(Translated by https://www.hiragana.jp/)
ミカエル - Wikipedia

ミカエル

旧約きゅうやく聖書せいしょのダニエルしょからそのがあらわれる天使てんしだい天使てんし

ミカエルヘブライ: מִיכָאֵלMîḵā’ēl, えい: Michael)は、旧約きゅうやく聖書せいしょの『ダニエルしょ』、新約しんやく聖書せいしょの『ユダの手紙てがみ』『ヨハネの黙示録もくしろく』、旧約きゅうやく聖書せいしょ外典げてんエノクしょ』などにあらわれる天使てんし日本にっぽん正教会せいきょうかいでは教会きょうかいスラヴロシアからミハイル表記ひょうきされる。

だい天使てんしひじりミカエル
かみ使ミハイル)
だい天使てんしミハイル(ミカエル)のイコン悪魔あくまんでいる。
シモン・ウシャコフ1676ねんモスクワトレチャコフ美術館びじゅつかんくら
天使てんしちょうてんぐん総帥そうすい
崇敬すうけいする教派きょうは カトリック教会きょうかい正教会せいきょうかい
記念きねん 9月29にち
象徴しょうちょう 孔雀くじゃく尾羽おはのような文様もんようつばさゆうした姿すがた右手みぎてけん左手ひだりてたましい公正こうせいさをはかばかりたずさえている姿すがた
守護しゅご対象たいしょう 兵士へいし警官けいかん消防しょうぼうかん救急きゅうきゅう隊員たいいんばかり武器ぶき使つか職業しょくぎょう悪魔あくまばら[1]
テンプレートを表示ひょうじ

概説がいせつ

編集へんしゅう

ミカエルは、旧約きゅうやく聖書せいしょからユダヤきょうキリスト教きりすときょうイスラム教いすらむきょうがれ、教派きょうはによってことなるがさんだい天使てんしよんだい天使てんしななだい天使てんし一人ひとりであるとかんがえられてきた。かれはユダヤきょう、キリストきょうイスラム教いすらむきょうにおいてもっとも偉大いだい天使てんし一人ひとりであり、「おき天使てんし」として位置いちづけられることもある。

名称めいしょう

編集へんしゅう

「ミカエル」という名前なまえ直訳ちょくやくすれば「かみたるものはだれか」(mî疑問ぎもんだれ」 + kə「~のような」 + hā ’ēl「かみ」)という意味いみになるが、『タルムード』では「だれかみのようになれようか」という反語はんごほぐされる。

カトリック教会きょうかいでは、ミカエルはだい天使てんしひじりミカエル称号しょうごうばれる。日本にっぽんハリストス正教会せいきょうかいでは現代げんだいギリシャロシアみから転写てんしゃし、かみ使ミハイルぶ。

欧米おうべいでは男女だんじょわず、ひと名前なまえもととなっている。 英語えいごマイケル (Michael) 、ドイツミヒャエル (Michael) 、フランス語ふらんすごミシェル (Michel) 、スペインポルトガルミゲル (Miguel) 、 イタリアミケーレ (Michele) 、フィンランドミカ (Mika) 、ロシアのミハエル、アラビアのミカイール、など。

図像ずぞうイメージ

編集へんしゅう
 
グイド・レーニによる『だい天使てんしミカエル 』

ミカエルの図像ずぞうは、甲冑かっちゅうをまとっててん軍団ぐんだん先頭せんとうをいく、といったイメージが一般いっぱんてきとされる。かれ図像ずぞうは、にはつばさひろがっているものがおおい。場合ばあいによっては孔雀くじゃく尾羽おはのような文様もんようつばさゆうした姿すがたえがかれることがある。また、かれ右手みぎてけん左手ひだりてにはたましい公正こうせいさをはかばかりたずさえている姿すがたえがかれることもある。

聖書せいしょ記述きじゅつ

編集へんしゅう

聖書せいしょでミカエルがあらわれるのは、『ダニエルしょ』10しょう13-21、どう12しょう1、『ユダの手紙てがみ』1しょう9、『ヨハネの黙示録もくしろく』12しょう7である。

