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手術 - Wikipedia

手術しゅじゅつ

生体せいたい切開せっかいするなどおかせかさねてき方法ほうほうおこな医療いりょう技術ぎじゅつ
外科げか手術しゅじゅつから転送てんそう

手術しゅじゅつ(しゅじゅつ、英語えいご: surgical operation)とは、外科げかてき機器ききメスなどをもちいて患部かんぶ切開せっかいし、あるいはひくおかせかさねである内視鏡ないしきょうカテーテル治療ちりょうなどもちい、治療ちりょうてき処置しょちほどこすこと[1]通称つうしょう略称りゃくしょうとしてオペともばれる(どく: Operation由来ゆらい)。

概説がいせつ

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手術しゅじゅつとは、ようしゅてき創傷そうしょうあるいは疾患しっかん制御せいぎょする治療ちりょうほうであり、生体せいたいおかせかさねくわえるものをいう。手術しゅじゅつ外科げか医師いし担当たんとうすることがおおい。体調たいちょう不良ふりょう内科ないか受診じゅしんしたさい手術しゅじゅつ必要ひつようになった場合ばあい今後こんご受診じゅしん外科げかがれる。

手術しゅじゅつ目的もくてき

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手術しゅじゅつ目的もくてきは、病態びょうたい制御せいぎょおよびうしなわれた機能きのう回復かいふくである。直接的ちょくせつてきではなく間接かんせつてき治療ちりょうつながる手術しゅじゅつもある。

