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ヘッドフォン - Wikipedia

ヘッドフォンまたはヘッドホンえい: headphone(s)イヤフォンまたはイヤホンえい: earphone(s)は、再生さいせい装置そうち受信じゅしんから出力しゅつりょくされた電気でんき信号しんごうを、みみ鼓膜こまく近接きんせつした発音はつおんたいスピーカーなど)もちいて音波おんぱ聴音ちょうおん変換へんかんする電気でんき音響おんきょう変換へんかんわせた機器きき

概説がいせつ

編集へんしゅう

一般いっぱんてきにはヘッドフォン(ヘッドホン)とイヤホンにぜん世界せかい共通きょうつう明確めいかく区分くぶんがあるわけではなく、両者りょうしゃ連続れんぞくしているが、技術ぎじゅつじょう基準きじゅんでは区分くぶんもうけられている。

オーディオけいつねとして、製品せいひんごとに性能せいのう品質ひんしつ表現ひょうげんせいおおきくがある。これは、用途ようとおうじて設計せっけいえているからである。たとえば、モニターようヘッドフォンだけをとっても、「スタジオモニターよう」「マイナスワンよう」「ロケよう」それぞれにわせた製品せいひんがあり[1]、リスニングようとなると、想定そうていされるこのみにおうじて、あらゆる方式ほうしき設計せっけいがなされている。音質おんしつ傾向けいこうとして、モニターようヘッドフォンでは解像度かいぞうどたかく、フラットな周波数しゅうはすう特性とくせいち、かたよりがすくなく原音げんおん忠実ちゅうじつ傾向けいこうがあり、リスニングようヘッドフォンでは原音げんおん忠実ちゅうじつではなくなる反面はんめん完成かんせいされた音楽おんがくきやすくみみとどけるための調整ちょうせいおこなわれている[2]たか解像度かいぞうどおとや、アーティストやエンジニアがいているおときたいなどの理由りゆうで、リスニングようえてモニターようヘッドフォンをえらぶユーザーもり、実際じっさい使つかけはそれほど厳密げんみつおこなわれていない[2]

ヘッドフォン再生さいせいしょうじる空間くうかん表現ひょうげん違和感いわかん

編集へんしゅう

がたステレオスピーカーとヘッドフォンを比較ひかくすると、おと空間くうかん伝播でんぱによるクロストーク有無うむというおおきなちがいがある。ステレオスピーカー再生さいせいおんは、ひだりみぎおと空間くうかん伝播でんぱする過程かてい相互そうござりって聴取ちょうしゅされる(この現象げんしょうクロストークぶ)が、ヘッドフォンの再生さいせいおんについてはひだりみぎみみがわスピーカー配置はいちされる関係かんけいクロストークきわめてすくないため、ひだりおとみぎおとほとん完全かんぜん分離ぶんりした状態じょうたい聴取ちょうしゅされることになる。一般いっぱんてきステレオ音源おんげんおと空間くうかん伝播でんぱによるクロストークしょうじるステレオスピーカー厳密げんみつには音楽おんがくスタジオのモニタースピーカー配置はいち)を基準きじゅんとして制作せいさく[3]されているため、クロストークきわめてすくないヘッドフォンをなに工夫くふうせずに利用りようした場合ばあい基準きじゅんとはことなる再生さいせい方法ほうほうとなり、ひだりみぎおと極端きょくたん分離ぶんりした不正確ふせいかく空間くうかん表現ひょうげんかんじることになる。この違和感いわかん解消かいしょうして聴感じょう空間くうかん表現ひょうげん正確せいかくにする目的もくてきで、一般いっぱんてきステレオ音源おんげん想定そうていされているがたステレオスピーカーでの再生さいせいちかづけるために意図いとてきクロストークこすためのクロスフィード機能きのう搭載とうさいしたソフトウェア[4][5]オーディオ機器きき[6][7]存在そんざいする(有料ゆうりょう製品せいひんでは高度こうどなアルゴリズムを使用しようした製品せいひんがあるが、無料むりょう十分じゅうぶん再生さいせい品質ひんしつ担保たんぽしたWindowsソフトウェアとしてはFoobar2000におけるMeier Crossfeedコンポーネント[8]存在そんざいする)。ただし、バイノーラル録音ろくおん作品さくひん場合ばあいはじめからヘッドフォン再生さいせい最適さいてきして制作せいさくされているためクロスフィード機能きのう使用しようしないほう正確せいかく空間くうかん表現ひょうげんかんじることができる。したがって、ヘッドフォンで一般いっぱんてきなステレオ音源おんげん正確せいかく再生さいせいするためには、制作せいさく基準きじゅんとしていた再生さいせい環境かんきょうわせておと加工かこうおこなったうえ再生さいせいする必要ひつようがある。

技術ぎじゅつじょう定義ていぎ

編集へんしゅう

電子でんし情報じょうほう技術ぎじゅつ産業さんぎょう規格きかくにはつぎのような定義ていぎがある[9]。なお、電子でんし情報じょうほう技術ぎじゅつ産業さんぎょう規格きかく、および日本にっぽん産業さんぎょう規格きかく一般いっぱん財団ざいだん法人ほうじんテクニカルコミュニケーター協会きょうかい[10]では「ヘッドホン」および「イヤホン」表記ひょうきである[9][11]

イヤホン
イヤホンとは「電気でんき信号しんごう音響おんきょう信号しんごう変換へんかんする電気でんき音響おんきょう変換へんかん音響おんきょうてきみみ近接きんせつして使用しようするもの」をいう(電子でんし情報じょうほう技術ぎじゅつ産業さんぎょう規格きかくJEITA RC-8140C 3(1))[9]
ヘッドホン
ヘッドホンとは「1個いっこまたは2のイヤホンとヘッドバンドもしくはチンバンドとわせたもの」をいう(規格きかく3(2))[9]
ヘッドセット
ヘッドセットとは「装着そうちゃくしゃ音声おんせいおさむおとするマイクロホンんだヘッドホン」をいう(規格きかく3(3))[9]
イヤセット
イヤセットとは「装着そうちゃくしゃ音声おんせいおさむおとするマイクロホンをんだイヤホン」をいう(規格きかく3(4))[9]

なお、過去かこ日本にっぽんNHK規格きかくではイヤフォンとヘッドフォンの区別くべつはされず、ヘッドバンドをゆうりょうみみてる形状けいじょうのものはりょうみみあたまがたイヤフォンとされ、さらにステレオかたモノラルかたとしてけられていた[12]

技術ぎじゅつじょう分類ぶんるい

編集へんしゅう

うえの「技術ぎじゅつじょう定義ていぎ」で形状けいじょうちがいによる技術ぎじゅつてき定義ていぎ説明せつめいしたので、そのながれで当節とうせつでも、まずは形状けいじょうちがいによる分類ぶんるいから解説かいせつし、つづいて人間にんげん外耳がいじへのおとつたかたによる分類ぶんるい解説かいせつし、最後さいご核心かくしん部分ぶぶんである#変換へんかん原理げんりによる分類ぶんるいについて解説かいせつする(なお最後さいご解説かいせつする変換へんかん原理げんりちがいが音質おんしつ一番いちばん影響えいきょうしており、じつさい重要じゅうようちがいである)。

