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掛軸 - Wikipedia

掛軸かけじく

しょ東洋とうようきれ(きれ)やかみ表装ひょうそうしたもの

掛軸かけじく(かけじく)とは、しょ東洋とうようきれ(きれ)やかみ表装ひょうそうしたもの。日本にっぽんではゆかあいだなどにけて鑑賞かんしょうし、「ゆかけ」とわれることもある。後述こうじゅつのように、じく同様どうよう方法ほうほう保管ほかん鑑賞かんしょうされる書画しょが中国ちゅうごく美術びじゅつ古来こらい存在そんざいする[1]

掛軸かけじく
掛軸かけじく北条ほうじょう静香しずか さくら小禽しょうきん
中国ちゅうごく
中国ちゅうごく 掛軸かけじくたてじく
繁体字はんたいじ 掛軸かけじくたてじく
簡体字かんたいじ 挂轴、たて
発音はつおん記号きごう
朝鮮ちょうせん
ハングル족자
漢字かんじむらが
発音はつおん記号きごう
RRしきchokja
MRしきch'okcha
日本語にほんご
漢字かんじ 掛軸かけじく
しん字体じたい 掛軸かけじく
きゅう字体じたい 掛軸かけじく
かく名称めいしょう

仏教ぶっきょうひろめるための道具どうぐとして日本にっぽん流入りゅうにゅうしたのち日本にっぽん文化ぶんか融合ゆうごうし、室内しつない装飾そうしょく重要じゅうよう役割やくわりたしている。「ゆかけ」にちか掛軸かけじくとしては、茶道さどう茶室ちゃしつうちもちいるぜんかたりなどをいた、ややほそい「茶掛ちゃがけ」がある。それ以外いがいでは、仏壇ぶつだんなか使つかう「ふつけ」があり、本尊ほんぞんわきさむらい絵像えぞうえがかれていたり、名号みょうごう法名ほうみょうじく仕立したてられたりしている。

現代げんだいにおいても、むかしじく文化財ぶんかざいとして保護ほご展示てんじされていたり、骨董こっとうとして収集しゅうしゅう売買ばいばいされたり、肉筆にくひつ印刷いんさつあらたに制作せいさくされたり[2]している。

掛軸かけじく歴史れきし

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掛軸かけじく伝来でんらい
中国ちゅうごくきたそう時代じだい掛物かけものとして掛軸かけじくもちいられていた。「けてはいする」こともちいられ、礼拝れいはいよう意味合いみあいがつよくあったとおもわれる。きりばこれるとはこびに容易よういであることと、比較的ひかくてき複数ふくすう生産せいさん可能かのうであったため、掛軸かけじく仏教ぶっきょう仏画ぶつがようにまず普及ふきゅうはじめた。
掛軸かけじく発展はってん
日本にっぽんでは、すでに飛鳥あすか時代ときよ掛軸かけじく仏画ぶつがとしてはいってきているが、鎌倉かまくら時代ときよ後期こうき禅宗ぜんしゅう影響えいきょうによる水墨すいぼく流行りゅうこうから掛軸かけじく流行りゅうこうしていった。この流行りゅうこうにより、掛軸かけじくは「けてはいする」仏教ぶっきょう仏画ぶつが世界せかいから、花鳥風月かちょうふうげつ水墨すいぼくなど独立どくりつした芸術げいじゅつひんをさらによくせる補完ほかんひんとして発達はったつしていった。
室町むろまち時代ときよ以降いこう、「ちゃ」のせき座敷ざしきの「ゆかあいだ」にも水墨すいぼく掛軸かけじくおおられるようになった。千利休せんのりきゅう掛軸かけじく重要じゅうようせい言葉ことばにするようになると、ちゃあいするひとたちにより掛軸かけじく爆発ばくはつてき流行りゅうこうするようになった。来客らいきゃくしゃぶし昼夜ちゅうや時間じかん考慮こうりょして掛軸かけじくえる習慣しゅうかんまれた。来賓らいひん、その場面ばめん格式かくしきなどを掛軸かけじく表現ひょうげんすることが重要じゅうようされるかんがかたまれた。しんの(さらにぎょうくさ)、くだりの(さらにぎょうくさ)、くさの(さらにくだりくさ)などである。
掛軸かけじく普及ふきゅう
江戸えど時代じだい明朝みんちょうしき表具ひょうぐ日本にっぽんはいり、文人ぶんじんには文人ぶんじん表装ひょうそうなどで掛軸かけじくはなやいでいった。それと同時どうじに、表具ひょうぐ技術ぎじゅつ技巧ぎこういちじるしく発展はってんげた。また、大和やまとにしきにしき唐織からおりなど複雑ふくざつ文様もんよう織物おりものこのまれ、西陣にしじんなど織物おりもの産地さんち次々つぎつぎまれていった。18世紀せいきには、江戸えど中心ちゅうしんとする狩野かのとはべつじく京都きょうと画壇がだんさかえた。日本にっぽんたのしむという価値かちかんった人達ひとたち支持しじされ、掛軸かけじくもそれにつれ、芸術げいじゅつ価値かちたかめていった。肉筆にくひつ浮世絵うきよえ花開はなひらいた。明治めいじ大正たいしょう日本にっぽん隆盛りゅうせいにより、掛軸かけじくもさらにおおきく飛躍ひやくしていった。昭和しょうわはいると、官公庁かんこうちょう主催しゅさいであった「文展ぶんてん」(げん日展にってん)と「日本にっぽん美術びじゅついん」などの台頭たいとうにより日本にっぽん隆盛りゅうせいむかえた。
掛軸かけじくいま
現在げんざい非常ひじょうしつたか作品さくひん身近みぢかたのしめるだけの環境かんきょうととのっている。掛軸かけじく日本にっぽんほこれる伝統でんとう文化ぶんかのひとつをになっている。一般いっぱん家庭かていにおけるゆかあいだは、家族かぞくしんどころであり、ご来訪らいほうのお客様きゃくさまをもてなす大事だいじ場所ばしょだとされる。掛軸かけじくは、家主やぬしおもいを来客らいきゃくつたえ、先人せんじんおもいを子孫しそんつたえ、また、日本人にっぽんじんなが歴史れきしつちかわれた「よし」を表現ひょうげんする大切たいせつなお道具どうぐとなった。

