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日本共産党幹部宅盗聴事件 - Wikipedia

日本にっぽん共産党きょうさんとう幹部かんぶたく盗聴とうちょう事件じけん

日本にっぽん共産党きょうさんとう幹部かんぶたく盗聴とうちょう事件じけん(にほんきょうさんとうかんぶたくとうちょうじけん)は、1985ねんから1986ねんにかけて、当時とうじ日本にっぽん共産党きょうさんとう国際こくさい部長ぶちょうであった緒方おがた靖夫やすおたく電話でんわ公安こうあん警察官けいさつかんによって盗聴とうちょうされた事件じけんである。

最高裁判所さいこうさいばんしょ判例はんれい
事件じけんめい づけ審判しんぱん請求せいきゅう棄却ききゃく決定けっていたいする抗告こうこく棄却ききゃく決定けっていたいする特別とくべつ抗告こうこく事件じけん
事件じけん番号ばんごう 昭和しょうわ63(し)76
1989ねん平成へいせい元年がんねん)3がつ14にち
判例はんれいしゅう けいしゅう43かん3ごう283ぺーじ
裁判さいばん要旨ようし
警察官けいさつかん職務しょくむとしてくだりつたものであつても、終始しゅうし何人なんにんたいしても警察官けいさつかんでないことをそうつてした本件ほんけん電話でんわ盗聴とうちょう行為こういは、職権しょっけん濫用らんようしてくだりつたものとはいえず、公務員こうむいん職権しょっけん濫用らんようざい構成こうせいしない。
だいさんしょう法廷ほうてい
裁判さいばんちょう 坂上さかがみ寿夫としお
陪席ばいせき裁判官さいばんかん 伊藤いとうただしおのれ安岡やすおか満彦みつひこさだ克己こっき
意見いけん
多数たすう意見いけん 全員ぜんいん一致いっち
意見いけん なし
反対はんたい意見いけん なし
参照さんしょう法条ほうじょう
刑法けいほう193じょう
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公安こうあん警察けいさつ存在そんざい注目ちゅうもくび、検察けんさつ捜査そうさ合法ごうほうせいにも疑問ぎもんげかけられた。また、警察けいさつ組織そしきてき犯行はんこううたが見方みかたもある。

事件じけん経緯けいい

編集へんしゅう

1986ねん11月27にち東京とうきょう町田まちだにある日本にっぽん共産党きょうさんとう国際こくさい部長ぶちょう緒方おがた靖夫やすおたく電話でんわ盗聴とうちょうされていたことが発覚はっかく通話つうわちゅう雑音ざつおん音質おんしつ低下ていか不審ふしんいた緒方おがた日本電信電話にほんでんしんでんわ(NTT)町田まちだ電話でんわきょく通報つうほう職員しょくいん調査ちょうさにより緒方おがたたくから100メートルはなれたアパート盗聴とうちょうおこなわれていたことがわかった。

通報つうほうけた警視庁けいしちょう町田まちだ警察けいさつしょ当初とうしょ捜査そうさ拒否きょひ。NTTによる告発こくはつ一度いちど受理じゅりのち、29にちになって受理じゅりし、12月1にち実況じっきょう見分けんぶん実施じっしした(ただし、このとき警察けいさつ証拠しょうこ隠滅いんめつはかったうたがいもたれている)。

他方たほう東京とうきょう地方ちほう検察庁けんさつちょうは11月28にち緒方おがたからの告発こくはつける。公安こうあん警察けいさつとの関係かんけい懸念けねんして地検ちけん公安こうあんではなく特別とくべつ捜査そうさによって捜査そうさ開始かいしされ、まもなく神奈川かながわけん警察けいさつ警備けいび公安こうあんだいいち所属しょぞく複数ふくすう警察官けいさつかんが1985ねんなつから盗聴とうちょうおこなっていた事実じじつめた。また捜査そうさ過程かていで、公安こうあん警察けいさつによる各種かくしゅ非合法ひごうほう工作こうさく活動かつどう統括とうかつする部署ぶしょコードネーム「サクラ」の存在そんざいあきらかになった(拠点きょてん警察けいさつだい学校がっこう内部ないぶ露見ろけんかすみせき警察庁けいさつちょううちに「チヨダ」をうえ現在げんざいは「ゼロ」とあらためて存在そんざいするとささやかれる)。