全体ぜんたい形状けいじょうによる分類ぶんるい

編集へんしゅう

みみおおがた(ヘッドバンドがた軽量けいりょうオープンエア)

編集へんしゅう

みみおおがたおおきくみみおお形状けいじょう装着そうちゃくには十分じゅうぶん空洞くうどうができるもの[9]

   
ヘッドバンドがたかつ密閉みっぺいがたれい通常つうじょうは「密閉みっぺいがたヘッドフォン」などとぶ。(オーディオテクニカ ATH-A500)
ヘッドバンドがた空洞くうどうはさほどいタイプ。
  • ヘッドバンドがた
ヘッドバンドをあたまうえせるものである。「オーバーヘッドがた」ともばれる。1970年代ねんだいまでヘッドホンの装着そうちゃくスタイルはヘッドバンドの形態けいたいかぎられていた[13]みみ密着みっちゃくし、密閉みっぺいがたではおとれしにくいものがおおい。しかし、はこぶときにかさる、髪型かみがたみだれるなどの理由りゆう敬遠けいえんされやすい。たたがたもある。
  • 軽量けいりょうオープンエア
1979ねん発売はつばいされた非常ひじょう軽量けいりょう機種きしゅ戸外こがい音楽おんがく文化ぶんかすきっかけとなった[13]

イントラコンカがた(インイヤーがた、インナーイヤーがた

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インイヤーがた

イントラコンカがたみみかぶとかい腔にはめて使用しようするもので、音響おんきょう出力しゅつりょくあな外耳がいじどうちかくになるように設計せっけいされたもの[9]みみかぶとかい腔におさまるサイズのものは1982ねん開発かいはつされインイヤーがたなどともいいにヘッドホン市場いちば大半たいはんめるほど一般いっぱんてき普及ふきゅうした[13]

スープラコンカがた

編集へんしゅう

スープラコンカがたみみかぶとかい腔の周辺しゅうへんにある隆起りゅうきせて使用しようするように設計せっけいされたもの[9]

みみがた(ネックバンドがた

編集へんしゅう
 
ネックバンドがた

みみがたみみ外側そとがわ耳朶じだせてもちいるもの[9]1997ねん発売はつばいされ通称つうしょうはネックバンドがたという[13]ソニーから1997ねん発売はつばいされた MDR-G61ではじめて採用さいよう)。通常つうじょう頭上ずじょうにあるヘッドバンドがくびうしがわ位置いちしている方式ほうしきゼンハイザーもこの方式ほうしきのヘッドフォンを販売はんばいしている。

長所ちょうしょはヘッドバンドが頭部とうぶさえないため、装着そうちゃくしても髪型かみがたくずれをにする必要ひつようがなく、帽子ぼうしをかぶることもできる。運動うんどうちゅうにも邪魔じゃまにならない。短所たんしょはヘッドフォン本体ほんたい脱落だつらくふせぐために装着そうちゃくしたとき具合ぐあいつよく、またマフラーやフードきの衣服いふく着用ちゃくようしている場合ばあいには内側うちがわからネックバンドに干渉かんしょうして邪魔じゃまになる場合ばあいがある。

みみかいがたみみがた、イヤハンガーがた、クリップがた

編集へんしゅう
 
みみがた・クリップがた

みみかいがたみみけて使用しようするように設計せっけいされたもの[9]。イヤハンガーがたともいう[13]。コードをハウジングない収納しゅうのうするモデルもあり、インナーイヤーがた比較ひかくして振動しんどうばん面積めんせきおおきくれるりに非常ひじょうにコンパクトで携帯けいたい便利べんりである。しかし耳輪みみわけるためみみかぶとかい腔に密着みっちゃくしにくく、おとれしやすい。長時間ちょうじかん使用しようするとみみかいいたみがることもある。パステルカラーのものやメッキのアクセントのはいっているものなど、ファッションせい重視じゅうしした製品せいひんおおい。

挿入そうにゅうがた(カナルがた

編集へんしゅう
 
カナルがた

挿入そうにゅうイヤホンは外耳がいじどう(ear canal)に挿入そうにゅうしてもちいるもの[9]。1999ねん発売はつばいされたみみあな挿入そうにゅうしきのものは通称つうしょうカナルインナーがた(カナルがた)という[13]。カナルインナーがた(カナルがた)は2002ねんごろから主流しゅりゅうとなった[13]

構造こうぞうじょう密閉みっぺいがたおおく、遮音しゃおん性能せいのう比較的ひかくてき良好りょうこうなため、騒音そうおんのややおおきい場所ばしょでも音楽おんがくとうたのしめる。みみうかどうかは個人こじんがあり、音質おんしつ装着そうちゃくかんなどにもおおきく影響えいきょうする。そのため外耳がいじどう挿入そうにゅう着脱ちゃくだつしき部品ぶひん(イヤーピース)となっており、おおきさのことなる複数ふくすう部品ぶひん付属ふぞくする製品せいひんおおい。外耳がいじどう挿入そうにゅうする部分ぶぶんがゴムせい摩擦まさつおおきいものは、みみからヘッドフォンがインナーイヤーがたよりけにくくなっている。外部がいぶからの遮音しゃおんせいたか反面はんめん製品せいひん個人こじんによっては、自分じぶん鼻息はないきあるいたときの振動しんどう、あるいはコードのおんなど身体しんたいおと顕著けんちょ増幅ぞうふくされてしまう欠点けってんがあり[14]、コードのおん対策たいさくがなされている製品せいひんもある。近年きんねんかくメーカーから相次あいついで販売はんばいされるようになった。また、ひとによってはくちめによるあご関節かんせつうごきにより密閉みっぺい具合ぐあいえず変動へんどうするため、しゃべりながら使つかうと音量おんりょう不快ふかいらぎがしょうじる場合ばあいがある。そのためとくにスマートフォンなどハンズフリーとうもちいる場合ばあいや、音楽おんがくきながらうた場合ばあいなど、非常ひじょうにききとりにくいケースやおといして気分きぶんわるくなる場合ばあいがある。遮音しゃおんせいたか外界がいかいおと極端きょくたんこえづらいため、自動車じどうしゃなどの接近せっきん気付きづきにくく、使用しようしゃ本人ほんにん危険きけんおとしいれる可能かのうせい指摘してきされている[15]

外耳がいじどうとの音響おんきょうてき接合せつごうほうによる分類ぶんるい

編集へんしゅう

外耳がいじどうとの音響おんきょうてき接合せつごうでは開放かいほうがた密閉みっぺいがた分類ぶんるいされる[9]。ヘッドホンの構造こうぞうぎゃくしょうおん処理しょり原理げんりてき方法ほうほうちがいからおおきく2つにけられ、それぞれのような特徴とくちょうがある。