掛軸かけじく種類しゅるい

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正月しょうがつまつゆかけ(1953ねん

仏画ぶつが肉筆にくひつ浮世絵うきよえ山水さんすい花鳥かちょう墨蹟ぼくせき古筆こひつ色紙いろがみ短冊たんざく画賛がさん手紙てがみである「消息しょうそく」、巻物まきものった一部いちぶである「断簡だんかん」などが表装ひょうそうされ、掛軸かけじくとなる。連作れんさくとなる複数ふくすう書画しょがおな表装ひょうそう仕立したてたものを「たいはば」(ついふく)とぶ。たいはばにはかきぐり竜虎りゅうこといった双幅そうふく観音かんのんさるづるなどをえがいた三幅対さんぶくつい四季しきえがいた四幅よのたい、12ヶ月かげつえがいたじゅうぶくたいなどがある。以上いじょうゆかあいだけるものという意味いみで、「ゆかけ」ともいう。

ゆかけ」以外いがい掛軸かけじくには、仏壇ぶつだんなかける掛軸かけじくがある。本尊ほんぞんわきさむらい絵像えぞう名号みょうごう法名ほうみょうじくがある。

庶民しょみんけに簡素かんそ安価あんか製造せいぞう販売はんばいされる掛軸かけじくもある。北関東きたかんとうではかつて、まれた子供こどもはつ正月しょうがつじくおく風習ふうしゅうがあった。はつ節句せっくいわひんとした地域ちいきもあった。絵柄えがら七福神しちふくじんなどのほか、男児だんじけには武者むしゃ軍人ぐんじん女児じょじには美人びじんこのまれたという。おも産地さんち栃木とちぎけん佐野さの地方ちほうで「佐野さのかけ」とばれた[3]

表装ひょうそう様式ようしき

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大和やまと表装ひょうそう文人ぶんじん表装ひょうそう

掛軸かけじく様式ようしき茶道さどうとも確立かくりつした。すわって見上みあげるときにうつくしくえるように寸法すんぽうさだめられており、ゆかあいだおおきさやたたみおおきさを考慮こうりょしてつくられる。一般いっぱん関東かんとうでは「上一文字かみいちもんじ」のたけが「下一文字しもいちもんじ」のたけの2ばい、「てん」のたけが「」のたけの2ばいといったように、上部じょうぶ下部かぶ比率ひりつが2たい1になっているが、関東かんとうよりもたたみおおきな関西かんさいでは、2たい1よりも上部じょうぶ若干じゃっかんみじかめにつくられる。

