まいにちしんぶん記事きじにとりあげられている医者いしゃ暴言ぼうげん、「不法ふほう滞在たいざいなんだからはやかえりなさい」の意味いみかんがえなければならない。これは、医療いりょうじんとしてあるまじき発言はつげんであって、送還そうかん執行しっこうする入国にゅうこく警備けいびかん発言はつげんかとみまがうような発言はつげんである。医療いりょう送還そうかん業務ぎょうむ一体化いったいかしているのである。医師いし独立どくりつせいなんてまったくない。医療いりょうじん送還そうかん業務ぎょうむをになう入国にゅうこく警備けいびかん道具どうぐたることをみずからってているのだ。

 そして、さらに重要じゅうようなのは、医者いしゃがこういう発言はつげんをしても、診察しんさつっている職員しょくいんはこれを制止せいしすることはない、というてんである。職員しょくいんは「先生せんせいはそんなことをおっしゃらないでください。『不法ふほう滞在たいざいなんだからはやかえりなさい』とうのはわれわれの任務にんむであって、先生せんせい仕事しごと医師いしとして患者かんじゃることです」なんてことは、わないのである。

 入管にゅうかん職員しょくいんがそんなことわないのはたりまえじゃないかとおもわれるかもしれない。でも、ここは大事だいじなところである。医師いし独立どくりつせい担保たんぽされておらず、医療いりょう送還そうかん業務ぎょうむ一体化いったいかし、あるいはそこに従属じゅうぞくしているという現状げんじょうについて、入管にゅうかん組織そしきにはそれが問題もんだいだという認識にんしきがそもそもない職員しょくいんにもそのような教育きょういくはいっさいおこなわれない。だから、医者いしゃが「不法ふほう滞在たいざいなんだからはやかえりなさい」などと暴言ぼうげんをはいても、問題もんだいにならない。だって、組織そしきとしてそれが問題もんだいとすべき暴言ぼうげんなのだという認識にんしきがないわけだから。収容しゅうよう施設しせつ医療いりょうなんて、自分じぶんたちの退去たいきょ強制きょうせい業務ぎょうむ道具どうぐだと、そうおもっていていっさいうたがわないわけ、入管にゅうかん組織そしきなかひとたちは。

 こんな医療いりょう位置いちづけなのだから、死亡しぼう事件じけんきるのはあたりまえだ。「不法ふほう滞在たいざいなんだから」うんぬんという医者いしゃ暴言ぼうげんを、「暴言ぼうげん」と認識にんしきできず、「問題もんだい」とづくことすらなく、許容きょよう容認ようにんしてしまっている。そのような組織そしき運営うんえいする施設しせつ医療いりょう医療いりょうとしての役目やくめをはたせるわけがなく、そこでウィシュマさん事件じけんのようなことがくりかえされるのは必然ひつぜんである。

 このてんでも、大阪おおさか入管にゅうかん常勤じょうきん問題もんだいは、徹底的てっていてき調査ちょうさ究明きゅうめいされ、情報じょうほう開示かいじされるべきであって、それぬきに法案ほうあん審議しんぎ、ひいては採決さいけつなどありえないはずだ。


2023ねん5がつ26にち

柳瀬やなせ疑惑ぎわく究明きゅうめいされるまでは、難民なんみん認定にんてい処分しょぶんけたひと送還そうかんをすべて停止ていしすべきでは?


 昨日きのう(5がつ25にち)の国会こっかいでは、野党やとう追及ついきゅうでとんでもない事実じじつ暴露ばくろされました。難民なんみん審査しんさ参与さんよいん柳瀬やなせ房子ふさこが1けんあたりにかけていた平均へいきん審査しんさ時間じかんは、(最大さいだいなが見積みつもって!!)12ふん!!!!!!


難民なんみん審査しんさ参与さんよいんは「難民なんみん認定にんてい手続てつづきの専門せんもん」ではない――「12ぶん審査しんさ」のやみ - Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)Dialogue for People


 上記じょうきリンクさき記事きじから引用いんようします。


衝撃しょうげきてき数字すうじしめされた。難民なんみん審査しんさ参与さんよいん柳瀬やなせ房子ふさこ審査しんさ件数けんすうが、2022ねん審査しんさぜんけん4740けんのうち1231けん勤務きんむ日数にっすう32にち)、2021ねんぜん6741けんのうち1378けん勤務きんむ日数にっすう34にち)にもおよぶことが、5がつ25にち参議院さんぎいん法務ほうむ委員いいんかいあきらかになった。参与さんよいんは110にん以上いじょういるにもかかわらず、異様いようかたよりがりとなった。

この数字すうじ単純たんじゅん計算けいさんした場合ばあい柳瀬やなせ参与さんよいんとして1にちあたり40けんもの難民なんみん審査しんさをしていたことになり、たとえ1にち勤務きんむ時間じかんが8あいだだったとしても、1けんあたり「やく12ふん」だ。実際じっさいには1にちあたりの勤務きんむ時間じかんはさらにみじかいとかんがえられ、調書ちょうしょなどにとおしているのかなど疑問符ぎもんふがつく。すくなくともこれを「慎重しんちょう適正てきせい審査しんさ」とぶのはあまりに無理むりがあるだろう。


 柳瀬やなせは、こんなずさんな「審査しんさ」をしながら「難民なんみん認定にんていりつひくいというのは、分母ぶんぼである申請しんせいしゃなか難民なんみんがほとんどいないということを、皆様みなさま是非ぜひ理解りかいください」(参考さんこうじんとして招致しょうちされた2021ねん4がつ衆議院しゅうぎいん法務ほうむ委員いいんかいでの発言はつげん)などとってたわけです。