  • ダニエルしょなかではダニエルもと使つかわされたものたすけるためにあらわれたと描写びょうしゃされている[2]
  • ユダの手紙てがみなかでは、ミカエルは天使てんしたちの「ちょう[3]や「かしら」[4]として表現ひょうげんされている。モーセ死体したいについてサタン意見いけんろんっているが、相手あいてをののしりさばくことはあえてされず、ただ「あるじがおまえをいましめてくださるように」とった[5]
  • 黙示録もくしろくではサタンよりも強力きょうりょく存在そんざいとしてえがかれている[6]

ミカエルは旧約きゅうやく聖書せいしょ外典げてんである『エノクしょ』にもあらわれる。

ユダヤきょうにおけるミカエル

編集へんしゅう

旧約きゅうやく聖書せいしょなかでミカエルの名前なまえるのは『ダニエルしょ』10しょうおよび12しょうのみである。かれは、断食だんじきのダニエルのまぼろしなかペルシア天使てんしたちとたたかうためにつかわされたイスラエルまもしゅとしてあらわれる。聖書せいしょ学者がくしゃたちのなかには『ヨシュア』のなかにすでにミカエルの姿すがた原型げんけいがあらわれているとかんがえるものもある。

旧約きゅうやく聖書せいしょにはミカエルへの言及げんきゅうはほとんどない。にもかかわらず、ラビ伝承でんしょうによってミカエルはさらにおおくの役割やくわりあたえられることになった。『ダニエルしょ』にえがかれるイスラエルの守護しゅごしゃというイメージから、ミカエルと堕天使だてんしサマエルとのあらそいという伝承でんしょうまれた。サマエルはもともと天使てんしであったが天国てんごくから追放ついほうされて堕天使だてんしとなったとされる。サマエルが天国てんごくからとされたとき、ミカエルのはねさえんでみちづれにしようとしたが、ミカエルはかみ自身じしんによってすくげられたという。旧約きゅうやく聖書せいしょ外典げてんモーセの昇天しょうてん』にえがかれたミカエルとサマエルの死闘しとうは、のちにりゅう悪魔あくま象徴しょうちょう)とあらそうミカエルというイメージをした。
ロトソドムからさせたのも、イサクがいけにえにされるのをとめたのも、モーセおしさとしてしるべびいたのも、イスラエルに侵攻しんこうするセンナケリブ軍勢ぐんぜいやぶったのもミカエルであるとされている。

ユダヤきょう指導しどうしゃラビたちによって天使てんしへのゆきすぎた信心しんじん規制きせいされるようになっても、ミカエルのみは「イスラエルのまもしゅ」として特別とくべつ地位ちいたもたれた。ユダヤきょうではミカエルへのいのりがさかんにつくられている。
天上てんじょうエルサレムへユダヤ教徒きょうとたましいむかれるのも、わりのときにラッパをらすのもミカエルであるとされている。中世ちゅうせい以降いこうカバラ思想しそう発達はったつしていくと、イスラエルのまもしゅミカエルは「ユダヤじんまもしゅ」となっていった。

キリスト教きりすときょうにおけるミカエル

編集へんしゅう

カトリック教会きょうかい 

編集へんしゅう
 
パリひじりミカエル大通おおどおり(en)にあるミカエルぞう

カトリック教会きょうかいではミカエルを「だい天使てんしひじりミカエル」とんでいる。このだい天使てんしとは、にせディオニシウス・アレオパギタさだめた天使てんしきゅうかいきゅうのうちしたから番目ばんめぞくするものである[7]。これは中世ちゅうせい初期しょきころまではだい天使てんし天使てんし最高さいこう階級かいきゅうかんがえられていたためとされる[7]

また、ジャンヌ・ダルクかみ啓示けいじあたえたのはミカエルだとされている[8]

