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ガンマ線 - Wikipedia

ガンマ線がんません(ガンマせん、γ線がんませんえい: gamma ray)は、放射線ほうしゃせん一種いっしゅ。その実体じったいは、波長はちょうがおよそ 10 pm よりもみじか電磁波でんじはである。

ガンマ線がんません
原子核げんしかく物理ぶつりがく


放射ほうしゃせい崩壊ほうかい
核分裂かくぶんれつ反応はんのう
原子核げんしかく融合ゆうごう

概要がいよう

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波長はちょう領域りょういき(エネルギー領域りょういき)の一部いちぶXせんかさなっていて、波長はちょうによる境界きょうかいせんはない。10 nmから 1または10 pmまでをXせん、これよりみじか波長はちょうたかいエネルギー領域りょういき)をガンマ線がんませんとすることもあるが、明確めいかく基準きじゅんい。 両者りょうしゃ区別くべつ波長はちょう範囲はんいではなく発生はっせい機構きこうによっていて、ガンマ線がんません原子核げんしかくエネルギーじゅん遷移せんい不安定ふあんてい状態じょうたいから、エネルギーを放出ほうしゅつして安定あんてい)する現象げんしょう起源きげんとし、Xせん軌道きどう電子でんし遷移せんい特性とくせいXせん)や、自由じゆう電子でんし運動うんどうエネルギー制動せいどうXせん)を起源きげんとし、スペクトルにおいても制動せいどうXせん有無うむ見分みわけられる。

1.022 MeV以上いじょうのエネルギーをガンマ線がんません消滅しょうめつするとき、電子でんし陽電子ようでんしたい生成せいせいされることがある。ぎゃくに、電子でんし陽電子ようでんしたい消滅しょうめつするさいには、0.511 MeVのガンマ線がんません2ほん反対はんたい方向ほうこう放出ほうしゅつされる。 ガンマ線がんません電磁波でんじはなかもっともエネルギーがおおきい領域りょういき相当そうとうする。原理げんりじょう人工じんこうてきにはつくれないが、加速器かそくきこうエネルギー電子でんしせんからてき生成せいせいしたこうエネルギーのXせんガンマ線がんませんとしてあつかわれる。これまでにられた電子でんしせんは200 GeVにたっし、計画けいかくされている国際こくさいリニアコライダーではTeVにおよぶが、ガンマ線がんません天文学てんもんがく発展はってんにより、宇宙うちゅうにはこれらをはるかに上回うわまわるものが存在そんざいするとかんがえられるようになった[1]

発見はっけん

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最初さいしょ発見はっけんされたガンマ線がんませんげんは「ガンマ崩壊ほうかい」とばれる放射ほうしゃせい崩壊ほうかい過程かていであった。このたね崩壊ほうかいでは、励起れいきした核種かくしゅ生成せいせいされると、ほとんど瞬間しゅんかんてきガンマ線がんません放出ほうしゅつする[注釈ちゅうしゃく 1]フランス化学かがくしゃかつ物理ぶつり学者がくしゃであるポール・ヴィラールは1900ねんウランから放出ほうしゅつされる放射線ほうしゃせん研究けんきゅうしているときにガンマ線がんません発見はっけんした。ヴィラールはかれ見出みいだした放射線ほうしゃせんが、それまでにラジウムから放出ほうしゅつされる放射線ほうしゃせんとして記述きじゅつされていたもの (これにはアンリ・ベクレルによって1896ねんはじめて「放射能ほうしゃのう」として言及げんきゅうされたタ線たせんやラザフォードによって1899ねん発見はっけんされたほとんど透過とうかしない種類しゅるい放射線ほうしゃせんであるアルファ線あるふぁせんふくまれる)より強力きょうりょくであることにづいた。しかしながら、ヴィラールはこれを根本こんぽんてきことなる種類しゅるいとして名前なまえけようとはかんがえなかった[2][3]。その1903ねんに、アーネスト・ラザフォードがヴィラールの放射線ほうしゃせんはそれまでに名付なづけられていた放射線ほうしゃせんとは根本こんぽんてきことなるものであると認知にんちし、1899ねんにラザフォードが区別くべつしていたアルファ線あるふぁせんタ線たせんからの類推るいすいでヴィラールの放射線ほうしゃせんを「ガンマ線がんません」と名付なづけた[4]放射ほうしゃせい元素げんそによって放出ほうしゅつされる放射線ほうしゃせんはギリシア文字もじ使つかって様々さまざま物質ぶっしつ透過とうかするちからじゅん名付なづけられた(アルファ線あるふぁせんもっと透過とうかしにくく、いでタ線たせん、そしてガンマ線がんませんもっと透過とうかしやすい)。ラザフォードはもうひとつのガンマ線がんませんアルファ線あるふぁせんタ線たせんことなる性質せいしつとして、磁場じばによってげられない(すくなくとも簡単かんたんにはげられない。カー効果こうかポッケルス効果こうかおう用例ようれいとしてひかり磁気じきディスク参照さんしょう。)ことにも注目ちゅうもくした。

