平戸ひらど藩はん

平戸ひらど藩はん（ひらどはん）は、肥前ひぜん国こく松浦まつうら郡ぐんと彼杵そのぎ郡ぐんの一部いちぶ、および壱岐いき国こくを領りょうした藩はん。藩はん庁ちょうは平戸ひらど城じょう（現在げんざいの長崎ながさき県けん平戸ひらど市し）。

略りゃく史し

現在げんざいの長崎ながさき県けん北部ほくぶの豪族ごうぞくだった松浦まつうら党とうより台頭たいとうした松浦まつうら隆信たかのぶは、肥前ひぜん北部ほくぶ及および壱岐いきを征せいす戦国せんごく大名だいみょうとなった。その子この鎮信（法印ほういん）は天正てんしょう15年ねん（1587年ねん）、豊臣とよとみ秀吉ひでよしの九州きゅうしゅう征伐せいばつの折おり、旧領きゅうりょうである北松浦きたまつうら郡ぐん・壱岐いきを安堵あんどされた。続つづいて慶長けいちょう5年ねん（1600年ねん）、関ヶ原せきがはらの戦たたかいで東ひがし軍ぐんに与くみした松浦まつうら氏しは徳川とくがわ家康いえやすより6万まん3千せん石せきの所領しょりょうを安堵あんどされ、平戸ひらど藩はんが確立かくりつした。

4代だい重信しげのぶ（鎮信、天てん祥さち）は従弟じゅうていの信しんじ貞さだに今福いまふく領りょう1500石せきを分ぶん知ちした。重信しげのぶの治世ちせいの寛永かんえい18年ねん（1641年ねん）、オランダ商館しょうかんが平戸ひらどから長崎ながさきに移うつされる。幕府ばくふは例外れいがい措置そちとしてそれまで公儀こうぎ御料ごりょうの遠国おんごく奉行ぶぎょう支配しはい地ちにしか認みとめられていなかった糸いと割符わりふ制度せいどに平戸ひらど商人しょうにんが参加さんかすることを許ゆるしたものの、藩はん財政ざいせいは大おおきな痛手いたでを被こうむることとなった。以後いごは藩はんの内政ないせいを立たて直なおすべく検地けんちを行おこない、農みのり・漁りょう・商しょうの振興しんこうを推進すいしんして藩はん財政ざいせいの基礎きそを固かためた。貞享ていきょう4年ねん（1687年ねん）には家臣かしんの給与きゅうよ制度せいどを改革かいかくし、知行ちぎょう制せいから俸禄制せいへと切きり替かえた。

5代だい藩主はんしゅ棟むねは元禄げんろく2年ねん（1689年ねん）、弟おとうとの昌あきらに1万まん石せきを分与ぶんよし、平戸ひらど新田にった藩はんが立たて藩はんした。棟むねは外様とざま大名だいみょうでありながら奏者そうしゃ番ばん兼けん寺社じしゃ奉行ぶぎょうに累進るいしんした。しかしこれに伴ともなう出費しゅっぴと、宝永ほうえい4年ねん（1707年ねん）の平戸ひらど城じょう再建さいけんにより藩はん財政ざいせいは困窮こんきゅうするに至いたった。

9代だい清きよし（静しず山さん）は平戸ひらど藩はんで最大さいだいとなる「寛政かんせいの改革かいかく」を断行だんこう、国許くにもと・江戸えどの政治せいじと財務ざいむの大幅おおはばな組織そしき改革かいかくを行おこなった。静しず山さんは全ぜん278巻かんに及およぶ随筆ずいひつ集しゅう『甲子きのえね夜話やわ』を著あらわしたことで広ひろく知しられる。娘むすめの愛子あいこは明治天皇めいじてんのうの祖母そぼ。

12代だい詮かいの時代じだいに幕末ばくまつを迎むかえる。第だい二に次じ長州ちょうしゅう征伐せいばつの後のち、藩はん論ろんは倒幕とうばくに傾斜けいしゃし、慶応けいおう4年ねん（1868年ねん）戊辰戦争ぼしんせんそう勃発ぼっぱつ直後ちょくご、官軍かんぐん方かたへの参加さんかを明確めいかくにした。同時どうじに軍制ぐんせい改革かいかくにより洋式ようしきの銃じゅう部隊ぶたいを編成へんせいし、奥州おうしゅうへと転戦てんせんした。

明治めいじ4年ねん（1871年ねん）、廃藩置県はいはんちけんにより藩はん領りょうは平戸ひらど県けんとなったのち、長崎ながさき県けんに編入へんにゅうされた。藩主はんしゅ家かは華族かぞくに列れつした。