その、ミカエルはひとではないが聖人せいじんおなじようにカトリック教会きょうかいあいだひろ崇敬すうけいされるようになった。カトリック教会きょうかいではミカエルをガブリエルラファエルならさんだい天使てんし一人ひとりとしており、ミカエルは守護しゅごしゃというイメージからしばしば山頂さんちょう建物たてもの頂上ちょうじょうかれぞうかれた。ルネサンスはいると、ミカエルはしばしばえるけんにした姿すがたえがかれるようになった。ミカエルは、右手みぎてけん左手ひだりてばかりつことから、武器ぶきばかりあつか職業しょくぎょう守護しゅごしゃとされた。中世ちゅうせいにおいては、ミカエルは兵士へいしまもしゅ、キリストきょうぐん守護しゅごしゃとなり、十字軍じゅうじぐん兵士へいし崇敬すうけいあつめた。現代げんだいのカトリック教会きょうかいでは、兵士へいし警官けいかん消防しょうぼうかん救急きゅうきゅう隊員たいいん守護しゅご聖人せいじんになっており、地域ちいきではドイツおよびウクライナフランス守護しゅご聖人せいじんとされている。

カトリック教会きょうかいにおける日本にっぽん守護しゅご聖人せいじんもかつてはミカエルであるとされた[9]。これはフランシスコ・ザビエルによってさだめられたが[9]、のちにザビエル自身じしん日本にっぽん守護しゅご聖人せいじんとされている。

またミカエルは、地上ちじょうにおけるカトリック教会きょうかい全体ぜんたい保護ほごしゃとされていて、だい2バチカンこう会議かいぎ以前いぜんミサのあとにとなえる「だい天使てんしひじりミカエルへのいの」があった。

カトリック教会きょうかいではミカエルはガブリエル、ラファエルとともに9月29にち祝日しゅくじつになっており[7]、かつてイギリスの大学だいがくではこの始業しぎょうであった。カトリック教会きょうかいではミカエルにささげられた教会きょうかい修道院しゅうどういん多数たすうつくられている。492ねんのイタリアはガルガーノさんの「だい天使てんしひじりミカエルのバシリカ聖堂せいどう)」をはじめ、有名ゆうめいなものではフランスのモン・サン・ミシェルがあげられる。590ねん、ローマのハドリアヌスびょうにミカエルがあらわれ、ペスト蔓延まんえん終焉しゅうえんいたったという。これにより、ハドリアヌスびょうは「サンタンジェロじょう」とばれることになった。

正教会せいきょうかい

編集へんしゅう
 
モスクワせい天使てんしくびだい聖堂せいどうにあるミハイル(ミカエル)のイコン

正教会せいきょうかいでは、ミカエルはしばしばガウリイル(ガブリエル)とともにイコノスタシスもんえがかれる。

プロテスタント

編集へんしゅう

聖書せいしょ信仰しんこう福音ふくいんでは聖書せいしょ教理きょうりもとづいてミカエルの存在そんざい認識にんしきしている[10]

キリスト教きりすときょうけいしん宗教しゅうきょう

編集へんしゅう

エホバの証人しょうにんセブンスデー・アドベンチスト教会きょうかいではミカエルはイエス・キリストと同一どういつされている[11][12][13]。エホバの証人しょうにんがわでは、てんにおられるとき名前なまえがミカエル、地上ちじょうにおられたとき名前なまえがイエス・キリストであるとしている。

末日まつじつ聖徒せいとイエス・キリスト教会きょうかいではひとアダム天上てんじょうにおける姿すがたがミカエルであるとかんがえられている。

イスラム教いすらむきょうにおけるミカエル

編集へんしゅう

イスラム教いすらむきょうではミカエルはミーカールばれる。かれよんにんだい天使てんし(ミーカールとジブリールアズラーイールイスラーフィール)の一人ひとりであるとされ、『クルアーン』のなかでもミーカールについて言及げんきゅうされている箇所かしょがある[14]

ただしイスラムでは、ジブリール(ガブリエル)がかみ預言よげんしゃムハンマド仲立なかだちをし啓示けいじをもたらしたとされるため、天使てんし首位しゅいめるのはジブリールであり、ミーカールは次点じてんであるとされている。

ミーカールは慈悲じひふか性格せいかくで、地獄じごくくるしむ罪人ざいにん様子ようすては、なげかなしみ、かみかれらへの恩赦おんしゃうている。かみは、ミーカールの慈悲じひふかさをたっとび、ミーカールのからながれるなみだすべ天使てんしえ、だいななてんにミーカールとともまわせ、最後さいご審判しんぱんまで世界せかい維持いじつとめさせてる。