ガンマ線がんません最初さいしょアルファ線あるふぁせんタ線たせんおなじように質量しつりょう粒子りゅうしかんがえられていた。ラザフォードははじめはそれが非常ひじょうはやいベータ粒子りゅうしであるとしんじていたが、磁場じばげられないことから電荷でんかたないことがしめされた[5]。1914ねんガンマ線がんません水晶すいしょう表面ひょうめん反射はんしゃされることが観測かんそくされ、電磁でんじ放射線ほうしゃせんであることが証明しょうめいされた[5]。ラザフォードとかれ同僚どうりょうであるエドワード・アンドレードはラジウムからガンマ線がんません波長はちょう測定そくていし、ガンマ線がんませんはXせんているが、よりみじか波長はちょうと(それゆえ)たか周波数しゅうはすうつことを発見はっけんした(※ただしほん記事きじ前述ぜんじゅつとおり、ガンマ線がんませんとXせん波長はちょうにより区別くべつしないこともある)。やがてこれによって光子こうしあたりよりおおくのエネルギーをっていることが認知にんちされた。そしてガンマ崩壊ほうかい通常つうじょうガンマ光子こうし放出ほうしゅつすると理解りかいされた。

ガンマ線がんませんげん

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放射ほうしゃせい崩壊ほうかい

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放射ほうしゃせい核種かくしゅ崩壊ほうかいして質量しつりょう陽子ようし中性子ちゅうせいし比率ひりつわっても、その原子核げんしかくには過剰かじょうなエネルギーが残存ざんそんしている場合ばあいがある。このとき、残存ざんそんしているエネルギーをガンマ線がんませんとして放出ほうしゅつすることで原子核げんしかく安定あんていかう。この現象げんしょうガンマ崩壊ほうかいぶ。放出ほうしゅつするガンマ線がんませんのエネルギー領域りょういき核種かくしゅによって様々さまざまである。核種かくしゅによっては単一たんいつ領域りょういきガンマ線がんませんしかさないものもあるが、一般いっぱんてきには複数ふくすう領域りょういきガンマ線がんませんす。おな元素げんそでも、同位どういたいによって現象げんしょうしたれいのようにことなる。

  • 81Kr この核種かくしゅ275.988 keV の1領域りょういきのみ放出ほうしゅつ
  • 88Kr この核種かくしゅ最低さいてい 27.513 keV最高さいこう keV の88領域りょういき放出ほうしゅつ
    • 割合わりあいおおじゅんから3しゅげると、2392.11 keV(34.6 %)、196.301 keV (25.98 %)、2195.842 keV (13.18 %) である。

雷雲らいうん

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理化学研究所りかがくけんきゅうしょによれば、冬期とうき日本にっぽん本州ほんしゅう日本海にほんかい沿岸えんがん地域ちいきにおいて雷雲らいうん活動かつどうともな自然しぜん放射線ほうしゃせんえる現象げんしょう調査ちょうさしていたところ、雷雲らいうんから10 MeV(10−9 mSv)のガンマ線がんませんを40秒間びょうかん観測かんそくし、雷雲らいうん粒子りゅうし加速器かそくきはたらきをしていることがかった。なお、雷雲らいうんからのガンマ線がんませんりょうは1かい胸部きょうぶXせんびる放射線ほうしゃせんりょうの2おくぶんの1程度ていど計算けいさんされている[6]かみなりひかりかく反応はんのうのトリガーになり[7]

天体てんたい

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ガンマ線がんません放射ほうしゃする天体てんたいには超新星ちょうしんせい残骸ざんがいパルサー活動かつどう銀河ぎんがかくひとしがある。また、発生はっせい機構きこう解明かいめいであるがガンマ線がんませんバースト現象げんしょうこす天体てんたい発見はっけんされている。

放射線ほうしゃせんとの比較ひかく

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ヘリウム4の原子核げんしかくであるアルファ粒子りゅうしいちまいかみすら通過つうかできず、タ線たせん実態じったいである電子でんしでは1cmのプラスチックばん十分じゅうぶん遮蔽しゃへいできるが、電磁波でんじはであるガンマ線がんませんでは10cmのなまりばん必要ひつようとなる。
  • アルファ粒子りゅうしベータ粒子りゅうしくらべると透過とうか能力のうりょくたかいが、電離でんり作用さようよわい。
  • ガンマ線がんません遮蔽しゃへいには、比重ひじゅうおも物質ぶっしつなまりてつコンクリートなど)が使つかわれる。一般いっぱんによく利用りようされるなまり(11.3 g/cm3)では、10 cmあつさでやく1/100 – 1/1000に減衰げんすいされる。ガンマ線がんませんほどながうえ電荷でんかたないので電磁気でんじきりょく使つかって方向ほうこうえられないため、ガンマ線がんませんからの防護ぼうご放射線ほうしゃせん比較ひかくしてむずかしい。

