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新字体 - Wikipedia

しん字体じたい

日本にっぽん戦後せんご簡易かんいされた漢字かんじ字体じたい

しん字体じたい(しんじたい)は、日本にっぽんだい世界せかい大戦たいせん告示こくじされた漢字かんじひょうしめされた漢字かんじ字体じたいのうち、従前じゅうぜん活字かつじことなるかたちとなった簡易かんい字体じたい略字りゃくじ異体いたい)をす。しん字体じたいたいし、日本語にほんごでそれ以前いぜん慣用かんようされていた漢字かんじ字体じたいを「きゅう字体じたい」という。


漢字かんじ
書体しょたい
篆刻てんこく毛筆もうひつ
かぶとこつぶん 金文きんぶん 篆書てんしょ
古文こぶん
隷書れいしょ 楷書かいしょ
行書ぎょうしょ
草書そうしょ
木版もくはん活版かっぱん
宋朝そうちょうたい 明朝体みんちょうたい 楷書かいしょたい
字体じたい
構成こうせい要素ようそ
筆画ひっかく 筆順ひつじゅん 偏旁へんぼう 六書りくしょ 部首ぶしゅ
標準ひょうじゅん字体じたい
せつぶんかい篆書てんしょたい
さましょ 石経いしきょう
かん字典じてんたいきゅう字体じたい
しん字体じたい しん字形じけい
国字こくじ標準ひょうじゅん字体じたい つね用字ようじ字形じけいひょう
漢文かんぶん教育きょういくよう基礎きそ漢字かんじ
通用つうよう規範きはん漢字かんじひょう
国字こくじ問題もんだい
当用とうよう常用漢字じょうようかんじ
同音どうおん漢字かんじによるきかえ
繁体字はんたいじ正体しょうたい - 簡体字かんたいじ
漢字かんじ廃止はいし復活ふっかつ
漢字かんじ文化ぶんかけん
なかあさこしだいしん
派生はせい文字もじ
国字こくじ 方言ほうげん のりてん文字もじ
仮名かめい たけし おんなしょ
ちぎり文字もじ おんな文字もじ 西にしなつ文字もじ
字音じおん

概要がいよう

編集へんしゅう

しん字体じたい明治めいじからつづ文字もじ改革かいかくながれで誕生たんじょうした。すべてが戦後せんごあたらしく考案こうあんされたのではなく、従来じゅうらいひろ手書てがきで使つかわれていた誤字ごじ・譌字略字りゃくじ正式せいしき昇格しょうかくさせたものがおお[1]1923ねん臨時りんじ国語こくご調査ちょうさかい発表はっぴょうした「常用漢字じょうようかんじひょう」に略字りゃくじひょうふくまれるなど、戦前せんぜんから略字りゃくじ導入どうにゅう構想こうそうされていた。

1946ねん内閣ないかく告示こくじした「当用漢字とうようかんじひょう」では131簡易かんい字体じたいしめされ、1949ねん告示こくじした「当用漢字とうようかんじ字体じたいひょう[2]により、やく500簡易かんい字体じたいとなった[3]1951ねんには当用漢字とうようかんじ以外いがい名付なづけに使つかうことができる漢字かんじしめす「人名じんめいよう漢字かんじ別表べっぴょう」が告示こくじされたが、そのなかには「彦」「みのる」「さとし」「らん」のように当用漢字とうようかんじわせて字体じたい整理せいりほどこされた簡易かんい字体じたいのものがあった。1950年代ねんだい以降いこう活字かつじあらためこくすすむと、新聞しんぶん書籍しょせきなど印刷物いんさつぶつ漢字かんじはほぼ全面ぜんめんてきしん字体じたいえられた。

当用漢字とうようかんじは、原則げんそくとして印刷いんさつ文字もじ字形じけい筆写ひっしゃ文字もじ字形じけいをできるだけ一致いっちさせることを目指めざした。かならずしも筆写ひっしゃてきしていない従来じゅうらい活字かつじ字体じたいを、画数かくすうおおさなどを理由りゆう略字りゃくじたい俗字ぞくじたい変更へんこうした。

一方いっぽう1981ねん制定せいていの「常用漢字じょうようかんじひょう」(2010ねん改定かいてい)はしゅとして印刷いんさつ文字もじめんから検討けんとうされ、明朝体みんちょうたい活字かつじ一種いっしゅもちいて字体じたいれいしめしている(通用つうよう字体じたい)。通用つうよう字体じたいは(狭義きょうぎの)しん字体じたいをすべて蹈襲とうしゅうし、1981ねん追加ついかされたしゅでは、しん字体じたいじゅんずるものが採用さいようされた。さらに1981ねん常用漢字じょうようかんじひょう告示こくじさいには「」を簡略かんりゃくした「」を通用つうよう字体じたいとして採用さいようした。

しん字体じたいは、きゅう字体じたいつくり(つくり)を同音どうおん画数かくすうすくない文字もじえる、複雑ふくざつ部分ぶぶん省略しょうりゃくした記号きごうえるなどの手法しゅほう簡略かんりゃくしたものである。しん字体じたいたいし、明治めいじ以来いらい使用しようされてきた漢字かんじ字体じたいは「きゅう字体じたい」「せい字体じたい」「かんひろし字典じてんからだ[注釈ちゅうしゃく 1]」などとしょうされる。そもそも当用漢字とうようかんじ制定せいてい以前いぜんは、学校がっこう使用しようされる教科書きょうかしょにおいても複数ふくすう字体じたい併用へいようされるなど、字体じたいについて厳密げんみつ統一とういつがなされていなかった。ゆえに個々ここ文字もじについてきゅう字体じたいとみなされる字体じたいかならずしも一定いっていではないものの、おおまかにはかんひろし字典じてんたい一致いっちし、台湾たいわん香港ほんこんなどでもちいられている繁体字はんたいじにおおむね一致いっちする。