 柳瀬やなせ証人しょうにん喚問かんもんなしに法案ほうあん採決さいけつはありえないということは、はっきりしました。

 柳瀬やなせ難民なんみん審査しんさ参与さんよいんという立場たちばから、送還そうかんのがれのための濫用らんようてき難民なんみん申請しんせいおおいので、認定にんてい処分しょぶんけてもくりがえ難民なんみん申請しんせいするひと送還そうかんしてもよいのだという政府せいふ入管にゅうかん主張しゅちょう根拠こんきょあたえてきた人物じんぶつです。その柳瀬やなせが、いちけんあたりたった12ふん(以内いない)でどうやって難民なんみんかどうかの判断はんだんをしていたのか。そこを究明きゅうめいしなくて、3かい以降いこう難民なんみん申請しんせいしゃ強制きょうせい送還そうかんしてもよいことにする法案ほうあん採決さいけつするなどありえません。

 うまでもないですが、難民なんみん審査しんさひといのちにかかわることです。すくなくとも柳瀬やなせ参与さんよいんとして担当たんとうした案件あんけんについては、適正てきせい審査しんさであったのか、そのすべてをさかのぼって検証けんしょうすべきではないでしょうか。柳瀬やなせは2005ねん制度せいど創設そうせつから参与さんよいんをつとめているということなので、むろん検証けんしょうはそこまでさかのぼってなされるべきです。

 また、難民なんみん認定にんてい根本こんぽんてき機能きのう不全ふぜんをきたしていることがもはや「疑念ぎねん」にとどまらずあきらかになっている以上いじょう難民なんみん申請しんせいちゅうひとのみならず、認定にんてい処分しょぶんけたひと送還そうかん執行しっこうは(収容しゅうようもふくめて)すべて停止ていしするのがすじではないかとおもいます。




関連かんれん

齋藤さいとう法相ほうしょう虚偽きょぎ答弁とうべん謝罪しゃざい撤回てっかい柳瀬やなせ房子ふさこ証人しょうにん喚問かんもんもとめる要望ようぼうしょ - 入管にゅうかん民族みんぞく差別さべつ人権じんけん侵害しんがいたたか全国ぜんこく市民しみん連合れんごう


柳瀬やなせ証人しょうにん喚問かんもんもとめ、参院さんいん法務ほうむ委員いいんかい委員いいんちょう理事りじあてにFAXをおくるようびかけられています。ハッシュタグデモも。

入管にゅうかんほう改悪かいあく法案ほうあん廃案はいあんに!】ハッシュタグデモとFAX要請ようせいびかけ - 入管にゅうかん民族みんぞく差別さべつ人権じんけん侵害しんがいたたか全国ぜんこく市民しみん連合れんごう


柳瀬やなせ以外いがい参与さんよいん問題もんだい昨日きのう国会こっかい審議しんぎでは浮上ふじょうしています。

浅川あさがわ晃広あきひろ参考さんこうじん質疑しつぎ衝撃しょうげき 出身しゅっしんこく情報じょうほうは「たまに」る。ほとんどはないで3800けん判断はんだん|koichi_kodama


2023ねん5がつ13にち

「すがってはいけないワラ」とかうならでもげてだすけろよ 入管にゅうかんほう審議しんぎでの維新いしん梅村うめむら発言はつげんについて

 

 参議院さんぎいんほん会議かいぎでの入管にゅうかんほう改定かいていあん審議しんぎで、梅村うめむらみずほ議員ぎいん日本にっぽん維新いしんかい)が支援しえんしゃ攻撃こうげきする発言はつげんをしたことが話題わだいになっています。


支援しえんしゃがウィシュマさんにあわ期待きたいさせた」 維新いしん梅村うめむら発言はつげん [維新いしん]:朝日新聞あさひしんぶんデジタル(2023ねん5がつ12にち 2030ふん)


 梅村うめむら発言はつげんたいしてはSNSなどでもすでにおおくの批判ひはんがなされているようですが、わたしとしてもおもうところがあるので、いくつかきとめておきたいとおもいます。

 梅村うめむら議員ぎいんは、法務大臣ほうむだいじんへの質問しつもんとしてつぎのようにべています。以下いかにしるした梅村うめむら発言はつげんは、リンクさき動画どうがから文字もじこししたものです(23:11あたりから)。


2023ねん5がつ12にち 参議院さんぎいん ほん会議かいぎ - YouTube


 つぎに入管にゅうかん収容しゅうようしゃたいする支援しえんのありかたについておたずねします。医師いし診療しんりょう情報じょうほう提供ていきょうしょ面会めんかい記録きろくとうをふくめた資料しりょうとともにウィシュマさんの映像えいぞう総合そうごうてきていきますと、よかれとおもった支援しえんしゃ一言ひとことが、皮肉ひにくにも、ウィシュマさんに病気びょうきになれば仮釈放かりしゃくほうしてもらえる」というあわ期待きたいをいだかせ医師いしからいつわりびょう可能かのうせい指摘してきされる状況じょうきょうにつながったおそれも否定ひていできません。自分じぶんなにとかしなければという正義せいぎかん善意ぜんいからとはいえ、なかにはいち面識めんしきのない収容しゅうよう外国がいこくじんにつぎからつぎへとアクセスする支援しえんしゃもいらっしゃいます。難民なんみん認定にんてい要件ようけんたしているのに不当ふとう長期ちょうき収容しゅうようされているのではないのか、よわひとすくいたいという支援しえんしゃ必死ひっし手助てだすけや助言じょげんは、場合ばあいによってはかえって、収容しゅうようしゃにとって、なければよかったゆめ、すがってはいけないわら(わら)になる可能かのうせいもあるかんがえますが、法務大臣ほうむだいじんはどのようにおかんがえでしょうか。[太字ふとじ強調きょうちょう引用いんようしゃ