一般いっぱんてきガンマ線がんませんげんとしては、コバルト放射ほうしゃせい同位どういたいであるコバルト6060Co)がもちいられる。これは安定あんてい同位どういたいのコバルト59(59Co)を原子げんしない中性子ちゅうせいしせんさらこと放射ほうしゃにより生成せいせいされ、医薬品いやくひん医療いりょう廃棄はいきぶつ食品しょくひんなどのガンマ線がんません滅菌めっきん工業こうぎょうてきXせん写真しゃしん溶接ようせつXせん写真しゃしん)、脳腫瘍のうしゅよう除去じょきょなどのガンマナイフ使つかわれている。

健康けんこう影響えいきょう

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放射線ほうしゃせんによる影響えいきょうには、閾値線量せんりょう以上いじょう発生はっせいする確定かくていてき影響えいきょうとそれ以下いか線量せんりょうでも発生はっせいするかくりつてき影響えいきょうがある。 てい線量せんりょう被曝ひばく影響えいきょう定量ていりょうむずかしく、明確めいかくになっていない。2003ねん米国べいこくアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくエネルギえねるぎしょうてい線量せんりょう放射線ほうしゃせん研究けんきゅうプログラムによる支援しえんとうけて[8]米国べいこく科学かがくアカデミー紀要きよう(PNAS)に発表はっぴょうされた論文ろんぶんによれば、疫学えきがくてきデータによるひとがんリスクの増加ぞうか十分じゅうぶん証拠しょうこ存在そんざいするエックス線えっくすせんガンマ線がんません被曝ひばく線量せんりょう最低さいていは、急性きゅうせい被曝ひばくでは、10–50 mSv長期ちょうき被曝ひばくでは50–100 mSvである[9]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ かく異性いせいたい遷移せんいでは測定そくてい可能かのうではるかになが半減はんげん抑制よくせいされたガンマ崩壊ほうかいこりうることが現在げんざいではわかっている。

出典しゅってん

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  1. ^ こうエネルギー素粒子そりゅうし宇宙うちゅう物理ぶつりがくいど 高エネルギこうえねるぎ加速器研究機構かそくきけんきゅうきこう
  2. ^ P. Villard (1900) "Sur la réflexion et la réfraction des rayons cathodiques et des rayons déviables du radium", Comptes rendus, vol. 130, pages 1010–1012. See also: P. Villard (1900) "Sur le rayonnement du radium", Comptes rendus, vol. 130, pages 1178–1179.
  3. ^ L'Annunziata, Michael F. (2007). Radioactivity: introduction and history. Amsterdam, Netherlands: Elsevier BV. pp. 55–58. ISBN 978-0-444-52715-8 
  4. ^ Rutherford named γがんま rays on page 177 of: E. Rutherford (1903) "The magnetic and electric deviation of the easily absorbed rays from radium", Philosophical Magazine, Series 6, vol. 5, no. 26, pages 177–187.
  5. ^ a b Rays and Particles”. Galileo.phys.virginia.edu. 2013ねん8がつ27にち閲覧えつらん
  6. ^ 日本海にほんかいがわふゆ雷雲らいうんが40秒間びょうかん放射ほうしゃした10 MeVガンマ線がんませんはつ観測かんそく -ふゆ雷雲らいうん天然てんねん粒子りゅうし加速器かそくきである証拠しょうこをつかむ- 独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん 理化学研究所りかがくけんきゅうしょ
  7. ^ Photonuclear reactions triggered by lightning discharge” (英語えいご). nature. 2021ねん2がつ23にち閲覧えつらん
  8. ^ David J. Brenner et al. (2003). “Cancer risks attributable to low doses of ionizing radiation: Assessing what we really know”. PNAS 100 (24): 13761–13766. doi:10.1073/pnas.2235592100. http://www.pnas.org/content/100/24/13761.full. "This work was supported in part by the U.S. Department of Energy Low-Dose Radiation Research Program." 
  9. ^ 翻訳ほんやく調しらべあさ佐志さし, 翻訳ほんやく論文ろんぶん】「てい線量せんりょうばくによるがんリスク:わたしたちがたしかにわかっていることはなにかを評価ひょうかする」PNAS (2003), 海外かいがいがん医療いりょう情報じょうほうリファレンス”, 一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん サイエンス・メディア・センター, http://smc-japan.org/?p=2037 2011ねん8がつ26にち閲覧えつらん 

関連かんれん項目こうもく

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