表装ひょうそう材質ざいしつとしてかみあるいは、金襴きんらんぎんらん緞子どんす(どんす)、しゃ(しゃ)といったきれ(きれ)がもちいられる。「一文字ひともじ」と「ふうたい」はきょうきれ(ともぎれ)がもちいられ、「ちゅうまわし」(ちゅうまわし)にはべつ素材そざいもちいられ変化へんかをつけている。通常つうじょう、「一文字ひともじ」に最上さいじょう素材そざいもちいられる。これらのきれわせが画面がめん一層いっそうてる。

大和やまと表具ひょうぐ
しめした様式ようしきうえてん)・ちゅうまわし・した)のさんだんかれ、うえにはふうたいという帯状おびじょうのものをいちついげる。もっと一般いっぱんてき様式ようしきである。
文人ぶんじん表具ひょうぐふくろ表具ひょうぐ
大和やまと表具ひょうぐ上下じょうげ天地てんち)とふうたいりゃくし、ちゅうまわしの上側うわがわしたがわばした様式ようしき
茶掛ちゃがけ表具ひょうぐ利休りきゅう表具ひょうぐ
ちゅうまわしのはばせばめた様式ようしき茶席ちゃせきなどにもちいる表具ひょうぐ様式ようしき
本尊ほんぞん表具ひょうぐふつ表具ひょうぐ神聖しんせい表具ひょうぐ
上下じょうげきれちゅうまわしの左右さゆう外側そとがわをもかこむようにした様式ようしきは、神仏しんぶつかんするものについてのみもちいる。

じく材料ざいりょうには象牙ぞうげ紫檀したんカリン堆朱ついしゅ(ついしゅ)、水晶すいしょうなどがもちいられるが、画題がだいにより、南画なんがには木製もくせいじくはし仏画ぶつがには金属きんぞく水晶すいしょうじくはしなどとえらばれる。

また、書画しょが表装ひょうそうして掛軸かけじく仕立したてることをじくそうという。

掛軸かけじく各部かくぶ名称めいしょう意味いみ

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掛軸かけじく各部かくぶ名称めいしょう

掛軸かけじく自分じぶん自身じしん環境かんきょうあらわしている。自分じぶん自身じしん掛軸かけじく本紙ほんし部分ぶぶん本紙ほんしにはうつ四季しきうつろいゆく風景ふうけいはな々、おとずれたひと家族かぞくへのおもい、自分じぶんへのいましめなどがえがかれている。

  • 本紙ほんしうえにはてん、そして半月はんつきつきあらわし、ふうたいふうあらわす。
  • 木々きぎそそいだあめふうになびきとなる。
  • そのつゆあつまりかわとなり、土壌どじょう木々きぎはぐくむ。
  • 本紙ほんしよりしたにはがあり、軸木じくぎじくさき天然てんねんおよ陶器とうき)で土壌どじょう木々きぎ表現ひょうげんする。

掛軸かけじくあつか

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掛軸かけじくけるさいには、先端せんたんがYじょうあるいはUじょうになっている矢筈やはずあるいは掛物かけものざおばれる道具どうぐもちいる。フックやくぎなどがたか位置いちにある場合ばあいには、たかさを調節ちょうせつ可能かのう自在じざいかけかいしてける。

ける手順てじゅん
  1. まきいとぐち掛軸かけじく外側そとがわかれたひも)をいてかけいとぐち掛軸かけじく上部じょうぶひも)の右側みぎがわせる。
  2. 掛軸かけじく左手ひだりてち、右手みぎて矢筈やはずつ。矢筈やはず金具かなぐかけいとぐちける。
  3. かけいとぐちくぎやフックにけ、ゆっくりとひろげる。
  4. わったところで左右さゆうのバランスをる。ふうたいればしたひろげる。必要ひつようおうじて風鎮ふうちんじくさきける。
はず手順てじゅん
可能かのうならば2人ふたりおこなうのがよい。1人ひとりおこな場合ばあいは、あらかじめ矢筈やはずかべてかけておく。
  1. 両手りょうてじくをゆっくりとる。きつくくと掛軸かけじくいためる。
  2. 本紙ほんしんだあたりで、左手ひだりて掛軸かけじくじゅんしゅち、右手みぎて矢筈やはずち、かけいとぐちくぎなどからはずす。
  3. 掛軸かけじくらないよう注意ちゅういしながら上部じょうぶしたろし、矢筈やはずはずしてく。そして最後さいごまでる。
  4. ふうたいのある掛軸かけじく場合ばあい、まずかって左手ひだりてがわふうたい右手みぎてがわふうたいしたみ、右手みぎてがわふうたい左手ひだりてがわふうたいうえせるようにげる。ふうたいさきあま場合ばあいにはわせてげる。
  5. 巻紙まきがみはば5 - 7cmぐらい、ながさ20 - 25cmぐらいのかみ)がある場合ばあいにはそれの一端いったん掛軸かけじくかたちける。
  6. 掛軸かけじく左手ひだりてに、まきいとぐち右手みぎてり、まきいとぐちを(掛軸かけじくいてきたのとおなきに)ひだりからみぎに3かいく。仏画ぶつが名号みょうごうとうではまきいとぐちながめになっているので、それ以上いじょう場合ばあいがある。まきいとぐちみぎはしつくってかけいとぐちみぎからくぐらせ、左下ひだりしたとおす。
  7. もめつつ)でつつみ、じくばこおさめる。

