朝鮮ちょうせん語ごの南北なんぼく差さ

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朝鮮ちょうせん語ごの南北なんぼく差さ（ちょうせんごのなんぼくさ）では、大韓民国だいかんみんこく（以下いか「韓国かんこく」又または「南みなみ」という。）と朝鮮民主主義人民共和国ちょうせんみんしゅしゅぎじんみんきょうわこく（以下いか「北朝鮮きたちょうせん」又または「北きた」という。）における朝鮮ちょうせん語ごの言語げんご的てき差異さいを扱あつかう。なお、適宜てきぎ延のべ辺べ（以下いか「中国ちゅうごく」又または「中なか」という。）の朝鮮ちょうせん語ごについても扱あつかう。

南北朝鮮なんぼくちょうせんで用もちいられている言語げんごはいずれも分断ぶんだん国家こっかとなる以前いぜんの標準ひょうじゅん朝鮮ちょうせん語ごを引ひき継つぐものであり、言語げんごとしては同一どういつであるが、国家こっか分断ぶんだんの長期ちょうき化かとともに細こまかな点てんでいくつかの差異さいが見みられる。以下いかに南北なんぼくの言語げんご規範きはんを中心ちゅうしんに言語げんご的てきな差異さいを記述きじゅつする。

漢字かんじ使用しようの問題もんだいについては「漢字かんじ復活ふっかつ論ろん」を参照さんしょう。また正書法せいしょほうについては「朝鮮ちょうせん語ごの正書法せいしょほう」を参照さんしょう。

総論そうろん

朝鮮ちょうせん語ごの正書法せいしょほうは、1933年ねんに朝鮮ちょうせん語ご学会がっかいが制定せいていした「朝鮮ちょうせん語ご綴字ていじ法統ほうとう一案いちあん（한글 맞춤법 통일안）」が朝鮮ちょうせん解放かいほう後ごも引ひき続つづき南北なんぼくで用もちいられたが、1948年ねんの大韓民国だいかんみんこくと朝鮮民主主義人民共和国ちょうせんみんしゅしゅぎじんみんきょうわこく成立せいりつ後ご、両国りょうこくはそれぞれ異ことなる言語げんご政策せいさくをとることとなった。

南北なんぼくで言語げんご規範きはんを別々べつべつに改訂かいていすることによる正書法せいしょほうや発音はつおん法ほう上じょうの相違そうい点てんの拡大かくだいに加くわえて、近年きんねんでは外来がいらい語ごの取とり入いれ方かたの違ちがいが目立めだつようになり、南北なんぼくの出身しゅっしん者しゃが意思いし疎通そつうに支障ししょうを来きたしている例れいも報告ほうこくされている。

北朝鮮きたちょうせん

北朝鮮きたちょうせんでは、1954年ねんに「朝鮮ちょうせん語ご綴字ていじ法ほう（조선어 철자법）」を制定せいていし、現行げんこう正書法せいしょほうにおける章あきら配列はいれつの基礎きそが形成けいせいされるとともに、これにより規範きはん上じょう、はじめて南北なんぼくの正書法せいしょほうに差異さいが生しょうじた。

続つづいて、1960年代ねんだいに入はいりいわゆる主体しゅたい思想しそうが台頭たいとうするのとあいまって、言語げんご政策せいさくが大おおきく転換てんかんされた。そして金きむ日成いるそん「朝鮮ちょうせん語ごを発展はってんさせるためのいくつかの問題もんだい」（1964年ねん）、金きむ日成いるそん「朝鮮ちょうせん語ごの民族みんぞく的てき特性とくせいを正ただしく生いかすことについて」（1966年ねん）を受うけ、1966年ねんに内閣ないかく直属ちょくぞくの国語こくご査定さてい委員いいん会かいが「朝鮮ちょうせん語ご規範きはん集しゅう（조선말규범집）」を発表はっぴょうし、これにより主おもに分わかち書がきの面めんにおいて南北なんぼくの言語げんご規範きはんの差異さいが拡大かくだいした。その後ご1987年ねんにこの「朝鮮ちょうせん語ご規範きはん集しゅう」が改訂かいていされたが、分わかち書がきに関かんしては、さらに2000年ねんに「朝鮮ちょうせん語ご分わかち書がき規範きはん（조선말 띄여쓰기규범）」、2003年ねんに「分わかち書がき規定きてい（띄여쓰기규정）」が別途べっと制定せいていされ、これが使用しようされた。