しん字体じたい滲透しんとう漢字かんじによりがあり、しん字体じたいおお使つかわれるがぎゃく場合ばあいもある。

当用漢字とうようかんじひょう」まえがきで固有名詞こゆうめいしは「べつかんがえることとした」とされたことから、人名じんめい地名ちめいなどではきゅう字体じたい異体いたい使用しよう継続けいぞくされており、JIS漢字かんじコードUnicodeでもしん字体じたいとその字体じたい混在こんざい並存へいそんするため、混乱こんらんしょうじることもある。

当用漢字とうようかんじ常用漢字じょうようかんじ

編集へんしゅう

当用漢字とうようかんじは、1920年代ねんだいから具体ぐたいしつつあった漢字かんじ略字りゃくじあんをもとに国語こくご審議しんぎかい制定せいていし、1946ねん11月16にち内閣ないかくによって告示こくじされた1850漢字かんじである。このさいに、当用漢字とうようかんじがい漢字かんじ使用しよう制限せいげんされた。つづいて1949ねんに「当用漢字とうようかんじ字体じたいひょう」が告示こくじされ、ここでは楷書かいしょ草書そうしょ使用しようされていた字体じたいなどをもとに、おおくのしん字体じたい採用さいようされている。

1948ねん1がつ1にち戸籍こせきほう改正かいせいにより、当用漢字とうようかんじがい漢字かんじ命名めいめい使用しようできないとされたが、これにたいする国民こくみんからの不満ふまんおおきかったため、1951ねん5月25にちより人名じんめいよう漢字かんじが「人名じんめいよう漢字かんじ別表べっぴょう」として追加ついか指定していされるなど、使用しよう可能かのう漢字かんじ制限せいげんはいくぶん緩和かんわされた。

1981ねんに、当用漢字とうようかんじ後継こうけいとして常用漢字じょうようかんじ制定せいていされた。常用漢字じょうようかんじ当用漢字とうようかんじとはことなり、ひょうがい漢字かんじ使用しよう制限せいげんするものではなく、かりやすい文章ぶんしょうくための漢字かんじ使用しよう目安めやすとされるものである。

拡張かくちょうしん字体じたい

編集へんしゅう

しん字体じたいは、本来ほんらい当用漢字とうようかんじ常用漢字じょうようかんじ人名じんめいよう漢字かんじのみに適用てきようされるものであるから、これらの漢字かんじひょうふくまれない「ひょうがい漢字かんじ」にはおよばない。たとえば、「きょ」は「きょ」に簡略かんりゃくされたが、「けやき」はおなじ「きょ」の部分ぶぶんふくんでいながらもひょうがい漢字かんじであるため簡略かんりゃくされない。

しかし1950年代ねんだいには、常用漢字じょうようかんじひょう採用さいようされているしん字体じたいりゃくかたを、改定かいていまえ常用漢字じょうようかんじひょうにない漢字かんじにもおよぼした字体じたいである「拡張かくちょうしん字体じたい」が出現しゅつげんした。当初とうしょ新聞しんぶん書体しょたいとしてもちいられ、朝日新聞あさひしんぶんでは独自どくじおもて外字がいじ簡略かんりゃく徹底てっていした字体じたい朝日あさひ文字もじ)をつく使用しようしていた時期じきがあった。

拡張かくちょうしん字体じたいはその1983ねん制定せいていされたJIS X 0208-1983(83JIS、いわゆる「しんJIS」)にも採用さいようされた。おもて外字がいじひろ常用漢字じょうようかんじにならって簡略かんりゃくされ、「けやき」を簡略かんりゃくした「﨔」という字体じたいもある。また「なだ」は「さんずい」以外いがい部分ぶぶんが「なん」とおなじようにりゃくされたが、2014ねん制定せいていされたJIS X 0213-2014では「くさかんむり」じょう部首ぶしゅが「廿にじゅう」のかたちあらためられている。

簡略かんりゃく仕方しかた

編集へんしゅう

漢字かんじ字形じけい繁雑はんざつなため、だい世界せかい大戦たいせんまえから筆記ひっきにはおおくの略字りゃくじ通用つうようしていた。「もん」・「だい」がしばしば略字りゃくじ「门」・「」でかれるのと同様どうようである。個別こべつ簡略かんりゃくおこなったため、たとえばおなじ「しんにょう」をふく漢字かんじでも、「みち」・「つう」は簡略かんりゃくされているが、「へりくだ」・「逕」など20世紀せいきちゅう当用漢字とうようかんじ常用漢字じょうようかんじ人名じんめいよう漢字かんじとされなかった漢字かんじ基本きほんてき簡略かんりゃくされていない。

きゅう字体じたいしん字体じたい対応たいおうれい
きゅう字体じたい きゅう からだ てつ あずか がく だい くに せき しん さわ しお さくら ひろ あたり はま たから めぐみ けん
しん字体じたい きゅう からだ てつ あずか がく だい くに せき しん さわ しお さくら ひろ あたり はま たから めぐみ けん

字体じたい統一とういつ使つか

編集へんしゅう

2とお以上いじょう字体じたい使つかわれていた漢字かんじ統一とういつしたもの。「こう」のには「こう」という字体じたいもあるが「こう」に統一とういつされた。

手書てがきのかたちわせたものもある。「みち」などの「しんにょう」は活字かつじではふたてん筆記ひっきではひとてんかれていたため、原則げんそくとしてひとてん統一とういつされた。また、「あお」は「つき」の部分ぶぶん活字かつじでは「えん」、筆記ひっきでは「つき」とかれていたため「つき」に統一とういつされた。なお漢字かんじの「えん」は「えん」とかれていたため「つき」と混同こんどうすることはない。

