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 地上ちじょうからエレベーターにって宇宙うちゅうけるーー。大林組おおばやしぐみがこんなゆめのような輸送ゆそう機関きかん構想こうそう宇宙うちゅうエレベーター」を発表はっぴょうして世間せけんおどろかせたのは2012ねんのこと(1)。当時とうじ着工ちゃっこう開始かいし目標もくひょうとしていた2025ねん目前もくぜんせまなか開発かいはつ現状げんじょうはどうなっているのか。

図1 エレベーターに乗って宇宙へ
1 エレベーターにって宇宙うちゅう
宇宙うちゅうエレベーター」のイメージ。赤道せきどう付近ふきん設置せっちした「アース・ポート」から「クライマー」とばれるエレベーターにって宇宙うちゅうける。静止せいし軌道きどう設置せっちされたステーションまでは1週間しゅうかん程度ていどかかると試算しさんしている(出所しゅっしょ大林組おおばやしぐみ
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 同社どうしゃ宇宙うちゅうエレベーターの開発かいはつたずさわる、技術ぎじゅつ本部ほんぶ未来みらい技術ぎじゅつ創造そうぞうふち田安たやすひろしが、展示てんじかい「Interop Tokyo 2024」(開催かいさい:2024ねん6がつ12~14にち)の会場かいじょうで、「大林組おおばやしぐみ宇宙うちゅうエレベーターそのさきに」というタイトルで講演こうえんした。結論けつろんからえば、同社どうしゃ要素ようそ技術ぎじゅつ開発かいはつ地道じみちつづけてはいるものの、課題かだい山積さんせきで、現在げんざい着工ちゃっこうのめどはっていない。

 宇宙うちゅうエレベーターは、海上かいじょう設置せっちした「アース・ポート」とばれる基地きちから、高度こうど9まん6000kmの位置いちにあるさいいただきのカウンターウエート(バランスをるためのおもり)までをケーブルでつないだ巨大きょだい構造こうぞうぶつである。このケーブルにエレベーター(昇降しょうこう)をければ、ひと物資ぶっし宇宙うちゅう輸送ゆそうできるようになる。

 原理げんりはシンプルだ。高度こうど3まん6000kmの静止せいし軌道きどう周回しゅうかいする人工じんこう衛星えいせいは、その周期しゅうき地球ちきゅう自転じてんおなじであるため、地上ちじょうの1てんたいしてつね静止せいししているようにえる。この静止せいし衛星えいせいから、バランスをりながら地球ちきゅうがわ宇宙うちゅうがわにケーブルをばしていき、それが地上ちじょう到達とうたつすれば、地上ちじょう宇宙うちゅうむす長大ちょうだいな1ほんのケーブルになる。

 宇宙うちゅう輸送ゆそう問題もんだいはコストがたかいことだ。ロケットはそのおもさの大半たいはん燃料ねんりょうめる。もし、宇宙うちゅうエレベーターが完成かんせいすれば、大量たいりょう資材しざいをロケットでげるよりもこう効率こうりつていコスト、かつ安全あんぜんはこべると大林おおばやしぐみ主張しゅちょうする。

 宇宙うちゅうエレベーターには高度こうどおうじて様々さまざま施設しせつつくられる。最大さいだい規模きぼえき静止せいし軌道きどうじょうの「静止せいし軌道きどうステーション」で、居住きょじゅうユニットや実験じっけんユニット、ふねがい実験じっけんユニットなどで構成こうせいされる(2)。地上ちじょうから時速じそく200km程度ていど移動いどうする「クライマー」とばれるエレベーターにれば、1週間しゅうかん程度ていどどうステーションに到着とうちゃくする計画けいかくだ。

図2 静止軌道ステーションの全体レイアウト
2 静止せいし軌道きどうステーションの全体ぜんたいレイアウト
勤務きんむしゃ見学けんがくしゃ居住きょじゅうするユニット、実験じっけんユニット、接続せつぞくユニットなどで構成こうせいされる(写真しゃしん日経にっけいクロステック)
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 高度こうど300kmのてい軌道きどうには「てい軌道きどう衛星えいせい投入とうにゅうゲート」がもうけられ、ここからは地球ちきゅうからはこんだ人工じんこう衛星えいせい軌道きどう投入とうにゅうできる。このほか、火星かせいつきおな重力じゅうりょくになる「火星かせい重力じゅうりょくセンター」や「つき重力じゅうりょくセンター」という実験じっけん設備せつび設置せっちされる計画けいかくだ。

 宇宙うちゅうエレベーターの概念がいねん自体じたいは、100ねん以上いじょうまえからあった。1895ねんにロシアの科学かがくしゃであるコンスタンチン・ツィロコフスキー考案こうあんしたとされている。しかし、地球ちきゅう宇宙うちゅうむすちょう長距離ちょうきょりケーブルに必要ひつような「かるさ」と「強度きょうど」のある素材そざい存在そんざいしなかったため、それはながらく夢物語ゆめものがたりにすぎなかった。

 しかし1991ねんに、かるくてたか強度きょうど素材そざいである「カーボンナノチューブ(CNT)」が発見はっけんされ、宇宙うちゅうエレベーター実現じつげん可能かのうせいてきた。「最大さいだいで150GPa(ギガパスカル)というとんでもない強度きょうどかるさをそなえた素材そざい誕生たんじょう構想こうそうのきっかけになった」(ふち

 大林おおばやしぐみ建設けんせつ会社かいしゃとして、具体ぐたいてき建設けんせつ手法しゅほう考案こうあんした。まず、高度こうど300kmで建設けんせつよう宇宙船うちゅうせんたてて、それを静止せいし軌道きどう移動いどうする。宇宙船うちゅうせんから上下じょうげにCNTせいのケーブルをばしていき、宇宙船うちゅうせん地上ちじょうをケーブルでつなぐ。つぎにケーブルにクライマーをける。クライマーは地上ちじょう宇宙うちゅうとをしてケーブルを補強ほきょうしながら、静止せいし軌道きどうステーションなどの施設しせつ建設けんせつする。「ケーブルの補強ほきょう全部ぜんぶで510かい必要ひつようで、完了かんりょうまでにやく20ねんようする」(同氏どうし)という。