「朝鮮ちょうせん語ご規範きはん集しゅう」については、2010年ねんに再ふたたび改訂かいていが行おこなわれ（主おもに発音はつおん法ほう）、これが2023年ねん現在げんざい最新さいしんの言語げんご規範きはんである。

韓国かんこく

韓国かんこくでは、1933年ねんの「朝鮮ちょうせん語ご綴字ていじ法統ほうとう一案いちあん」を引ひき続つづき用もちいつつ、数次すうじの草案そうあん制定せいてい作業さぎょうが行おこなわれ、「ハングル正書法せいしょほう（한글 맞춤법）」及および「標準ひょうじゅん語ご規定きてい（표준어 규정）」を定さだめ、これにより多少たしょう南北なんぼく間あいだの差異さいが拡大かくだいした。その後ご、2014年ねん及および17年ねんに「ハングル正書法せいしょほう」が改正かいせいされ現在げんざいに至いたる。

字母じぼ

朝鮮ちょうせん語ごを表記ひょうきするのに用もちいられる字母じぼについては、南北なんぼくで違ちがいがない。ただし、活字かつじにおいては、ㅌは韓国かんこくではの字体じたいが主おもに用もちいられるのに対たいして、北朝鮮きたちょうせんでは専もっぱらやのような字体じたいが用もちいられるという違ちがいがある。その他たにも字形じけい・デザイン差さのレベルでは細こまかな違ちがいが存在そんざいしている。

字母じぼに関かんして、韓国かんこくでは合成ごうせい母音ぼいん字母じぼㅐ，ㅒ，ㅔ，ㅖ，ㅘ，ㅙ，ㅚ，ㅝ，ㅞ，ㅟ，ㅢ、および合成ごうせい子音しいん字母じぼㄲ，ㄸ，ㅃ，ㅆ，ㅉは独立どくりつした字母じぼとして扱あつかわれないが、北朝鮮きたちょうせんではこれらの合成ごうせい字母じぼも独立どくりつした字母じぼとして扱あつかわれる。

子音しいん字母じぼの名称めいしょうが南北なんぼくで異ことなるものがある。

字母じぼ	名称めいしょう			発音はつおん
	南みなみ	北きた	中国ちゅうごく	南みなみ	北きた	中国ちゅうごく
ㄱ	기역	기윽	기윽	[-역(여기, 여글)]	[-윽(으기, 으글)]	[-윽(으기, 으글)]
ㄷ	디귿	디읃	디읃	[-귿(그시, 그슬)]	[-읃(으지, 으들)]	[-읃(으시, 으슬)]
ㅅ	시옷	시읏	시읏	[-옫(오시, 오슬)]	[-읃(으시, 으슬)]	[-읃(으시, 으슬)]
ㅈ	지읒	지읒	지읒	[-읃(으시, 으슬)]	[-읃(으지, 으즐)]	[-읃(이시, 으슬)]
ㅊ	치읓	치읓	치읓	[-읃(으시, 으슬)]	[-읃(으치, 으츨)]	[-읃(이시, 으슬)]
ㅋ	키읔	키읔	키읔	[-윽(으기, 으글)]	[-윽(으키, 으클)]	[-윽(으기, 으글)]
ㅌ	티읕	티읕	티읕	[-읃(으시, 으슬)]	[-읃(으치, 으틀)]	[-읃(으시, 으슬)]
ㅍ	피읖	피읖	피읖	[-읍(으비, 으블)]	[-읍(으피, 으플)]	[-읍(으비, 으블)]
ㅎ	히읗	히읗	히읗	[-읃(으시, 으슬)]	[-읃(으시, 으슬)]	[-읃(으시, 으슬)]
ㄲ	쌍기역	된기윽	쌍기윽
ㄸ	쌍디귿	된디읃	쌍디읃
ㅃ	쌍비읍	된비읍	쌍비읍
ㅆ	쌍시옷	된시읏	쌍시읏
ㅉ	쌍지읒	된지읒	쌍지읒