はん」・「みこと」・「たいら」・「えき」などは、「ソ」の部分ぶぶん活字かつじではぎゃくの「ハ」となっていたが「ソ」に原則げんそく統一とういつされた。「きずな」・「ひらめ」などは現在げんざいも「ハ」のかたちのままであるものの、筆記ひっきでこれにならう必要ひつようはない。

固有名詞こゆうめいしでの例外れいがい

編集へんしゅう

字体じたい統一とういつ徹底てっていしたものではなく、前述ぜんじゅつのとおり、地名ちめい人名じんめいなどの固有名詞こゆうめいしではある程度ていど例外れいがい許容きょようされている。

かずら」の葛飾かつしかにおける字体じたいが「 」(ひとかずら)であり、葛城かつらぎ字体じたいは「 」(かずら)である。JIS X 0208例示れいじ字形じけいは「 」(かずら)とされているが、JIS X 0213:2004では「 」(ひとかずら)に変更へんこうされ、2006ねん以降いこう主要しゅようオペレーティングシステム標準ひょうじゅんフォントはこれに準拠じゅんきょしている。

「しんにょう」の「てんかず」は人名じんめいなど「司馬しばりょう太郎たろう」の「りょう」や「つじ邦生くにお」の「つじ」はふたてんである。さらに「若槻わかつき禮次郎れいじろう礼次郎れいじろう)」のように「れい」のが4字体じたい、「ろう」のが2字体じたいあるために、表記ひょうきれがしょうじるれいもある。

はん」や「たいら」が「ハ(はんひらた)」か「ソ(はんたいら)」かについても、「佐藤さとう」や「加藤かとう」の「ふじ」は「ハふじふじ)」、「ソふじふじ)」といって戸籍こせきうえ区別くべつされており、「ふじ」については「くさかんむり」の「+ +」かたちや「つき」のてんななめに場合ばあいもある。

しん字体じたい導入どうにゅうきゅう字体じたい意図いとてき使用しようするれいもある。大相撲おおずもうもと横綱よこづなあけぼの太郎たろう四股しこめいあけぼの」は、当初とうしょつくりの「しょ」にてんがなかったが「『てん』は『てん』につうじ、天下てんかってからてんをつける」といい、大関おおぜき昇進しょうしん同時どうじに「てんのある『あけぼの』」にあらためられた。

眞子しんじ内親王ないしんのう名前なまえ眞子しんじ」はしん字体じたいでは「真子しんじ」となるが、固有名詞こゆうめいしにもしん字体じたい使つかうことを原則げんそくとする新聞しんぶんなどのマスメディアにおいてもしん字体じたいでの表記ひょうきられない。映像えいぞう作家さっか手塚てづかしん本名ほんみょうしん字体じたいで「しん」と表記ひょうきするが、きゅう字体じたいの「しん」で活動かつどうしている。その筆名ひつめい芸名げいめいバンド、フィクションなどの作品さくひんめいで、あえてきゅう字体じたい使用しようするれい多数たすうある。

鉄道てつどうえき駅名えきめいでは、もとになる地名ちめい施設しせつめいきゅう字体じたい使つか場合ばあいでもしん字体じたいにする場合ばあい大半たいはんれい四條畷しじょうなわて四条畷しじょうなわてえき五條ごじょう五条ごじょうえき當麻寺たいまでら当麻寺たいまでらえきなど)であるが、区別くべつのためきゅう字体じたい使用しようするれいもある。たとえば兵庫ひょうごけん美方みかたぐん香美かがみまち山陰本線さんいんほんせんにある「餘部あまるべ(あまるべ)えき」は1959ねん開業かいぎょうしたが、すでにおな兵庫ひょうご県内けんない姫新線きしんせんに1930ねん開業かいぎょうの「余部あまるべ(よべ)えき」が存在そんざいし、区別くべつのためしん字体じたいの「」ではなくきゅう字体じたいの「」を使用しようしている。また、駅名えきめい大学だいがく名称めいしょうふくまれる場合ばあいに、きゅう字体じたい正式せいしきめいになる大学だいがくめい駅名えきめいにもきゅう字体じたい使用しようする場合ばあいれい:どくきょう大学前だいがくまええき龍谷大りゅうこくだいぜん深草ふかくさえきなど)がある。

くだり草書そうしょ楷書かいしょ

編集へんしゅう

漢字かんじ行書ぎょうしょたいおよくさ書体しょたい活字かつじたいとして楷書かいしょたいし、しん字体じたいにしたもの。かんひるひるなど。「もん」の略字りゃくじ「门」もじゅんちがうが行書ぎょうしょ由来ゆらいする。中国ちゅうごく大陸たいりく簡体字かんたいじでは「」を採用さいようしているが、日本にっぽん活字かつじでは通常つうじょう使用しようしない。

繁雑はんざつ部位ぶい削除さくじょ

編集へんしゅう

漢字かんじ一部分いちぶぶんけずる。「おう」は「おう」といたが「倠」を削除さくじょ、「げい」は「げい」であったが中間ちゅうかんにある「部分ぶぶん削除さくじょ、「あつ」は「あつ」から「」を削除さくじょ、「かん」は「かん」から「」を削除さくじょ、「聴」は「聽」からみみしたおう」としんあいだの「いち」を削除さくじょ、「どく」と「さわ」は「どく」と「さわ」から「」と「勹」を削除さくじょ、「けん」は「けん」から「けい」を削除さくじょ、「ごう」は「ごう」から「とら」を削除さくじょ、「ところ」は「ところ」から「虍」を削除さくじょ、「」は「」から「殳」と「とり」を削除さくじょ、「こえ」は「こえ」から「殳」と「みみ」を削除さくじょ、「」は「」から「ぞう」を削除さくじょ、「」は「」から「𩙿」を削除さくじょ、「いと」は「いと」であったのをひとつにし、「むし」は「むし」をひとつにした。だが、これにより、後述こうじゅつとおりもとあったべつ重複じゅうふくしたり、本来ほんらい部首ぶしゅまでけずられたがために部首ぶしゅ変更へんこうされたりした漢字かんじ数多かずおお存在そんざいする。