 梅村うめむら発言はつげん検討けんとうするまえに、確認かくにんしておくべきことがいちてんあります。それは、入管にゅうかん入管にゅうかんほうというほうにもとづいてであれ、ウィシュマさんを収容しゅうようし、その自由じゆうをうばっていたということです。ウィシュマさんは、施設しせつ監禁かんきんされて、自分じぶん意思いしきたいときに病院びょういんくこともできず、診療しんりょうさき病院びょういん医者いしゃえらぶこともできませんでした。したがって、入管にゅうかん自分じぶんたちが収容しゅうようしているウィシュマさんに適切てきせつ診療しんりょうけさせ、そのいのち健康けんこうまも責任せきにんっていたということになります。

 一方いっぽう、ウィシュマさん本人ほんにんにも、支援しえんしゃにも、そのちからはありませんでした。もし収容しゅうよう(=監禁かんきん)されているのでなければ、ウィシュマさんは自分じぶん意思いし病院びょういんき、希望きぼうしていた点滴てんてき治療ちりょうけることができたでしょうし、支援しえんしゃもウィシュマさんを病院びょういんれていくこともできたでしょう。しかし、入管にゅうかんがウィシュマさんを収容しゅうようしていたため、ウィシュマさん本人ほんにん支援しえんしゃもそれができませんでした。そして、唯一ゆいいつ、ウィシュマさんに適切てきせつ医療いりょうけさせる権限けんげん能力のうりょくをもっていた入管にゅうかんが、その責任せきにんをはたさなかったために、ウィシュマさんはいのちとしたのです。

 それが、なんですか、この梅村うめむらさんのいようは。権限けんげん能力のうりょくのあった入管にゅうかん責任せきにんうかわりに、その権限けんげん能力のうりょくがなく、ウィシュマさんの入院にゅういん点滴てんてき治療ちりょう入管にゅうかんもとめるしかなかった(そして実際じっさいにくりがえもとめた)支援しえんしゃ責任せきにん転嫁てんかするとは、あべこべにもほどがあります。権力けんりょくってるものにはとことんあまく、それを批判ひはんするものにあべこべに責任せきにん転嫁てんかするのは、いかにも右翼うよく維新いしんらしい卑怯ひきょう詭弁きべんです。



 ただ、わたし自身じしん支援しえんしゃのはしくれのそのまたはしくれぐらいのことをやってますけれど、梅村うめむら発言はつげんにおいて支援しえんしゃ攻撃こうげきされているてんは、まだガマンできます。支援しえんしゃ攻撃こうげき以上いじょう注目ちゅうもくしなければならないのは、梅村うめむらがウィシュマさんについて、また収容しゅうようしゃについて、なにっているのかということです。

 梅村うめむらは「あわ期待きたいをいだかせ」とっています。ウィシュマさんに「あわ期待きたい」をもたせたのが問題もんだいだ、わるかったのだとうわけです。「収容しゅうようしゃにとって、なければよかったゆめ、すがってはいけないわら(わら)」ともっています。拘束こうそくかれて施設しせつからたいという希望きぼうが「なければよかったゆめ」? なにっているんだ、このひとは。

 わたしは支援しえんしゃのはしくれとして、くにかえればいのち危険きけんがあるからかえれないという収容しゅうようしゃおお出会であってきました。送還そうかんされれば家族かぞくはなればなれになってしまうというひと送還そうかんさきくにいもおらず見知みしらぬくにだというひととも、たくさんってきました。「かえれ」とわれてもかえれない。あるいは日本にっぽんまれそだったから「かえる」とすればかえさき日本にっぽんしかない。そういうひとたちが、送還そうかんされるのではなく、不自由ふじゆうかり放免ほうめん状態じょうたいであっても施設しせつそとらしたいというのは、いだくべきでない「あわ期待きたい」であり、「なければよかったゆめ」だとうのか。

 梅村うめむらっているのは、「あわ期待きたい」「ゆめ」などもたずに、さっさと帰国きこくしろということです。しかし、ウィシュマさんはもと交際こうさい相手あいて暴力ぼうりょくをおそれ、かえることはできないとうったえていたのです。ようするに、梅村うめむら議員ぎいんが「期待きたい」「ゆめ」なんかみるなとうのは、おまえなんかねとっているのにひとしい。梅村うめむらは「すがってはいけないわら(わら)」などとほざいてますが、帰国きこくすればころされるかひどい暴力ぼうりょくけるかもしれないとってわらにもすがろうとしていたのを、それは「すがってはいけないわら」だといいはなっているのです。「ねばいい」とってるのとなにがちがうんですか。「すがってはいけないわら」だとうなら、「すがってもよい」をどうげてやれるのかということを、ふつうだったらかんがえようとするものだけど。しかし、梅村うめむらうのは、「わらなんかげずに、おぼれるにまかせよ」ということです。どうかしてます。



 ところが、この維新いしん梅村うめむら発言はつげんは、収容しゅうよう送還そうかんをめぐって入管にゅうかんってきたこと、また実際じっさいにやってきたことをすこしも逸脱いつだつするものではありません。だから、その意味いみではわたしにはあまりおどろきはありませんでした。入管にゅうかんがいつもい、やってることだ、と。

 ウィシュマさんがくなったのは2021ねんの3がつ6にちです。しくもその前日ぜんじつ当時とうじ上川かみかわ陽子ようこ法務大臣ほうむだいじんは、記者きしゃ会見かいけんでおどろくべき発言はつげんをしています。わたしは、この発言はつげんをあちこちでいてはなしをしてまして、このブログでとりあげるのもなん度目どめかよくわからないぐらいですが、しつこくこのはなしをするのは、この法務大臣ほうむだいじん発言はつげんからだのふるえるほどのいかりをおぼえているからです。


