きっかけは、高校時代の親友の一言だった。
15年ほど前、家族関係や仕事がうまくいかず、女性(43)はリストカットをした。いつものように親友に相談すると「いまの私にそんなことを相談をするなんて、信じられない」となじられた。
親友も彼氏に浮気されたばかりで、心に余裕がないという。以来、関係はギクシャクし、親友とは疎遠になってしまった。
私は見捨てられた――。
週末、街に出た。「すごいかわいい」
コム・デ・ギャルソンのコートにスカート、ケイト・スペードのバッグに財布……。
「この服を着たら私、どうなるかな」
クレジットカードで支払いを済ませると、味わったことのない幸福感で満たされた。
仕事中も「来週は何を買おうか」と、パソコンで検索を繰り返した。その次の週末も、その次の週末も、何軒も店をはしごした。買い物袋を抱えきれず、タクシーで帰宅した。
すぐにカードの上限を超え、限度額を引き上げた。それでも足りなくなり、次々にカードを契約した。
仕事は自治体の臨時職員で、月の給料は手取り約12万円。一度の買い物の合計額は、20万~30万円にものぼっていた。
リボ払いにして月々の支払金額を下げた。それでも返済できず、カードでキャッシングし、銀行口座に入金する自転車操業を繰り返した。
だが、1年近く続いた「幸せな週末」は、突然終わりを告げた。
カードの請求書が入った封筒を、同居する父に勝手に開けられた。「なんでこんなことするんだ」。そう言って、殴られた。
「不機嫌」で家庭内を支配する銀行員の父
殴られたのは、初めてではな…