ただし、しん字体じたいなかには筆画ひっかく画数かくすう)が増加ぞうかしたものもある。たとえば「」がそうであり、きゅうではみぎてんのない「」であった。このため、「」や「わたる」といったも「しき」・「わたる」というように1かくやされている。きゅう字体じたいまき」のしたの「㔾」(かく)が「おのれ」(さんかく)になり、「まき」になったらいちかくえることになった。「卑」・「めん」(四角よつかどなかからそとせんがつながるかか)、「致」(つくりが「夊」から「攵」に)、「みやび」・「ぬき」(「ヰ」の部分ぶぶん左下ひだりしたをつなげるかか)なども増加ぞうかしている。

部首ぶしゅ変更へんこう

編集へんしゅう

簡略かんりゃくのために部首ぶしゅわったもある。「たたかえ」がそれであり、もともと、部首ぶしゅは「もんもんがまえ)」ではなく「鬥(とうがまえ)」で、もとの字体じたいは「」または「たたかえ」である。この部首ぶしゅ文字もじには「かちどき」や「鬩」などがある。現在げんざいおおくの辞書じしょが「もん」のに「たたかえ」を掲載けいさいしている。同様どうようれいに「こう」、「みことのり」、「おさむ」、「じょ」も該当がいとうし、もとの字体じたいはそれぞれ「こう」、「敕」、「おさむ」、「じょ」で「攴(ぼくにょう)」から「こう」、「敕」は「ちからちから)」に、「おさむ」、「じょ」は「またまた)」にわり、おおくの辞書じしょが「ちから」のに「こう」と「みことのり」を、「また」のに「おさむ」と「じょ」をそれぞれ掲載けいさいしている。そのほか「とう」、「」、「」も該当がいとうし、もとの字体じたいはそれぞれ「とう」、「」、「霸」で「とう」は「くろくろ)」から「儿(ひとあし)」に、「」は「しめせしめすへん)」から「禾(のぎへん)」に、「霸」は「あめあめかんむり)」から「襾(にし)」にわり、おおくの辞書じしょが「儿」のに「とう」を、「禾」のに「」を、「襾」のに「」をそれぞれ掲載けいさいしている。

こえ」、「」、「ごう」、「ところ」、「てん」などは本来ほんらい部首ぶしゅのぞいた(「こえ」は「こえ」から「みみ」、「」は「」から「とり」、「ごう」は「ごう」から「虍」、「ところ」は「ところ」から「虍」、「てん」は「てん」から「くろ」がそれぞれ部首ぶしゅである)ため辞書じしょでのあつかいがわった。おおくの辞書じしょでは、「こえ」は「さむらい)」の、「」は「匸(かくしがまえ)」(「匚(はこがまえ)」と統合とうごうされていることもある)の、「ごう」は「くちくち)」の、「ところ」は「几(つくえ)」、「てん」は「れっか)」の掲載けいさいされている(が、きゅう字体じたい部首ぶしゅから「こえ」を「みみ」、「」を「とり」、「ごう」と「ところ」を「虍部」、「てん」を「黒部くろべ」に分類ぶんるいする辞書じしょ存在そんざいする)。

そう」、「ため」、「寿ことぶき」、「うれ」、「へん」、「そう」、「りょう」、「とう」、「かえり」などは本来ほんらい部首ぶしゅ部分ぶぶんわった(「そう」は「そう」から「つめ」、「ため」は「ため」から「つめ」、「寿ことぶき」は「ことぶき」から「」、「うれ」は「うれ」から「かい」、「へん」は「へん」から「げん」、「そう」は「そう」から「ふるとり」、「りょう」は「りょう」から「いれ」、「とう」は「とう」から「」、「かえり」は「かえり」から「とめ」がそれぞれ部首ぶしゅである)ため辞書じしょでのあつかいがわった。おおくの辞書じしょでは、「そう」は「亅(はねぼう)」の、「ため」は「れっか)」の、「寿ことぶき」は「すんすん)」の、「うれ」は「さむらい)」の、「へん」は「夊(すいにょう)」(「夂(ふゆがしら)」と統合とうごうされていることもある)の、「そう」は「またまた)」の、「りょう」は「いちいち)」の、「とう」は「⺌(しょう)」(「いのこがしら)に分類ぶんるいする辞書じしょもある)の、「かえり」は「りっとう)」の掲載けいさいされている。

なみ」、「まん」、「えん」、「つき」、「しお」、「あずか」、「きゅう」などは本来ほんらい字体じたいまったわった(「なみ」は「なみ」から「だて」、「まん」は「まん」から「そうこう」、「えん」は「えん」から「囗」、「つき」は「つき」から「さら」、「しお」は「しお」から「鹵」、「あずか」は「あずか」から「うす」、「きゅう」は「きゅう」から「うす」がそれぞれ部首ぶしゅである)ため辞書じしょでのあつかいがわった。おおくの辞書じしょでは、「なみ」、「まん」、「あずか」は「いちいち)」の、「えん」は「冂(けいがまえ)」の、「つき」は「しかばねしかばね)」の、「しお」は「つちへん)」の、「きゅう」は「)」の掲載けいさいされている。

