中国が仕掛ける外交攻勢 米国の信頼低下を契機に「非欧米の軸」狙う
記者解説 中国総局・林望
最近、中国外交の活発さが際立っている。19日には習近平(シーチンピン)国家主席が、北京を訪問したブリンケン米国務長官と面会した。習氏が上座から語りかける異例の形式には、ひどくこわばる米中の現状がにじんだが、習氏は「国際社会は両国の衝突を望んでいない」などと、緊張緩和への意欲も語った。
混乱が深まる世界のなか、中国は外交を通して何を目指しているのか。俯瞰(ふかん)してみたい。
5月には古代シルクロードの起点と言われる陝西省西安で、習氏と中央アジア5カ国首脳によるサミットが開かれた。唐代の楼閣を模した建物をバックに総勢490人のダンサーが踊りを披露するなど、華やかな舞台は国力を誇示するかのようだった。そこで習氏は、国際鉄道の建設、エネルギーや農産物の輸入拡大、総額260億元(約5千億円)の融資などを次々と約束し、地域の結束を呼びかけた。
「怒濤(どとう)の外交攻勢」(北京の外交筋)は3月から始まっていた。
まずは、イランとサウジアラビアの電撃的な国交回復の仲介だった。北京の人民大会堂で全国人民代表大会(全人代)が開かれていた折も折、中国政府はわずか5キロ先の釣魚台国賓館にイランとサウジの代表をひそかに招き入れ、5日間にわたる協議をセットした。突然発表された成果は、キッシンジャー元米国務長官が、米中国交正常化に道を開いた1971年の自身の極秘訪中になぞらえたほどだった。
その驚きも冷めぬうち、習氏はロシアを訪れ、プーチン大統領にウクライナ情勢の打開に向けた対話を促した。
4月初めに訪中したマクロン仏大統領には習氏自ら地方視察に付き添うなど厚遇し、会談で「ロシアに理性を取り戻させるにはあなたが頼りだ」との発言をマクロン氏から引き出した。同月末にはウクライナのゼレンスキー大統領と電話協議し、調停者となる意欲を伝えた。
秦剛(チンカン)国務委員兼外相らも世界を飛び回り、4月と5月に訪中した各国の首脳・外相は約40人に上った。
しかし、こうした勢いは、中国が国際社会で身につけた影響力をそのまま反映しているのだろうか。
ポイント
中国外交の活発さが目立ち、地政学的な変化を感じさせる「成果」もあげている。米国への信頼が相対的に下がったことが、中国に居心地の良い立ち位置を与えている。中国が目指しているのは「緩やかな連帯」。堅固な陣営を築く力や覚悟はまだない。
イランとサウジの国交回復に…
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