手術しゅじゅつ種類しゅるい

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拡大かくだい手術しゅじゅつ縮小しゅくしょう手術しゅじゅつ
外科医げかいらは「治療ちりょう成績せいせき向上こうじょう」などと主張しゅちょうしておかせかさねおおきい手術しゅじゅつ拡大かくだいさせつづけた歴史れきしがある。しかし1990年代ねんだい前後ぜんこうあたりから根拠こんきょもとづく医療いりょう(EBM)重要じゅうようせいひろ認識にんしきされるようになり、手術しゅじゅつ結果けっか疫学えきがくてきに(だい人数にんずう対象たいしょうに、客観きゃっかんてきに、統計とうけいてき科学かがくてきに)調査ちょうさしてみると、実際じっさいには拡大かくだい手術しゅじゅつ治療ちりょう成績せいせき向上こうじょう寄与きよしていないことや、反対はんたい身体しんたいがいあたえていることもおおいことがあきらかになり、拡大かくだい手術しゅじゅつたいする反省はんせいこえがった。またQOL重視じゅうしされるようになったことや、患者かんじゃがわ意識いしきたかまりもあり、2004ねん現在げんざいでは手術しゅじゅつ全体ぜんたいとして縮小しゅくしょうながれにある。
ていおかせかさね手術しゅじゅつ
内視鏡ないしきょう手術しゅじゅつ血管けっかんない手術しゅじゅつなど、従来じゅうらいよりもおかせかさねすくない手術しゅじゅつのこと。手術しゅじゅつよう器械きかい技術ぎじゅつてき改良かいりょう進歩しんぽにより、従来じゅうらいより安全あんぜん手術しゅじゅつおこなえるようになった。とく心臓しんぞうびょうではカテーテル治療ちりょう飛躍ひやくてき進歩しんぽにより、ひらきむね手術しゅじゅつ回避かいひしての救命きゅうめいじゅつ一般いっぱんてきとなっている。たとえばカテーテル装着そうちゃくする補助ほじょ人工じんこう心臓しんぞうである「Abiomed Impella(以下いかインペラ)」が2016ねん認可にんかされ日本にっぽんでも2017ねん9がつ保険ほけん収載しゅうさいされた。2018ねん1がつ現在げんざい全国ぜんこく31施設しせつでインペラをもちいた治療ちりょう可能かのうとなり、国立こくりつ循環じゅんかんびょう研究けんきゅうセンター救急きゅうきゅう救命きゅうめいりつ急性きゅうせい心筋梗塞しんきんこうそく場合ばあいで95%以上いじょうにまでげられた[2]。また心房しんぼうほそどうたいするカテーテルアブレーション治療ちりょうは、1998ねん高橋たかはしあつし日本にっぽんはじめて導入どうにゅうし、2006ねんから2017ねんまでの12年間ねんかんのカテーテルアブレーション総数そうすう横須賀共済病院よこすかきょうさいびょういんだけでもすでに1まんけんえている[3]
またコンピュータを手術しゅじゅつちゅう活用かつようするコンピュータ支援しえん外科げか一部いちぶ使つかわれるようになった。かがみ手術しゅじゅつかんしては、からだひょう切開せっかいそうこそちいさいものの、手術しゅじゅつ内容ないよう自体じたい従来じゅうらい手術しゅじゅつとほぼわらないため、本当ほんとうていおかせかさねであるかどうかは議論ぎろんのあるところである。また(すべての手術しゅじゅつえることではあるが)たとえ比較的ひかくてき安全あんぜん機器きき技法ぎほう開発かいはつされたとしても、それを使つか医師いしがそれに習熟しゅうじゅくしていなければ安全あんぜん手術しゅじゅつができるはずもないわけであり、未熟みじゅく執刀しっとうによる医療いりょう事故じこ発生はっせいしている。
ポリープ切除せつじょじゅつ(ポリペクトミー)
ポリペクトミーは、内視鏡ないしきょう手術しゅじゅつひとつ。大腸だいちょうなどのふと内視鏡ないしきょうはい消化しょうかかんにできるポリープひとし隆起りゅうきせい病変びょうへんを、内視鏡ないしきょう切除せつじょする手術しゅじゅつである。
姑息こそくてき手術しゅじゅつ
根治こんじのぞめない病態びょうたいにおいて、症状しょうじょう緩和かんわもしくは延命えんめい目的もくてきとしておこな手術しゅじゅつ姑息こそくてき手術しゅじゅつという。腹腔ふくこうないがんによる腸閉塞ちょうへいそくたいし、食物しょくもつ通過つうかできるようにおこなうバイパスじゅつなどがこれにたる。
たんひらきむねじゅつたん開腹かいふくじゅつ
治療ちりょう目的もくてきひらけむねまたは開腹かいふくしたものの、病変びょうへんおもいのほか進行しんこうしており手術しゅじゅつ適応てきおうがないと判断はんだんされたなど、外科げかてき治療ちりょう実施じっしすることなく手術しゅじゅつ終了しゅうりょうしたものをいう。
試験しけんてきひらきむねじゅつ
そもそも治療ちりょう目的もくてきでなく、診断しんだん確定かくていするためにひらけむね開腹かいふくする手術しゅじゅつ試験しけんてきひらきむねじゅつ開腹かいふくじゅつという。直接的ちょくせつてきにはまったく治療ちりょう目的もくてきはなく、外科げかてき治療ちりょうおこなうことなく手術しゅじゅつ終了しゅうりょうすることもある。

手術しゅじゅつまえ判断はんだん

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医師いし判断はんだん

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おおきな病院びょういんでは、個々ここ患者かんじゃたいする治療ちりょう戦略せんりゃくは、関連かんれん分野ぶんや専門せんもん参加さんかするカンファレンス合議ごうぎてき検討けんとうされる。手術しゅじゅつおかせかさねとリスクをともなうため、それに見合みあった治療ちりょう効果こうか見込みこめない場合ばあい治療ちりょうほう推奨すいしょうされる。かずじゅうねんまえはひとりの外科げか医師いし独断どくだん判断はんだんくだすなどということがおこなわれていた時代じだいもあったが、こうしたやりかたは問題もんだいしょうじさせがちなので次第しだいってきた。

  • じゅつぜん診断しんだん妥当だとうかどうか
  • 手術しゅじゅつによって病態びょうたい制御せいぎょできるかどうか
  • 患者かんじゃ全身ぜんしん状態じょうたい手術しゅじゅつによくえられるかどうか
  • 手術しゅじゅつ以外いがい治療ちりょうほうとの効果こうかやリスクの比較ひかく
  • どのような手術しゅじゅつてきしているか