 2てん収容しゅうよう期間きかん上限じょうげんもうけるということについてでありますが,収容しゅうよう期間きかん上限じょうげんもうけますと,送還そうかんをかたくなに忌避きひし,収容しゅうよう期間きかん上限じょうげん経過けいかしたもの全員ぜんいん収容しゅうようかざるをなくなるということになります。また,収容しゅうようかれることを期待きたいしての送還そうかん忌避きひ誘発ゆうはつするおそれもあるということでありまして,適当てきとうではないとかんがえたところでございます。

法務省ほうむしょう法務大臣ほうむだいじん閣議かくぎ記者きしゃ会見かいけん概要がいよう


 このとき、いま参議院さんぎいん審議しんぎされているのとほぼおな内容ないよう入管にゅうかんほう改悪かいあくあん国会こっかいされていたのですが、収容しゅうよう期間きかん上限じょうげん設定せっていしないのはどうしてなのかという趣旨しゅし記者きしゃ質問しつもんたいする上川かみかわ大臣だいじんこたえが、うえ引用いんようした部分ぶぶんです。

 「収容しゅうようかれることを期待きたいしての送還そうかん忌避きひ誘発ゆうはつする」のだと上川かみかわべています。たとえば6かげつ以上いじょう収容しゅうようできないと法律ほうりつきこむと、収容しゅうようしゃが「収容しゅうようかれることを期待きたい」するからダメなのだと。よくもこんなことを記者きしゃ会見かいけんえる(入管にゅうかん役人やくにんいた原稿げんこうを「んだ」のでしょうけど)ものだとおもいます。

 上川かみかわが、あるいはその原稿げんこういた役人やくにんがここで正直しょうじきにゲロってるとおり、「期待きたい」「希望きぼう」「ゆめ」をみさせない、あるいはそれを徹底的てっていてきちくために、入管にゅうかん収容しゅうよう(=監禁かんきん)という措置そちをもちいています。なんとか収容しゅうようかれて施設しせつそとたい。その「期待きたい」をもたせないために、収容しゅうよう期間きかん上限じょうげんはあえてさだめない。そうして「あわ期待きたい」を粉砕ふんさいすることで、帰国きこく強要きょうようするということをやっているのが、入管にゅうかん収容しゅうよう施設しせつです。

 「人間にんげん絶望ぜつぼうさせる」ということ。それは入管にゅうかんにとっては、ゆるされざるべき悪徳あくとくではなく、収容しゅうよう施設しせつまれた(まれるべき)必要ひつよう機能きのうだというわけです。「あわ期待きたい? そんなもんぶちやぶってやればいいんだよ」「おぼれそうな人間にんげんわらなんかげるなんて、かえって本人ほんにんがかわいそうじゃん。ほっとけばいいのに」というようなことをべらべらしゃべってるのが、入管にゅうかん幹部かんぶ役人やくにんであり、法務大臣ほうむだいじんであり、いまされている入管にゅうかんほう改悪かいあくあん賛成さんせいしている梅村うめむらのような議員ぎいんなのです。およそ倫理りんりかんのぶっこわれた連中れんちゅうであって、こんなじんたちが成立せいりつさせようとしている法案ほうあん廃案はいあん一択いったくです。おぼれそうなひとがいたらたすけるもんだろうよ。わたしはそういう社会しゃかいにしたいよ。


2023ねん5がつ5にち

難民なんみん認定にんていりつひくいのは分母ぶんぼである申請しんせいしゃのなかに難民なんみんすくないからである」というみや﨑氏や滝澤たきざわ主張しゅちょうのおかしさ

 

TBS番組ばんぐみでのみや議員ぎいん発言はつげん

 5月2にち(火)、BS-TBSの「報道ほうどう1930」という番組ばんぐみで「人口じんこう減少げんしょうニッポンの危機きき 外国がいこくじん拡大かくだいには課題かだい山積さんせき」とだいした特集とくしゅう放送ほうそうされました。番組ばんぐみでは、衆議院しゅうぎいん議員ぎいんみや政久まさひさ自民党じみんとう法務ほうむ部会ぶかいちょう)、指宿いぶすき昭一しょういち弁護士べんごしらをゲストにむかえ、国会こっかい審議しんぎちゅう入管にゅうかんほう改定かいていあんなどが議論ぎろんされました。

 放送ほうそう指宿いぶすき弁護士べんごし自身じしんのフェイスブック以下いか投稿とうこうをしています。

 

みや﨑政ひさ議員ぎいん自民党じみんとう衆院しゅういん議員ぎいんとう法務ほうむ部会ぶかいちょう)は、「飛行機ひこうき日本にっぽんのがれてひとおおくは難民なんみんではない、徒歩とほふねるのが難民なんみんだ」という趣旨しゅしのことを発言はつげんされたが、これはおおきな間違まちがい。ボロボロなふくて、徒歩とほふね他国たこくひとだけが難民なんみんだというイメージは現代げんだいでは通用つうようしない。飛行機ひこうきって、ビジネスパーソンや観光かんこうきゃく区別くべつのつかないなりで入国にゅうこくするのが現代げんだい難民なんみん

 法案ほうあん提出ていしゅつした与党よとうが、この根本こんぽんてきなところであやまった認識にんしきっていたなら、いまからでも、衆議院しゅうぎいんほん会議かいぎでの採決さいけつめて、真剣しんけん廃案はいあん検討けんとうすべきではないか?


