自民党派閥「志帥会」(二階派)の政治資金パーティーをめぐる事件で、政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で在宅起訴された同派元事務局長・永井等(ひとし)被告(70)の初公判が19日、東京地裁であった。元事務局長は、5年間で計約3億8千万円の収支を政治資金収支報告書に記載しなかったとする起訴内容を認めた。結審は7月22日、判決は9月10日の予定。
検察側は冒頭陳述で、二階派では所属議員がパーティー券の販売ノルマを超えて集めた売上金について、派閥から議員側に還流したり、議員側が派閥の口座に入金しない「中抜き」をしたりしていたと説明。同派の会計責任者だった永井元事務局長は2018~22年の政治資金収支報告書に、約2億6千万円の収入と約1億2千万円の支出を記載していなかったとした。
虚偽記載の理由は、多額のパーティー収入を支援者らに知られると「パーティー券の買い控えが生じる」と懸念したためと指摘した。
議員側に渡す還流分は支出額のみを記載し、収入額分が派閥の「裏金」になっていたが、元事務局長は被告人質問で「いろいろな派閥の成り行きを目の当たりにして、(二階派も)一時は10人ほどの弱小派閥になり、事務所の維持が困難なときもあり、(政治は)何があるかわからないから金を蓄えたいと考えた」と説明。選挙中の交通費や宿泊費などに使ったという。
同派の会長や事務総長ら幹部議員には、収支報告書の提出前に収支額を口頭だけで伝え、虚偽記載は相談していない、とした。
部下の職員から正しい金額を記載するよう進言された際は、「このままではいけないとの気持ちを持った」「どのように修正したらいいか考えているうちに時間が過ぎた」と語った。
政治資金規正法は「(条文を)読んだが熟読したことはない」。検察側が、会計責任者になった1999年7月以降で政治資金が社会問題になったことを覚えているかと尋ねると、「思い出すものはない」と答えた。
二階派をめぐっては、会長の二階俊博・元党幹事長の事務所で、5年間で計3526万円の中抜きがあった。これを派閥からの寄付として資金管理団体の収支報告書に記載しなかったとして秘書が略式起訴され、罰金100万円などの略式命令が確定している。
一連の事件では自民党の最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)の会計責任者の同派事務局長も、総額約13億5千万円の収支を政治資金収支報告書に記載しなかったとして在宅起訴された。事務局長は5月の初公判で、起訴内容を大筋で認めた。
安倍派ではノルマ超過分について、中抜き分と還流分の収支いずれも記載していなかったが、二階派では還流分の支出だけは記載し、虚偽記載の額は収入と支出で差が出た。(植松敬、野間あり葉、藤牧幸一)