おも以上いじょうてんをもとに手術しゅじゅつ妥当だとうせい検討けんとうされる。

医師いし患者かんじゃへの説明せつめい患者かんじゃがわ判断はんだん

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検討けんとう結果けっか原則げんそくとしてすべて患者かんじゃ本人ほんにんつたえられる。患者かんじゃはその情報じょうほうをもとに、どのような手術しゅじゅつけるのか、あるいはべつ治療ちりょうほう希望きぼうするのか、みずからの意志いし選択せんたくすることがもとめられる。近年きんねん日本にっぽんでもインフォームド・コンセント必要ひつようだとの理解りかい普及ふきゅうし、医師いしがじっくり説明せつめいをし、患者かんじゃじゅうふん理解りかいできたうえで、手術しゅじゅつけるのか あるいは けないのか、原則げんそくてきみずからの意志いし最終さいしゅう決断けつだんくだすべきだとされている。またひとつの病院びょういんによる説明せつめいだけではかたよりや判断はんだんミスがはいっている可能かのうせいもあるので、ねんのため医師いし説明せつめい意見いけんくこと、つまりセカンド・オピニオンもとめることも一般いっぱんてきになりつつある。

手術しゅじゅつなが

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じゅつぜん管理かんり

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手術しゅじゅつさいしては安全あんぜんせいたかめるため、可能かのうかぎ全身ぜんしん状態じょうたい良好りょうこうたもつことが必要ひつようである。原則げんそくまとには手術しゅじゅつまえ入院にゅういんのうえ全身ぜんしん状態じょうたい管理かんりおこなったうえで手術しゅじゅつおこなうが、これには例外れいがいもあり、近年きんねん白内障はくないしょう手術しゅじゅつ腹腔ふくこうきょう胆嚢たんのう摘出てきしゅつじゅつなど比較的ひかくてきおかせかさねちいさい手術しゅじゅつていおかせかさね手術しゅじゅつ)については日帰ひがえ手術しゅじゅつおこなわれている。

じゅつぜん計画けいかく

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手術しゅじゅつおこな医師いし術中じゅっちゅう全身ぜんしん管理かんりおこな麻酔ますい医師いし手術しゅじゅつかかわる看護かんごらによって患者かんじゃ手術しゅじゅつたいする評価ひょうかおこなわれ、しゅうじゅつ管理かんり計画けいかくてられる。

じゅつぜん処置しょち

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全身ぜんしん麻酔ますい予定よていされている場合ばあいは、麻酔ますい導入どうにゅうあやまえん予防よぼうするため、手術しゅじゅつまえ一定いってい期間きかんぜっ飲食いんしょくとなる。また腹腔ふくこうない手術しゅじゅつなどでは腸管ちょうかんない清浄せいじょう目的もくてき下剤げざい投与とうよされる。手術しゅじゅつ部位ぶいがかつてはおこなわれていたが、により皮膚ひふ感染かんせん増加ぞうかすることがあきらかになり、一部いちぶ例外れいがいのぞいて現在げんざいではおこなわれていない。手術しゅじゅつしつはい直前ちょくぜんに、気道きどう分泌ぶんぴつ抑制よくせい鎮痛ちんつう手術しゅじゅつたいする緊張きんちょう緩和かんわ目的もくてきに、こうコリンやく鎮痛ちんつうやく鎮静ちんせいやく投与とうよされる(これらをぜん投薬とうやくぶ)場合ばあいがあったが、最近さいきんではなるべくおこなわない方向ほうこうへとすすんでいる。

手術しゅじゅつしつへの入室にゅうしつ

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手術しゅじゅつおこなうための部屋へや手術しゅじゅつしつう。 なお手術しゅじゅつしつのことをアメリカ英語えいごoperating roomぶことから、その省略しょうりゃくかたちであるOR(オー・アール)、あるいは、日本語にほんごとの混交こんこうで「オペしつ」と場合ばあいがある。

欧米おうべい病院びょういんでは、一般いっぱんに、それぞれの診療しんりょう手術しゅじゅつしつのセクションがある。 日本にっぽん病院びょういんでは、一般いっぱんに、手術しゅじゅつしつ中央ちゅうおう集中しゅうちゅうがたであり中央ちゅうおう手術しゅじゅつとしていちカ所かしょにまとめられている。

