熊本県知事選が24日、投開票され、無所属で自民党と公明党が推薦する前副知事の木村敬氏(49)が初当選を果たした。同じく無所属で複数の野党が自主的に支援した前熊本市長の幸山政史氏(58)と与野党対決の様相を呈した選挙戦を制した。
16年ぶりの新しい知事を決める選挙には4人が立候補した。木村氏は今期での引退を表明している現職の蒲島郁夫知事の「良き流れを引き継ぐ」と強調。推薦を受ける自公の全面支援を受けて徹底的な組織戦を展開し、支持を訴えた。
投票率は49.63%(前回45.03%)。当日有権者数は142万765人。
自公の推薦得て知名度不足克服
当選確実が伝えられると、木村氏は支援者が集まった熊本市のホテルで笑顔でガッツポーズを決め、「厳しい選挙戦だったが、政策を訴えてきた成果がでたのだと思う」とあいさつした。
木村氏は蒲島知事が東大教授だったときの教え子で、2020年10月からは副知事を務めた。知事が今期での引退を表明すると、県議会の議席の7割を占める自民党県連からの要請に応じる形で、立候補を表明した。
知名度不足が課題だったが、自公からの推薦を受け、自民の国会議員や県議と並ぶポスターで浸透を図った。党所属議員が主催する集会や友好団体もまわって支援を求め、現職の大臣も応援に入った。
街頭では、16年の熊本地震からの復興や、世界的半導体メーカー「台湾積体電路製造(TSMC)」の菊陽町への進出について触れ、副知事時代の実績を強調。「蒲島県政の良き流れを受け継ぐのは私しかいない」「今の流れをより大きく強くする」と訴えた。
蒲島知事は「後継指名ではない」としながら、集会や街頭演説で木村氏について「推薦する」と発言するなど、応援する姿勢を示した。自民党派閥の裏金問題で「逆風」も指摘されたが、木村氏は「国政と県政は別だ」とかわした。
「オール県民党」、大きな流れつくれず
知事選3度目の落選が確実になると、熊本市中央区のホテルで幸山氏は「ひとえに私の力不足。政治に関心をもつ多くの人とつながれたが、私に何かが足りなかった」と深々と頭を下げた。
公約で木村氏との大きな違いはないと指摘されたが、「政治姿勢は違う。組織型ではなく、草の根選挙だ」と支持を訴えた。
熊本県議時代は自民党に所属したが、3期12年務めた熊本市長時代は各党と等距離を貫いた。今回は、立憲や共産、国民、社民の県組織が自主的に支援したが、自ら支援を求めることはなかった。
蒲島知事が自民とほとんど対立してこなかったことを問題視し、「一部の声だけで決められてよいのか」と、「オール県民党」を掲げて挑んだ。知事選で2度敗れた後、県内を歩き、多くの県民から聴いた悩みをともに解決したいと訴えた。
国会では自民の裏金問題が連日取り上げられたなかでの選挙戦。自らは県議時代から企業・団体献金の受け皿になる政党支部を作ったことも、政治資金パーティーを開いたこともないと説明。「清き流れをつくろう」と訴えたが、大きな流れにならなかった。
2氏、訴えるも及ばず
建設会社社長の毛利秀徳氏(46)は新型コロナワクチン接種後の後遺症患者の救済などを、元高校講師の宮川一彦氏(58)は首都機能の移転などを訴えたが、及ばなかった。