開放かいほうがた(オープンエアー)
発音はつおん部分ぶぶん背面はいめん開放かいほうされているもの。振動しんどうばん裏側うらがわから発生はっせいする、180°位相いそう反転はんてんした音波おんぱぎゃくしょうおん)を無限むげんひろ空間くうかん拡散かくさんさせて処理しょりするタイプのものである。いわゆるスピーカーボックス(エンクロージャー)でえば、こうめん開放かいほう(ダイポール)がたである。そとおん遮断しゃだんするものは、原理げんりてきうす振動しんどうばん1まいだけであるため、そとおんこえる。一般いっぱん高音こうおんおんがこもらない反面はんめん低音ていおんはややよわい。これは低音ていおんぎゃくしょうおん高音こうおんのそれとくらべてよく回折かいせつするため、表側おもてがわによりおおまわみ、低音ていおんせいしょうおんをよりつよしてしまうためである。はっきりとしたつよ低音ていおんるためには、イヤパッドなど発音はつおん部分ぶぶん表裏ひょうりける部分ぶぶん遮音しゃおんせいとくたかめる必要ひつようがある。また、おとれがおおきいのも難点なんてんである。
密閉みっぺいがた(クローズド)
発音はつおん部分ぶぶん背面はいめん密閉みっぺいしたもの。振動しんどうばん裏側うらがわから発生はっせいするぎゃくしょうおん内部ないぶ減衰げんすい消滅しょうめつさせるタイプのものである。いわゆるスピーカーボックス(エンクロージャー)でえば、密閉みっぺいがたもしくはバスレフがたである。スピーカーとはちがい、ヘッドフォンでは、背面はいめん容積ようせき空間くうかん)を十分じゅうぶんとすることができないことから、発音はつおん非力ひりき場合ばあい振動しんどうばんうごきが制限せいげんされ、低音ていおんすくないまったおと(こもったおと)になりやすい。このことからダイナミックがたでは、発音はつおん強力きょうりょくなマグネットを使用しようする、あるいはバスレフがたとして対応たいおうする。遮音しゃおんせいたかいため、外部がいぶおと遮断しゃだんすることを重視じゅうしする場合ばあいにはこのんでもちいられる。ヘッドフォン自体じたいおともよく遮断しゃだんすることから、公共こうきょう利用りようするヘッドホンにもちいられるほか、(マイクロフォンとヘッドフォンが接近せっきんするため不要ふようなモニタおんおさむおとされがちな)ヴォーカル録音ろくおんとうのモニタにも愛用あいようされる。

聴力ちょうりょく測定そくていようヘッドフォンのように理想りそうてきつくれば、開放かいほうがた密閉みっぺいがたも「おなおん」になる。一般いっぱんわれる「おと傾向けいこう」は、意図いとてきつくられているものである。たとえばゼンハイザー開放かいほうがたヘッドホンは低音ていおん強調きょうちょうされ、オーディオテクニカ密閉みっぺいがたヘッドホンは高音こうおん強調きょうちょうされて傾向けいこうがあるが、これはかくメーカーのかんがえのちがい、すなわちかくメーカーの対象たいしょうとしているカスタマーニーズがそれぞれちがうためであることがほとんどである。コンピュータシミュレーションがヘッドフォン設計せっけいにもれられるようになって以降いこうおと傾向けいこうはカスタマーニーズにわせてこまかく調整ちょうせいされるようになっている。また、かくメーカーの代表だいひょうてき機種きしゅおとだけがげられ、「メーカーのクセ」とおもわれていることがおおいが、実際じっさいには、おなじメーカーのものでも、機種きしゅによっておとまったちがうことがほとんどで、おおくの場合ばあいじつ聴しないとおと傾向けいこうはわからない。また遮音しゃおんせいおとれについても密閉みっぺいがただからたかいとはかならずしもえない。これはそのたとえば「はん開放かいほうがた」のものがあるが、分類ぶんるいじょう密閉みっぺいがたとされているといったことがあるためである。

変換へんかん原理げんりによる分類ぶんるい

編集へんしゅう

変換へんかん原理げんりでは、あつでんかたち電磁でんじかたちしずかでんかたちなどに分類ぶんるいされる[9]

ダイナミックがた

編集へんしゅう
 
beyerdynamic T1のダイナミックドライバーユニット

ダイナミックスピーカーおな構造こうぞうで、磁石じしゃくつく磁界じかいなか音声おんせい電流でんりゅうながれるコイル(ボイスコイル、voice coil)にローレンツつとむ発生はっせいし、コイルにけた振動しんどうばん振動しんどうさせる方式ほうしきである。ダイナミックがたは、電流でんりゅうたいするローレンツりょく線形せんけいにする設計せっけい可能かのうであり、電流でんりゅうのときコイルにちから発生はっせいせず振動しんどうけい支持しじやわらかくできるため、ていいびつひろ再生さいせい周波数しゅうはすう帯域たいいき両立りょうりつできる非常ひじょうすぐれた方式ほうしきである。原理げんり構造こうぞうじょう安価あんか大量たいりょう生産せいさんきでもあることから、現在げんざいではヘッドフォンのもっと一般いっぱんてき方式ほうしきとなっている[16]

世界せかいはつのダイナミックがたヘッドフォンは1937ねんドイツのEugen Beyerがつくった。現在げんざいでもbeyerdynamicしゃ主要しゅようメーカーのひとつである。

インピーダンスは16〜70Ωおーむ程度ていどのものが一般いっぱんてきであるが、業務ぎょうむようのヘッドフォンでは300Ωおーむや600Ωおーむなども存在そんざいする[17][18]。メーカーの設計せっけい思想しそうもあり明確めいかく基準きじゅんいが、おおむね32Ωおーむえるものこうインピーダンスとされ[19]、ヘッドフォンアンプのなかにはスイッチをえることでヘッドフォンのインピーダンスにわせて内蔵ないぞうしたアッテネーター接続せつぞくする製品せいひん存在そんざいする。

インピーダンスがたかいほど、機器ききえずにおなじボリュームでも、実際じっさい出力しゅつりょくされる音量おんりょうちいさくなっていく傾向けいこうにある[18]。そのためポータブルけのものは64Ωおーむ程度ていどまでのていインピーダンスのものが一般いっぱんてきである[20]こうインピーダンスのヘッドフォンはアンプやケーブルなど接続せつぞくした機器ききによる外的がいてき影響えいきょうけにくいものの[19]てい出力しゅつりょくのポータブル機器ききでは駆動くどうりょく不足ふそくによりヘッドフォン本来ほんらい能力のうりょく発揮はっきできない場合ばあいがある[21]。なお、ヘッドフォンのインピーダンスはIECの規定きていで、1(kHz)の交流こうりゅう印加いんかのものをしめすものとされており、典型てんけいてきなダイナミックがたであれば、R+jXであるから、これよりもひく周波数しゅうはすうではひくく(たとえば直流ちょくりゅうくわえた場合ばあいにはじゅん抵抗ていこう成分せいぶんRのみになる)たか周波数しゅうはすうではたかくなる。