1987ねん5月7にち警察庁けいさつちょう長官ちょうかん山田やまだ英雄ひでお参議院さんぎいん予算よさん委員いいんかいにおいて「警察けいさつにおきましては、過去かこにおいても現在げんざいにおいても電話でんわ盗聴とうちょうということはおこなっておりません」と答弁とうべんして組織そしきとしての警察けいさつ関与かんよ否定ひていしたが、6がつには神奈川かながわ県警けんけい本部ほんぶちょうが、その直後ちょくご警察庁けいさつちょう警備けいび局長きょくちょう辞職じしょくさら警察庁けいさつちょう警備けいびきょく公安こうあんだいいち課長かちょうと「サクラ」を指揮しきしているとされた理事りじかん配転はいてんされた。また警察庁けいさつちょう検察けんさつたいして二度にど違法いほう捜査そうさおこなわないと誓約せいやくし、これをけて地検ちけんは8がつ4にち警察官けいさつかん起訴きそあるいは起訴きそ猶予ゆうよ処分しょぶんにする手打てうちをしたといわれている。

緒方おがたはこの決定けってい不服ふふくとし、警察官けいさつかん行為こうい公務員こうむいん職権しょっけん濫用らんようざいたるとして、づけ審判しんぱん制度せいどするよう東京とうきょう地方裁判所ちほうさいばんしょ請求せいきゅうおこなった。1989ねん3月14にち最高裁さいこうさい警察官けいさつかんによる盗聴とうちょう事実じじつ認定にんていしたものの、職権しょっけん濫用らんようにはたらないとして棄却ききゃくした(詳細しょうさい後述こうじゅつ)。また緒方おがたくに神奈川かながわけん盗聴とうちょう実行じっこうした警察官けいさつかんたいして損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう訴訟そしょうこし、1997ねん6月26にち東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょくにけんに404まんえんあまりの賠償ばいしょうめいじた。

盗聴とうちょう関与かんよしていたグループの一員いちいんられる警察官けいさつかん事情じじょう聴取ちょうしゅ最中さいちゅう突如とつじょ入院にゅういんしそのまま急死きゅうしした。“内情ないじょうられることふせためくちふうじにされたのでは”というこえがったが真相しんそういま不明ふめい死因しいんは「脂肪しぼうきも」と発表はっぴょうされたが、「これでことはほとんどない」との主張しゅちょうもある[1])。

組織そしきてき関与かんよ

編集へんしゅう

手口てぐち警察けいさつ組織そしき特徴とくちょうから、警察庁けいさつちょう警備けいびきょく中心ちゅうしんとした組織そしきてき犯行はんこうつようたがわれた。国会こっかいでもげられ[2]参考さんこうじん質問しつもんおこなわれ、補聴器ほちょうきメーカーリオン技師ぎしが“依頼いらいけて盗聴とうちょう試作しさくひん製作せいさくたずさわった”とまで証言しょうげんした。また、検察けんさつ組織そしきてき犯行はんこう断定だんていしている。それにもかかわらず、警察けいさつ現在げんざいまで組織そしきてき関与かんよつよ否定ひていしている。

緒方おがた共産党きょうさんとう国際こくさい部長ぶちょうだったことから、盗聴とうちょうによる情報じょうほうとう本部ほんぶ外国がいこく団体だんたいとの連絡れんらく内容ないよう収集しゅうしゅう目的もくてきだったとられる。

公務員こうむいん職権しょっけん濫用らんようざいへの該当がいとうせい

編集へんしゅう

1987ねん8がつ緒方おがたは、東京とうきょう地検ちけん上記じょうき行為こういについて起訴きそたい東京とうきょう地裁ちさいづけ審判しんぱん請求せいきゅうおこなったが東京とうきょう地裁ちさい東京とうきょう高裁こうさい緒方おがた請求せいきゅう棄却ききゃくした。これをけて、緒方おがた最高裁さいこうさい特別とくべつ抗告こうこくしたが、本件ほんけんにおける警察官けいさつかん盗聴とうちょう行為こうい公務員こうむいん職権しょっけん濫用らんようざいにあたらないとして抗告こうこく棄却ききゃくした。