 先日せんじつ(4がつ28にち)、入管にゅうかんほう改定かいていあん衆議院しゅうぎいん法務ほうむ委員いいんかい可決かけつされたわけですが、その自民党じみんとう委員いいんとう法務ほうむ部会ぶかいちょう難民なんみんについての認識にんしきがこのレベルだというのは、おどろくべきことです。本当ほんとうにこんなことってるのかと番組ばんぐみ視聴しちょうしてみると、たしかにってました……。なんとまあ。



当初とうしょTBSが公開こうかいしていた動画どうが現在げんざいでは
「この動画どうが非公開ひこうかいです」と表示ひょうじされ、
視聴しちょうできなくなっている。


 ただ、TBSが当初とうしょYouTubeで公開こうかいしていた番組ばんぐみ動画どうがは、すくなくとも4にちの18:00ごろまでは視聴しちょうできたのですが、おなじじつの23:00すぎに再生さいせいしようとしたら、なぜか非公開ひこうかいになっておりました。TBSはべつのURLで動画どうが公開こうかいしなおしていますが、もともと番組ばんぐみ全体ぜんたいで60ふん55びょうあった動画どうがは47ふん37びょうみじかくなっており、飛行機ひこうきでパスポートをもって日本にっぽんるのはうんぬんというみや議員ぎいん発言はつげんや、これにたいする指宿いぶすき弁護士べんごし反論はんろんなどの箇所かしょはごっそりとカットされています。どうしてあらたに公開こうかいされた番組ばんぐみ動画どうがでそこがされているのかわかりませんが、わたし途中とちゅうまではその部分ぶぶん文字もじこししていたので、そのデータをこのブログ記事きじ末尾まつびにのせておきます。


番組ばんぐみないでつかわれたフリップ


 さて、番組ばんぐみ公開こうかいしなおされた動画どうがでは消去しょうきょされている部分ぶぶん番組ばんぐみのキャスター(松原まつばらこう)が「まずみや﨑さんにうかがいたいんですが、さきほどみや﨑さん、難民なんみん認定にんていりつひくいのは、分母ぶんぼである申請しんせいするひとのなかにもともと本当ほんとう難民なんみんがいないんだというふうにおっしゃっている、まあ入管にゅうかんもそういうふうな主張しゅちょうをしているんですが」と話題わだいをふったのにたいして、みや﨑氏は以下いかのような主張しゅちょう展開てんかいします(正確せいかく文言もんごん末尾まつび文字もじこしを参照さんしょうしてください)。


  1. 世界せかいてきにみて難民なんみんとして認定にんていされているひとの70%ちょう隣国りんごくから避難ひなんしてきたひとである。
  2. 世界せかい難民なんみん認定にんていされているひと出身しゅっしんこくベスト5は、中央ちゅうおうアフリカ、シリア、アフガニスタン、コンゴ、ホンジュラスである。
  3. 日本にっぽん島国しまぐになので、入国にゅうこくしてくるひと基本きほんてき飛行機ひこうきってることになる。
  4. 基本きほんてきには飛行機ひこうきってパスポートをって入国にゅうこくしてくる日本にっぽんと、他国たこく陸続りくつづきになっていて隣国りんごくから身着みきのままあるいて入国にゅうこくしてくるひとのいるヨーロッパ諸国しょこくとでは、前提ぜんていがちがう。


 みや議員ぎいんは、日本にっぽん難民なんみん認定にんていりつひくいのはなぜなのか、またそれがひくいのはおかしいのではないかという話題わだいで1~4のようなことをってるんですけど、意味いみわかりますか? わたしはぜんぜん理解りかいできません。

 1が事実じじつなのだとして、それが日本にっぽん難民なんみん認定にんていりつひく理由りゆう説明せつめいになるでしょうか? なるわけないでしょう。隣国りんごく避難ひなんする難民なんみんもいれば、飛行機ひこうきってとおくに避難ひなんする難民なんみんもいるというだけのことです。どちらの選択せんたく当人とうにんにとって有利ゆうりなのか、あるいはそもそも選択肢せんたくしなどなく、どちらか一方いっぽうのしかたでの避難ひなんをせざるをえないのか、そのひとのおかれた状況じょうきょうによってさまざまあるでしょう。しかし、移動いどう方法ほうほう距離きょりによって、そのひとが「本当ほんとう難民なんみん」なのかそうでないのかが左右さゆうされますか? 左右さゆうされるわけありません。隣国りんごくあるいてのがれられる可能かのうせいこうそうであれば、それにチャレンジするということがあるでしょう。一方いっぽう近隣きんりんくに陸路りくろはいるよりも、査証さしょうがとりやすかったり相互そうご査証さしょう免除めんじょ協定きょうていのあるとおくのくに飛行機ひこうきくほうが入国にゅうこく容易ようい、あるいは安全あんぜんにできそうだという場合ばあいもあります。避難ひなん入国にゅうこく方法ほうほう距離きょりは、そのひと自国じこくけうる迫害はくがい深刻しんこくさとはぜんぜんべつはなしです。

 2については、なんでここでそのはなしがでてくるのか、意味いみ不明ふめい、わけがわかりません。この5かこくのなかに、4でわれている「ヨーロッパ諸国しょこく」の「隣国りんごく」であるくにはひとつもありません。なぜヨーロッパ諸国しょこく難民なんみん認定にんていりつたかくて日本にっぽんのそれがひくいのかという理由りゆう説明せつめいにはなりません。



みや発言はつげんもとネタは滝澤たきざわ三郎さぶろう

 このようにみや﨑氏の議論ぎろんは、いちいち反論はんろんする価値かちもないものです。だって、あまりにもむちゃくちゃすぎてなにっているのか意味いみ不明ふめいなんですもの。理屈りくつになってないのだから、反論はんろんのしようもありません。

 みや﨑氏は入管にゅうかん役人やくにんのレクチャーをもとにしゃべっているのでしょうが、おそらくそのもとネタはアレだろうという見当けんとうはつきます。もとUNHCR職員しょくいんという肩書かたがきでいつも入管にゅうかん擁護ようご代弁だいべんをしている滝澤たきざわ三郎さぶろうという人物じんぶつです。

 以下いか滝澤たきざわ三郎さぶろう編著へんちょ世界せかい難民なんみんたすける30の方法ほうほう』(2018ねん合同ごうどう出版しゅっぱん所収しょしゅうの、滝澤たきざわによる「難民なんみん認定にんてい申請しんせいしゃえるが難民なんみん認定にんていしゃすくない理由りゆう」という文章ぶんしょうから抜粋ばっすいします。


 なぜ、日本にっぽん難民なんみん認定にんていは、これほどまでにすくないのでしょうか?