あつでんがた

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うすあつでんからだを2まい金属きんぞくばんはさみ、これに音声おんせい電圧でんあつくわえることによってあつでん効果こうかピエゾ効果こうか)による振動しんどう発生はっせいさせる方式ほうしきである。インピーダンスがたかぎて通常つうじょうのアンプとはわないため、動作どうささせるためには専用せんよう機器きき使つか必要ひつようがある。ひずみ再生さいせい周波数しゅうはすう帯域たいいきてんでダイナミックがたおとるため、2021ねん現在げんざい生産せいさんしているメーカーはラディウス(ドブルベ)のみである。あつでんたいロッシェルしおであればクリスタルがたあつでんセラミックであればセラミックがたとなる。

マグネチックがた

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磁石じしゃくけた固定こていコイルに電流でんりゅうながし、磁石じしゃく吸引きゅういんりょく変化へんかさせて振動しんどうばんねる鉄片てっぺん振動しんどうさせる方式ほうしき吸引きゅういんりょく非線形ひせんけいなためひずみやすく、鉄片てっぺん磁石じしゃく吸着きゅうちゃくしてしまわないように振動しんどうけいかた支持しじする必要ひつようがあるため、周波数しゅうはすう帯域たいいきせまくなるという原理げんりじょう欠点けってんがある。

もっと簡便かんべんであり、音質おんしつ音声おんせい情報じょうほう認識にんしきする最低限さいていげんのものであるためヘッドフォンとは区別くべつされることもおおい。一般いっぱん片耳かたみみモノラルイヤホンであり、その場合ばあいまるみをびた開口かいこう外耳がいじどうすうミリ挿入そうにゅうする。外耳がいじどう入口いりくち支持しじするだけのため脱落だつらくしやすい。

バランスド・アーマチュアがた

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バランスド・アーマチュアがた原理げんり
コイルでアーマチュア(電機でんき)を振動しんどうさせ、ドライブロッドを振動しんどうばん振動しんどうさせる
 
JH Audioせいバランスド・アーマチュアがたIEMの上級じょうきゅうモデル
こういきよう4つ、ちゅういきよう4つ、ていいきよう4つの(片側かたがわ合計ごうけい12ドライバーを搭載とうさいする。

マグネチックがたとほぼおなじだが、マグネチックがた鉄片てっぺん直接ちょくせつ振動しんどうばんとしてもちいるのにたいして、こちらは鉄片てっぺん(アーマチュア、電機でんき)の振動しんどうほそぼう(ドライブロッド)で振動しんどうばんつたえて振動しんどうさせるてんことなる。ダイナミックスピーカーが普及ふきゅうするまでテレビやラジオの個別こべつ聴取ちょうしゅのために使用しようされてきたマグネチックスピーカーとよく構造こうぞう[22]となっている。

ダイナミックがた比較ひかくすると、吸引きゅういんりょく非線形ひせんけいなためひずみやすく、鉄片てっぺん磁石じしゃく吸着きゅうちゃくしてしまわないように振動しんどうけいかた支持しじする必要ひつようがあるため、周波数しゅうはすう帯域たいいきせまくなるという原理げんりじょう欠点けってんがある。しかし、ダイナミックがたより小型こがた容易よういなことから、音質おんしつよりも小型こがた要求ようきゅうされる外耳がいじどう挿入そうにゅうがた補聴器ほちょうきひとしによくもちいられている。

インイヤーモニター高級こうきゅうタイプでは、ていいきようちゅういきようこういきようなど帯域たいいきごとに専用せんようドライバーにけて、周波数しゅうはすう帯域たいいきせまいなどの原理げんりじょう欠点けってんをある程度ていど改善かいぜんした製品せいひん開発かいはつされている。

しずかでんがた

編集へんしゅう
 
スタックスせいのイヤースピーカーの廉価れんかモデル。右側みぎがわはこ駆動くどうようのアンプ

コンデンサがたまたはエレクトロスタティックがたとも[23]きょく(ステーター)のごく近傍きんぼううす導体どうたいまく振動しんどうまく)をおく。振動しんどうまく直流ちょくりゅう電圧でんあつバイアス電圧でんあつ)をかけ、きょく音声おんせい交流こうりゅう電圧でんあつをかけるとしずか電力でんりょく変化へんかによって振動しんどうまく振動しんどうする。通常つうじょうきょくを2まい用意よういし、そのあいだ振動しんどうまくく(プッシュプル方式ほうしき)。きょくには空気くうき流通りゅうつうさせるあなをあける。電圧でんあつたいして線形せんけいせい電力でんりょく振動しんどうまく全面ぜんめんにほぼ均一きんいつ発生はっせいするため、ていいびつでしかも周波数しゅうはすう特性とくせい有害ゆうがい分割ぶんかつ振動しんどうこりにくいという特長とくちょうがある。せいでんがたたか電圧でんあつ必要ひつようとし、抵抗ていこう負荷ふかではないため専用せんようのアンプが必要ひつようである。

最初さいしょ製品せいひんしたスタックスは、せいでんがたヘッドフォンと専用せんようヘッドフォンアンプの製造せいぞうとくした企業きぎょうである(同社どうしゃではイヤースピーカー表記ひょうき[23]

クリスタルがた

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そもそもは、ロッシェルしおぎゃくあつでん効果こうか利用りようしたものである。ロッシェルしおせいあつでん効果こうかのある物質ぶっしつであり、クリスタルイヤホンはそのままでクリスタルマイクにもなる。ロッシェルしお電場でんじょうにより伸縮しんしゅくする。このことからたか入力にゅうりょくインピーダンスとし、微弱びじゃく電力でんりょくおと発生はっせいさせることができるため、初期しょき鉱石こうせきラジオなどでは必須ひっすのイヤホンであった。近年きんねんまで学習がくしゅう教材きょうざいようなどとして製造せいぞうされていたが、ロッシェルしおには潮解ちょうかいせいがあり、耐久たいきゅうせいなんがあることから、近年きんねんは「クリスタル(イヤホン)」とうたっていてもセラミックがたとされているものがほとんどである。2021ねん現在げんざい、ロッシェルしおもちいたイヤホン、マイクを製造せいぞうしているメーカーはない。

音響おんきょう機器ききとの接続せつぞく

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有線ゆうせん方式ほうしき

編集へんしゅう

ヘッドフォンは、通常つうじょうフォーンプラグ(とフォーンジャック)(コネクタの一種いっしゅ)をもちいて音響おんきょう機器きき接続せつぞくできるようになっている。たとえばウォークマンiPodなどのデジタルオーディオプレーヤーメディアプレーヤー携帯けいたい電話でんわスマートフォンCDプレーヤー、パソコンコンポーネントステレオである。