「ㄱ，ㄷ，ㅅ」の名称めいしょうは、南みなみでは『訓蒙くんもう字じ会かい』（1527年ねん）における名称めいしょうを受うけ継ついだのに対たいし、北きた・中国ちゅうごくでは「-ㅣ으-」という語形ごけいを利用りようして機械きかい的てきに名称めいしょうをつけている。

また、濃こ音字おんじ母ははの名称めいしょうは、南みなみ・中国ちゅうごくでは「쌍-（双そう）」を冠かんするのに対たいし、北きたでは「된-（濃こい…）」を冠かんする。

辞書じしょの見出みだし語ごの配列はいれつ

辞書じしょの見出みだし語ごの配列はいれつは以下いかの通とおりである。

• 子音しいん字母じぼ（頭あたま音おん）

南みなみ：	ㄱ	ㄲ	ㄴ	ㄷ	ㄸ	ㄹ	ㅁ	ㅂ	ㅃ	ㅅ	ㅆ	ㅇ	ㅈ	ㅉ	ㅊ	ㅋ	ㅌ	ㅍ	ㅎ
北きた：	ㄱ		ㄴ	ㄷ		ㄹ	ㅁ	ㅂ		ㅅ			ㅈ		ㅊ	ㅋ	ㅌ	ㅍ	ㅎ	ㄲ	ㄸ	ㅃ	ㅆ	ㅉ	ㅇ
中なか：	ㄱ		ㄴ	ㄷ		ㄹ	ㅁ	ㅂ		ㅅ		ㅇ	ㅈ		ㅊ	ㅋ	ㅌ	ㅍ	ㅎ	ㄲ	ㄸ	ㅃ	ㅆ	ㅉ

• 母音ぼいん字母じぼ

南みなみ：	ㅏ	ㅐ	ㅑ	ㅒ	ㅓ	ㅔ	ㅕ	ㅖ	ㅗ	ㅘ	ㅙ	ㅚ	ㅛ	ㅜ	ㅝ	ㅞ	ㅟ	ㅠ	ㅡ	ㅢ	ㅣ
北きた：	ㅏ		ㅑ		ㅓ		ㅕ		ㅗ				ㅛ	ㅜ				ㅠ	ㅡ		ㅣ	ㅐ	ㅒ	ㅔ	ㅖ		ㅚ			ㅟ		ㅢ	ㅘ	ㅝ	ㅙ	ㅞ
中なか：	ㅏ		ㅑ		ㅓ		ㅕ		ㅗ				ㅛ	ㅜ				ㅠ	ㅡ		ㅣ	ㅐ	ㅒ	ㅔ	ㅖ	ㅘ	ㅚ	ㅙ	ㅝ	ㅟ	ㅞ	ㅢ

• 子音しいん字母じぼ（末すえ音おん）

南みなみ：	ㄱ	ㄲ	ㄳ	ㄴ	ㄵ	ㄶ	ㄷ	ㄹ	ㄺ	ㄻ	ㄼ	ㄽ	ㄾ	ㄿ	ㅀ	ㅁ	ㅂ	ㅄ	ㅅ	ㅆ	ㅇ	ㅈ	ㅊ	ㅋ	ㅌ	ㅍ	ㅎ
北きた：	ㄱ		ㄳ	ㄴ	ㄵ	ㄶ	ㄷ	ㄹ	ㄺ	ㄻ	ㄼ	ㄽ	ㄾ	ㄿ	ㅀ	ㅁ	ㅂ	ㅄ	ㅅ		ㅇ	ㅈ	ㅊ	ㅋ	ㅌ	ㅍ	ㅎ	ㄲ												ㅆ
中なか：	ㄱ			ㄴ			ㄷ	ㄹ								ㅁ	ㅂ		ㅅ		ㅇ	ㅈ	ㅊ	ㅋ	ㅌ	ㅍ	ㅎ	ㄲ	ㄳ	ㄵ	ㄶ	ㄺ	ㄻ	ㄼ	ㄽ	ㄾ	ㄿ	ㅀ	ㅄ	ㅆ

