シャワー

シャワー（英えい: Shower）とは、水みずや湯ゆなどを幅広はばひろく撒まく、また身体しんたいに浴あびるために、この幅広はばひろく水みずをまくための器具きぐ（シャワーヘッド、蓮はちす口こう）を使用しようして噴出ふんしゅつさせ降下こうかさせるもの、およびこれらを組くみ込こんだ装置そうちを利用りようする行為こういである。

水みずを撒まくシャワーヘッド

概要がいよう

シャワーは、構造こうぞうとしてパスカルの原理げんりに基もとづいて、容器ようきに開あけられた複数ふくすうの同おなじ大おおきさの穴あなから、同おなじ圧力あつりょくがかけられた流体りゅうたいが、同どう程度ていどの量りょうに分散ぶんさんされて噴出ふんしゅつするように機能きのうする装置そうちである。余程よほど極端きょくたんな容器ようきの形状けいじょうを除のぞけば、流体りゅうたいは各々おのおのの穴あなから同どう程度ていどの勢いきおいで噴出ふんしゅつする。

人間にんげんが身体しんたいを洗あらうためのものでは、浴室よくしつ（バスルーム）の中なかの一いち設備せつびとして設置せっちされるほか、シャワー設備せつび専用せんようの部屋へや（シャワールーム、シャワーブース、シャワーボックス等とう）が設もうけられる場合ばあいもある。浴槽よくそうによる場合ばあいを浴槽よくそう入浴にゅうよく、シャワーによる場合ばあいをシャワー入浴にゅうよくという。

節水せっすいの効果こうかでは、独身どくしんの場合ばあいにおいて一人ひとりだけが浴槽よくそうに湯ゆをためて入浴にゅうよくするよりも、シャワーを使つかって体からだの表面ひょうめんを洗あらうほうが節水せっすい効果こうかは高たかい（浴槽よくそう換算かんさんで約やく半分はんぶん）。やや目め詰づまりしやすいものの、ノズルの穴あなをさらに細ほそくして霧きり状じょうの湯ゆを出だしたり円周えんしゅう状じょうにノズルの穴あなを配置はいちした節水せっすいシャワーでは、更さらにこの節水せっすい効果こうかは高たかい。ただし家族かぞくが複数ふくすういる家庭かていでは、その各々おのおのがシャワーを使つかうと、逆ぎゃくに大量たいりょうの水みずを必要ひつようとする。このほか、付加ふか価値かち的てきに機能きのう性せいを重視じゅうしした入浴にゅうよく用ようシャワーでは、水みずの流ながれに変化へんかをつけ、マッサージの機能きのうを付与ふよした製品せいひんも見みられる。

構造こうぞう

各部かくぶの機能きのう

シャワーは流水りゅうすいの量りょうや温度おんどを調節ちょうせつする弁べん機構きこう部ぶ、自由じゆうに曲まがるホース部ぶ（ヘッド部ぶが天井てんじょうや壁かべに固定こていされるためホースがないものもある）、手てに持もちあるいは壁かべに固定こていされて散水さんすいを行おこなうヘッド部ぶにより成なり立たつ。

弁べん機構きこう部ぶ

浴室よくしつなどで一般いっぱんに使つかわれるシャワーでは、湯ゆと水みずを適温てきおんに調和ちょうわする弁べん機構きこうが必要ひつようとなる。従来じゅうらいは湯ゆの流量りゅうりょう、水みずの流量りゅうりょうをそれぞれ調整ちょうせいするハンドルを備そなえた2ハンドル式しきが主おもであったが、給湯きゅうとうの温度おんど変化へんかに追従ついしょうできず、操作そうさが煩雑はんざつと言いった欠点けってんもあり、現在げんざいではサーモスタットを備そなえたサーモスタット式しき混合こんごう水すい栓せんが主流しゅりゅうとなっている。また、後述こうじゅつする緊急きんきゅうシャワーではハンドルをつかんだり視認しにんすることも出来できない場合ばあいがあることから、大型おおがたのレバーを体からだや足あしで押おしたり、大おおきな吊つり輪状りんじょうの金物かなものを引ひき下さげるだけで弁べんが開ひらくものもある。パブリック向むけの浴場よくじょう施設しせつでは節水せっすいのため、ボタンを押おすと一いち定量ていりょうの湯ゆが出でた後のち自動的じどうてきに止とめ水みずする自じ閉式へいしき水すい栓せんを採用さいようすることもある。エアシャワーではエアシャワー室しつの出入口でいりぐちを分わけ（片方かたがたが汚染おせん室しつまたはクリーンルーム）人にんが入室にゅうしつして出入でいり口ぐちが同時どうじに閉しまってから一定いってい時間じかん空気くうきを送おくった後のちに出口でぐちを開ひらくような制御せいぎょが行おこなわれる。