接続せつぞく端子たんしは、がたコンポーネントステレオ場合ばあいは、もともとはもっぱら直径ちょっけい6.3mmのステレオプラグ(コネクタ)もちいられていたが、その登場とうじょうしたポータブルオーディオや小型こがたステレオ機器ききへの接続せつぞくでは、3.5mmのステレオミニプラグ(コネクタ)がもちいられることがおおく、なかにはさらに小型こがた専用せんよう端子たんしなどがもちいられるれい一部いちぶにある。またミニプラグ・標準ひょうじゅんプラグの両方りょうほう対応たいおうさせるため、ヘッドフォンに最初さいしょから変換へんかんプラグが付属ふぞくしているものもおおい。

なお、有線ゆうせん方式ほうしきのヘッドフォンの一部いちぶに、D/Aコンバータ内蔵ないぞうしデジタル端子たんし(デジタルオーディオケーブル)で接続せつぞく可能かのうなものもある。DVDプレーヤーなどからアンプをかいさず再生さいせいするほか、パソコンのサウンドカードあるいはオンボードのデジタル端子たんし接続せつぞくしたり、パソコンのUSB端子たんしiPhoneライトニング端子たんし接続せつぞくする製品せいひんがある。

無線むせん方式ほうしき

編集へんしゅう

2018ねん現在げんざいでは、ケーブルでつながっていたヘッドフォン(聴取ちょうしゅしゃがわ)と音響おんきょう機器きき物理ぶつりてきはなすために、FM変調へんちょうでのアナログ伝送でんそうBluetoothWi-Fi赤外線せきがいせんなどの無線むせん通信つうしんもちいて、コードレス(ワイヤレス)にしたものもある。このようなタイプは、音声おんせい信号しんごう復調ふくちょうおこなう電子でんし回路かいろ搭載とうさいし、電源でんげん供給きょうきゅう必要ひつようになるため、ヘッドフォンがわいち電池でんちあるいは電池でんち内蔵ないぞうすることになり、重量じゅうりょうあるいは体積たいせきおおきくなる傾向けいこうがある。

 
無線むせんしきヘッドフォンと中継ちゅうけいがた無線むせんしきイヤホン(左右さゆういち体型たいけい
 
ブルートゥースイヤホン(TWSがた)のれい。AirPods。これはだい容量ようりょうバッテリーをそなえた専用せんようケースにれて充電じゅうでんする。

ブルートゥースヘッドフォンBluetooth headphones)やブルートゥースイヤホンというのは、再生さいせい機器ききとの接続せつぞくにワイヤー(コード)をもちいず無線むせん一種いっしゅのBluetoothをもちいるものである。ペアリング接続せつぞくして使つかう。コードがからまずスッキリするというメリットがある。

イヤホンの場合ばあいおおまかに無線むせん機器ききおよびバッテリーが中継ちゅうけいとして独立どくりつしており、それらと双方そうほうのイヤホンで有線ゆうせん接続せつぞくされているもの(左右さゆういち体型たいけい、もしくはネックバンドがた)と、イヤホンの内部ないぶ無線むせん機器ききおよびバッテリーが内蔵ないぞうされたもの(完全かんぜんワイヤレス(トゥルー・ワイヤレス・ステレオ:TWS))にかれている。

反面はんめん無線むせん利用りようするため以下いかのようなデメリットもある

  • 電波でんぱ状況じょうきょうにより、混信こんしんとうおとびが発生はっせいする[24]
  • 音声おんせい圧縮あっしゅく技術ぎじゅつもちいており音質おんしつめん不利ふりとなる。そのため、音質おんしつにこだわる人々ひとびとからは敬遠けいえんされてしまっている。ただし、近年きんねんにおいてはソニーのLDACや、クアルコムのaptXなどの高音こうおんしつ目指めざしたコーデックも開発かいはつされている。
  • 無線むせん通信つうしん過程かていでデータ圧縮あっしゅく処理しょりおこなうことによる遅延ちえん発生はっせいする[25]ため、動画どうが再生さいせいやゲームのプレイなどにもちいると映像えいぞう音声おんせいにズレがしょうじることがある。
  • 充電じゅうでんする必要ひつようがある。
  • ワイヤレスイヤホンの場合ばあい紛失ふんしつしやすい。

使用しようじょう注意ちゅういてん

編集へんしゅう

難聴なんちょう原因げんいんとなる

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ヘッドフォンをだい音量おんりょうもちいると、みみ損傷そんしょう難聴なんちょうこすことがある。短期たんきてき場合ばあいもあるが、1にち100dB以上いじょうおとをわずか15ふん以上いじょうくだけで長期ちょうきてき難聴なんちょうになる可能かのうせいがかなりたかくなる、とわれている[よう出典しゅってん]。ヘッドフォンが原因げんいんきる難聴なんちょうヘッドフォン難聴なんちょうという(ヘッドフォンでいた音量おんりょうおおきすぎるという意味いみでは「騒音そうおんせい難聴なんちょう」ともいう)。みみ最深さいしんの、音波おんぱ神経しんけい電気でんき信号しんごう変換へんかんする部分ぶぶんである有毛ありげ細胞さいぼう[26]ならんでいるれつ一部いちぶ破壊はかいされてしまう。有毛ありげ細胞さいぼう再生さいせいはしないため、だい音量おんりょうくことをかえすと、有毛ありげ細胞さいぼう破壊はかい次第しだいに「蓄積ちくせき」し、破壊はかいされた有毛ありげ細胞さいぼうかずえる。ヘッドフォン難聴なんちょう参照さんしょうのこと。

外部がいぶおとこえづらく交通こうつう事故じこなどの原因げんいんとなる

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また運転うんてんちゅう運動うんどうちゅうなどに使用しようすると、外部がいぶおとさえぎられ周囲しゅうい状況じょうきょうづかなくなる可能かのうせいがかなりたかくなり、交通こうつう事故じここしてしまう可能かのうせいたかまる。

とくにカナルがた形状けいじょうてきにはおとみみせんなので、そと音声おんせいがききとりづらくなるという特性とくせいがあり、事故じこにつながりやすい。

おおくの自治体じちたいにおいて、運転うんてんちゅうはイヤホンやヘッドフォンを装着そうちゃくすることは禁止きんしされている(よんりん自動車じどうしゃやオートバイももちろん禁止きんしであり、さらに自転車じてんしゃもれっきとしたけい車両しゃりょうであり運転うんてんちゅうはイヤホンをつけてはいけない。とくりょうみみ絶対ぜったいにいけない)[27]