職権しょっけん濫用らんようざいでいう「職権しょっけん」は公務員こうむいん一般いっぱんてき職務しょくむ権限けんげんのすべてをいうのではなく、そのうち、職権しょっけん行使こうし相手方あいてがたたい法律ほうりつじょう事実じじつじょう負担ふたんないし不利益ふりえきしょうぜしめるにりる特別とくべつ職務しょくむ権限けんげんをいい、同罪どうざい成立せいりつするためには公務員こうむいん不法ふほう行為こういみぎ性質せいしつをもつ職務しょくむ権限けんげん濫用らんようしておこなわれたことをようするものというべきである。すなわち、公務員こうむいん不法ふほう行為こうい職務しょくむとしてなされたとしても、職権しょっけん濫用らんようしておこなわれていないときは同罪どうざい成立せいりつする余地よちはなく、その反面はんめん公務員こうむいん不法ふほう行為こうい職務しょくむとかかわりなくなされたとしても、職権しょっけん濫用らんようしておこなわれたときには同罪どうざい成立せいりつすることがあるのである。

本件ほんけんでは、警察官けいさつかん職務しょくむとしてはおこなわれているが、被疑ひぎしゃらは盗聴とうちょう行為こうい全般ぜんぱんつうじて終始しゅうし何人なんにんたいしても警察官けいさつかんによる行為こういでないことをよそお行動こうどうをとっていたというのであるから、そこに、警察官けいさつかんみとめられている職権しょっけん濫用らんようがあったとみることはできないとして、警察官けいさつかん行為こうい職権しょっけん濫用らんようざい該当がいとうしないとして、緒方おがたづけ審判しんぱん請求せいきゅう退しりぞけた。

なお、現在げんざいでは、同様どうよう行為こういおこなった場合ばあい犯罪はんざい捜査そうさのための通信つうしん傍受ぼうじゅかんする法律ほうりつ30じょう1こう当時とうじ制定せいてい)に違反いはんする行為こういであり、どうこう違反いはんする行為こういは3こうによりづけ審判しんぱん請求せいきゅう対象たいしょうなので、本件ほんけんのような事例じれい場合ばあいづけ審判しんぱん請求せいきゅう認容にんようされる可能かのうせいがある。

影響えいきょう

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  • それまで秘密ひみつとされていた公安こうあん警察けいさつ活動かつどう世間せけん注目ちゅうもくびた。
  • 捜査そうさ担当たんとうした横浜よこはま地方ちほう検察庁けんさつちょう神奈川かながわけん警察けいさつから逆恨さかうらみされて捜査そうさから撤退てったいせざるをず、目付めつけやくとしてのちから完全かんぜんうしなった。東京とうきょう地方ちほう検察庁けんさつちょう起訴きそ処分しょぶん決定けってい世論せろんきびしい批判ひはんけた。地検ちけんどう時期じきっていた福岡ふくおかけん京都きょうとぐん苅田かんだまちにおける住民じゅうみんぜい流用りゅうよう事件じけん捜査そうさ頓挫とんざし、“検察けんさつ警察けいさつにはてない”とさげすまれ信頼しんらいちた。このてんについては、とき検事けんじ総長そうちょう伊藤いとう栄樹えいきが、回想かいそうろく秋霜烈日しゅうそうれつじつ』のなかで、おとぎばなしとしながらも、「検察けんさつ警察けいさつてるか。どうもかならてるとはいえなさそうだ。てたとしても、双方そうほうおおきなしこりがのこり、治安ちあん維持いじじょうこまった事態じたいになるおそれがある。それでは、警察けいさつのトップにいてみよう。目的もくてきのいかんをわず、警察けいさつ活動かつどう違法いほう手段しゅだんをとることは、すべきではないとおもわないか。どうしてもそういう手段しゅだんをとる必要ひつようがあるのなら、それを可能かのうにする法律ほうりつをつくったらよかろう、と。」と述懐じゅっかいしている。

脚注きゃくちゅう

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関連かんれん項目こうもく

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