手術しゅじゅつしつふく手術しゅじゅつエリアは清潔せいけつ区域くいきのため、入室にゅうしつするさい外来がいらいきんをなるべくすくなくする目的もくてきから、スタッフはじゅつころも着替きがえ、くつえ、帽子ぼうしとサージカルマスクを着用ちゃくようする。じゅつころもいろじゅつ赤色あかいろばかりをいろ残像ざんぞうしょうじることを考慮こうりょして一般いっぱんに「みどり」ないしは「あお」がほとんどである。

患者かんじゃ病棟びょうとうのストレッチャー(担架たんか)から手術しゅじゅつしつないのストレッチャーへうつえられる。症状しょうじょうによっては歩行ほこう入室にゅうしつ可能かのう場合ばあいもある。

執刀しっとう先立さきだって麻酔ますい施行しこうされる。麻酔ますいおも目的もくてきは、有害ゆうがい反射はんしゃ抑制よくせい疼痛とうつうのコントロールであり、麻酔ますい担当たんとう医師いしじゅつしゃとはべつくのが原則げんそくである(局所きょくしょ麻酔ますい手術しゅじゅつではじゅつしゃ麻酔ますい管理かんりねることもある)。手術しゅじゅつにおいて麻酔ますい担当たんとう患者かんじゃ全身ぜんしん状態じょうたい管理かんりしており、呼吸こきゅう循環じゅんかん管理かんりから体温たいおん調節ちょうせつ薬剤やくざい投与とうよ輸液調節ちょうせつ出血しゅっけつりょう監視かんし輸血ゆけついたるまであらゆる処置しょちいちになう。また必要ひつようおうじてじゅつしゃにもこれらの情報じょうほう提供ていきょうし、安全あんぜん手術しゅじゅつおこなえるようサポートする。

麻酔ますいには局所きょくしょ麻酔ますい浸潤しんじゅん麻酔ますい脊椎せきつい麻酔ますいかたまくがい麻酔ますい)と全身ぜんしん麻酔ますいがあり、目的もくてきにより選択せんたくされる。

  • 局所きょくしょ麻酔ますいからだのある部分ぶぶんのみに麻酔ますい通常つうじょう神経しんけい伝達でんたつ遮断しゃだんする薬剤やくざい注射ちゅうしゃされる。目的もくてき部位ぶい直接ちょくせつ麻酔ますいやく注射ちゅうしゃする(浸潤しんじゅん麻酔ますい)こともあれば、目的もくてき部位ぶい支配しはいする神経しんけい麻酔ますいやくかせる(伝達でんたつ麻酔ますい)こともある。
  • 全身ぜんしん麻酔ますい全身ぜんしんく=意識いしきがなくなる麻酔ますい通常つうじょう鎮痛ちんつう鎮静ちんせいすじ弛緩しかんの3つを麻酔ますいす。麻酔ますいをかけられるとまず意識いしきがなくなり、やがて自発じはつ呼吸こきゅうまる。すると麻酔ますい担当たんとうによって気管きかんない挿管され、人工じんこう呼吸こきゅう接続せつぞくされる。手術しゅじゅつちゅう継続けいぞくてき薬剤やくざい投与とうよされ、麻酔ますい維持いじされる。

手洗てあらい・ガウンテクニック

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外来がいらいきんによる感染かんせんふせぐため、手術しゅじゅつ無菌むきん領域りょういき清潔せいけつ)を形成けいせいしておこなわれる。手術しゅじゅつ操作そうさかかわるスタッフも清潔せいけつれる部分ぶぶん上肢じょうしぜん胸部きょうぶ腹部ふくぶ)は無菌むきんでなければならない。そのため、じゅつしゃである医師いし助手じょしゅつとめる医師いし内回うちまわり(器械きかいし)の看護かんごひとし全員ぜんいんが、ないしうで洗浄せんじょうおこない、滅菌めっきんガウンを着用ちゃくようし、滅菌めっきん手袋てぶくろ装着そうちゃくする。

手術しゅじゅつよう手洗てあらいはまず、指先ゆびさきからひじいたるまでを滅菌めっきんすい消毒しょうどくえきもちいて念入ねんいりに洗浄せんじょうする。手術しゅじゅつよう手洗てあらいの目的もくてきは、手指しゅし付着ふちゃくしている病原菌びょうげんきん除去じょきょである。手術しゅじゅつよう手洗てあらいの仕方しかたかく施設しせつごとに若干じゃっかん個性こせいがあり、古典こてんてきには滅菌めっきんブラシをもちいたこすあらいであるが、皮膚ひふ保護ほごなどを理由りゆう簡便かんべんあらいをおこなっている施設しせつもある。

