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交易 - Wikipedia
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交易こうえき

商品しょうひんの売買ばいばい
曖昧さ回避 国外こくがいにいる相手あいてとの貨幣かへいを介かいした商業しょうぎょう取引とりひきについては「貿易ぼうえき」をご覧らんください。

交易こうえき（こうえき、英えい: trade）とは、特定とくていの個人こじん・集団しゅうだん間あいだで価値かちのある品物しなものをお互たがいに交換こうかんする取引とりひきのこと[1]。貨幣かへいを介かいさず物々交換ぶつぶつこうかんに重おもきを置おいた語かたりとして用もちいられることが多おおい[注釈ちゅうしゃく 1][4]。

近代きんだい的てきな観点かんてんだと、交易こうえきは専門せんもん化かと分業ぶんぎょうのために存在そんざいしている。個人こじんや集団しゅうだんが生産せいさんの一角いっかく集中しゅうちゅうを行おこない、その成果せいかといえる特産とくさん品ひんを交易こうえきにおいて他ほかの製品せいひんや必需ひつじゅ品ひんと換かえるのに利用りようする、経済けいざい活動かつどうのよくある形態けいたいである[5]。地域ちいき間あいだでの交易こうえきが存在そんざいするのは、地域ちいきが違ちがうと交易こうえき可能かのうなコモディティ（他たの場所ばしょでは希少きしょうないし限かぎられた天然てんねん資源しげんを含ふくむ）の生産せいさんにも比較ひかく優位ゆういが生しょうじうるためである。例たとえば、地域ちいきの規模きぼの違ちがいが大量たいりょう生産せいさんを促うながす場合ばあいもある。こうした環境かんきょうだと、地域ちいき間あいだで行おこなう交易こうえきが双方そうほうの地域ちいきにとって利益りえきとなりうる。

語源ごげん

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交易こうえきの「交」には、二ふたつ以上いじょうのものが「まじわる」「関係かんけいを持もつ」「かわるがわる」といった意味いみがあり[6]、「易えき」には「取とり換かえる」という意味いみがある[7]。したがって、交易こうえきとは「二に者しゃ以上いじょうが交まじわってお互たがいに（交流こうりゅう関係かんけいを維持いじすべく）物品ぶっぴんを交換こうかんする」事ことを指さしている。

交易こうえきを意味いみする英単語えいたんご trade は、中世ちゅうせい英語えいごだと「道みち、行方ゆくえ」を意味いみしており、これはハンザ同盟どうめいの商人しょうにんによって欧州おうしゅうから英語えいごに導入どうにゅうされたものである。中世ちゅうせい低地ていちドイツ語ごの Trade も「道みち、行程こうてい」の意味いみで、さらに遡さかのぼると古こザクセン語ごの trada が「足跡あしあと、小径しょうけい」、ゲルマン祖語そごの *tradō は「小径しょうけい、道みち」という意味いみである。

歴史れきし

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「貿易ぼうえき史し」も参照さんしょう

先史せんし時代じだい

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交易こうえきは、先史せんし時代じだいに人類じんるいのコミュニケーションから始はじまった。交易こうえきは先史せんし時代じだいの人々ひとびとの主おもな便宜べんぎであり、貨幣かへい経済けいざい以前いぜんの贈与ぞうよ経済けいざい (gift economy) において彼かれらはお互たがいに品物しなものを交換こうかんしていた。ピーター・ワトソンは、遠距離えんきょり商取引しょうとりひきの歴史れきしを約やく15万まん年ねん前まえに遡さかのぼるとしている[8]。地中ちちゅう海域かいいきでは、文化ぶんか間あいだの最もっとも古ふるい接触せっしょくが3.5-3万まん年ねん前まえから始はじまったとされる[9][10][11][12]。

伝統でんとう的てきな自給自足じきゅうじそくを別べつにすれば、交易こうえきが先史せんし時代じだいの人々ひとびとの主おもな便宜べんぎとなり、人々ひとびとはお互たがいに持もち寄よった品しなを物々交換ぶつぶつこうかんしていた。