用途ようと

主おもに体からだを洗浄せんじょうすることを目的もくてきとして、体からだを洗あらう場所ばしょである浴室よくしつやシャワー室しつなどに設置せっちされる。

稀まれであるが、介護かいごに特とく化かした設計せっけいの住宅じゅうたくや特別とくべつ支援しえん学校がっこう（養護ようご学校がっこう）・福祉ふくし施設しせつ・老人ろうじんホームなどにおいては、排泄はいせつする場所ばしょである便所べんじょやその付近ふきんに設置せっちされることもある。この場合ばあい、排泄はいせつ時じの失禁しっきんした時ときの洗浄せんじょうに利用りようされ、シャワーブースまたはシャワーカーテンや壁かべなどで仕切しきられて設置せっちされている。また、付帯ふたい設備せつびとして洗濯せんたく機き・湯ゆ沸にえ器き・オストメイト（人工じんこう肛門こうもん）用ようの流ながし台だいが設置せっちされていることもある。

また、湯ゆではなく水みずを出だすものは、施設しせつや設備せつびを洗浄せんじょうするための機器ききとして設置せっちされ、セントラルキッチンや屠畜場とちくじょうでは、食品しょくひんを扱あつかう設備せつびを常つねに衛生えいせい的てきな状態じょうたいに保たもつために利用りようされる。

化学かがく薬品やくひんを扱あつかう施設しせつでは、有害ゆうがいな薬品やくひんを浴あびるような事故じこが起おこった際さいに直ただちに体からだを洗あらい流ながせるよう、専用せんようの室しつを設もうけず工場こうじょうや研究けんきゅう室しつの中なかに設置せっちされることもある。このような設備せつびは緊急きんきゅうシャワー（きんきゅうシャワー）と呼よばれる。

危険きけんで有害ゆうがいな微生物びせいぶつないし化学かがく物質ぶっしつを扱あつかう、あるいは放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつの粉末ふんまつが出でる場ばでは、防護ぼうご服ふく（陽ひ圧あつ式しき化学かがく防護ぼうご服ふくや放射線ほうしゃせん防護ぼうご服ふくなど）の表面ひょうめんに付着ふちゃくしたこれら危険きけん物ぶつを洗あらい流ながすためにシャワー式しきの設備せつびが設もうけられる。特とくに危険きけん度どの高たかい施設しせつでは、外部がいぶにこれらが漏もれ出ださないよう、上うえ方向ほうこうからだけではなく、左右さゆうから噴射ふんしゃされる。

クリーンルームでは、水みずではなく空気くうきが噴ふき出だすエアシャワーが設置せっちされている。これはクリーンルーム内ないに体からだ表面ひょうめんや着衣ちゃくいに付着ふちゃくした埃ほこりを持もち込こまないようにするためのものであり、上うえの除染じょせんとは中ちゅうと外がいの関係かんけいが逆ぎゃくではあるが、出入口でいりぐちでこれを浴あびることが義務付ぎむづけられているのは一緒いっしょである。また上うえからだけではなく横よこ方向ほうこうからも圧縮あっしゅく空気くうきが噴出ふんしゅつする。

