ゲンタマイシン(英: gentamicin, gentamycin)は、アミノグリコシド(アミノ配糖体)系抗菌薬である。
英語名称は、正式にはgentamicinという。同じアミノグリコシドのtobramycin、streptomycin、kanamycinとは意図的に異なる綴りが与えられている。これは、これらのStreptomycesに由来する薬物に-mycinの名を与えたのに対し、Micromonospora由来のゲンタマイシンには、-micinの名を与えたからである。
また、ゲンタマイシンは熱に安定な抗生物質の一つであり、高温高圧滅菌後においても活性を持つ。そのため、ある種の微生物培地の調製に使われる。
ゲンタマイシンは殺菌性の抗生物質で、細菌のリボソーム 30S サブユニットに結合して、蛋白合成を阻害する。
他のアミノグリコシド系抗生物質と同様経口投与では無効である。これは、小腸にて吸収された後、門脈を経由して肝臓に到達し、不活化されるためである。そのため、静脈注射、筋肉注射、局所投与。および、軟膏による皮膚への塗布にて利用される。
すべてのアミノグリコシド系抗生物質は耳に対し毒性を持つ。前庭神経に対する毒性は平衡感覚障害をきたし、一方蝸牛神経に対する障害は聴覚障害をおこし、まれに聾にいたる。アミノグリコシドの中で、ゲンタマイシンの聴覚毒性は最も強い。聴覚障害は、薬剤中止によってもあまり改善しない。
ゲンタマイシンは高い腎毒性をもち、場合によっては急性腎不全に至ることがある。腎障害は、薬剤中止によって改善することが多い。腎毒性の発症頻度は、ゲンタマイシンの血中最低濃度(トラフ)と相関する。腎障害を予防するため、体重により投与量を調節する。欧米では、ゲンタマイシンの投与量の計算式があるが、日本の保険医療の範囲内でこれに従うことは、よほど体が小さくない限り難しい(投与量が上限をこえてしまう[要出典])。治療中は血清中のゲンタマイシン濃度を監視する。