元素げんそ分析ぶんせき

元素げんそ分析ぶんせき（げんそぶんせき）は、化学かがく物質ぶっしつを構成こうせいする元素げんその種類しゅるいと構成こうせい比率ひりつを決定けっていする手法しゅほうのことをいう。

化学かがく物質ぶっしつはすべて元素げんそからできているので、構成こうせいする元素げんその種類しゅるいと量りょうを決定けっていすることはきわめて重要じゅうようである。元素げんそ分析ぶんせきには様々さまざまな方法ほうほうが存在そんざいするが、有機ゆうき合成ごうせいの分野ぶんやでは以下いかに記しるす燃焼ねんしょう法ほう（燃焼ねんしょう分析ぶんせき）を指さすのが一般いっぱん的てきである。また、無機むき化合かごう物ぶつには、主おもにICP-AES(原子げんし発光はっこう分析ぶんせき法ほう)、ICP-MS(質量しつりょう分析ぶんせき法ほう)，ESCA、SIMS、EPMAなどの手法しゅほうが用もちいられる。

有機物ゆうきぶつ

有機物ゆうきぶつの精密せいみつな元素げんそ分析ぶんせきには、リービッヒ、デュマ、プレーグルらによって開発かいはつされた燃焼ねんしょう法ほうが一般いっぱん的てきに用もちいられる。まずサンプルを酸素さんそを混合こんごうしたヘリウム気流きりゅう下かで、高温こうおんに加熱かねつし（酸化さんか炉ろ）、構成こうせい元素げんそのうち炭素たんそはCO₂、窒素ちっそはNOx、硫黄いおうはSOx、水素すいそはH₂Oに変換へんかんする。このガスを別べつの炉ろ（還元かんげん炉ろ）に移うつし、Cu存在そんざい下か加熱かねつするとNOxが還元かんげんされてN₂となる。このCO₂、N₂、H₂Oを定量ていりょうすることによって、それぞれの元素げんその比率ひりつを算出さんしゅつする。したがって酸素さんそは直接ちょくせつ測定そくていできない。また、燃焼ねんしょうして気化きかしない元素げんそは灰分かいぶんとして残のこる。

燃焼ねんしょう法ほうによる元素げんそ分析ぶんせきには数かずmg程度ていどの量りょうが必要ひつような上うえ、燃焼ねんしょうさせた試料しりょうは失うしなわれるため、貴重きちょうな物質ぶっしつの分析ぶんせきには向むいていない。しかし、アメリカ化か学会がっかいの発行はっこうする雑誌ざっしに新あらたな有機ゆうき化合かごう物ぶつを発表はっぴょうする場合ばあいは、0.4%以内いないの誤差ごさで計算けいさん値ちと一致いっちする元素げんそ分析ぶんせきのデータを添付てんぷしなければならない。そういった場合ばあいは、高こう精度せいどの質量しつりょう分析ぶんせきデータ (HRMS) と、NMRスペクトルやクロマトグラフィーなどの純度じゅんどを示しめすデータを、ともに提出ていしゅつする方法ほうほうが、燃焼ねんしょう法ほうの代かわりに用もちいられる。

無機物むきぶつ

溶液ようえき

ICP-AES，ICP-MSはほぼあらゆる元素げんそを高こう感度かんどで分析ぶんせきすることができるが、一般いっぱんに溶液ようえきでないと測定そくていできない。
AASは一般いっぱんにICPより微量びりょう域いきで高こう感度かんどであるが、高こう濃度のうど域いきで感度かんど低下ていかを生しょうじる。試料しりょうを溶液ようえきにしないと測定そくていできない。

固体こたい

ESCAはあらゆる元素げんそを検出けんしゅつできるが、試料しりょうは固体こたいに限かぎられ、また定量ていりょう性せいもあまりよくない。
EPMA (EDX、WDX) は、B以降いこうより重おもい元素げんそについて分析ぶんせき可能かのうであり、重じゅう元素げんそになるほど高こう感度かんど・高こう精度せいどになる。またX-Y方向ほうこうで元素げんそ濃度のうどのマップを描えがくことも可能かのうである。試料しりょうは固体こたいに限かぎられる。
スパーク放電ほうでんOESは微量びりょう元素げんそには高こう感度かんどであり、且かつ多た元素げんそを同時どうじに測定そくていできるが、高こう濃度のうど域いきでは感度かんど低下ていかを示しめす。導電性どうでんせいのある固体こたいでないと測定そくていできない。
SIMSは非常ひじょうに高こう感度かんどであり、同位どうい体たいの分析ぶんせきも可能かのうである。また深ふかさ(Z)方向ほうこうに元素げんそ濃度のうどのプロファイルを描えがくことも可能かのうである。しかし、X-Y方向ほうこうで元素げんそマップは作成さくせいできず、元素げんそのフラグメンテーションについての経験けいけんと知識ちしきが必要ひつようである。