歴史れきし

古代こだいギリシャには高度こうどな水道すいどう技術ぎじゅつがあり腰掛こしかけシャワー施設しせつが存在そんざいした。一方いっぽう、古代こだいローマに存在そんざいした共同きょうどう浴場よくじょうは後期こうきになると風紀ふうきを乱みだしペストなど疫病えきびょうの原因げんいんにもなっていると考かんがえられるようになり、ロろーマ帝国まていこくの衰退すいたいとキリスト教きりすときょうの拡大かくだいにより浴槽よくそう入浴にゅうよくによる全身ぜんしん浴よくは悪あくとされ、欧米おうべいでは入浴にゅうよくにたらいが使用しようされるようになった。

現代げんだい的てきなシャワーは19世紀せいき後半こうはんにフランスで発明はつめいされた。1873年ねん頃ごろ、仏ふつルーアンの刑務所けいむしょの外科医げかいFrançoi Merry Delabosが、囚人しゅうじん用ように開発かいはつしたものが現代げんだいのシャワーの始はじまりで、時間じかんと費用ひようを節約せつやくするのが目的もくてきだった。発明はつめいされたシャワーは軍隊ぐんたいの施設しせつや監獄かんごくなどで使用しようされた。初期しょきのシャワーはパイプに等間隔とうかんかくに穴あなを開あけたもので、シャワーヘッドが発明はつめいされたのは1920年代ねんだいのことである。欧米おうべいでは入浴にゅうよくにたらいが使用しようされていたが、煩わずらわしい方法ほうほうだったため、シャワーが発明はつめいされると一気いっきに普及ふきゅうした。

日本にっぽんでは1988年ねんには朝あさ早はやく起おきてシャンプーをしてから通勤つうきん、通学つうがくする「朝あさシャン」が若わかい女性じょせいに流行りゅうこうした。このためシャンプーが手軽てがるに短時間たんじかんでできるような「ハンディシャワー」という商品しょうひんが発売はつばいされた。雑誌ざっしの広告こうこく欄らんには「服ふくを着きたままシャンプーができる」というキャッチコピーを掲かかげ、セせーラらー服ふく姿すがたの女子高じょしこう生せいがシャワーを持もって微笑ほほえんでいる写真しゃしんが掲載けいさいされていた。

シャワーノズル

台所だいどころなどで食器しょっきを洗浄せんじょうする際さいに水道すいどうの蛇口じゃぐちに取とり付つける器具きぐにもシャワー状じょうの構造こうぞうを有ゆうする物ものが搭載とうさいされており「シャワーノズル」ないし「シャワーヘッド」などという。食器洗しょっきあらい機きやシャワートイレなど、洗浄せんじょう機能きのうが取とり付つけられた機器ききにも、こういったシャワーは組くみ込こまれている。

こういった構造こうぞうが利用りようされるのは、主おもに以下いかの理由りゆうによる。

• 少すくない水量すいりょうで広ひろい面積めんせきに湯水ゆみずを当あてることができる。
• 直接ちょくせつ蛇口じゃぐちから噴出ふんしゅつする湯水ゆみずでは勢いきおいが命中めいちゅう部分ぶぶん中央ちゅうおうに集中しゅうちゅうし勢いきおいがあり過すぎるが、それを軽減けいげんできる。
• 各々おのおのを細ほそいノズルから噴射ふんしゃすると、勢いきおいをつけた状態じょうたいで複数個ふくすうこ所しょを同時どうじに洗浄せんじょうできる（そしてそれらは全体ぜんたいとしてはそれほどの反動はんどうがない）。
• 細ほそい水みずの流ながれは滴しずくとなって対象たいしょうに当あたり、連続れんぞくした断続だんぞく的てき衝突しょうとつとなって、その細こまかい衝撃しょうげきが対象たいしょう表面ひょうめんの汚よごれを効果こうか的てきに取とり去さる。

関連かんれん項目こうもく

• スプリンクラー（水みずを撒まくための装置そうち）
• 蛇口じゃぐち
• 継手つぎて
• 給水きゅうすい設備せつび
• 雨あめ
• 如雨露じょうろ