明治めいじ17年ねん（1884年ねん）、松浦まつうら家かは伯爵はくしゃくを叙爵じょしゃくされた。

歴代れきだい藩主はんしゅ

松浦まつうら家か

外様とざま　63200石せき→61700石せき→51700石せき→61700石せき

代だい	氏名しめい	官位かんい	在職ざいしょく期間きかん	享年きょうねん	備考びこう
1	松浦まつうら鎮信まつらしげのぶ	従したがえ四よん位い下か肥前ひぜん守もり	天正てんしょう15年ねん - 慶長けいちょう5年ねん頃ごろ 1587年ねん - 1600年ねん頃ころ	66
2	松浦まつうら久信ひさのぶまつらひさのぶ	従したがえ五ご位い下か肥前ひぜん守もり	慶長けいちょう5年ねん頃ごろ - 慶長けいちょう7年ねん 1600年ねん頃ごろ - 1602年ねん	32	父ちちの鎮信から家督かとくを継承けいしょうした時期じきは判然はんぜんとしていない。
3	松浦まつうら隆信たかのぶまつらたかのぶ	従したがえ五ご位い下か肥前ひぜん守もり	慶長けいちょう7年ねん - 寛永かんえい14年ねん 1602年ねん - 1637年ねん	46
4	松浦まつうら重信しげのぶまつらしげのぶ	従したがえ五ご位い下か肥前ひぜん守もり	寛永かんえい14年ねん - 元禄げんろく2年ねん 1637年ねん - 1689年ねん	82	寛文ひろふみ4年ねん（1664年ねん）、分ぶん知ちにより61700石せきに。隠居いんきょの後のちに諱いみなを曾祖父そうそふと同おなじ鎮信（しげのぶ）と改あらためる。
5	松浦まつうら棟とうまつらたかし	従したがえ五ご位い下か壱岐いき守もり	元禄げんろく2年ねん - 正徳まさのり3年ねん 1689年ねん - 1713年ねん	68	元禄げんろく2年ねん（1689年ねん）、分ぶん知ちにより51700石せきに。
6	松浦まつうら篤信あつのぶまつらあつのぶ	従したがえ五ご位い下か肥前ひぜん守もり	正徳しょうとく3年ねん - 享とおる保ほ12年ねん 1713年ねん - 1727年ねん	74	前ぜん藩主はんしゅの棟むねは異母いぼ兄けい。
7	松浦まつうら有信ありのぶまつらありのぶ	従したがえ五ご位い下か壱岐いき守もり	享とおる保ほ12年ねん - 享とおる保ほ13年ねん 1727年ねん - 1728年ねん	19
8	松浦まつうら誠まこと信しんまつらさねのぶ	従したがえ五ご位い下か肥前ひぜん守もり	享とおる保ほ13年ねん - 安永やすなが4年ねん 1728年ねん - 1775年ねん	68	前ぜん藩主はんしゅの有信ありのぶは異母いぼ兄けい。
9	松浦まつうら清きよしまつらきよし	従したがえ五ご位い下か壱岐いき守もり	安永やすなが4年ねん - 文化ぶんか3年ねん 1775年ねん - 1806年ねん	82	前ぜん藩主はんしゅの誠まこと信しんは祖父そふ。父ちちの政信まさのぶは早世そうせい。
10	松浦まつうら熈まつらひろむ	従したがえ五ご位い下か肥前ひぜん守もり	文化ぶんか3年ねん - 天保てんぽう12年ねん 1806年ねん - 1841年ねん	77
11	松浦まつうら曜まつらてらす	従したがえ五ご位い下か壱岐いき守もり	天保てんぽう12年ねん - 安政あんせい5年ねん 1841年ねん - 1858年ねん	47
12	松浦まつうら詮かいまつらあきら	従したがえ五ご位い下か肥前ひぜん守もり	安政あんせい5年ねん - 明治めいじ4年ねん 1849年ねん - 1871年ねん	67	前ぜん藩主はんしゅの曜は伯父おじ。明治めいじ3年ねん（1870年ねん）、支ささえ藩はん併合へいごうにより61700石せきに。

支ささえ藩はん

平戸ひらど新田にった藩はん

幕末ばくまつの領地りょうち

1870年ねんに編入へんにゅうされた平戸ひらど新田にった藩はんの領地りょうちも含ふくむ。

肥前ひぜん国こく
- 松浦まつうら郡ぐんのうち - 47村むら
- 彼杵そのぎ郡ぐんのうち - 7村むら
壱岐いき国こく一いち円えん
- 壱岐いき郡ぐん - 11村むら
- 石田いしだ郡ぐん - 11村むら

参考さんこう文献ぶんけん

児玉こだま幸みゆき多た・北島きたじま正ただし元もと監修かんしゅう『藩はん史し総覧そうらん』新人物往来社しんじんぶつおうらいしゃ　1977年ねん
『別冊べっさつ歴史れきし読本とくほん24 江戸えど三さん百ひゃく藩はん藩主はんしゅ総覧そうらん歴代れきだい藩主はんしゅでたどる藩政はんせい史し』新人物往来社しんじんぶつおうらいしゃ、1997年ねん ISBN 978-4404025241
中嶋なかじま繁雄しげお著ちょ『大名だいみょうの日本にっぽん地図ちず』文春ぶんしゅん新書しんしょ、2003年ねん ISBN 978-4166603527
八幡はちまん和郎かずお『江戸えど三さん〇〇藩はんバカ殿しんがりと名君めいくんうちの殿とのさまは偉えらかった?』光文社こうぶんしゃ新書しんしょ 2004年ねん

外部がいぶリンク

平戸ひらど（松浦まつうら壱岐いき守もり清きよし） | 大名だいみょう家か情報じょうほう - 武鑑ぶかん全集ぜんしゅう

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