「こころがケガ」6わり時代じだい 専門せんもんでないわたしたちにできること

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精神せいしん 亀岡かめおか智美ともみ
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Re:Ron連載れんさい「こころがケガをするということ」だい12かい最終さいしゅうかい

 連載れんさい最終さいしゅうかい今回こんかいは、こころのケガをかかえているひと社会しゃかい、つまりわたしたちいちにん一人ひとりがどのようにかかわっていくべきか、についてかんがえたい。

 10ねんあまりまえに、米国べいこくから日本にっぽん紹介しょうかいされた「トラウマインフォームドケア」という、対人たいじん支援しえん役立やくだかんがかたがある。トラウマインフォームドケアは、連載れんさいだい10、11かいげた、こころのケガそのものを手当てあてする治療ちりょうほうではなく、そのひとのこころのケガが、なるべくいたまないようなかかわりをこころがける、というものだ。医療いりょう保健ほけん福祉ふくし教育きょういく司法しほうなど、あらゆる領域りょういきれられており、専門せんもんではない一般いっぱんひとにも実践じっせんしてほしい方法ほうほうだ。

 というのも、だい1かい紹介しょうかいしたように、日本人にっぽんじんの6わりがこころのケガ体験たいけんをしているのだから、こころのケガのいたみにくるしんでいるひとが、わたしたちのまわりに数多かずおお存在そんざいするはずだからだ。とても一部いちぶ専門せんもんだけでは対応たいおうしきれない。

 たとえば、まちちゅうくるまいすがなにかにっかかってうごかなくてこまっているさわがいしゃかけたら、専門せんもんでなくても手助てだすけしようとするだろう。同様どうようのこころのケガバージョンが、トラウマインフォームドケアだ。

 しかし、うはやすくおこなうはかたし、だ。

身体しんたいのケガやさわがいしゃ支援しえんおな

 なぜなら、こころのケガはえないし、ケガをしていることや、ケガのいたみによってしょうじている反応はんのうに、本人ほんにんでさえづいていないことがあるからだ。だが、基本きほん身体しんたいのケガやさわがいしゃへの支援しえんおなじだ。

 たとえば、バイク走行そうこうちゅう道路どうろなか転倒てんとううごけなくなったひと遭遇そうぐうしたとする。その居合いあわせたひとたちがり、「だいじょうぶですか?」とたずねる。応答おうとうがあり意識いしきはあるようだ。

 だれかが救急きゅうきゅうしゃび、救急きゅうきゅうしゃ到着とうちゃくするまで、とりあえずそのひと安全あんぜん道端みちばたまで移動いどうさせようということになった。そのときあなたはどうするだろう。

 ここはあぶないから救急きゅうきゅうしゃるまで道端みちばたってようとそのひとつたえる。そして、自分じぶんあるけそうかどうかをたずね、むずかしければ、かたしたり、おぶったり、または、すうにんはこんだりするだろう。そのとき身体しんたいのこの部分ぶぶんっても大丈夫だいじょうぶか、いたくないかも確認かくにんするだろう。

 なぜ、このれいでは支援しえんがスムーズにできたのか?

 まず、身体しんたい外傷がいしょうがあり、安全あんぜん確保かくほするのが重要じゅうようであることが、支援しえんするがわとされるがわ共有きょうゆうされており、支援しえんける―提供ていきょうすることの合意ごうい一瞬いっしゅん成立せいりつしている。支援しえんするがわひとたちには、あたまったら意識いしき障害しょうがいるかもしれない、衣服いふくしたおおきな外傷がいしょうっているかもしれない、骨折こっせつしているかもしれない、など一般いっぱんてき身体しんたい外傷がいしょうについての知識ちしきがあり、それがかなりいたいかもしれないことを想像そうぞうすることができる――。そうした条件じょうけんととのっていたからではないだろうか。

えないゆえいかりからかんがえた

 こころのケガの支援しえんは、このれいのようにうまくすすまないこともある。なぜなら、一般いっぱんひとたちはこころのケガの反応はんのうについてあまりらないし、ケガをしたひとが、みずかすすんで支援しえんもとめないこともすくなくないからだ。このことをかんがえるときにいつもおもす、ひとつのにが過去かこ体験たいけんがある。

 あるときわたしは、駅前えきまえ違法いほう駐車ちゅうしゃ自転車じてんしゃのジャングルにまよみ、られなくなっている視覚しかくさわがいのひとかけた。そのひとはかなりいらっていて、ったしろつえ(はくじょう)で、自分じぶんまわりの自転車じてんしゃをガンガンたたいていた。わたしなんか「お手伝てつだいしましょうか?」とこえをかけたが、そのひとみみにはとどかなかった。だから、そのひと近寄ちかようしろからかたをトントンしながら、もっとおおきなこえをかけた。しかし、そのひとは「うるさい!」とわたしはらい、しろつえげたのだ。わたしはびっくりしてそのった。

 この事件じけん直後ちょくごわたしのこころには、理不尽りふじんにあったというおもいがげてきた。

 かれとおもってしたことなのに、逆襲ぎゃくしゅうするなんてひどい!

 なんて暴力ぼうりょくてきひとなんだ!

 そのひとたいするいかりさえもわいてきた。

こころのケガによるいたみに

 でも時間じかんがたって冷静れいせいになる…

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Re:Ron

Re:Ron

対話たいわつうじて「ろん」をふかう。論考ろんこうやインタビューなど様々さまざま言葉ことばとおして世界せかいひろげる。そんなをRe:Ronはめざします。[もっと]