 だい1の理由りゆうは、大半たいはん難民なんみん日本にっぽんないということです。日本にっぽんおおくの難民なんみん発生はっせいするなか近東きんとうやアフリカの紛争ふんそう国家こっかからとおはなれており、来日らいにち手段しゅだん航空機こうくうき以外いがいにはなく、航空こうくうけんだい高額こうがくで、ビザの取得しゅとく困難こんなんです。難民なんみんくにえらさいに、歴史れきしてきつながり、おなこくひとのコミュニティの有無うむなどを考慮こうりょしますが、地理ちりてきとおさは決定的けっていてきで、おおくは隣国りんごくのがれます。


 たぶんこれがみや議員ぎいん主張しゅちょうもとネタですよね。いま現在げんざいめだった紛争ふんそう状態じょうたいになくて「平和へいわ」「平穏へいおん」にみえても、政治せいじてき主張しゅちょうぞくする集団しゅうだん、セクシュアリティなどによって投獄とうごくされたり殺害さつがいされたりするおそれのあるひとは、難民なんみん条約じょうやく保護ほごもとめられる難民なんみんであるわけで、なぜ難民なんみんしょうじるのが「紛争ふんそう国家こっか」に限定げんていされるかのような議論ぎろんになるのかとか、つっこみどころはあるわけですが、そこはおいておきます。しかし、さきみや﨑氏の主張しゅちょう同様どうよう、その「紛争ふんそう国家こっか」からの距離きょり可能かのう移動いどう手段しゅだん飛行機ひこうきのみであることが、どうして日本にっぽん難民なんみん認定にんていすくないことの理由りゆう説明せつめいになるのか、まったく意味いみ不明ふめいです。

 だいたい、日本にっぽんのきわめてひく認定にんていすう認定にんていりつのなかでげん難民なんみん認定にんていされているひとたちの出身しゅっしんこくをみても、ミャンマーだったりエチオピアだったりアフガニスタンだったりウガンダだったりしますが、みんな飛行機ひこうきてるではないですか。先日せんじつ裁判さいばんをとおしてトルコ出身しゅっしんのクルドじんとしてようやくはじめて日本にっぽん難民なんみん認定にんていをえたひとも、飛行機ひこうきています。



滝澤たきざわ屁理屈へりくつをこねてまで言及げんきゅうけようとするのはなにか

 滝澤たきざわというひと文章ぶんしょうはいつも全体ぜんたいてき支離滅裂しりめつれつでなにってるのか意味いみ不明ふめいなのですが、どうしてそうなるかというと、無理むりすじ入管にゅうかん擁護ようご屁理屈へりくつならてようとするからです。ってることが屁理屈へりくつだから、わけのわからないものになるのは当然とうぜんです。

 滝澤たきざわさき文章ぶんしょうで、「なぜ、日本にっぽん難民なんみん認定にんていは、これほどまでにすくないのでしょうか?」とうたあとに、うえ引用いんようしたところをふくめていつつの要因よういん指摘してきしています。それぞれいろいろとつっこみどころがあるのですが、ここではいちいちりません。スキャンした画像がぞうをあげておきますので、滝澤たきざわがどんな屁理屈へりくつをこねているのか興味きょうみのあるかたはんでみてください。わたし重要じゅうようだとおもうのは、このいつつの要因よういんとやらをべたてながら、滝澤たきざわが「なにをっていないか?」「なにについての言及げんきゅうけているのか?」というてんです。


上記じょうき世界せかい難民なんみんたすける30の方法ほうほう』58ぺーじより


同書どうしょ59ぺーじより


 滝澤たきざわがけっしてかたろうとしないのはなにか? 入管にゅうかん難民なんみん認定にんてい審査しんさのやりかた問題もんだいです。これについてはいっさいわない。意地いじでもわない。UNHCRの難民なんみん認定にんてい基準きじゅんハンドブックにのっとった審査しんさをしていないとか、日本にっぽん独自どくじ個別こべつ把握はあくろんとか、入管にゅうかん批判ひはんてき専門せんもん指摘してきしている問題もんだいがいろいろあるわけじゃないですか。そこにはぜったいふれない。

 難民なんみん調査官ちょうさかん難民なんみん審査しんさ参与さんよいんは、国際こくさいほうについていちじるしく無知むちで、申請しんせいしゃ出身しゅっしんこく情報じょうほうもろくすっぽ調しらべずに審査しんさにあたっているものおおいということなどもよく指摘してきされます。退去たいきょ強制きょうせい業務ぎょうむふくめ出入国しゅつにゅうこく管理かんりをになう入管にゅうかんという組織そしきが、保護ほごすべき難民なんみんをとりこぼさずに認定にんていして保護ほごするということが同時どうじにできるのか(人間にんげん管理かんり保護ほご同一どういつ組織そしき両立りょうりつできるのか)、という問題もんだいとか。難民なんみん申請しんせいしゃ立証りっしょう機会きかい確保かくほ保障ほしょうしているということができているのか、という問題もんだいもあります。やたらめったら収容しゅうようして身体しんたい拘束こうそくして、通信つうしん交通こうつうをいちじるしく制限せいげんするのは、申請しんせいしゃ自身じしん難民なんみん該当がいとうせい立証りっしょうすることの妨害ぼうがいにすらなっているのではないか、とか。