古代こだい史し

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1860年代ねんだいにロシア南部なんぶの古墳こふん(Bolshaya Bliznitsa tumulus)で発掘はっくつされた、古代こだいエトルリアのテラコッタ製せい香油こうゆ入いれ「アリュバロス」。エルミタージュ美術館びじゅつかん所蔵しょぞう。

交易こうえきは、有史ゆうし以来いらいほぼずっと実施じっしされてきたと考かんがえられている。石器せっき時代じだいに黒曜石こくようせきとフリントが交換こうかんされた証拠しょうこがあり、オックスフォード考古学こうこがく辞典じてんによると、黒曜石こくようせきの交易こうえきは紀元前きげんぜん17,000年ねんからニューギニアで行おこなわれていた[13][14]。

近東きんとうで最初さいしょ期きの黒曜石こくようせきの使用しようは、先さき土器どき新しん石器せっき時代じだいB期き(P.P.N.B)に遡さかのぼる[15]
—三笠みかさ宮みや崇たかし仁じん親王しんのう

ロバート・カー・ボサンケは1901年ねんの発掘はっくつ調査ちょうさにより石器せっき時代じだいの交易こうえきを調査ちょうさした[16][17]。交易こうえきが最初さいしょに西南せいなんアジアで始はじまったと主張しゅちょうする有識者ゆうしきしゃもいる[18][19]。

黒曜石こくようせき使用しようの考古学こうこがく的てき証拠しょうこは、中ちゅう石器せっき時代じだい後期こうきから新しん石器せっき時代じだいにこの素材そざいがどの程度ていどチャート (岩石がんせき)よりも優先ゆうせん的てきに選えらばれたか、黒曜石こくようせきが珍めずらしい地中ちちゅう海域かいいきでどの程度ていど交換こうかんを必要ひつようとしていたかに関かんするデータを提示ていじしている[20][21][22]。

黒曜石こくようせきは切削せっさく道具どうぐや工具こうぐを作つくる材料ざいりょうになっていたと思おもわれるが、もっと楽らくに入手にゅうしゅできる他ほかの材料ざいりょうが使用しよう可能かのうだったので、フリントを豊富ほうふに活用かつようする部族ぶぞくの高たかい地位ちいだけで見みつかった[23]。興味深きょうみぶかいことに、黒曜石こくようせきはフリントと比くらべて現在げんざいもの価値かちを保たもっている。

初期しょきの交易こうえき者しゃ達たちは、地中ちちゅう海域かいいきの900km圏内けんないで黒曜石こくようせきを交易こうえきしていた[24]。

新しん石器せっき時代じだいヨーロッパにおける地中ちちゅう海域かいいきの交易こうえきは、この素材そざいが最もっとも規模きぼが大おおきかった[20][25]。交易こうえき網もうは紀元前きげんぜん12,000年ねん頃ごろに存在そんざいし[26] 、1990年ねんの研究けんきゅうによればアナトリア半島はんとうがレバント、イラン、エジプトと交易こうえきするための主要しゅよう拠点きょてんだった[27][28][29]。ミロス島とうとリーパリ島とうの黒曜石こくようせきは、古代こだいの地中ちちゅう海域かいいきで最もっとも広範こうはんに交易こうえきされる産物さんぶつ資源しげんだった[30]。

アフガニスタンの山岳さんがく地帯ちたいにある鉱山こうざん (Sar-i Sang) は、ラピスラズリの交易こうえきで最もっとも規模きぼの大おおきな拠点きょてんだった[31][32]。この素材そざいは紀元前きげんぜん1595年ねんから始はじまるバビロニアのカッシート王朝おうちょう期きに最もっとも多おおく交易こうえきされた[33][34]。

その後ごの交易こうえき

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地中海ちちゅうかいと近東きんとう

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詳細しょうさいは「シルクロード」を参照さんしょう

3000年ねんもの間あいだエブラは著名ちょめいな交易こうえきの中心ちゅうしん地ちで、交易こうえき網もうがアナトリアや北きたメソポタミアにも及およんでいた[30][35][36][37]。