北きたでは、合成ごうせい字母じぼ（合ごう用よう並なみ書しょを除のぞく。）を正規せいきの字母じぼとして基本きほん字母じぼの後のちに（画数かくすう順じゅんに）配列はいれつする。また、子音しいん字母じぼ「ㅇ」は、終おわり声ごえ（音おと価かあり）のときはㅅとㅈの間あいだに配列はいれつするが、初声はつこえ（音おと価あたいなし）のときは母音ぼいんから始はじまるものとみなし、ㅉの後のちに配列はいれつする。

中国ちゅうごく（2016年ねん改訂かいてい）では、合ごう用よう並なみ書しょを含ふくめ、合成ごうせい字母じぼをいずれも基本きほん字母じぼの後のちに配列はいれつする。また、子音しいん字母じぼ「ㅇ」は、初声はつこえ・終おわり声ごえ（音おと価かの有無うむ）を問とわずㅅとㅈの間あいだに配列はいれつする。

これに対たいし、南みなみでは、合成ごうせい字母じぼを基本きほん字母じぼの配列はいれつの中なかに配列はいれつする（例れい: ㅏ→ㅐ→ㅑ、ㅗ→ㅘ→ㅙ→ㅚ→ㅛ、ㄱ→ㄲ→ㄴ、ㄷ→ㄸ→ㄹ）。また、子音しいん字母じぼ「ㅇ」は、中国ちゅうごくと同様どうようにいずれもㅅとㅈの間あいだに配列はいれつする。

音声おんせい

南北なんぼくの標準ひょうじゅん語ごにおける子音しいん・母音ぼいんの音素おんその種類しゅるいとその数かずについてはともに同おなじであるが、音声おんせい的てきな特徴とくちょうに若干じゃっかんの相違そういがある。およそ、原則げんそくとして韓国かんこくの標準ひょうじゅん語ごの発音はつおんはソウル方言ほうげんに依拠いきょし、北朝鮮きたちょうせんの標準ひょうじゅん語ごである文化ぶんか語ごの発音はつおんは平壌ぴょんやん方言ほうげんに依拠いきょしているため、音声おんせい的てきに若干じゃっかんの違ちがいが見みられる。

子音しいん

子音しいんについては以下いかのような違ちがいが認みとめられる。

• /ㅈ/，/ㅊ/，/ㅉ/は、ソウル方言ほうげんでは歯茎はぐき硬かた口蓋こうがい破やぶ擦ず音おと[ʨ]，[ʨʰ]，[ʨʼ]で現あらわれるのが一般いっぱん的てきであるが、平壌ぴょんやん方言ほうげんでは歯茎はぐき破やぶ擦ず音おと[ʦ]，[ʦʰ] ，[ʦʼ]に近ちかく発音はつおんされるのが一般いっぱん的てきである（자동(自動じどう) 南みなみ[ʨadoŋ]，北きた[ʦadoŋ]）。
• 南北なんぼくの標準ひょうじゅん語ごにおいて、流ながれ音おん/ㄹ/は, 鼻音びおん/ㅁ/, /ㅇ/の直後ちょくごに立たたない。その場合ばあい、/ㄹ/は鼻音びおん/ㄴ/に交替こうたいする。ただし，北きたの標準ひょうじゅん語ごでは，/ㅑ/,/ㅕ/,/ㅛ/,/ㅠ/の前まえでは，/ㄹ/のまま発音はつおんすることが許容きょようされる。右みぎ標準ひょうじゅん発音はつおんを表ひょうにまとめると次つぎのとおりである。

つづり	南みなみの発音はつおん	北きたの発音はつおん	中なかの発音はつおん	漢字かんじ表記ひょうき	解説かいせつ
통로	［통노］		［통로］	通路つうろ
독립	［동닙］		［동립］	獨立どくりつ
침략	［침냑］	［침냑 / 침략］	［침략］	侵略しんりゃく	/ㄹ/の後のちに/ㅑ, ㅕ, ㅛ, ㅠ/が続つづく場合ばあい
협력	［혐녁］	［혐녁 / 혐력］	［혐력］	協力きょうりょく
[参考さんこう] 분량	［불량］			分量ぶんりょう	原則げんそくどおり。
[参考さんこう] 생산량	［생산냥］		［생산량 / 생산냥］	生産せいさん量りょう	/ㄴ/と/ㄹ/の間あいだに形態素けいたいその境界きょうかいがある場合ばあい

