日本にっぽん舞踊ぶよう

日本にっぽん舞踊ぶよう（にほんぶよう）は、日本にっぽんのいわゆる伝統でんとう的てきな踊おどりの総称そうしょうである^[1]。日本にっぽんの伝統でんとう的てきなダンスである舞まい（まい）と踊おどり（おどり）を合あわせたもの。

広義こうぎの日本にっぽん舞踊ぶよう（「日本にっぽんの舞踊ぶよう」）

概要がいよう

「舞踊ぶよう」とは、明治めいじのはじめに劇げき作家さっかの坪内つぼうち逍遥しょうようと福地桜痴ふくちおうちが考案こうあんした翻訳ほんやく造語ぞうごの一ひとつで、本来ほんらいは英語えいごの dance の和訳わやくにあたる。

造語ぞうごの種類しゅるいとしては「田畑たはた」や「恋愛れんあい」と同おなじ複合語ふくごうごにあたり、日本語にほんごの「舞まい」（まひ）と「踊おどり」（をどり）の二に字じを結合けつごうしたもの。逍遥しょうようが自著じちょ『新しん楽劇がくげき論ろん』（明治めいじ37年ねん）でこの語かたりを多用たようしたことから読者どくしゃを通つうじて一般いっぱんに広ひろまった。

やがて日本にっぽん伝統でんとうの「舞踊ぶよう」をダンスの翻訳ほんやく語ごである「舞踊ぶよう」と区別くべつする必要ひつよう性せいから、「日本にっぽんの舞踊ぶよう」という表現ひょうげんが用もちいられるようになり、これが定着ていちゃくして今日きょうに至いたる。

戸部とべ銀作ぎんさくは日本にっぽん舞踊ぶようについて「日本にっぽん舞踊ぶようには、大おおざっぱにいっても、心しん、性根しょうこん、表現ひょうげん、形かたち、動うごき、間あいだ、位置いち、流ながれの八やっつの目的もくてきがある。だが、いくつ目的もくてきがあり要素ようそがあっても、究極きゅうきょくは演者えんじゃの『心しん』を演えんじるものである」と述のべている。反面はんめん、日本にっぽん舞踊ぶようは演えんじられる役柄やくがらに応おうじて、動作どうさの細部さいぶまで様式ようしき的てきな型かたが定さだめられている^[2]。

日本にっぽんの舞踊ぶようの種類しゅるい

日本にっぽんの伝統でんとう的てきな舞踊ぶようは、舞まい・踊おどり・振ふりの三さん要素ようそによって構成こうせいされる。それぞれの要素ようそはオーバーラップしており、峻別しゅんべつすることはできない^[2]。

舞まい

荘重そうちょうな歌うたや音楽おんがくに合あわせて、摺すり足あしや静しずかな動作どうさで舞台ぶたいを廻まわるもの。心しんの内面ないめんを水平すいへい的てきな動作どうさで表現ひょうげんし、呪術じゅじゅつ的てき要素ようそが強つよい^[2]。貴族きぞく的てきで、舞台ぶたい芸能げいのうとして長ながい歴史れきしをもつ。

宮廷きゅうていの祭祀さいしに奉納ほうのうされるもの
- 雅楽ががく（ががく）
- 舞楽ぶがく（ぶがく）
民間みんかんの祭礼さいれいにおいて披露ひろうされるもの
- 神楽かぐら（かぐら）
- 田楽でんがく（でんがく）
歌うた＋舞まいの様式ようしきをとるもの
- 猿楽さるがく（さるがく）
- 白拍子しらびょうし（しらびょうし）
- 延のべ年ねん（えんねん）
- 曲きょく舞まい（くせまい）
- 幸さいわい若わか舞まい（こうわかまい）
舞台ぶたい演劇えんげき化かしたもの
- 能楽のうがく（のうがく）

踊おどり

軽快けいかいな歌うたや音楽おんがくに合あわせて、意味いみを伴ともなう肉体にくたい的てき動作どうさを律動りつどう的てきに表現ひょうげんする。新しん仏教ぶっきょうの興隆こうりゅうとともに特とくに鎌倉かまくら時代ときよになって発達はったつした。

民衆みんしゅうの娯楽ごらくとして発達はったつしたもの
- 念仏ねんぶつ踊おどり（ねんぶつおどり）
- 盆踊ぼんおどり（ぼんおどり）
  - 阿波あわ踊おどり（あわおどり）
  - 郡上ぐじょう踊おどり（ぐじょうおどり）
  - 西馬音内にしもない踊おどり（にしもないおどり）
  - その他た各地かくちに多数たすう

振ふり

歌うたや音楽おんがくに合あわせて、日常にちじょう的てきな動うごきやしぐさを舞踊ぶようとして表現ひょうげんするもの。演劇えんげき的てき要素ようそが強つよく、江戸えど時代じだいに歌舞伎かぶきや人形浄瑠璃にんぎょうじょうるりの発達はったつにともなって派生はせいした。

屏風びょうぶを立たてた座敷ざしきで舞まうもの
- 上方かみがた舞まい（かみがたまい）

舞台ぶたい演劇えんげき化かしたもの
- 歌舞伎かぶき舞踊ぶよう（かぶきぶよう）
  - 所作事しょさごとともいう。浄瑠璃じょうるりや長唄ながうたを伴奏ばんそうに使つかって踊おどる。浄瑠璃じょうるりは竹本たけもと・常磐津ときわづ・清元きよもとなどを使つかい、物語ものがたり性せいが濃こい。長唄ながうたの所作事しょさごとは曲きょくに合あわせての動作どうさの面白おもしろさを見みせるところがある。

その他た

比較的ひかくてき新あたらしい舞踊ぶようとして以下いかのものがある。

日本にっぽん武術ぶじゅつを舞踊ぶよう化かしたもの
- 棒ぼうの手て（ぼうのて）
- 剣舞けんぶ（けんぶ）
- 詩し舞まい（しぶ）
近代きんだい以降いこうの舞踊ぶよう
- 新しん舞踊ぶよう（しんぶよう）
- 歌謡かよう舞踊ぶよう（かようぶよう）
- 吟詠ぎんえい剣けん詩し舞まい（ぎんえいけんしぶ）

狭義きょうぎの日本にっぽん舞踊ぶよう（「日本にっぽん舞踊ぶよう」「舞踊ぶよう」）

概要がいよう

日本にっぽん舞踊ぶようには、現在げんざい200を越こえる流派りゅうはが存在そんざいする。その中なかでも特とくに、西川にしかわ流りゅう・藤間とうま流りゅう・坂東ばんどう流りゅう・花柳かりゅう流りゅう・若柳わかやなぎ流りゅうを「五大ごだい流派りゅうは」と呼よんでいる。