 日本にっぽん難民なんみん認定にんていりつのいわゆる「先進せんしんこく」と比較ひかくして異常いじょうひくいといううごかしようのない事実じじつがあり、それが入管にゅうかん難民なんみん認定にんてい審査しんさ適正てきせいにおこなわれていないことの反映はんえいではないかということは、このようにさまざまな観点かんてんからかんがえられます。

 しかし、そういった難民なんみん審査しんさのありかたの問題もんだい入管にゅうかん問題もんだいについて、滝澤たきざわはいっさい無視むしらんぶり。言及げんきゅうしない。そういうわけで、いつつの要因よういんべたあとのまとめが以下いかのような文章ぶんしょうになってしまう(太字ふとじ強調きょうちょう引用いんようしゃ)。


 以上いじょう理由りゆうをまとめると、法務省ほうむしょう難民なんみん認定にんていすくないのは、難民なんみんをたすけるべきひとというよりもやっかいな存在そんざいとみなす政治せいじてき環境かんきょう制約せいやくけており、また島国しまぐにという地理ちりてき条件じょうけんなかではぐくまれてきた、難民なんみん閉鎖へいさてき社会しゃかいてき意識いしき反映はんえいされたものといえるでしょう。日本にっぽんの『難民なんみん鎖国さこく』には重層じゅうそうてき構造こうぞうてき障壁しょうへきがあり、これをくずすのは容易よういではありません。


 ほら、意地いじでも入管にゅうかんわるいとはわないぞという意思いしがビシビシとつたわってくるでしょう? 「政治せいじてき環境かんきょう」(国会こっかい議員ぎいん意識いしき行動こうどう)や「社会しゃかいてき意識いしき」が問題もんだいだというところまではうけれど、入管にゅうかん難民なんみん審査しんさのやりかたは、けっして問題もんだいにしないわけです。「日本にっぽんの『難民なんみん鎖国さこく』には重層じゅうそうてき構造こうぞうてき障壁しょうへきがあり」などといって自分じぶん問題もんだい重層じゅうそうせい構造こうぞう認識にんしきしているのだと読者どくしゃ示唆しさするけれども、入管にゅうかん問題もんだいにふれることは全力ぜんりょくけようとしています。なーにが「重層じゅうそうてき構造こうぞうてき障壁しょうへきが」だよ。

 みや議員ぎいん主張しゅちょうもとネタであろう、「紛争ふんそう国家こっか」からの「地理ちりてきとおさ」がうんぬんといてるところなんかも、あきらかに理屈りくつがおかしいのですけど、入管にゅうかん擁護ようごのために無理むりすじ屁理屈へりくつをこねるからこういうわけわからんおかしなはなしになるのです。

 で、入管にゅうかんという組織そしきはこういうおそまつな理論りろん武装ぶそうしかできていない。外国がいこくじんへの敵愾心てきがいしん警戒けいかいしんをあおり、それによって自分じぶんたちの組織そしき業務ぎょうむへの「国民こくみん」の理解りかい支持しじ、あるいは黙認もくにん関心かんしん獲得かくとくできれば十分じゅうぶんだという広報こうほう戦略せんりゃくできたものだから、ってることは滝澤たきざわレベルの屁理屈へりくつでよいとナメきってるわけです。それで、入管にゅうかん役人やくにん滝澤たきざわレベルの屁理屈へりくつ与党よとう議員ぎいんにレクチャーしたところ、議員ぎいんはそのおかしな理屈りくつをテレビでべらべらしゃべってはじをさらしているという情景じょうけいが、わたしたちがいまBS-TBSの「報道ほうどう1930」でたところです。

 それにしても、こんなデタラメな主張しゅちょう、「屁理屈へりくつ」という言葉ことばでも評価ひょうかあますぎるようなふざけた議論ぎろんをもとに、難民なんみん申請しんせいしゃ送還そうかんしようという人間にんげんいのちにかかわる法案ほうあん審議しんぎされているのはゆるしがたいことです。くりがえしになりますが、みや政久まさひさ衆議院しゅうぎいん法務ほうむ委員いいんかい理事りじであり、自民党じみんとう法務ほうむ部会ぶかいちょうです。そして、滝澤たきざわ三郎さぶろうはその衆議院しゅうぎいん法務ほうむ委員いいんかい審議しんぎ参考さんこうじんとしてばれ、意見いけんべています。こんな難民なんみん申請しんせいしゃ人命じんめいをもてあそぶ屁理屈へりくつを、根拠こんきょしめさずにイメージ・印象いんしょうろんでしゃべってる連中れんちゅうとおそうとしているのが、このたびの入管にゅうかんほう改悪かいあく法案ほうあんだということです。ぜったいに廃案はいあんいこめるよう、こえをあげましょう。


以 うえ



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資料しりょう:BS-TBS「報道ほうどう1930」(5がつ2にち)からの文字もじこしデータ

 以下いかは、番組ばんぐみ松原まつばらこうキャスターが「まずみや﨑さんにうかがいたいんですが、さきほどみや﨑さん、難民なんみん認定にんていりつひくいのは、分母ぶんぼである申請しんせいするひとのなかにもともと本当ほんとう難民なんみんがいないんだというふうにおっしゃっている、まあ入管にゅうかんもそういうふうな主張しゅちょうをしているんですが」とはなしをむけたのをけてのみや政久まさひさ指宿いぶすき昭一しょういち、また松原まつばらキャスターの発言はつげん文字もじこししたものです。