※発音はつおん表記ひょうきを「／」で区切くぎったものは、右側みぎがわが許容きょよう発音はつおんである。

頭あたま音おん法則ほうそく

近代きんだい朝鮮ちょうせん語ごにおいては、主しゅとして漢字かんじ語ごに対たいし頭あたま音おん法則ほうそく（詳細しょうさいは後述こうじゅつ「頭あたま音おん法則ほうそく」を参照さんしょう）と呼よばれる子音しいん推移すいいが適用てきようされてきた。

南みなみでは，この法則ほうそくに従したがい漢字かんじ語ごでは頭あたま音おんに/ㄴ/の一部いちぶと/ㄹ/が立たたない。

これに対たいして、北きたでは原則げんそくとして頭あたま音おん法則ほうそくを適用てきようしないため，語頭ごとうに/ㄴ/・/ㄹ/が立たちうる。ただし、北きたのこの発音はつおんは朝鮮ちょうせん語ごの歴史れきし的てき推移すいいを無視むしし、借用しゃくよう語ごの語頭ごとう子音しいんが保存ほぞんされていた時代じだいの発音はつおんを規範きはんとして人工じんこう的てきに復活ふっかつさせたものである。

なお、現実げんじつには，北きたでも老年ろうねん層そうの話者わしゃを中心ちゅうしんに，語頭ごとうの/ㄴ/・/ㄹ/が発音はつおんできず、南みなみと同おなじ発音はつおんをしている者ものも少すくなくないと見みられる。

実際じっさいに、牡丹ぼたん峰ほう楽団がくだんの公演こうえんなどでも次つぎのような非ひ規範きはん的てきな発音はつおんがみられる(例れい:렬차→열차(列車れっしゃ)、륙보병사단→육보병사단(六ろく歩兵ほへい師団しだん)など)。また、これと反対はんたいに標準ひょうじゅん発音はつおんでは脱落だつらくするが、実際じっさいには脱落だつらくしない現象げんしょうとして、次つぎのような例れいも見みられる(例れい:대열→대렬(隊列たいれつ))。

また、頭あたま音おん法則ほうそくは本来ほんらい朝鮮ちょうせん語ごにおけるすべての語かたりに適用てきようされるべきものであるが、近代きんだい以降いこうの借用しゃくよう語ごに関かんしては、南みなみにおいても頭あたま音おん法則ほうそくを適用てきようしないつづり・発音はつおんを規範きはんとしている。そのため「라디오/라지오（ラジオ）」はそのまま[ɾadio/ɾaʥio]として発音はつおんすることとなるが、老年ろうねん層そうの中なかには南北なんぼく問とわず[nadio/naʥio]と発音はつおんする人物じんぶつが少すくなくない。

そのほか固有こゆう語ごである名詞めいし「님」は、正書法せいしょほう・標準ひょうじゅん発音はつおん法ほうは南北なんぼくでそれぞれ/임/，/님/とされているが（『あなたのための行進曲こうしんきょく』参照さんしょう）、実際じっさいには南みなみでもに/님/と発音はつおん・表記ひょうきされることが多おおい。

母音ぼいん

母音ぼいんについては以下いかのような違ちがいが認みとめられる。/ㅓ/はソウル方言ほうげんでは円えん唇くちびるの度合どあいがより弱よわく、平壌ぴょんやん方言ほうげんでは円えん唇くちびるの度合どあいがより強つよい。国際こくさい音声おんせい記号きごうで示しめすと、ソウル方言ほうげんが[ɔ̜]であるのに対たいし、平壌ぴょんやん方言ほうげんは[ɔ]である。この円えん唇くちびる性せいのため、ソウル方言ほうげん話者わしゃが平壌ぴょんやん方言ほうげんの/ㅓ/を/ㅗ/に近ちかくき取きとることがある。