音符おんぷ交換こうかん

編集へんしゅう

漢字かんじ大半たいはん形声けいせい文字もじである[注釈ちゅうしゃく 2]形声けいせい文字もじには事物じぶつ類型るいけいあらわ発音はつおんあらわ音符おんぷがある。「あお」・「きよし」・「はれ」・「せい」・「せい」・「蜻」・「睛」がみなセイのおとをもつのは音符おんぷが「あお」であるためであり、「きよし」の場合ばあい部首ぶしゅの「さんずい」が意味いみを、「あお」がおとあらわしている。「ねり(レン)」・「(レン)」」・「らん(ラン)」・「らん(ラン)」・「瀾(ラン)」の音符おんぷは「煉瓦れんが」の「ねり」のように「柬(カン)」であるが、「柬」は「ひがし」とりゃくされている。そのため「ひがし(トウ)」を音符おんぷにもつ「むね」・「こお」とは区別くべつがつかなくなっている。

繁雑はんざつ音符おんぷをもつ漢字かんじを、おなおんべつ音符おんぷえてつくられたしん字体じたいがある。たとえば、「かこえ」はもともと「かこえ」であったが、「韋」も「」もおなじイとむ(ただし、「」はくん)ため簡単かんたん変更へんこうされた。竊→窃、ちょう(廰)→ちょう、擔→担、きもきもあかしあかししゃくしゃく[注釈ちゅうしゃく 3]ひろひろ[注釈ちゅうしゃく 4][注釈ちゅうしゃく 5]、犧→犠、よりどころよりどころてつてつなども同様どうよう。なお、「」や「」を「广+マ」、「けい」・「おう」を「广+K」・「广+O」、「」を「キ」とひとがいる[4]が、それもこれを応用おうようした略字りゃくじといえよう。

簡略かんりゃく統一とういつ

編集へんしゅう

当用漢字とうようかんじ字体じたいひょうによる簡略かんりゃくには部分ぶぶん字形じけい統一とういついくつかられる。

たき」は「りゅう」を「りゅう」に簡略かんりゃくして「たき」となったが、「かさね」は簡略かんりゃくされていない[注釈ちゅうしゃく 6]。「どく」・「さわ」は「しょく」を「むし」に簡略かんりゃくして「どく」・「さわ」に、「ぞく」・「しょく」は「しょく」を「禹」に簡略かんりゃくして「ぞく」・「しょく」となったが、「にご」は簡略かんりゃくされていない。「ふつ」・「はらい」は「どる」を「厶」に簡略かんりゃくして「ふつ」・「はらい」となったが、「にえ」・「」は簡略かんりゃくされていない。「かり」は「叚」を「たん」に簡略かんりゃくして「かり」となったが、「ひま」は簡略かんりゃくされていない。「」は「とう」を「ひのと」に簡略かんりゃくして「」に[注釈ちゅうしゃく 7]、「あかし」は「とう」を「ただし」に簡略かんりゃくして「あかし」になったが、「とう」・「きよし」は簡略かんりゃくされていない[注釈ちゅうしゃく 8]。「つて」・「てん」は「せん」を「うん」に簡略かんりゃくして「つて」・「てん」に、「だん」は「せん」を「すん」に簡略かんりゃくして「だん」になったが、「せん」は「せん」と中央ちゅうおう省略しょうりゃくしたにすぎない。「碎」・「いき」・「よい」は「そつ」を「そつ」の異体いたいの「そつ」に簡略かんりゃくして「砕」・「いき」・「よい」になったが、「そつ単独たんどくは「そつ」を正字せいじ採用さいようしなかったほか、「りつ」は簡略かんりゃくされていない[注釈ちゅうしゃく 9][注釈ちゅうしゃく 10]

てい」・「ほど」・「きよし」などでは「みずのえ(テイ、1かく)」を「おう」にえたが、「廷」・「にわ」・「てい」では「みずのえ」のままであった。「みずのえ(ジン、1かく)」を部分ぶぶん字形じけいつ「にん」・「にん」も「みずのえ」のままであった。「はん」のつくり部分ぶぶん「㔾」は「はん」・「やく」・「危」・「うで」・「はん」ではわらないが、「まき」・「けん」では「おのれ」にえている。「えら」のつくり部分ぶぶん「韋」は「えら」・「たがえ」・「ぬき」・「まもる」ではわらないが、「かこえ」では「韋」を「」にえて「かこえ」になった。「いき」のつくり部分ぶぶんある」は「いき」・「惑」ではわらないが、「くに」では「ある」を「たま」にえて「くに」になった。「しこり」のつくり部分ぶぶんうたぐ」は「しこり」・「うたぐ」・「なずらえ」ではわらないが、「」では「うたぐ」を「」にえて「」になった。「そん」のつくり部分ぶぶんいん」は「そん」・「いん」・「いん」ではわらないが、「えん」では字体じたいえて「えん」になった。「偶」のつくり部分ぶぶん「禺」は「偶」・「」・「ぐう」・「すみ」ではわらないが、「まん」では字体じたいえて「まん」になった[注釈ちゅうしゃく 11][注釈ちゅうしゃく 12]

