広島ひろしま瓦斯がす電でん軌C形かたち電車でんしゃ

広島ひろしま瓦斯がす電でん軌C形かたち電車でんしゃ（ひろしまがすでんきCがたでんしゃ）は、広島ひろしま瓦斯がす電でん軌（後ごの広島電鉄ひろしまでんてつ）が1922年ねん（大正たいしょう11年ねん）に導入どうにゅうした電車でんしゃである。同社どうしゃ宮島線みやじません用ように導入どうにゅうされた鉄道てつどう線せん規格きかくの車両しゃりょうで、市内しない線せん（路面ろめん電車でんしゃ）の車両しゃりょうに対たいして床ゆかの地表ちひょうからの高たかさが高たかかったため、「高床たかゆか車しゃ」とも呼よばれた。

広島ひろしま瓦斯がす電でん軌C形かたち電車でんしゃ D形かたち・F形かたち電車でんしゃ
基本きほん情報じょうほう
製造せいぞう所しょ	梅うめ鉢はち鐵工てっこう所しょ
主要しゅよう諸しょ元もと
軌間きかん	1,435 mm（標準軌ひょうじゅんき）
電気でんき方式ほうしき	直流ちょくりゅう600 V（架空かくう電車でんしゃ線せん方式ほうしき）
設計せっけい最高さいこう速度そくど	C形かたち：40km/h D形かたち・F形かたち：45 km/h
編成へんせい定員ていいん	60人にん（座席ざせき36人にん）
車両しゃりょう重量じゅうりょう	C形かたち：16.7 t D形かたち：16.6 t F形かたち：16.0 t
全長ぜんちょう	C形かたち・D形かたち：11,384 mm F形かたち：11,695 mm
全幅ぜんぷく	2,642 mm
全ぜん高こう	4,410 mm
車体しゃたい	木造もくぞう
台車だいしゃ	C形かたち・F形かたち：NSK56-48A-2 D形かたち：ブリル76E-1
主しゅ電動でんどう機き	直流ちょくりゅう直ちょく巻まき電動でんどう機き C形かたち：TDK-9/C D形かたち：WH-532-B F形かたち：MB-86-A
主しゅ電動でんどう機き出力しゅつりょく	37.3 kW
駆動くどう方式ほうしき	吊つり掛かけ式しき
歯車はぐるま比ひ	C形かたち：4.27 (64:15) D形かたち：3.35 (67:17) F形かたち：4.28 (77:18)
制御せいぎょ装置そうち	直接ちょくせつ式しき

本ほん項こうでは、翌よく1923年ねん（大正たいしょう12年ねん）に導入どうにゅうされたD形かたち、1925年ねん（大正たいしょう15年ねん）に導入どうにゅうされたF形かたちの各かく形式けいしきについても併あわせて記述きじゅつする。

概要がいよう

宮島線みやじませんの開通かいつうに際さいして梅うめ鉢はち鐵工てっこう所しょ（後ごの帝國ていこく車輛しゃりょう工業こうぎょう）へC形かたちを2両りょう発注はっちゅうし、1922年ねん（大正たいしょう11年ねん）6月がつに竣功しゅんこうした。形式けいしき称号しょうごうは「C形かたち」であるが、車くるま番ばんは1・2であった。翌よく1923年ねん（大正たいしょう12年ねん）に、宮島線みやじませんの延伸えんしんに際さいして同おなじく梅うめ鉢はち鐵工てっこう所しょにおいてD形かたちを8両りょう新しん製せいした。車くるま番ばんは3 - 10とされ、C形かたちの続ぞく番ばんが付与ふよされた。さらに1925年ねん（大正たいしょう14年ねん）には再ふたたび梅うめ鉢はち鐵工てっこう所しょにおいてF形かたちを5両りょう新しん製せいした。車くるま番ばんは11 - 15で、C形かたち・D形かたちの続ぞく番ばんが付与ふよされている。