外耳がいじ道真みちざねきんしょうなど

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長時間ちょうじかんのイヤホンやヘッドホンの使用しよう外耳がいじどう湿気しっけがこもるとみみなかカビ繁殖はんしょくする外耳がいじ道真みちざねきんしょう外耳がいじえん一種いっしゅ)の原因げんいんになる[28]

また、カナルがた場合ばあいとくに、イヤーピースのけがゆるいと本体ほんたいはずさいにイヤーピースの部分ぶぶんみみあなのこってしまうようなものもあり、悪化あっかすると手術しゅじゅつすことにもなる。

パッドの劣化れっか

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みみてるパッド部分ぶぶんは、素材そざいとなるポリウレタン発汗はっかん体温たいおん影響えいきょう加水かすい分解ぶんかいし、すうねんのうちにボロボロに劣化れっかする。製品せいひんによっては交換こうかんようのパッドが市販しはんされているため、劣化れっかさいはパッドを交換こうかんするのがよい[29]

ステレオスピーカーとの比較ひかく

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ヘッドフォンとステレオスピーカーをもちいた再生さいせい体験たいけんちがいは、音像おんぞう定位ていいとそれによる臨場りんじょうかんである。

そもそもステレオは、ふたつのみみ到達とうたつするおとちがいをのうが「計算けいさん処理しょり」し、音源おんげん位置いち特定とくていすることのできるヒトの聴覚ちょうかくシステムにわせて考案こうあんされた再生さいせい方式ほうしきである。

ステレオは幾何きかがくてきなもので、すなわち具体ぐたいてき方法ほうほうはいくつもあるが、たとえばある発音はつおんたいからのおと複数ふくすう理想りそうてきなマイクロフォンで理想りそうてき収録しゅうろくしたのち発音はつおんたい撤去てっきょかくマイクロフォンとまったおなじポジションに今度こんど理想りそうてきなスピーカをき、収録しゅうろくまったおな音圧おんあつ理想りそうてき再生さいせいするならば、まったおなおんじょう再現さいげんすることができる。これはまったおなおんによるものであり、後述こうじゅつ疑似ぎじステレオなどのようにヒトの錯覚さっかく利用りようするものではないことから、かくスピーカーからのおとはヒトにとって自然しぜんおととして認識にんしきされ、個人こじんとく音像おんぞうずれ)もすくない。

たいしてヘッドフォンは発音はつおんたい鼓膜こまくのすぐちかくにある、自然しぜんにはありない再生さいせい方式ほうしきであり、異質いしつおとのうない処理しょり作業さぎょうとして異質いしつであり、音像おんぞう定位ていいかんとそれによる臨場りんじょうかんかく個人こじんによっておおきくばらつく。まったおな録音ろくおん素材そざいまったおなじヘッドフォンをもちいて場合ばあいであっても、スピーカと比較ひかく試聴しちょうすると、はないとかんじるひともいれば、たとえばおとがバラバラでいていられないとかんじてしまうひともいる。

なお前者ぜんしゃ、ステレオスピーカーをもちいた場合ばあいられる定位ていいを「あたまがい定位ていい」、ヘッドフォンをもちいた場合ばあいられる定位ていいを「あたま内定ないてい」とび、通常つうじょうのステレオ素材そざいあたまがい定位ていい、すなわちスピーカーによりくことをかんがえて制作せいさくしてある。

したがってよくセットされたステレオスピーカーはすぐれた定位ていいかんとそれによる臨場りんじょうかん再現さいげんする。しかしながらセットがよくないとそうはならず、その音質おんしつ体験たいけんはスピーカーの配置はいちやその周辺しゅうへん環境かんきょうおおきく左右さゆうされる。また、リスニングポイントで、収録しゅうろくどう程度ていど音圧おんあつになるように再生さいせいしないとどう程度ていど臨場りんじょうかんられないことから、近隣きんりん騒音そうおん問題もんだいしょうじかねず、リスニングルームをどう構築こうちくするかの問題もんだいがある。また、ステレオスピーカーでしっかりした本格ほんかくてきなもの=理想りそうスピーカにちかいものは高価こうか、それだけで100まんえんえることもある。

一方いっぽう、ヘッドフォンはむかしからスピーカーのあたまがい定位ていいにヘッドフォンのあたま内定ないていちかくし、スピーカーと同様どうよう臨場りんじょうかんられるように工夫くふうかさねられている(後述こうじゅつあたらしいタイプのヘッドホンもそうである)が、前述ぜんじゅつとおり、おおきな個人こじん吸収きゅうしゅうすることはいま困難こんなんであることから、2014ねん現在げんざいにおいても実現じつげんしていない。しかしヘッドフォンは、およそ周囲しゅうい条件じょうけん左右さゆうされない汎用はんようてき使用しようができること、満足まんぞくできる音質おんしつ比較的ひかくてき安価あんか簡単かんたん入手にゅうしゅしやすいことが特長とくちょうである。

とくにレコードなどにある擬似ぎじステレオ音源おんげんは、左右さゆう音量おんりょうえるだけで、スピーカーをむす直線ちょくせんじょう任意にんいてんにあたかも音像おんぞう定位ていいしているようにこえさせる、つまり、ヒトの錯覚さっかく利用りようしたものである。したがってこれにはさらに、機器ききとの距離きょり部屋へや反響はんきょうなどが必要ひつようであり、ヘッドフォン再生さいせいいていないことがおおくある。

このようなことから、ヘッドフォンを使用しようして、ステレオスピーカー再生さいせいおなじように実際じっさいちかおとじょうかんじることができるとされる(バイノーラル録音ろくおん音源おんげんなど、あたかもそのにいるかのようにこえる立体りったい音響おんきょうなども発表はっぴょうされている。その効果こうかいまのところ限定げんていてきではあるが、一定いってい人気にんきはくし、もりおとなどの、いわゆる自然しぜんおん収録しゅうろくによくもちいられるようになっている。

あたらしいヘッドフォン

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サラウンドヘッドフォン

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従来じゅうらいのヘッドフォンは一般いっぱんおとあたまなかでなっているような感覚かんかくがあるため、映画えいが鑑賞かんしょうなどでは違和感いわかんがある場合ばあいもあった。しかし現在げんざいではドルビーなどのサラウンド技術ぎじゅつもちいたサラウンドヘッドフォンが開発かいはつされ、手軽てがるなサラウンド環境かんきょうとして人気にんきあつめている。おおくのサラウンドヘッドフォンでは赤外線せきがいせん電波でんぱによるコードレスあわせておこなわれていることがおおい。ソニーは、1998ねん普通ふつうのヘッドフォンでも5.1chサラウンドを再現さいげんできる最初さいしょの5.1chサラウンドヘッドホン MDR-DS5000 を発売はつばいしている。その、ドルビーしゃ同様どうよう機能きのうつ「Dolby Headphone」を開発かいはつしている。なおどう技術ぎじゅつは5.1chの再生さいせい目的もくてきとしているため、ステレオ音声おんせい場合ばあいはPro Logic IIなどと併用へいようする必要ひつようがある。

