マスクをしない生活が戻ってきた今、気になるのは鏡に映る自分の「老け顔」。自分自身、あるいは周囲の人を見ていて「老けたな」と気づくきっかけになるのは、顔の「シミ、シワ、たるみ」の3つだろう。見た目年齢に大きな影響をもたらすこれら3つの肌の老化には、紫外線を慢性的に浴び続けることによる「光老化」が深く関わっている。紫外線がどのように老化を進めるのか、シミ、シワ、たるみのメカニズムと有効な対処法は何かについて、第1回に引き続き近畿大学名誉教授の川田暁氏に聞いていく。
『男の「老け顔」を解決!』 特集の内容
気になるシミ、シワ、たるみには、紫外線対策に加えて、美白化粧品、抗シワ化粧品なども活用しながら対策していこう。(写真:naka/stock.adobe.com)
紫外線による「光老化」は男の老け見えを悪化させる
年代を重ねるとともに増えてくる、シミ、シワ、たるみといった見た目の老化。「刻まれたシワは経験の証し」と思うことができればよいが、「なんとなくくたびれた印象」になってしまうのはもったいない。
人の見た目を形作る皮膚や、その下にある筋肉や骨、筋膜といった組織は、他の臓器や組織と同様に年齢とともに老化してくる。一般的には、30代ごろからシミや目尻のシワができはじめ、40代では目尻だけでなく小鼻から口元にかけてほうれい線が目立つように。さらに50~60代になると、顔のシワは深くなり、シミも濃く、大きいものができて目立ってくる。たるみも徐々に現れ、目尻や頬の皮膚が下垂して、キリッとした見た目ではなくなってくる。このままシニア期にかけて、どんどん老化が進んでいくのかと思うと、憂鬱になる人もいるかもしれない。
しかし、「今からの対策で老化の進行を抑えることは十分に可能です。なぜなら、見た目の老化の主な原因となるのが、光老化だからです」と、紫外線が肌に引き起こす「光老化」や美容皮膚医療について長年研究してきた近畿大学名誉教授の川田暁氏は言う。
光老化とは、長期間、日光に繰り返し当たることによって生じる慢性の皮膚障害のこと。加齢に伴い体の内側の因子から起こる皮膚の老化(内因性老化)とは異なり、光老化は紫外線が原因で起こる皮膚の老化で、見た目の変化がより強く出て、皮膚がんの要因にもなることが特徴だ。
本特集の第1回で紹介したように、内因性老化では、お腹や背中にちりめんジワのような浅いシワが増える。一方、光老化では、紫外線にさらされる顔や手の甲、首元などに、深いシワやシミをはじめとした以下のような症状が出る。
光老化の特徴的な症状
- 皮膚が黄色から褐色調になる
- シミ、深いシワが増える
- 弾力性を失い、たるむ
- 光沢を失う
- 分厚く硬くなりゴワゴワする
- 脂漏性角化症(老人性イボ)ができる
- 皮膚がんを引き起こす要因になる
図1 光老化では、自然な老化よりもシワが深く、皮膚がごわつく
左は80歳男性のうなじ部分の通常の老化で(内因性老化)、中央は光老化を起こした86歳男性。シワが深く、皮膚が分厚く、硬くなっているのが分かる。右の87歳女性は日常的に紫外線を浴び続けた結果、多数のシミ、深いシワ、たるみも見られる。(写真提供:川田暁氏/右の写真は 川田暁. Geriat Med, 2016; 54: 961-963. より引用)
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女性は日ごろからファンデーションや日焼け止めを使い、紫外線をある程度防御している人が多いが、男性は顔を無防備に日光にさらしがち。そうした人たちは紫外線によるダメージが蓄積され、「老け顔」が進行しやすい。そこで今回は、男の老け顔の3大要因である、シミ、シワ、たるみの成り立ちをわかりやすく解説するとともに、シミやシワへの効果をうたった市販の化粧品など、有効な対処法についても詳しく見ていこう。