また、北きたにおいて、「/ㅐ/と/ㅔ/，/ㅡ/と/ㅜ/を混同こんどうする現象げんしょう」（『文化ぶんか語ご発音はつおんの常識じょうしき』）が指摘してきされている。

南みなみでも、/ㅐ/と/ㅔ/は、若年じゃくねん層そうのソウル方言ほうげんでは、明確めいかくな区別くべつを失うしなっている。

ピッチ

ピッチパターンはソウル方言ほうげんと平壌ぴょんやん方言ほうげんで異ことなるが、その違ちがいについて詳くわしい研究けんきゅうは進すすんでいない。1992年ねん刊かん『朝鮮ちょうせん語ご大だい辞典じてん（조선말대사전）』には若干じゃっかんの単語たんごに音響おんきょう機器ききを用もちいた単語たんごのピッチが3段階だんかいで示しめされているが、例たとえば「꾀꼬리（コウライウグイス）」のピッチは/꜔.꜒.꜔/("232";1低てい2中ちゅう3高だかの3段階だんかい）と示しめされているなど、ソウル方言ほうげんのピッチパターンと異ことなる表示ひょうじが散見さんけんされる。

表記ひょうき法ほう

形態けいたいに関かんする表記ひょうき

-아/-어形かたち

ㅣ系けい母音ぼいん語幹ごかん

語幹ごかん末まつ音おとがㅣ，ㅐ，ㅔ，ㅚ，ㅟ，ㅢの母音ぼいん語幹ごかんの接続せつぞく形がたは、南みなみでは他たの陰かげ母音ぼいん語幹ごかんと同様どうよう-어が付つくが、北きたでは-여が付つく。ただし、発音はつおん上じょうは南みなみにおいても-여と発音はつおんすることが標準ひょうじゅん語ご規定きていによって許容きょようされている。-

原形げんけい	-아/어形かたち		日本語にほんご
	南みなみ	北きた
피다	피어	피여	咲さく
내다	내어	내여	出だす
세다	세어	세여	強つよい
되다	되어	되여	なる
뛰다	뛰어	뛰여	跳とぶ
희다	희어	희여	白しろい
[参考さんこう] 잇다	이어		続つづく

ㅂ不規則ふきそく用言ようげん

ㅂ不規則ふきそく用言ようげんの接続せつぞく形がたは、1音節おんせつ語幹ごかんの場合ばあい、南北なんぼく双方そうほうで陽ひ語幹ごかんは-와、陰かげ語幹ごかんでは-워と表記ひょうきする。

2音節おんせつ以上いじょうの語幹ごかんの場合ばあい、南みなみでは、言語げんご規範きはん上じょうも常つねに-워と表記ひょうきするが、北きたでは、言語げんご規範きはん上じょうは1音節おんせつの語幹ごかんと同様どうように区別くべつを行おこなう建前たてまえとされる。

原形げんけい	-아/어形かたち		日本語にほんご
	南みなみ	北きた
곱다	고와		美うつくしい
고맙다	고마워	고마와	ありがたい
춥다	추워		寒さむい
무겁다	무거워		重おもい

ㅎ不規則ふきそく用言ようげん

ㅎ不規則ふきそく用言ようげんの接続せつぞく形がたは，南みなみでは/-ᅟᅡᇂ, ᅟᅣᇂ/は/-ㅐ, ㅒ/に ，/-ᅟᅥᇂ, ᅟᅧᇂ/は/ㅔ, ㅖ/に変化へんかするが，北きたではいずれも/-ㅐ, ㅒ/となる。

原形げんけい	-아/어形かたち		日本語にほんご
	南みなみ	北きた
노랗다	노래		黄色きいろい
누렇다	누레	누래
하얗다	하얘		白しろい
허옇다	허예	허얘

濃こ音おんとして現あらわれる語尾ごび等とう

終おわり声ごえㄹを含ふくむ語尾ごびは、南みなみではㄹの直後ちょくごの疑問ぎもんを表あらわす語尾ごびが濃こ音字おんじでつづられるほかは平ひら音字おんじで綴つづられるが、北きたでは全すべてㄹの直後ちょくごが平ひら音字おんじでつづられる。これらの語尾ごびは語源ごげん的てきに連体れんたい形がた-ㄹの後のちの平ひら音おとが濃こ音おと化かした形かたちであるところ、北きたの表記ひょうき法ほうでは-ㄹの直後ちょくごの濃こ音おとを平たいら音字おんじで表記ひょうきするが、南みなみの表記ひょうき法ほうでは濃こ音字おんじで表記ひょうきする。