手術しゅじゅつよう手洗てあらいののち滅菌めっきんされたガウンをる。手術しゅじゅつよう手洗てあらいをおこなったふたた汚染おせんされないように、介助かいじょしゃりて着用ちゃくようする。その滅菌めっきん手袋てぶくろ装着そうちゃくする。手袋てぶくろには一般いっぱん手袋てぶくろヨード配合はいごう抗菌こうきん手袋てぶくろ存在そんざいする。また、手袋てぶくろしょうじた穿孔せんこうによる手術しゅじゅつ部位ぶい感染かんせん低減ていげんするため、手袋てぶくろ二重化にじゅうかじゅう手袋てぶくろ)をおこな事例じれいもある[4]

麻酔ますい管理かんり医師いしや、外回そとまわりの看護かんご、ME(臨床りんしょう工学こうがく技士ぎしとう清潔せいけつ直接ちょくせつかかわらないもの手洗てあらいはおこなわない。

消毒しょうどく清潔せいけつ形成けいせい

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切開せっかいおこな部位ぶい中心ちゅうしんに、ポビドンヨードないしはアルコールによる十分じゅうぶん消毒しょうどくおこなわれる。消毒しょうどくわると、消毒しょうどくした部分ぶぶん周囲しゅうい滅菌めっきんされたシーツ(ドレープ)でおおい、清潔せいけつ形成けいせいする。

執刀しっとう

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こうして手術しゅじゅつおこな環境かんきょうととのったら執刀しっとう開始かいしされる。執刀しっとう参加さんかする医師いしは、たとえば一般いっぱんてき開腹かいふくひらきむね手術しゅじゅつ場合ばあいは3 - 4にん程度ていどである。大学だいがく病院びょういんだい病院びょういんであると4にん - 5にん程度ていど人手ひとですくない病院びょういんだと2人ふたりおこなうこともある。また手術しゅじゅつ介助かいじょ看護かんご参加さんかする。

まずじゅつしゃ執刀しっとう医師いし)によって皮膚ひふにメスがれられる。じゅつしゃじゅつまえ計画けいかく沿って手術しゅじゅつ進行しんこうする。実際じっさい所見しょけんじゅつまえ予想よそうことなる場合ばあいれい予想よそうより進行しんこうしていた、腫瘍しゅよう癒着ゆちゃく強固きょうこ)があり、術中じゅっちゅう判断はんだん計画けいかくじゅつしき)が変更へんこう追加ついかされることもある。ただしこの術中じゅっちゅう計画けいかく変更へんこう追加ついかについては患者かんじゃにあらかじめ可能かのうせいとして説明せつめいされていることがのぞましい。術中じゅっちゅう偶然ぐうぜん発見はっけんされたぜんべつ疾患しっかんについては、たとえ医学いがくてき妥当だとうせいがあったとしても、本人ほんにん(もしくは代理人だいりにん)の同意どういなしには治療ちりょうおこなうべきでないというのが2021ねん現在げんざい主流しゅりゅうかんがかたである。しかし、一般いっぱんてきにはおおおこなわれ、事後じご同意どういという形式けいしきっている場合ばあいおおい。

手術しゅじゅつ操作そうさ終了しゅうりょう術後じゅつご癒着ゆちゃく防止ぼうし細菌さいきんのこざんがん細胞さいぼう除去じょきょなどを目的もくてきに、あたためた生理せいりしょく塩水えんすいによるじゅつ洗浄せんじょうおこなわれる。また切開せっかいそう直下ちょっか術後じゅつごだか頻度ひんど癒着ゆちゃくこすが、おもかえ開腹かいふくおこな可能かのうせいがある帝王切開ていおうせっかいなどで癒着ゆちゃく防止ぼうしのシートざい使用しようされている。そう閉鎖へいさするまえには、手術しゅじゅつ使つかわれた器具きぐやガーゼ、はりなどの体内たいないのこざんふせぐため、おも手術しゅじゅつ補助ほじょ看護かんごによって入念にゅうねんかずわせがおこなわれる。これがわない場合ばあいそう閉鎖へいさせず、体内たいないのこ残物ざんぶつがないと確認かくにんできるまでさがつづけるのが原則げんそくである。また人的じんてきミスも考慮こうりょして、術後じゅつごすぐに手術しゅじゅつ部分ぶぶんのXせん写真しゃしん撮影さつえいし、のこ残物ざんぶつがないか確認かくにんすることもおおい。