Quakeカウンターストライク代表だいひょうされる、FPSばれるコンピュータゲームのジャンルでは、ゲームちゅう物音ものおとからてき所在しょざいうごきの察知さっち重要じゅうようである。このてんでは、安物やすもののヘッドフォンでも6スピーカー・サラウンドシステムよりすぐれている。おと方向ほうこうせいるにもちいさなおとをききとるにも、ヘッドフォンはスピーカーより有利ゆうりである。

また、サラウンドヘッドフォンにはステレオ環境かんきょうから人間にんげん聴覚ちょうかく特性とくせい利用りようしてサラウンドを再現さいげんするバーチャルサラウンドヘッドフォンと、通常つうじょうのサラウンドスピーカーと同様どうよう左右さゆうにそれぞれ複数ふくすうのスピーカーを搭載とうさいしたリアルサラウンドヘッドフォンがある。どちらもヘッドフォン製品せいひんそのものの特性とくせいやソースとなるゲーム・音楽おんがく映画えいが音源おんげんとうのマルチチャンネルへの最適さいてき、サウンドデバイスとうつサラウンドやバーチャルサラウンド機能きのうとうよっては、おと定位ていいがステレオヘッドフォンよりもはっきりしないとかんじる場合ばあいがあり、用途ようと利用りよう環境かんきょう使用しようしゃによって感想かんそう多種たしゅ多様たようとなりやすい。前者ぜんしゃ本体ほんたいかる反面はんめん、USBや外部がいぶサラウンドモジュールを必要ひつようとする場合ばあいがある。後者こうしゃはスピーカーがおおいために重量じゅうりょうしやすく、かくチャンネルよう信号しんごうせん必要ひつようでケーブルがふといため、ケーブルがかたまわしがしづらい反面はんめん、5.1chや7.1chなどマルチチャンネル出力しゅつりょく環境かんきょうそなえた環境かんきょうであれば、ヘッドフォン本体ほんたいのみでオーディオ・パソコンわず利用りようできる製品せいひんがある。2013ねん現在げんざい、どちらもしち価格かかく明確めいかくちがいはなく、利用りよう環境かんきょう用途ようとかくゲームや映画えいがなど音源おんげんわせによってる。

ノイズキャンセリングヘッドフォン

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雑音ざつおんぎゃく位相いそう電気でんき信号しんごう音源おんげん信号しんごう適量てきりょう付加ふかすることにより、雑音ざつおんぎゃく位相いそうおと発生はっせいさせ、騒音そうおんをある程度ていど相殺そうさいする方式ほうしきのヘッドフォンである。周囲しゅうい騒音そうおんひろうためのマイクロフォンと、騒音そうおん信号しんごう増幅ぞうふくするためのアンプを内蔵ないぞうし、このために電池でんちなどを別途べっと必要ひつようとする。iPodなどの普及ふきゅうとも近年きんねん人気にんきあつめている。2006ねんにはパナソニックとソニーのデジタルオーディオプレーヤー一部いちぶにノイズキャンセリングヘッドフォンが標準ひょうじゅん添付てんぷされるようになった。

ノイズキャンセリングヘッドフォンの騒音そうおん低減ていげんりつはだいたい20dBでしべる程度ていどであり、一般いっぱん騒音そうおんようみみせんやく30〜40dBでしべるにはとおおよばない。とくに、ノイズキャンセリングヘッドフォンは、こう音域おんいき騒音そうおん低減ていげんすることが原理げんりてき苦手にがてであり、低減ていげんはおおむね低音ていおんのみおこなわれる。このように騒音そうおん完全かんぜん相殺そうさいできるわけではないが、鉄道てつどう自動車じどうしゃなどの車両しゃりょうないにおける低音ていおん騒音そうおんにはある程度ていど効果こうかみとめられている。騒音そうおん相殺そうさいアンプを迂回うかいできない機種きしゅ場合ばあい充分じゅうぶん静寂せいじゃく環境かんきょうでは、このアンプの出力しゅつりょくふくまれる雑音ざつおん信号しんごう成分せいぶん(ヒスノイズ)がぎゃくになることもある。

ほね伝導でんどう方式ほうしきヘッドフォン

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ゴールデンダンスせいほね伝導でんどうヘッドセット「MGD-01」

聴覚ちょうかくちかくの頭蓋骨ずがいこつ振動しんどうさせることにより、鼓膜こまくかいさずにほねとおして蝸牛かぎゅうひびかせることで音楽おんがく(または通話つうわ無線むせん通信つうしんなど)を聴覚ちょうかく神経しんけいつたえ、おととして認識にんしきさせる方式ほうしきのヘッドフォン。

かくメーカーは、みみふさぐことがないため、周囲しゅういおとみみでききとると同時どうじにヘッドフォンから音楽おんがく(または通話つうわ)をききとることができるため、そとでの使用しよう安全あんぜんであること、周囲しゅういとの会話かいわ自然しぜんにできることを訴求そきゅうしている。

また、直接ちょくせつみみあなれたり、みみふさぐことがないため、従来じゅうらいのヘッドフォンとくらべるとみみへの負担ふたんすくなく疲労ひろう軽減けいげんし、内耳ないじえんなどのトラブル、聴覚ちょうかく機能きのう低下ていか可能かのうせいひくいと紹介しょうかいされることもある[30][31]

ファッションとしてのヘッドフォン

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みみおおがたのヘッドフォンにおいては、たん音楽おんがくくための道具どうぐとしてだけではなくファッションアイテムとして使用しようされることもある。とくに、ファッションアイテムのひとつとして積極せっきょくてき活用かつようしている女子じょし、すなわちヘッドホン女子じょしとの俗称ぞくしょう登場とうじょうしている。

その理由りゆうとしては、普通ふつうにヘッドフォンを装着そうちゃくしているだけで簡単かんたんにオシャレをアピール出来できることにある。くびからかけてスタイルを強調きょうちょうしたり、おおきなヘッドフォンを使つかい、相対そうたいてき小顔こがおせるという手法しゅほうもある。 かくメーカーにおいても、流行りゅうこうわせたデザインせいたかいスタイリッシュなモデルやカラフルなカラーリングのモデルが次々つぎつぎとリリースされている[32]