既存きそんとの衝突しょうとつ

編集へんしゅう

おも上記じょうきのように簡略かんりゃくされているが、既存きそんべつかさなってしまったものもある。

だいだい
本来ほんらい、「だい」(タイ、ダイ、イ)はほし、はらごもり(胎につうじる)、よろこぶ、やしなう、うしなう、そして一人称いちにんしょうの「われ」を意味いみするであり、慣例かんれいてきに「だい」の略字りゃくじとしてもちいられてきたが、しん字体じたいにおいて「だい」は「だい」の字形じけい収録しゅうろくされたため現在げんざいでは「だい」という本来ほんらい意味いみもちいられることはなくなった。
げいげい
げい」はしん字体じたいにおいて「げい」になったが、もともと「げい」(ウン)という漢字かんじがあったため、意味いみおとことなるふたつのかたち一致いっちしてしまった。おおくの場合ばあい一致いっちしてしまう既存きそん漢字かんじはほとんど使つかわれないであり支障ししょうはない。しかしげい場合ばあい奈良なら時代じだい末期まっき石上宅嗣いそのかみのやかつぐもうけた公開こうかい図書館としょかんげいてい(うんてい)」がある。日本にっぽん図書館としょかんがく教科書きょうかしょなどではげいていげいの「くさかんむり」「」を4かくの「くさかんむり」「 (+ +)」にして区別くべつをすることがおおい。ただし、本来ほんらい、「げい」(ゲイ)と「げい」(ウン)の字体じたいまったおなじである。なお、げい(ウン)は「書物しょもつ防虫ぼうちゅう使用しようされる薬草やくそう」を意味いみし、てんじて中国ちゅうごくでは「文学ぶんがく教養きょうよう」を想起そうきさせる文字もじとして人名じんめいなどに使つかわれる。簡体字かんたいじでは上述じょうじゅつした音符おんぷ交換こうかんにより、北京ぺきんおんで「げい」と同音どうおんの「おつ」を使つかって「」とりゃくす。
豫定よてい」・「豫告よこく」の「(あらかじめ)」は「」とりゃくされ、「餘剰よじょう」・「餘分よぶん」の「(あまり)」は「」とりゃくされた。「」・「」はどちらも一人称いちにんしょう *yuあらわ文字もじである。
むしむし
本来ほんらい、「むし」(キ)は爬虫類はちゅうるいを、「むし」(チュウ)は昆虫こんちゅうなどのちいさなむしあらわべつであった。「むし」を「むし」とりゃくしたため、むし本来ほんらい意味いみむし意味いみ両方りょうほうっていることになる。
いといと
いと」(ベキ)はほそいとあらわし「いと」(シ)がいと全般ぜんぱんあらわべつであったが、日本にっぽんでは「いと」がいと全般ぜんぱんあらわすように使用しようされていた。中国語ちゅうごくごけんでは、『じゅうへん国語こくご辞典じてん修訂しゅうていほんいと こうのように「いと」を「いと」の異体いたいとするれいがあるものの、このような簡略かんりゃく一般いっぱんてきではなく、「いと」の簡体字かんたいじは「」である。中華ちゅうか料理りょうりあおはじかみにくいと日本にっぽんでも「いと」のままでかれることがおおい。
ゆたかゆたか
ゆたか」は「ゆたか」という意味いみであり、おとは「ホウ」。「」が音符おんぷとなっている形声けいせい文字もじである(中国ちゅうごくでは「」が「ゆたか」の簡体字かんたいじになっている)。「ゆたか」は「れいぎ」という意味いみおとは「レイ」。「れい」のきゅう字体じたいれい」のつくりになっている。「ゆたか」が「ゆたか」に変更へんこうされたため両者りょうしゃ衝突しょうとつすることになり、おとが「レイ」かでそうでないかで区別くべつする(後述こうじゅつする「からだ」も「タイ」のおとは「ゆたか」にちなむてんおんである)。が、「ゆたか」は単独たんどく漢字かんじ使用しようされることがほとんどないので問題もんだいはほとんどこっていない。なお「つや」(おとは「エン」)のきゅう字体じたいつや」のへんは「ゆたか」であるが、「つや」は純粋じゅんすい会意かいい文字もじなので、「エン」のおとは「ゆたか」にちなんでいない。
かけかけ
缺乏けつぼう」の「かけ(ケツ)」は「かけ」となったが、「かけ」は「ケン」とみ、「あくび」の意味いみがある。なお「かけ」のにももともと「かける」の字義じぎがある。「かけかけ(ケンケツ)」という法律ほうりつ用語ようごは2の「かけ」をしん字体じたいにしてしまうと「かけかけ」となってしまう。当用漢字とうようかんじでは「ケン」の音読おんよみは採用さいようされなかったため、厳密げんみつ当用漢字とうようかんじしたがうときで「けんかけ」となってしまう。このため法律ほうりつ用語ようごでは現在げんざいでも例外れいがいてききゅう字体じたい使用しようして「かけかけ」とかれる。本文ほんぶんしん字体じたい採用さいようしている『広辞苑こうじえん』、『大辞林だいじりん』などの国語こくご辞典じてんでも、このかたりかぎっては表記ひょうきらんに「かけかけ」の表記ひょうき採用さいようしている。2004ねん平成へいせい16ねん)に可決かけつ2005ねん平成へいせい17ねん)に施行しこう民法みんぽう現代げんだい目的もくてきとした「民法みんぽう一部いちぶ改正かいせい」によって「意思いしかけかけ」は「意思いし存在そんざい」といいかえられたため条文じょうぶんから「かけかけ」はえた。ただ、新聞しんぶんなどのマスメディアにおいては戦後せんごはやくから「かけかけ」の表記ひょうき使つかわず、「存在そんざい」「存在そんざいしない」という表現ひょうげんにいいかえていた。
かんかん
かん」(フ)は「素焼すやきの(かめ)」をあらわで、「かん」(カン)がつくりに「歡」(しん字体じたいは「歓」)のへんおな音符おんぷ形声けいせい文字もじで、オランダ・kanと英語えいご・canの音訳おんやくで「金属きんぞくせいかん」をあらわであった。常用漢字じょうようかんじに「かん」が追加ついかされたときには、すでに「かん」は本来ほんらい意味いみうしなって「かん」の略字りゃくじとしてもちいられていたため、「かん」が採用さいようされて「かん」がきゅう字体じたいとなった。ほかのきゅう字体じたいくらべて比較的ひかくてきおそくまで「かん」が正式せいしきだったため、「ドラム缶どらむかん工業こうぎょうかい」が1987ねんまで「ドラムかん工業こうぎょうかい」の表記ひょうき採用さいようしていたほか、社名しゃめいに「かん」のつく企業きぎょう東洋製罐とうようせいかん北海製罐ほっかいせいかん日本にっぽんせいかんなど多数たすう存在そんざいし、そのおおくがせいかん業者ぎょうしゃである。
からだからだ