 
ヨーロッパとアジアを結むすぶシルクロード交易こうえきルートの地図ちず

紀元前きげんぜん3000年ねんより、宝飾ほうしょく品ひんを作つくるための素材そざいがエジプトと交易こうえき取引とりひきされていた。長距離ちょうきょりの交易こうえき路ろが最初さいしょに現あらわれたのは、メソポタミアのシュメール人じんがインダス文明ぶんめいと交易こうえきした紀元前きげんぜん3千年紀せんねんき頃ごろである。フェニキア人じんは特筆とくひつすべき海上かいじょう交易こうえき者しゃで、地中海ちちゅうかいを横断おうだんし、青銅せいどうを製造せいぞうするための錫すず資源しげんを求もとめてブリテン島とうまで北上ほくじょうした。彼かれらはこの目的もくてきのために、ギリシャ人じんがエンポリウムと呼よんだ交易こうえき植民しょくみん地ちを設立せつりつした[38]。地中海ちちゅうかい沿岸えんがんでは、地域ちいき交流こうりゅうの度合どあいと考古学こうこがく的てき遺跡いせき（鉄器てっき時代じだい以降いこう）での局所きょくしょ的てき有ゆう病びょう率りつとの間あいだに有意ゆういの関係かんけい性せいがあることを調査ちょうさ団だんが発見はっけんした。これは、ある地域ちいきの交易こうえき可能かのう性せいが人類じんるいの居住きょじゅう地ちの重要じゅうような決定けってい要因よういんだったことを示唆しさしている[39]

ギリシャ文明ぶんめいの黎明れいめい期きから5世紀せいきのロろーマ帝国まていこく陥落かんらくまで、経済けいざい的てきに儲もうかる交易こうえきは、インドや中国ちゅうごくを含ふくむ極東きょくとうからヨーロッパへと貴重きちょうな香辛料こうしんりょうをもたらした。ローマの商しょう取引とりひき (Roman commerce) が同どう帝国ていこくを繁栄はんえい存続そんぞくさせていた。後年こうねんのパクス・ロマーナでは、ローマがエジプトおよび近東きんとうを征服せいふくしたことで地中海ちちゅうかい唯一ゆいいつの海洋かいよう大国たいこくになったため、海賊かいぞく行為こういに怯おびえなくとも交易こうえき品ひんの出荷しゅっかを可能かのうにする安全あんぜんかつ安定あんていした輸送ゆそう網もうを構築こうちくした[40]。

古代こだいギリシャではヘルメースが交易こうえき（商業しょうぎょう）および度量衡どりょうこうの神かみだった[41][42][43]。古代こだいローマではメルクリウスが商業しょうぎょうの神かみであり、その祭まつりは第だい5月がつの25日にちに交易こうえき者しゃらによって祝いわわれた[44][45]。

交易こうえきの自由じゆうという概念がいねんは、古代こだいギリシャ諸国しょこくの統治とうち者しゃたちの意向いこうや経済けいざい方針ほうしんと対立たいりつする理念りねん だった。諸国しょこく間あいだの自由じゆうな交易こうえきは、統治とうち者しゃの財物ざいぶつの安全あんぜん保障ほしょうを維持いじするための厳格げんかくな（課税かぜいを経由けいゆした）内部ないぶ統制とうせいによって抑圧よくあつされていたが、とはいえ機能きのう的てきな共同きょうどう体たい生活せいかつの構造こうぞう内ないでは程々ほどほどの節度せつどが維持いじできていた[46][47]。

ロろーマ帝国まていこくの衰退すいたいとそれに続つづく暗黒あんこく時代じだいは西欧せいおうに不安定ふあんていをもたらし、西側にしがわ世界せかいの交易こうえき網もうはほぼ崩壊ほうかいした。しかし交易こうえきは、アフリカ、中東ちゅうとう、インド、中国ちゅうごく、東南とうなんアジアの王国おうこく間あいだで盛さかんに継続けいぞくされた。一部いちぶの交易こうえきは西欧せいおうにもあった。例たとえば、中世ちゅうせいユダヤ商人しょうにんのギルド組合くみあい (Radhanite) はヨーロッパのキリスト教徒きりすときょうとや近東きんとうのイスラム教徒きょうとと交易こうえきしていた[48]。