掛軸かけじく湿気しっけ乾燥かんそうよわいため、きりばこなどにおさめて温度おんど変化へんかすくない場所ばしょ保管ほかんするとい。きりばこには香木こうぼくひとしもちいた防虫ぼうちゅうともおさめる。ナフタレンひとし防虫ぼうちゅうざいじくさきいためる場合ばあいがある。

掛軸かけじく収納しゅうのう方法ほうほう

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掛軸かけじく湿度しつどたか場所ばしょ保管ほかんすると、しみ、むし、かび、などの原因げんいんになる。また、よごれやきずなどによって大切たいせつ美術びじゅつひん価値かち半減はんげんしてしまう。掛軸かけじく保存ほぞん取扱とりあつかいに注意ちゅういすればながたのしむことが出来できる。掛軸かけじく収納しゅうのう方法ほうほうおおきくけてみっつある:

きりばこ収納しゅうのう
きりざいかるくて丈夫じょうぶで、保湿ほしつ耐火たいかせいたかいため、骨董こっとうひん高級こうきゅうひん保存ほぞんするのによく使つかわれる。また、きりばこ内部ないぶ湿度しつど一定いっていたもち、むしけない成分せいぶんはっしているため、掛軸かけじく保存ほぞんするのに最適さいてきだといわれる。
重箱じゅうばこ収納しゅうのう
きりばこ表面ひょうめんぬりばこ収納しゅうのうすることにより、さらに防湿ぼうしつ防虫ぼうちゅう効果こうかたかめる。
ふとしまき収納しゅうのう
掛軸かけじくをしまうとき注意ちゅういてんは、きつくきすぎないこと。ふとしまきといわれるきりしんざいじくぼうけてくことにより、掛軸かけじくをしまうとき自然しぜんきがやわらかくなり、本紙ほんしれにくくする。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 中国ちゅうごく書画しょがじくには、何故なぜしるしされているのでしょうか?やさしく解説かいせつ!みんなの中国ちゅうごく美術びじゅつ入門にゅうもん監修かんしゅう本郷ほんごう美術びじゅつ骨董こっとうかん)2018ねん1がつ14にち閲覧えつらん
  2. ^ じく肉筆にくひつ印刷いんさつ見分みわかたじくそう本家ほんけ株式会社かぶしきがいしゃベスト徽章きしょう(2018ねん1がつ14にち閲覧えつらん
  3. ^ 藤田ふじたこうさん子供こどもじく 風習ふうしゅうたどる◇はつ正月しょうがつ縁起物えんぎもの 北関東きたかんとうの「佐野さのかけ」を40ねん収集しゅうしゅう日本経済新聞にほんけいざいしんぶん朝刊ちょうかん2018ねん1がつ12にち文化ぶんかめん

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 宇佐見うさみただしはち監修かんしゅう山本やまもとはじめちょ『裱具のしおり増補ぞうほ改訂かいていばんげいそうこうどう、1974ねん
  • 湯山ゆやまいさむ編著へんちょ表具ひょうぐのしるべ』だいはん表装ひょうそう美術びじゅつ研究けんきゅうかい、1968ねん
  • 古賀こが健蔵けんぞう監修かんしゅう表装ひょうそう大鑑たいかんぜん4かん柳原やなぎはら書店しょてん、1987ねん

関連かんれん項目こうもく

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