依然いぜんとしてくすぶるインフレ目標もくひょう反対はんたい論ろんへの反論はんろんの2回かい目め。今回こんかいはハイパーインフレが起おこる、金利きんりが上昇じょうしょうする、財政ざいせい規律きりつが緩ゆるむといった「弊害へいがい論ろん」を検証けんしょうする。

弊害へいがい論ろんに対たいする反論はんろん

 インフレ目標もくひょうには副作用ふくさようがある《弊害へいがい論ろんタイプ》という懸念けねんについては、インフレ目標もくひょうが海外かいがいで既すでに実施じっし済ずみなので、問題もんだいなしとして片付かたづけてもいいが、丁寧ていねいに解答かいとうをつけておこう。

e.【ハイパーインフレ論ろん】インフレはコントロールできずハイパーインフレになる。

 この批判ひはんは a.の批判ひはん（前回ぜんかい参照さんしょう）とは逆ぎゃくに、ハイパーインフレになるというものである。まず、ハイパーインフレとは、標準ひょうじゅん的てきな定義ていぎでは年率ねんりつ1万まん3000％以上いじょうのインフレであり、国くにとして壊滅かいめつ的てきな状況じょうきょうで現あらわれる極端きょくたんな現象げんしょうであることをまず指摘してきしておく。

 しかし、インフレ目標もくひょうでは、目標もくひょうの上限じょうげんとして例たとえば3％を設定せっていしているから、3％を恒常こうじょう的てきに超こえるような状況じょうきょうが予想よそうされたり、実際じっさいにそうなってしまった場合ばあいには、中央ちゅうおう銀行ぎんこうは金融きんゆう引締政策せいさくに転てんずればよい。実際じっさいに、この10年ねんほどの間あいだに、インフレ目標もくひょうを採用さいようしている国くにで、ハイパーインフレになった国くにはひとつも存在そんざいしない。

 さらに、「物価ぶっかの先物さきもの」といえる物価ぶっか連動れんどう国債こくさいから得えられる「予想よそうインフレ」情報じょうほうを活用かつようすれば、インフレ率りつが高たかまる可能かのう性せいをより早はやく察知さっちすることができ、先さきを読よんだ金融きんゆう政策せいさくが行おこなえるだろう。

f.【金利きんり上昇じょうしょう論ろん】名目めいもく金利きんりが上昇じょうしょうし金融きんゆう機関きかんや日銀にちぎんのバランスシートを毀損きそんさせる、財政ざいせいが破綻はたんする

 インフレ期待きたいが生しょうじた場合ばあいに名目めいもく金利きんりが上あがるという批判ひはんがある。しかし、フィッシャー方程式ほうていしき「名目めいもく金利きんり＝実質じっしつ金利きんり＋予想よそうインフレ率りつ」において、予想よそうインフレ率りつの上昇じょうしょう分ぶんだけ名目めいもく金利きんりが上昇じょうしょうするためには完全かんぜん雇用こようでなければならず、今いまのデフレ状況じょうきょうでは直ただちにフィッシャー効果こうかは実現じつげんしない。つまり、現金げんきん需要じゅようがきわめて旺盛おうせいな流動りゅうどう性せいの罠わなの状態じょうたいであれば、現金げんきんがじゃぶじゃぶ状態じょうたいであり、インフレ期待きたいが生しょうじてもそれらの一部いちぶが債券さいけん購入こうにゅう資金しきんに回まわり、債券さいけん価格かかくの下しも支ささえになって金利きんりはなかなか上昇じょうしょうしないのだ。