インド太平洋たいへいよう

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インド洋いんどようのオーストロネシア人じん地域ちいきにおける先史せんし・古代こだいの海上かいじょう交易こうえき網もう[49]

インド洋いんどようにおける最初さいしょの海上かいじょう交易こうえき網もうは東南とうなんアジア島嶼とうしょ部ぶのオーストロネシア人じんによるもので[49]、彼かれらが最初さいしょの外洋がいよう航行こうこう船せんを建造けんぞうした[50]。台湾たいわんとフィリピンの先住民せんじゅうみんによって始はじめられたヒスイ海路かいろ (Maritime Jade Road) は、東南とうなんアジアと東ひがしアジアの複数ふくすう地域ちいきを結むすぶ広範こうはんな交易こうえき網もうだった。その主要しゅよう製品せいひんは、台湾たいわん先住民せんじゅうみんによって台湾たいわんから採掘さいくつされたヒスイで作つくられ、主おもにフィリピン先住民せんじゅうみんによって加工かこう細工ざいくされた。一部いちぶはベトナムでも加工かこうされ、マレーシア、ブルネイ、シンガポール、タイ、インドネシア、カンボジアの人々ひとびともこの大だい規模きぼな交易こうえき網もうに参加さんかした。この海路かいろは、当時とうじ世界せかいで最もっとも広範こうはんな海洋かいよう基盤きばんの単一たんいつ地質ちしつ学がく的てき材料ざいりょうの交易こうえき網もうの1つだった。それは少すくなくとも3000年間ねんかん存在そんざいしており、ヒスイ生産せいさんの最盛さいせい期きは紀元前きげんぜん2000年ねん-西暦せいれき500年ねんまでと、ユーラシア本土ほんどのシルクロードや後年こうねんの海上かいじょうシルクロードよりも古ふるかった。ヒスイ海路かいろは西暦せいれき900年代ねんだいに衰退すいたいし始はじめた。同どう交易こうえき網もうの全ぜん期間きかんが、この地域ちいきの多様たようなアニミズム社会しゃかいの黄金おうごん時代じだいであった[51][52][53][54]。

遠洋えんよう航行こうこうする東南とうなんアジア人じんは、早はやくも紀元前きげんぜん1500年ねんに南みなみインドやスリランカとの交易こうえきルートを確立かくりつしており、物質ぶっしつ文化ぶんか（双そう胴どう船せん、アウトリガーカヌー、縫合ほうごう船せん、ビンロウジなど）と栽培さいばい起源きげん種しゅ（ココナッツ、白檀びゃくだん、バナナ、サトウキビなど）の交換こうかんを先導せんどうすると共ともに、インドと中国ちゅうごくの物質ぶっしつ文化ぶんかをつないだ。特とくにインドネシア人じんは、双そう胴どう船せんやアウトリガーカヌーを使つかって東ひがしアフリカと香辛料こうしんりょう（主おもにシナモンとカシア）の交易こうえきを行おこない、インド洋いんどようの偏西風へんせいふうの助たすけを借かりて航海こうかいしていた。この交易こうえき網もうはアフリカやアラビア半島はんとうにまで及およんでおり、西暦せいれき500年ねんまでにオーストロネシア人じんがマダガスカルを植民しょくみん地ち化かした。それは有史ゆうしになっても続つづき、後ごの海上かいじょうシルクロードになった[49][55][56][57][58]。