からだ」は骨偏ほねへんぞくし、おとは「タイ」、「肉体にくたい、からだ」を意味いみしている。一方いっぽうからだ」は人偏にんべん部首ぶしゅとし、おとは「ホン」、「あらい、そまつな」という意味いみがある。つまりもともとは「からだ」と「からだ」はまったくのべつであった。だが、「からだ」が「からだ」の略字りゃくじとしてふるくから混用こんようされていたためしん字体じたい採用さいようされ、中国ちゅうごくでも簡体字かんたいじ採用さいようされている。「からだ」を本来ほんらいおとである「ホン」と熟語じゅくごには「からだおっと」がある。これは「ホンプ」とみ、かんかつ人足ひとあし意味いみしている。
はまはま
はま」は「はま」という意味いみであり、おとは「ヒン」で「まろうど」が音符おんぷとなっている形声けいせい文字もじである。一方いっぽうの「はま」は「クリーク」の意味いみであり、おとは「ヒョウ」で「へい」が音符おんぷとなっている形声けいせい文字もじだった。つまりもともとは「はま」と「はま」はまったくのべつであり、ふるくから混用こんようされていてしん字体じたい採用さいようされた。またおもて外字がいじの「檳」は「はま」を「はま」とりゃくするかたちならい「まろうど」を「へい」にえた異体いたい拡張かくちょうしん字体じたい)の「梹」がつくられた。
けんけん
けん」はおとは「ケン」で行政ぎょうせい区域くいきの「けん」という意味いみがあり、に「かける」「つなぐ」の意味いみがあったため、のちに区別くべつのために「かか」がべつとしてつくられた。一方いっぽうの「けん」は「くび」をぎゃくいた象形しょうけい文字もじで「さかさづり」の意味いみであり、おとは「キョウ」だった。つまりもともとは「けん」と「けん」はまったくのべつであり、ふるくから混用こんようされていたことからしん字体じたい採用さいようされた。
かいこかいこ
かいこ」はおとは「サン」で「かいこ」という意味いみである。一方いっぽうの「かいこ」は「みみず」の意味いみであり、おとは「テン」だった。つまりもともとは「かいこ」と「かいこ」はまったくのべつであり、ふるくから混用こんようされていてしん字体じたい採用さいようされた。
あかしあかし
もともとは「あかし」と「あかし」はまったくのべつであるが、おとともに「ショウ」と共通きょうつうしていたため、ふるくから混用こんようされていた。「あかし」はおとは「ショウ」で「あかし」「あかしをたてる」という意味いみである。一方いっぽうの「あかし」は「いさめてあやまりをただす」の意味いみであり、おとは「セイ」「ショウ」となっている。これにより、「あかし」が「あかし」のしん字体じたい採用さいようされた。
醫者いしゃ」、「醫師いし」の「(イ)」は「」となったが、「」は「エイ」とみ、「をしまうはこ」の意味いみがある。「」が「」に変更へんこうされたため両者りょうしゃ衝突しょうとつすることになった。
擔と担、きもきも
擔当たんとう」の「擔」、「膽嚢たんのう」の「きも」はそれぞれ「」を「だん」にえた「担」と「きも」となったが(おとはいずれも「タン」)、もともと「担」は「うちのめす」、「きも」は「あぶら」の意味いみだったため両者りょうしゃ衝突しょうとつすることになった。
」と「」はどちらも「ひ」「ともしび」の意味いみで、おとも「」が「トウ」、「」が「チョウ」「テイ」と類似るいじしていたため、ふるくから混用こんようされていた。このため、1981ねんの「常用漢字じょうようかんじひょう告示こくじさいに、「」を「」の通用つうよう字体じたいとして採用さいようした。なおドラえもんひみつ道具どうぐの「タマゴませとう」は現在げんざいはんでも「タマゴませとう」と「」のままになっている。
きゅううすきゅう
現在げんざい、「きゅう」は「きゅう」(意味いみは「ふるい」)のしん字体じたいとしてもちいられている。しかしかつて「きゅう」は「うす」(意味いみは「うすという道具どうぐ」)の異体いたいであった。つまり「うす」の異体いたいべつの「きゅう」のしん字体じたいとしてもちいられている。これは「きゅう」の音符おんぷに「うす」がもちいられていることからきている(おとはともに「キュウ」)。「きゅう」は「うす」の異体いたいであったが、時代じだいくだるにつれ「きゅう」の略字りゃくじとして混用こんようされるようになっていった。「いね」を「いね」、「」を「」とくように、「うす」の部分ぶぶんを「きゅう」にえた漢字かんじおおくみられるようになった。つまり、「きゅう」は、おとおなじだが意味いみのまったくことなるふたつの漢字かんじ略字りゃくじもちいられるようになっていった。結果けっかしん字体じたい採用さいようたって「きゅう」を「きゅう」のしん字体じたいとすると同時どうじに、のなかの「うす」の部分ぶぶんを「きゅう」にえた漢字かんじもいくつかしん字体じたい採用さいようされた(れいとして「いね」・「」)。なお中国ちゅうごくでは「きゅう」を「きゅう」の簡体字かんたいじとしているが、「きゅう」は「うす」の簡体字かんたいじにはなっておらず、「うす」をりゃくした簡体字かんたいじ存在そんざいしない。大抵たいていは「いね」のようにそのまま簡略かんりゃくせずにもちいられるが、「」を「儿」とりゃくすように、日本にっぽんしん字体じたいことなる簡体字かんたいじになってもちいられている漢字かんじもある。
わたわたる
わた」は「コウ」「わたる」、「わたる」は「セン」「のべる」の音義おんぎがある。しかし楷書かいしょではむかしから「わた」をきやすい「わたる」にいてきたため、両者りょうしゃ現在げんざいどういちしゅとされている。このしゅ当用漢字とうようかんじ常用漢字じょうようかんじではないが、「わた」は1951ねん人名じんめいよう漢字かんじえらばれた。当用漢字とうようかんじ時代じだいは、名古屋なごや法務局ほうむきょくちょうからの照会しょうかいたいする法務ほうむ府民ふみんごと局長きょくちょう回答かいとうもとづき「わたる」も子供こども名付なづけに使つかえるという運用うんようがなされた[5]。1981ねん常用漢字じょうようかんじひょう告示こくじさいに「わたる」とあらためられた。このときわた」は許容きょよう字体じたいとなり、2004ねん人名じんめいよう漢字かんじとなった。これらのことから「わた」をきゅう、「わたる」を新字しんじなすことがある。
参考さんこうあしあし
あし」は「ロ」「あし」の音義おんぎがあるが、「」を構成こうせい要素ようそつ「」のしん字体じたいは、「」の部分ぶぶんを「」にえた「」であり、おもて外字がいじもこれにならった異体いたい拡張かくちょうしん字体じたい)がつくられ「あし」は「あし」と簡略かんりゃくしたが「あし」はすでべつ意味いみのため衝突しょうとつした。なおこのしゅ当用漢字とうようかんじ常用漢字じょうようかんじではない。