そう閉鎖へいさ滅菌めっきんシーツ(ドレープ)がはずされ、麻酔ますいやく投与とうよ中止ちゅうしされ、患者かんじゃ麻酔ますいから回復かいふくする。

最終さいしゅうじゅつしき

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手術しゅじゅつ最終さいしゅうじゅつしきがどうなったか判断はんだんされ、記録きろくされる。

術後じゅつご管理かんり

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術後じゅつご手術しゅじゅつのダメージから回復かいふくするまで治療ちりょう継続けいぞくされる。手術しゅじゅつそう処置しょちおこなわれ、点滴てんてき投薬とうやく全身ぜんしん状態じょうたい改善かいぜんはかられる。術後じゅつご合併症がっぺいしょう予防よぼうには細心さいしん注意ちゅういはらわれるが、不幸ふこうにも発症はっしょうした場合ばあいには対症療法たいしょうりょうほうおこなわれる。

手術しゅじゅつ器具きぐ

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きゅう日本にっぽんぐん軍医ぐんい手術しゅじゅつ用具ようぐ

手術しゅじゅつ器具きぐ診療しんりょうにより、施設しせつにより、さらにはじゅつしゃにより多彩たさいきわめ、その様々さまざまである。ここではもっと基本きほんてき器具きぐにつき解説かいせつする。

  • メス:「手術しゅじゅつといえばメス」というほど認知にんちたか手術しゅじゅつ器具きぐだが、皮膚ひふ切開せっかいするさいもちいる程度ていどである。大小だいしょう様々さまざま形状けいじょうのメスがあり、じゅつしゃ医師いし)のこのみにより使つかけられる。刃先はさきとがったメスをとんががたなび、刃先はさきまるいメスをえんがたなぶ。
    • 電気でんきメス高周波こうしゅうは電流でんりゅうにより組織そしき機器きき止血しけつ切開せっかい同時どうじにできるのでもっと頻繁ひんぱん使つかわれる機器ききである。そのほか、刃先はさきほろ振動しんどうちょう音波おんぱメスや、医療いりょうようレーザでるレーザメスなどがある。
  • 剪刀せんとう:はさみのこと。刃先はさきがったきょく剪刀がこのんで使つかわれる。るだけでなく、組織そしきをはがしていく剥離はくり操作そうさにも活躍かつやくする。代表だいひょうてきなものはクーパー剪刀、メーヨー剪刀、メッツェンバウム剪刀など。
  • 鑷子せっし:ピンセットのこと。把持はじする組織そしきわせて様々さまざま形状けいじょうの鑷子があり、呼称こしょう様々さまざまである。スウェーデン鑷子、ドゥベーキー鑷子、アドソン鑷子、マッカンドー鑷子など。
  • 鉗子かんし組織そしき把持はじする器具きぐ。はさみのような外見がいけんで、手元てもとにストッパー(ラチェット)がついておりはさんだままにできる。はさむ、牽引けんいんする、つぶす、ひらく、すくう、遮断しゃだんする、など様々さまざま用途ようともちいられる。コッヘル鉗子、ペアン鉗子、ケリー鉗子、モスキート鉗子、アリス鉗子など。
  • はりいとをつけて縫合ほうごうもちいる。通常つうじょうは弯曲のついたきょくはりもちいられる。組織そしきによっておおきさ、ふとさ、弯曲具合ぐあい断面だんめん形状けいじょうことなる。一般いっぱん腸管ちょうかんとう組織そしき結合けつごうにはまるはり皮膚ひふ縫合ほうごうにはかくはりもちいる。裁縫さいほうばりのようにいととおして使つかうものや、はりのうしろにいといているはり縫合ほうごういとがある。
  • もちはりじしんきはり器具きぐ組織そしきわせるときもちいる。マッチューはり、ヘガールはりなど。
  • かぎこう: さきがカギじょうがっている器具きぐ組織そしきっかけて牽引けんいんするのにもちいられる。すじかぎ神経しんけいかぎ腹壁ふくへきかぎ(ザッテル)、肝臓かんぞうかぎなど。
  • 自動じどう縫合ほうごう吻合ふんごう自動じどう縫合ほうごう吻合ふんごうする器械きかい縫合ほうごういとわり自動的じどうてきかつ均一きんいつ縫合ほうごう可能かのうで、同時どうじ吻合ふんごうもでき、手技しゅぎ発展はってんとQOL向上こうじょう期待きたいされる。リニアステープラー、サーキュラーステープラーなど。
  • ひらきそうかいそうき手術しゅじゅつそうひろげておく器械きかい