主要しゅようメーカー・ブランド

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現在げんざい

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  •   アイワ初代しょだい法人ほうじんげんソニーマーケティング):2002ねんにソニーに吸収きゅうしゅうされ、2008ねん製造せいぞう販売はんばい終了しゅうりょう
  •   イメーションげん  オージン):2007ねんTDK記録きろくメディア販売はんばい事業じぎょう買収ばいしゅう、"TDK Life on Record"ブランドで製造せいぞう販売はんばいしていたが、2015ねん撤退てったい
  •   オンキヨー開発かいはつ製造せいぞうおも子会社こがいしゃオンキヨー&パイオニアテクノロジーオンキヨーホームエンターテイメント)がおこなっていたが、2022ねん5がつのオンキヨーホームエンターテイメントの経営けいえい破綻はたんわせるかたち完全かんぜん撤退てったい
  •   パイオニアオンキヨー&パイオニア Pioneerブランド → オンキヨーホームエンターテイメント Pioneerブランド):開発かいはつ製造せいぞうはかつてはおも子会社こがいしゃ東北とうほくパイオニアおこなっていたがのち開発かいはつ製造せいぞうはオンキヨー&パイオニアテクノロジーをてオンキヨーホームエンターテイメントがおこなっていた。上記じょうきのオンキヨー同様どうよう、2022ねん5がつのオンキヨーホームエンターテイメントの経営けいえい破綻はたんわせるかたち完全かんぜん撤退てったい

脚注きゃくちゅう参考さんこう文献ぶんけん

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  1. ^ ソニーWebサイト「「MDR-Z1000/EX1000」開発かいはつ秘話ひわ スタジオモニター MDR-Z1000 | 開発かいはつしゃインタビュー」 2013ねん8がつ1にち閲覧えつらん
  2. ^ a b 【2024ねん】モニターヘッドホンのおすすめ21せん専門せんもんてんスタッフがえらかた解説かいせつ”. フジヤエービックのブログ Fujiya Avic BLOG. 2024ねん5がつ21にち閲覧えつらん
  3. ^ ヘッドフォンを利用りようした再生さいせい最適さいてきしたバイノーラル録音ろくおんによる制作せいさくのぞく。
  4. ^ 藤本ふじもとけん (2021ねん10がつ13にち). “ヘッドホンを一流いちりゅうスタジオのおとえるプラグインCanOpener Studio|DTMステーション”. DTMステーション. 2024ねん4がつ4にち閲覧えつらん
  5. ^ まどもり - 【今日きょうのおり】クロスフィード処理しょりソフト「音楽おんがくをヘッドホンでちょうこう!」”. forest.watch.impress.co.jp. 2024ねん4がつ4にち閲覧えつらん
  6. ^ ティアックの戦略せんりゃくプリメイン「AI-303」徹底てってい研究けんきゅう!【Part1】ヘッドホン&スピーカーでデスクトップオーディオをあそたおす!(2/2)”. Phile-web. 2024ねん4がつ4にち閲覧えつらん
  7. ^ 開発かいはつしゃマティアス・カーステンズにくADI-2 DAC」 - Synthax Japan Inc. [シンタックスジャパン]”. synthax.jp. 2024ねん4がつ4にち閲覧えつらん
  8. ^ foobar2000: Components Repository - Meier Crossfeed”. www.foobar2000.org. 2024ねん4がつ4にち閲覧えつらん
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m n JEITA RC-8140C ヘッドホンおよびイヤホン”. 電子でんし情報じょうほう技術ぎじゅつ産業さんぎょう協会きょうかい. 2021ねん4がつ17にち閲覧えつらん
  10. ^ テクニカルコミュニケーター協会きょうかい”. www.jtca.org. 2021ねん11月18にち閲覧えつらん
  11. ^ 外来がいらい(カタカナ)表記ひょうきガイドラインだい3はん”. 一般いっぱん財団ざいだん法人ほうじんテクニカルコミュニケーター協会きょうかい. 2021ねん1がつ11にち閲覧えつらん
  12. ^ BTS6141 日本にっぽん放送ほうそう協会きょうかい
  13. ^ a b c d e f g とう 耕治こうじ「ヘッドホン技術ぎじゅつ動向どうこう”. JAS Journal 2013 Vol.53 No.6(11がつごう). 2019ねん1がつ20日はつか閲覧えつらん
  14. ^ 高機能こうきのうヘッドホンでイイおんそなえたソニー「ウォークマンEシリーズ」”. BCNランキング. BCN (2007ねん6がつ27にち). 2010ねん4がつ2にち閲覧えつらん
  15. ^ カナルがたヘッドホン”. 知恵ちえぞう2013. コトバンク. 2013ねん8がつ11にち閲覧えつらん
  16. ^ ドライバーユニットオーディオテクニカ
  17. ^ ASCII.jp:音質おんしつ重視じゅうし必須ひっすアイテム「Sound Blaster ZxR」をためす(2/3)
  18. ^ a b ヘッドホンのインピーダンスについて”. Denon 公式こうしきブログ (2018ねん6がつ1にち). 2021ねん6がつ10日とおか閲覧えつらん
  19. ^ a b ヘッドホン・イヤホンにもとめられる「性能せいのう」とは?”. 一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん日本にっぽんオーディオ協会きょうかい. 2021ねん6がつ10日とおか閲覧えつらん
  20. ^ だい2かい イヤホンの基本きほん イヤホンの用語ようごについて | 日本にっぽん経営けいえい合理ごうり協会きょうかい
  21. ^ ヘッドホンアンプの必要ひつようせいについてフジヤエービック
  22. ^ No.31 モバイル・ミュージックとスピーカ技術ぎじゅつ”. TDK Techno Magazine. 2021ねん6がつ10日とおか閲覧えつらん
  23. ^ a b イヤースピーカーとは?”. STAX (2018ねん3がつ28にち). 2021ねん6がつ10日とおか閲覧えつらん
  24. ^ Bluetoothイヤホンでおとびがこる原因げんいん対策たいさくほう - radius公式こうしきコラム
  25. ^ Bluetooth、その音質おんしつ遅延ちえんについて - Denon Official Blog
  26. ^ [1]
  27. ^ [2]
  28. ^ みみなかにカビ? 外耳がいじ道真みちざねきんしょうとは”. 毎日新聞まいにちしんぶん. 2019ねん6がつ12にち閲覧えつらん
  29. ^ 海上うながみしのぶ (2021ねん3がつ10日とおか). “ヘッドホンのパッドがボロボロ...その原因げんいんは”. PHILE WEB (おともと出版しゅっぱん). https://www.phileweb.com/review/column/202103/10/1231.html 2021ねん3がつ13にち閲覧えつらん 
  30. ^ 2019ねん05がつ21にち)"スマホ難聴なんちょう"どうふせぐ?”. 日本にっぽん放送ほうそう協会きょうかい. 2021ねん1がつ11にち閲覧えつらん。 “「ほね伝導でんどう」のイヤホンを使つかえば、音量おんりょう過度かどげなくてもきやすいので、難聴なんちょう予防よぼうさくとしては効果こうかがあるのではないかとはなしていました。”
  31. ^ テレワークでの「イヤホン使用しよう」でみみトラブル増加ぞうか?投稿とうこうした耳鼻じび危険きけん兆候ちょうこう対処たいしょほういた”. FNN プライムオンライン編集へんしゅう. 2021ねん1がつ11にち閲覧えつらん
  32. ^ ヘッドホン女子じょし”. 2023ねん10がつ13にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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