ミーカールは、地獄じごく罪人ざいにん同情どうじょうするがゆえわらことくなったという。

異教いきょう由来ゆらい起源きげん

編集へんしゅう

3世紀せいきラビ、シメオン・ベン・ラキシュは、ミカエルという名前なまえ天使てんし思想しそうはユダヤじんしんバビロニア王国おうこくしゅうされていた時代じだいにバビロニアの宗教しゅうきょう影響えいきょうによってかれらの信仰しんこうするかみ(たとえばマルドゥク)がまれたものだというせつとなえた。このせつ現代げんだい学者がくしゃたちにひろれられている。元々もともとミカエルはカルデアひと信仰しんこうされたかみであったとかんがえられている[15]。このほか、かれメタトロンおなじくミトラかみ起源きげんとするというせつがある[16]

西洋せいよう儀式ぎしき魔術まじゅつ

編集へんしゅう

儀式ぎしき魔術まじゅつ英語えいごばんでは、よんだい天使てんしよんだい元素げんそとの象徴しょうちょうてき対応たいおう関係かんけい設定せっていされており、ミカエルは元素げんそ赤色あかいろみなみ関連付かんれんづけられる[17]

初期しょきユダヤきょう占星術せんせいじゅつではかれ水星すいせいむすびつけられたが、中世ちゅうせいキリスト教きりすときょうころ太陽たいようむすびつけられるようになった。

俗説ぞくせつ 

編集へんしゅう

ミカエルは菓子かし職人しょくにん守護しゅご聖人せいじんとされる。フランスでは、かれをとった「サン・ミシェル」とばれるケーキまれているほか、ミカエルの祝日しゅくじつである9月29にちは「洋菓子ようがし」である[18]

小説しょうせつでの登場とうじょう

編集へんしゅう

ラリー・ニーブンジェリー・パーネル共著きょうちょしたSF小説しょうせつ降伏ごうぶく儀式ぎしき」には、ほしじん母船ぼせん攻撃こうげきするために、かく爆発ばくはつ推進すいしんりょくとする大型おおがた宇宙船うちゅうせん登場とうじょうするが、このコードネームがだい天使てんし「ミカエル」である。

脚注きゃくちゅう

編集へんしゅう
  1. ^ http://www.catholic.org/saints/saint.php?saint_id=308
  2. ^ ダニエルしょ(口語こうごやく)10:11-14
  3. ^ 使つかいちょうミカエル(ユダのしょ(文語ぶんごやく)#1:9
  4. ^ 使つかいのかしらミカエル(ユダからの手紙てがみ_(でんもうやく)#1:9
  5. ^ ユダの手紙てがみ(口語こうごやく)1:9
  6. ^ ヨハネの黙示録もくしろく(口語こうごやく)12:7-9
  7. ^ a b c ジョン・ロナー 『天使てんし事典じてん柏書房かしわしょぼう
  8. ^ レジーヌ・ペルヌー 『奇跡きせき少女しょうじょジャンヌ・ダルク』 つくもとしゃ
  9. ^ a b 『マリアのウィンク 聖書せいしょめいシーンしゅう視覚しかくデザイン研究所けんきゅうじょ
  10. ^ しん聖書せいしょ辞典じてん
  11. ^ 「25 天使てんしちょうミカエル」,『聖書せいしょおしえていること』,付録ふろく(ものみの塔聖書冊子協会とうせいしょさっしきょうかい
  12. ^ 預言よげんこえ聖書せいしょ講座こうざ だい2 だい5-6.てんにおけるたたか
  13. ^ Jesus the Archangel Michael?- Ellen G. White Estate
  14. ^ カイロばん2しょう雌牛めうしあきら)98せつ
  15. ^ グスタフ・デイヴィッドスン『天使てんし辞典じてんつくもとしゃ、2004、255ぺーじ
  16. ^ 松村まつむら一男かずお世界せかいかみ々の事典じてん学研がっけん
  17. ^ 真野まの隆也たかや悠久ゆうきゅうなる魔術まじゅつしん紀元きげんしゃ
  18. ^ 21世紀せいき研究けんきゅうかいへんしょく世界せかい地図ちず文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう・165P

参考さんこう文献ぶんけん

編集へんしゅう

関連かんれん項目こうもく

編集へんしゅう