手術しゅじゅつのリスクや合併症がっぺいしょう

編集へんしゅう

手術しゅじゅつ合併症がっぺいしょうおもなものは、そう感染かんせん感染かんせんしょういたみなど[5]合併症がっぺいしょう手術しゅじゅつをする部位ぶいによってさまざまである[5]。これらは医師いしから事前じぜん説明せつめいがあり、患者かんじゃ同意どういしょ署名しょめいしたうえ手術しゅじゅつおこなわれる。

そう感染かんせんとは手術しゅじゅつそうった部分ぶぶん縫合ほうごう)で細菌さいきんなどによる感染かんせんきることであり[5]ったあたりがあかれてうみたり、いたんだり、発熱はつねつなどの症状しょうじょう[5]。もしそう感染かんせんきたら、抜糸ばっし皮膚ひふ切開せっかいうみす、抗生こうせい物質ぶっしつ投与とうよなどがおこなわれる[5]

患者かんじゃ手術しゅじゅつていることがおおいたみもありはいおくたんおもうようにせなくなることがあるが、たんせずにいると、本来ほんらいならたんとともに体外たいがいされるはずのきんはいにとどまり、肺炎はいえんこしてしまうことがある[5]手術しゅじゅつ意識いしきてきたんすことが大切たいせつである[5]

手術しゅじゅつちゅういた麻酔ますいのおかげでいたみはいが、手術しゅじゅつ麻酔ますいれるとそうった箇所かしょ)がいたむことはある[5]いたくなった場合ばあいは、いためのくすり処方しょほうされる[5]患者かんじゃいたみをがまんする必要ひつようはなく、看護かんご医師いしいたいことをつたえ、いためを処方しょほうしてもらえばよい[5]

曜日ようびによる死亡しぼうリスクの差異さい

編集へんしゅう

英国えいこくでのだい規模きぼうし研究けんきゅうで、平日へいじつ手術しゅじゅつ週末しゅうまつ手術しゅじゅつ死亡しぼうりつおおきな差異さいることがかっており、これを「週末しゅうまつ効果こうか(weekend effect)」とんでいる。さらに平日へいじつなかでも週末しゅうまつかうほど手術しゅじゅつでの死亡しぼうりつたかくなる「平日へいじつ効果こうか(weekday effect)」(えいインペリアル・カレッジ・ロンドン公衆こうしゅう衛生えいせい学部がくぶのP. Aylinらが、2013ねん5がつ28にち発行はっこうえい医学いがく「BMJ」に発表はっぴょう)がられている。手術しゅじゅつけた曜日ようびによる死亡しぼうリスクを、月曜日げつようび基準きじゅんにして、火曜日かようびが7%ぞうたいして金曜日きんようびは44%ぞう土曜どよう日曜日にちようびは82%ぞうと、週末しゅうまつかうほど上昇じょうしょうしていた。とく死亡しぼうリスクがたかい5つのじゅつしき食道しょくどう切除せつじょじゅつ直腸ちょくちょう結腸けっちょう切除せつじょじゅつ冠動脈かんどうみゃくバイパスじゅつ腹部ふくぶ大動脈だいどうみゃくこぶ)では腹部ふくぶ大動脈だいどうみゃくこぶたいするステントグラフトじゅつ以外いがいの4じゅつしきで、週末しゅうまつかうほどリスク増大ぞうだい土曜どよう日曜日にちようび月曜日げつようびの2-3ばいになった。一方いっぽう死亡しぼうリスクがひくじゅつしきでは「平日へいじつ効果こうか」はられなかった[6][7]