いずれも全長ぜんちょう11m級きゅうの、ほぼ同一どういつの車体しゃたいを備そなえる木造もくぞうボギぼぎー車しゃであるが、C形かたちにおいては台車だいしゃが日本車輌製造にっぽんしゃりょうせいぞう製せい・主要しゅよう機器ききが東洋電機製造とうようでんきせいぞう製せいと国産こくさん品ひんが採用さいようされたが、D形かたちは台車だいしゃがブリル (J.G.Brill) 社しゃ製せい・主要しゅよう機器ききがウェスティングハウス・エレクトリック (WH) 社しゃ製せいと主要しゅよう機器ききが輸入ゆにゅう品ひんで占しめられている点てんが異ことなり、F形かたちについては車体しゃたいの側面そくめん見付みつけがC形かたち・D形かたちとは一部いちぶ異ことなるほか、台車だいしゃは日本車両製造にっぽんしゃりょうせいぞう製せい・主要しゅよう機器ききは三菱電機みつびしでんき製せいに変更へんこうされた。スタイルは、前面ぜんめんは緩ゆるくカーブした丸まる妻つま3枚まい窓まど非ひ貫通かんつうで前面ぜんめん上部じょうぶ中央ちゅうおうに小型こがたの行先いきさき表ひょう字幕じまくが設置せっちされていた。後のちに表おもて字幕じまくを撤去てっきょして中央ちゅうおう窓まどの上辺うわべを左右さゆうの窓まどよりやや高たかくしており、また前面ぜんめん・側面そくめんとも全すべての窓まどの上辺うわべが緩ゆるくカーブした独特どくとくのスタイルだった。前ぜん照あきら灯とうは前面ぜんめん屋根やね上じょうに1灯とうを設置せっちしていた。塗ぬり色しょくは、初期しょきが上うえが灰色はいいろで下したが青あおのツートン、戦後せんごは上うえがクリーム色しょくで下したが紺色こんいろのツートンだった。

当時とうじ、市内しない線せんは水道すいどう管かんなどが腐食ふしょくするおそれがあることから線路せんろに電気でんきを流ながさず、集しゅう電でん装置そうちがダブルポール仕様しようであったが、宮島線みやじませんの車両しゃりょうはその心配しんぱいがなかったため、C形かたち・D形かたち・F形かたちはいずれも当初とうしょよりシングルポール仕様しようで落成らくせいした。

運用うんよう

1938年ねん（昭和しょうわ13年ねん）11月11日にちに発生はっせいした千田せんだ町まち車庫しゃこ（現げん・千田せんだ車庫しゃこ）火災かさいにおいて、C形かたち2・D形かたち8の2両りょうが被災ひさい焼失しょうしつした。翌よく1939年ねん（昭和しょうわ14年ねん）に形式けいしき称号しょうごう改訂かいていが実施じっしされ、C形かたちは1000形かたち1000、D形かたちは1010形かたち1010 - 1016、F形かたちは1020形かたち1020 - 1024とそれぞれ改称かいしょう・改あらため番ばんされた。なお、被災ひさいした2両りょうは1941年ねん（昭和しょうわ16年ねん）に流ながれ線形せんけいの前面ぜんめんが特徴とくちょうの半はん鋼はがね製せい車体しゃたいを新しん製せいして復旧ふっきゅう、1040形かたち1040・1041と形式けいしき区分くぶんされた。

1943年ねん（昭和しょうわ18年ねん）2月がつには宮島線みやじません電車でんしゃの集しゅう電でん装置そうちがポールから低ひくい櫓ろ状じょうの台座だいざを持もつパンタグラフへ変更へんこうされたが、同どう時期じきに1020形かたち1022（初代しょだい）は楽々園らくらくえん駅えき付近ふきんで制動せいどう装置そうちの故障こしょうを起おこし、暴走ぼうそうした末すえに脱線だっせん大破たいはした。同車どうしゃは西にし広島ひろしま車庫しゃこへ収容しゅうよう後ご解体かいたい処分しょぶんされたが、車くるま籍せきは戦後せんごまで残のこされた。

1951年ねんに車くるま番ばんのゼロ起おこり番ばんを廃はいする目的もくてきで改あらため番ばんが実施じっしされ、1000形かたち1000は1001へ、1010形かたち1010は1017へ、1020形かたち1020は1022（2代だい）へそれぞれ改あらため番ばんされた。前述ぜんじゅつした車くるま籍せきのみが残存ざんそんした状態じょうたいであった1022（初代しょだい）は書類しょるい上じょう1025へ改あらため番ばんされたのち、1952年ねん（昭和しょうわ27年ねん）3月がつ29日にち付づけで除籍じょせき処分しょぶんとなった。