極東きょくとうアジア

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古代こだいの極東きょくとうアジアにおける交易こうえきは、中国ちゅうごくの冊さつ封ふうに基もとづいた周辺しゅうへん国こくによる朝貢ちょうこう外交がいこうが特徴とくちょうの一ひとつである。日にち中ちゅう間あいだについては、約やく二に千せん年ねん前まえの西暦せいれき 57年ねんに倭やまとの奴やつ国こくが使節しせつを後こう漢かんに派遣はけんし、光武みつたけ帝みかどより漢かん委い奴やつ国王こくおう印しるし（金きむ印しるし）[59]を賜たまもの与あずかされて以来いらい、その歴史れきしが始はじまった。239年ねんには邪馬台国やまたいこくが使節しせつを魏たかしに派遣はけんし、魏ぎの皇帝こうていより金かね印しるし紫綬しじゅを賜たまわったことが『魏ぎ志こころざし倭人わじん伝でん』に記しるされている[60]。

 
インドから東ひがしアジアに至いたる仏教ぶっきょう伝播でんぱルート

古代こだい中国ちゅうごくとの交易こうえきによって大陸たいりく文化ぶんかを取とり入いれた極東きょくとうアジア諸国しょこくは（主おもな日本にっぽんの導入どうにゅう例れいは、水稲すいとう耕作こうさく、仏教ぶっきょう思想しそう、漢字かんじなど）、その交易こうえきを維持いじしつつ発展はってんを遂とげることになる。日本にっぽんの遣や隋ずい使し(600-618)や遣唐使けんとうし(630-894)も、中国ちゅうごくから高度こうどな文化ぶんかと先進せんしん技術ぎじゅつを取とり入いれることが主しゅたる目的もくてきであった[61]。この時代じだいの藤原ふじわら京きょう(694)、平城京へいじょうきょう(710)、平安京へいあんきょう(794)に見みられる都城みやこのじょう構築こうちくは唐とうの条じょう坊ぼう制せいを採とり入いれたものであり、奈良なら時代じだいの律令制りつりょうせいも唐から朝あさの律令りつりょうという法体ほうたい系けいに倣ならって国家こっか統治とうちの仕組しくみを整備せいびしたものである[62]。また当時とうじの交易こうえきでシルクロードを経へて中国ちゅうごくから渡来とらいしたと思おもわれる、近東きんとうおよび地中ちちゅう海域かいいき（ギリシャ、ローマ等とう）文化ぶんか圏けんの貴重きちょうな工芸こうげい品ひんが正せい倉くら院いん宝物ほうもつ庫こで見みつかっている[63]。

906年ねんに唐とうが滅亡めつぼうすると、五ご代だい十じゅう国こく時代じだいを経へて960年ねんに宋朝そうちょうが中国ちゅうごくを統一とういつする。この政権せいけん安定あんていに伴ともなって、中国ちゅうごく・朝鮮ちょうせんの民間みんかん商人しょうにんが盛さかんに来航らいこうして民間みんかんの交易こうえきが増ふえると、日本にっぽんに大量たいりょうの宋そう銭ぜにが入はいってきた[64]。これに目めを付つけた平清盛たいらのきよもりは、大輪田おおわだ泊はくという港みなとを整備せいびして日にち宋そう貿易ぼうえきの拠点きょてんとし、宋そう銭ぜにを国内こくないに流入りゅうにゅうさせることで強力きょうりょくな平たいら氏し政権せいけんの財政ざいせい基盤きばんを築きずき、同時どうじに貨幣かへい経済けいざいを日本にっぽんに浸透しんとうさせるきっかけを作つくった[65]。これ以降いこう、日本にっぽんと諸しょ外国がいこくとの交易こうえきは貨幣かへいを介かいした「貿易ぼうえき」へと切きり替かわっていった。

律令制りつりょうせいにおける狭義きょうぎの交易こうえき

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古代こだい日本にっぽんの律令制りつりょうせいにおいては、官かん司しがその財政ざいせい運営うんえいに必要ひつような物品ぶっぴんを調達ちょうたつする手段しゅだんを「交易こうえき（きょうやく）」や「交関（こうかん）」と呼よんでいた。以下いか、これを狭義きょうぎの交易こうえきとして説明せつめいする。