日本にっぽんでも広島大学ひろしまだいがく今岡いまおかこうてるらは、StageI~III大腸だいちょうがん待機たいきてき手術しゅじゅつ対象たいしょうとした施設しせつ共同きょうどうによるうし解析かいせきで、手術しゅじゅつ金曜日きんようびけた患者かんじゃ金曜日きんようび以外いがいけた患者かんじゃより術後じゅつご合併症がっぺいしょう発生はっせいりつたかく、術後じゅつご入院にゅういん期間きかんながいことがわかった。この研究けんきゅう結果けっかは、Journal of Surgical Research2024ねん4がつごう掲載けいさいされた[7]

手術しゅじゅつ音楽おんがく関係かんけい

編集へんしゅう

おおくの医者いしゃ手術しゅじゅつちゅう音楽おんがくいているとされる[8][9]

割合わりあいとしては、2011ねんのイギリスでの調査ちょうさでは、90%のイギリスじん医師いし手術しゅじゅつちゅう音楽おんがくいている[10]。2021ねん医学いがくけいSNSのFigure 1英語えいごばん音楽おんがく配信はいしんアプリSpotify共同きょうどう調査ちょうさでは、外科医げかい外科げか研修けんしゅうの90%が手術しゅじゅつちゅう音楽おんがくいており、ロックとポップスがもっと人気にんきたかく、「音楽おんがく手術しゅじゅつしつ緊張きんちょうやわらげ、外科げかチーム全体ぜんたいをリラックスさせることで集中しゅうちゅうりょくたかめるのに役立やくだった」とコメントしている[11]

ジャンルについては、2018ねんにハイデルベルク大学だいがく医学部いがくぶ学生がくせい82にんった腹腔ふくこうきょう検査けんさなどの外科げか手術しゅじゅつのパフォーマンスに音楽おんがくジャンルがあたえる影響えいきょうられたが、音楽おんがくいている状態じょうたいほうがパフォーマンスが優位ゆういたかく、ラジオのミックス音楽おんがくやロックなどとくらべてクラシック音楽おんがくやヒップホップをいている状態じょうたいたかいパフォーマンスを発揮はっきしたとされた[12]

2009ねんから2018ねんまでの英語えいご論文ろんぶん横断おうだんてき調査ちょうさした結果けっかでは、ルーチン作業さぎょうにおいて注意ちゅうい散漫さんまんになる悪影響あくえいきょうがあるものの、患者かんじゃ医療いりょうチームのストレス緩和かんわなどの影響えいきょうほう有意ゆういたかいとしている。この調査ちょうさした結果けっかでは、クラシック音楽おんがく低音ていおんりょうから中音ちゅうおんりょうながすと、正確せいかくせいとスピードの両方りょうほう向上こうじょうしたとされている[13]

出典しゅってん

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  1. ^ 広辞苑こうじえん だいはん手術しゅじゅつ
  2. ^ ここまですすんだ心臓しんぞうびょうていおかせかさね医療いりょう 国立こくりつ循環じゅんかんびょう研究けんきゅうセンター”. 2024ねん4がつ21にち閲覧えつらん
  3. ^ 治療ちりょう実績じっせき とういんにおけるカテーテルアブレーション件数けんすう推移すいい”. 2024ねん4がつ21にち閲覧えつらん
  4. ^ 2じゅう手袋てぶくろ術中じゅっちゅう感染かんせんふせぐ その手袋てぶくろあなひらいていませんか? 日経にっけいメディカルオンライン 2016/1/26
  5. ^ a b c d e f g h i j がん情報じょうほう手術しゅじゅつ外科げか治療ちりょう
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  7. ^ a b 日本にっぽんでの大腸だいちょうがん手術しゅじゅつ転帰てんきつき木曜日もくようびvs.金曜日きんようび”. Care Net. 2024ねん4がつ19にち閲覧えつらん
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