中国ちゅうごく文学ぶんがくしゃ高島たかしま俊男としおは、漢字かんじ導入どうにゅう日本語にほんごにとって不幸ふこうなことであったとする一方いっぽう[6]筆写ひっしゃ手書てが文字もじ)は文章ぶんしょうなか文字もじであり文脈ぶんみゃくまれるものだから文字もじ類似るいじしてもかまわないが[7]印刷いんさつひとひとつが独立どくりつしてそのでなければならず、印刷いんさつ筆写ひっしゃおなじようにしたしん字体じたい間違まちがいだったと主張しゅちょうしている[8]高島たかしまは、印刷いんさつ筆写ひっしゃにあわせてしまったために、たとえば、「せん」は「せん」、「つて」・「てん」は「つて」・「てん」、「だん」は「だん」となってしまい、「せん」の部分ぶぶんっていた「まるい」・「まるい運動うんどう」という共通きょうつうをもった家族かぞく(ワードファミリー)のえんれてしまったと指摘してきしている[9]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 従来じゅうらい活字かつじ字体じたいおもに『かんひろし字典じてん』を典拠てんきょにしていたが、どう辞典じてんにおけるせい字体じたい完全かんぜん一致いっちしていないため、これらの字体じたいがしばしば「いわゆるかんひろし字典じてんたい」とばれている。
  2. ^ 指事しじ文字もじ象形しょうけい文字もじ会意かいい文字もじなど形声けいせい文字もじ以外いがい漢字かんじもあるが、全体ぜんたいの10%にもたない。
  3. ^ しゃくしゃく変更へんこうしたのと同様どうように「」のも「」から「しゃく」に変更へんこうし、おとは「タク」)→さわおとは「タク」)→さわわけおとは「ヤク」)→わけえきおとは「エキ」)→えき変更へんこうしたほかひょう外字がいじの「鐸」も異体いたい拡張かくちょうしん字体じたい)の「鈬」がつくられた。
  4. ^ 「厶」は本来ほんらいおとは「シ」だが、「おおやけ」「ひろし」のおとが「コウ」であることから、「おおやけ」のあしや「ひろし」のつくりおなじように「コウ」ともむようになっている。
  5. ^ 同様どうように「ひろ」のつ「擴」、「こう」も「ひろ」から「ひろ」にえた「拡」、「こう」に変更へんこうしたほかひょう外字がいじの「礦」、「曠」、「」も異体いたい拡張かくちょうしん字体じたい)の「砿」、「昿」、「絋」がつくられた。
  6. ^ かつておもて外字がいじだった「かご」については「りゅう」を「りゅう」に簡略かんりゃくした異体いたい拡張かくちょうしん字体じたい)の「かご」がつくられたが、2010ねん常用漢字じょうようかんじりしたさいには「かご」の字体じたい採用さいようされた。
  7. ^ 1981ねん常用漢字じょうようかんじ制定せいていときに「」が「」にあらためられた。
  8. ^ きよし」には異体いたいの「澂」があるが、「澂」は採用さいようされなかった。
  9. ^ わく」は和製わせい漢字かんじであり、「椊」の「そつ」を「そつ」にえた略字りゃくじではないため、簡略かんりゃくとは無関係むかんけいである。
  10. ^ おもて外字がいじのうち「せがれ」、「せがれ」、「みどり」は「そつ」を「そつ」に簡略かんりゃくした異体いたい拡張かくちょうしん字体じたい)の「せがれ」、「忰」、「翆」がつくられた。
  11. ^ 同様どうように「まん」のつ「勵」も「まん」から「まん」にえた「励」に変更へんこうしたほかひょう外字がいじの「礪」、「蠣」も異体いたい拡張かくちょうしん字体じたい)の「砺」、「かき」がつくられた。
  12. ^ とち」は和製わせい漢字かんじであり、「櫔」の「厲」を「厉」にえた略字りゃくじではない。中国ちゅうごくでは「とち」が該当がいとうする。

出典しゅってん

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参考さんこう文献ぶんけん

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  • 高島たかしま俊男としお漢字かんじ日本人にっぽんじん』(だい6はん文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう文春ぶんしゅん新書しんしょ 198〉、2001ねん12月15にち原著げんちょ2001ねん10がつ20日はつか)。ISBN 978-4-16-660198-1 

関連かんれん項目こうもく

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