律令りつりょう国家こっかの財政ざいせいは太政官だじょうかん以下いかの中央ちゅうおう官かん司しが運営うんえいする国家こっか財政ざいせいと国司こくしが運営うんえいする地方ちほう財政ざいせいは分離ぶんりされていたが、実態じったいにおいては国家こっか財政ざいせいの主しゅたる収入しゅうにゅうであった庸いさお調しらべは地方ちほうからの進上しんじょう物ぶつであり、その不足ふそく分ぶんは国司こくしが補填ほてんするなど両者りょうしゃは密接みっせつな関係かんけいにあった。こうした仕組しくみは大化たいかの改新かいしん以前いぜんに地方ちほうの国造くにのみやつこがヤマト王権おうけん（大和やまと朝廷ちょうてい）に対たいして行いった貢みつぎ納おさめに由来ゆらいすると考かんがえられている。

国家こっか財政ざいせいにおいても、地方ちほう財政ざいせいにおいてもその大だい部分ぶぶんは米べいや布ぬのなどの現物げんぶつによる徴収ちょうしゅうが収入しゅうにゅうとなり、現物げんぶつの支給しきゅうもしくは消費しょうひが支出ししゅつとなっていたが、この方法ほうほうが必かならずしも官かん司し・国司こくしが希求ききゅうする物資ぶっし、あるいは国司こくしが中央ちゅうおうから貢みつぎ納おさめを命めいじられた物資ぶっしが必要ひつよう量りょうを確保かくほできる仕組しくみではなかった。

このため、都とや国府こくふ所在地しょざいち、各地かくちの交通こうつうの要所ようしょにおいて形成けいせいされた市場いちばにおいて自己じこの余剰よじょうの財物ざいぶつをもって必要ひつような物資ぶっしを調達ちょうたつする交易こうえきが盛さかんに行おこなわれた。こうした古代こだい財政ざいせい上じょうの仕組しくみを「交易こうえき制せい（こうえきせい）」とも称しょうする。

特とくに租税そぜいとしての性格せいかくを持もつ庸いさお調ちょう・土ど毛げ（特とくに貢みつぎ納おさめを命めいじられた特産とくさん品ひん）の未み進すすむや質しつの低下ていかが目立めだち始はじめた8世紀せいき後期こうき以後いご、地方ちほうの国司こくしが中央ちゅうおうの要求ようきゅうを満みたすために正せい税ぜいなどを用もちいて現地げんちの豪族ごうぞくなどの有力ゆうりょく者しゃや生産せいさん者しゃから交易こうえきによって必要ひつような物資ぶっしを確保かくほすることが行おこなわれるようになる。またこれとは別べつに天皇てんのうが内蔵ないぞう寮りょうを介かいして内廷ないていに必要ひつような物品ぶっぴんを調達ちょうたつさせる「勅旨ちょくし交易こうえき」が行おこなわれ、『延喜えんぎ式しき』において制度せいど化かされた（諸国しょこく年ねん料りょう供きょう進しん）[66]。

9世紀せいきに入はいると、各国かっこくに割わり当あてられた物品ぶっぴん・数量すうりょうを正せい税ぜいによる交易こうえきで確保かくほ・進上しんじょうする交易こうえき雑ざつ物ぶつ（年とし料りょう交易こうえき進上しんじょう物ぶつ）や太政官だじょうかん符ふなどによって臨時りんじに交易こうえき・進上しんじょうを命めいじる臨時りんじ交易こうえき進上しんじょうなどが制度せいど化かされ、国家こっか財政ざいせいの中なかで大おおきな地位ちいを占しめることになった（「庸いさお調ちょう制せいから交易こうえき制せいへ」[67]）。

関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 外国がいこくにいる相手あいてと金銭きんせんの授受じゅじゅを介かいした商業しょうぎょう取引とりひきを行おこなう（輸出ゆしゅつや輸入ゆにゅう）場合ばあいは、一般いっぱんに貿易ぼうえきという[2][3]。

出典しゅってん

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  3. ^ コトバンク「交易こうえき」世界せかい大だい百科ひゃっか事典じてん 第だい２版はんの解説かいせつより
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