 なお、冒頭ぼうとうべたように、TBSが当初とうしょYouTubeに公開こうかいしていた動画どうがは4にち夕方ゆうがたよる以降いこう非公開ひこうかい設定せっていされて視聴しちょうできなくなり、あらたにそのTBSが公開こうかいした番組ばんぐみ動画どうがでは、以下いか文字もじこしした部分ぶぶんはすべてカットされています。


みや﨑:それと、ごちゃごちゃになっているというのは、さきほどわたしのコメントを画面がめんでおしゅっしになったことの、いま松原まつばらさんご質問しつもんあったけんですけども、分母ぶんぼとして、ようするに難民なんみん認定にんていかずすくないというけれども、実際じっさいとして、参与さんよいん発言はつげん左側ひだりがわいていただいていますけれど、実際じっさいすくないというのはですね、たとえばUNHCRのしているものでも、難民なんみんとして認定にんていされているひとの73%は隣国りんごく避難ひなんをして認定にんていされている。いま、上位じょうい5かこくはどこかというと、中央ちゅうおうアフリカ、シリア、アフガニスタン、コンゴ、ホンジュラスなんですよ。つまりこういうところで本当ほんとうこまってらっしゃるかたがいて、

松原まつばら:つまり世界せかい難民なんみんとしてみとめられているベスト5をおっしゃった

みや﨑:ベスト5ですね。で、73%のひと隣国りんごく避難ひなんをしている

松原まつばらとなりこくなんだと

みや﨑:つまり、くにるためには、日本にっぽん島国しまぐにでありますから、航空機こうくうきって基本きほんてきにはないといかんわけです。もちろん、アジアの周辺しゅうへんこく事態じたいこれば、本当ほんとう身着みきのままうみわたってるかた、いらっしゃるということも想定そうていできますけれど、現状げんじょうさっきおっしゃったような国々くにぐにからするとですね、基本きほんてき飛行機ひこうきってくるかたになっているわけです、入国にゅうこくするかたというのは。そういったことがあるので、さきほどご指摘してき、この画面がめんじょう参与さんよいんのかたがご発言はつげんになっているように、航空機こうくうきだいはらってビザをとってパスポートをもって入国にゅうこくしてきたかたがおおいわけですから、そういうかたが前提ぜんていになっている日本にっぽんと、あと、地続じつづきになっているヨーロッパ諸国しょこくの、たとえばあるいて避難ひなんをしていくみなさんが、映像えいぞうなどワールドニュースなんかてきますけれど、そういうところとのちがいがあるということは理解りかいしていただきたいというのが1てん

松原まつばら飛行機ひこうきってパスポートをもらってひとは、おおくは難民なんみんじゃないだろうと

みや﨑:ええと、つまりすうすくない、りつひくいということをうときに、参与さんよいんのかたがおっしゃっているとおりですね、いったん、たとえば身着みきのまま隣国りんごくげていった、たとえば今日きょうドイツでも、そういうワールドニュースの映像えいぞうなんかもたこともなんもありますけれども、そういった国々くにぐにとは入国にゅうこくの、日本にっぽんはいがたちがうということもあるので、そういった事情じじょう影響えいきょうしている。ただ、ただですね、ただ、さきほどご指摘してきにあった、たとえばミャンマーのかたであるとか、アフガニスタンのかたとか、そういうかた、日本にっぽんのなかでも難民なんみん認定にんていしているかたもおりますし、またあとで数字すうじてくるとゆうふうにってますけども、難民なんみんでなくてもですね、たとえば条約じょうやくじょう難民なんみんのものでなくても、戦争せんそうであるとか、

松原まつばら:わかりました。それはあとでやらしてください。ちょっと指宿いぶすきさん、いまはなしですけど、飛行機ひこうきってビザをってくるひとは、おおくは難民なんみんじゃないんだ、と。だから、身着みきのまま、たとえばあるいてくる、あるいはボートピープルのようなひと難民なんみんなんだ、と。だから日本にっぽんがもともと分母ぶんぼすくないことは当然とうぜんじゃないかとおっしゃったようにこえた。どうごらんになりますか。

指宿いぶすきわたしはまったくそうはおもわないですね。それはたんなるイメージ。難民なんみんというものにたいしてどういうイメージをつかだけで、飛行機ひこうき難民なんみんはたくさんいるとおもいます。だって政治せいじ難民なんみんですから、おもにはね。さっきのミャンマーのミョウチョーチョーさんにように、そのくに政治せいじ活動かつどうをして、くににいられなくてげてくる、飛行機ひこうきひともいれば、ふねひともいますよ。日本にっぽんはたしかにうみかこまれているくにだから、そのどっちかでしかないですね、ほとんどは。まあ、密航みっこうせんというのもなくはないですけど。だから、そのイメージでもって難民なんみんじゃないとわれたらこまるし、みや先生せんせいも、それから参与さんよいんのかたも、なにを根拠こんきょにそうおっしゃるのか、どういうデータにもとづいておっしゃるのかが、わたしにはわからない。

松原まつばら:そういうデータはあるんですか。飛行機ひこうきってパスポートをもってひとおおくは難民なんみんではないと。これはイメージだとおもうんですけど、たしかに。

みや﨑:松原まつばらさん、そこはね、ひっぱりすぎですよ。つまりね、どうして難民なんみん認定にんていりつひくいのか、かずすくないのかといったときに、地続じつづきのところでなんとかいのちからがらげてくる……[これにつづ部分ぶぶんは、番組ばんぐみ動画どうが削除さくじょされたため、文字もじこしできず]