賃上げの嘘！本当の給料と出世＃5人事院じんじいんの川本かわもと裕子ゆうこ総裁そうさい（左ひだり）から勧告かんこくを受うけ取とった岸田きしだ文雄ふみお首相しゅしょう（2023年ねん8月がつ7日にち、首相しゅしょう官邸かんていで） Photo:JIJI

国家こっか公務員こうむいんの初任しょにん給きゅうは2023年度ねんどから大卒だいそつ、高卒こうそつ共どもに1万まん円えん以上いじょう引ひき上あげられた。これは1990年ねん以来いらい33年ねんぶりの賃上ちんあげ水準すいじゅんだった。しかし、中堅ちゅうけん以上いじょうの職員しょくいんは新人しんじんほど給料きゅうりょうが上あがらず、月給げっきゅうのベア率りつは平均へいきん0.96％、ボーナスは0.1カ月かげつ分ぶんの引ひき上あげにとどまった。特集とくしゅう『賃上ちんあげの嘘うそ！本当ほんとうの給料きゅうりょうと出世しゅっせ』の＃5では、政府せいふが示しめしている国家こっか公務員こうむいんの年齢ねんれい別べつのモデル年収ねんしゅうと実際じっさいの手取てどり額がくの乖離かいりぶりや、公務員こうむいん人生じんせいで3回かい訪おとずれる“低てい賃金ちんぎん離職りしょく危機きき”の実態じったいを明あきらかにする。（ダイヤモンド編集へんしゅう部ぶ副ふく編集へんしゅう長ちょう　千本木せんぼんぎ啓文ひろふみ）

39歳さいで年収ねんしゅう1000万まん円えんだった官僚かんりょうが
45歳さいになっても年収ねんしゅう1000万まん円えんの憂鬱ゆううつ

　2023年度ねんどは官民かんみんの賃上ちんあげで明暗めいあんが分わかれた。国家こっか公務員こうむいんは初任しょにん給きゅうを大卒だいそつで1万まん1000円えん、高卒こうそつで1万まん2000円えん増ふやした。だが、この程度ていどの賃上ちんあげは、同どう3万まん～5万まん円えんの引ひき上あげも珍めずらしくない大だい企業きぎょうと比くらべ見劣みおとりすると言いわざるを得えない。

　人事院じんじいんによれば、定期ていき昇給しょうきゅう分ぶんも含ふくむ国家こっか公務員こうむいんの賃上ちんあげ率りつは年収ねんしゅうベースで3.3％だ。23年ねんの全国ぜんこく消費しょうひ者しゃ物価ぶっか指数しすうが前年ぜんねん比ひ3.1％の上昇じょうしょうだったことを踏ふまえれば、実質じっしつ賃金ちんぎんの上昇じょうしょうは十分じゅうぶんとはいえない。

　中央ちゅうおう省庁しょうちょうでは人材じんざい流出りゅうしゅつが止とまらず、危機きき感かんが高たかまっている。下図したずは、国土こくど交通省こうつうしょうに勤つとめる中堅ちゅうけん若手わかて職員しょくいんの自己じこ都合つごう退職たいしょく者しゃが急増きゅうぞうしたことを示しめしている。

図表：国交省本省の40歳未満の自己都合退職者数
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　国交こっこう省しょうはダム建設けんせつなど地方ちほうの現場げんばを持もち、いつ本省ほんしょう勤務きんむから地方ちほう転勤てんきんをい渡いわたされるか分わからない。同省どうしょう関係かんけい者しゃは「新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだい時じに在宅ざいたく勤務きんむが増ふえたことで職員しょくいんの働はたらき方かたの意識いしきが変かわり、転職てんしょくに目めが向むいた」と話はなす。

　本省ほんしょう勤務きんむ者しゃの転職てんしょく先さきとして多おおいのが、コンサルティング会社かいしゃなどの民間みんかん企業きぎょうだ。地方ちほう勤務きんむ者しゃは、都道府県とどうふけん庁ちょうや政令市せいれいしに転職てんしょくすることが多おおいという。単身たんしん赴任ふにんを強しいられる転勤てんきんがなく、国交こっこう省しょうの地方ちほう勤務きんむ者しゃより給料きゅうりょうが高たかいケースが少すくなくないのだから、人材じんざいを引ひき留とめるのは難むずかしい。

　ダイヤモンド編集へんしゅう部ぶは独自どくじに「公務員こうむいんアンケート（有効ゆうこう回答かいとう数すう900人にん超ちょう）」を実施じっし。国家こっか公務員こうむいんの年収ねんしゅうと年齢ねんれいのデータを分析ぶんせきした。すると、人事院じんじいんが開示かいじしているモデル年収ねんしゅうからは読よみ取とれない、国家こっか公務員こうむいんの厳きびしい懐ふところ事情じじょうが判明はんめいした。

　次じページでは、国家こっか公務員こうむいんの年齢ねんれい別べつの年収ねんしゅうと実際じっさいの手取てどり額がく（内閣ないかく府ふ、デジタル庁ちょう、総務そうむ省しょう、財務省ざいむしょう、厚生こうせい労働省ろうどうしょう、農水省のうすいしょう、国交こっこう省しょう）や、公務員こうむいん人生じんせいで3回かい訪おとずれる“低てい賃金ちんぎん離職りしょく危機きき”の実態じったいを明あきらかにする。