1957年ねん（昭和しょうわ32年ねん）に1010形かたち1011 - 1014を従来じゅうらいの両りょう端はし扉とびら仕様しようから前まえ中ちゅう扉とびら仕様しように車体しゃたいを改造かいぞうし、同時どうじに間接かんせつ自動じどう制御せいぎょ化か・2両りょう編成へんせい化かといった各種かくしゅ改造かいぞうが実施じっしされた。また同年どうねん、1040形かたちを連接れんせつ車しゃに改造かいぞうするにあたり、1040形かたち2両りょうの性能せいのうを統一とういつする目的もくてきで1000形かたち1001と1040形かたち1041の主要しゅよう機器ききを相互そうごに振ふり替かえ、1010形かたち1015 - 1017と同一どういつ仕様しようとなった1001は1018と改あらため番ばんして1010形がたへ編入へんにゅうされた。

その後ご老朽ろうきゅう化かにより、1020形かたちが1966年ねん（昭和しょうわ41年ねん）4月がつまでに、1010形かたちが1968年ねん（昭和しょうわ44年ねん）1月がつまでにそれぞれ全車ぜんしゃ除籍じょせきされ、広島電鉄ひろしまでんてつに在籍ざいせきする木造もくぞう車しゃは全廃ぜんぱいとなった。

車くるま歴れき

	車くるま番ばん	竣功しゅんこう	改あらため番ばん （1939年ねん）	改あらため番ばん （1951年ねん）	廃車はいしゃ	備考びこう
C形かたち （1000形かたち）	1	1922年ねん6月がつ	1000	1001	1966年ねん4月がつ20日はつか	最終さいしゅう車しゃ番ばんは1018（1957年ねん4月がつ13日にち付づけ改あらため番ばん）
	2		–	–	–	千田せんだ町まち車庫しゃこ火災かさい被災ひさい車しゃ、1941年ねんに1040として復旧ふっきゅう
D形かたち （1010形かたち）	3	1923年ねん12月	1010	1017	1966年ねん4月がつ20日はつか
	4		1011	–	1968年ねん1月がつ10日とおか
	5		1012	–	1968年ねん1月がつ10日とおか
	6		1013	–	1967年ねん12月31日にち
	7		1014	–	1967年ねん12月31日にち
	8		–	–	–	千田せんだ町まち車庫しゃこ火災かさい被災ひさい車しゃ、1941年ねんに1041として復旧ふっきゅう
	9		1015	–	1967年ねん12月31日にち
	10		1016	–	1966年ねん4月がつ20日はつか
F形かたち （1020形かたち）	11	1925年ねん7月がつ	1020	1022 II	1966年ねん4月がつ20日はつか
	12		1021	–	1964年ねん9月がつ
	13		1022 I	–	1952年ねん3月がつ27日にち
	14		1023	–	1964年ねん9月がつ
	15		1024	–	1963年ねん4月がつ

参考さんこう文献ぶんけん

• 長船おさふね友則とものり 『広ひろ電でんが走はしる街まち今昔こんじゃく』 JTBパブリッシング ISBN 4-533-05986-4
• 青野あおの邦明くにあき・荒川あらかわ好夫よしお 『私鉄してつの車両しゃりょう3 広島電鉄ひろしまでんてつ』 保育ほいく社しゃ ISBN 4-586-53203-3
• 広島電鉄ひろしまでんてつ株式会社かぶしきがいしゃ 『広島ひろしまの路面ろめん電車でんしゃ65年ねん』 毎日新聞まいにちしんぶんニュースサービス社しゃ
• 『鉄道てつどうピクトリアル』 鉄道てつどう図書としょ刊行かんこう会かい
  • 窪田くぼた正実まさみ 「広島ひろしま鉄道てつどう宮島線みやじません」 私鉄してつ車両しゃりょうめぐり第だい6分冊ぶんさつ 1965年ねん7月がつ臨時りんじ増刊ぞうかん号ごう（通巻つうかん173号ごう） pp.76 - 82