南みなみ	北きた	意味いみ
-ㄹ까?	-ㄹ가?	…するだろうか？
-ㄹ쏘나?	-ㄹ소냐?	…せんや
-ㄹ게	-ㄹ게	…するからね

また、語根ごこんに接尾せつび辞じ又または語尾ごびがつく場合ばあいにおいて南みなみでは濃こ音おんとして表記ひょうきされるものが北きたでは平たいら音おんとして表記ひょうきされたり，またその逆ぎゃくとなるものがある。

南みなみ	北きた	語源ごげん	意味いみ
길쭉이	길죽이	길쥭	長ながめに
길찍하다	길직하다	길즉ᄒᆞ다	とても長ながい
아리땁다	아릿답다	아ᄅᆞᆺ답다	美うつくしい
섣부르다	서뿌르다	설우르다	不慣ふなれだ

接尾せつび辞じ「-이」

擬声ぎせい・擬態語ぎたいごに「-이」が付ついた語かたりは、南みなみでは当該とうがい擬声ぎせい・擬態語ぎたいごに「-하다」又または「-거리다」が付つきうるか否ひかによって語根ごこんと接尾せつび辞じを分わけて、或あるいは分わけずに表記ひょうきするが、北きたでは双方そうほうとも語根ごこんと接尾せつび辞じを分わけずに表記ひょうきする。

南みなみ	北きた	日本語にほんご
더펄이	더퍼리	おっちょこちょい
오뚝이	오또기	起おき上あがり小法師こぼし
일찍이	일찌기	早はやく
깍두기		カクテギ(大根だいこんキムチ)
동그라미		丸まる
반드시		必かならず (分わけて表記ひょうきする반듯이は「まっすぐに」の意味いみ)

また、一部いちぶの語かたりでは、南北なんぼくで「-이」と「-히」のどちらを付つけるかが異ことなる。

南みなみ	北きた	日本語にほんご
가뜩이	가뜩히
걀쯤이	걀쯤히
엉거주춤히	엉거주춤이

二に重じゅうパッチム

正書法せいしょほう上じょう、「ㄺ, ㄼ, ㄾ, ㅀ」等とうの二に重じゅうパッチムで終おわる語根ごこんに子音しいんで始はじまる接尾せつび辞じが合あわさる場合ばあいの表記ひょうきについては、ほぼ同様どうようの定さだめがなされている。しかしながら、次つぎのような語かたりにおいて表記ひょうきに違ちがいがある。

南みなみ	北きた	日本語にほんご
넋두리	넉두리	愚痴ぐち
널따랗다	넓다랗다	広々ひろびろとしている
널찍하다	널직하다
얄따랗다	얇다랗다	薄うすっぺらい
짤따랗다	짧다랗다	細々こまごまとしている

「-이오/이요」

体言たいげんに付つく/-이요/は南みなみでは接続せつぞく形がたで「이요」、終結しゅうけつ形がたで「이오」と表記ひょうきされるが、北きたでは双方そうほうとも「이요」と表記ひょうきされる。

南みなみ	北きた	日本語にほんご
이것은 낫이요, 저것은 붓이다.	이것은 낫이요, 저것은 붓이다.	これは鎌かまで、それは筆ふでだ。
이것은 책이오.	이것은 책이요.	これは本ほんです。
이것은 사전이요, 저것은 자료집이오.	이것은 사전이요, 저것은 자료집이요.	これは辞典じてんで、これは資料集しりょうしゅうです。
[参考さんこう]이리 오시오.	이리 오시오.	こちらに来きなさい。
[参考さんこう]좋지요.	좋지요.	良よいでしょう。

漢字かんじ語ごに関かんする表記ひょうき

頭あたま音おん法則ほうそく

南みなみではㄹ, ㄴを初声はつこえに持もつ漢字かんじが語頭ごとうに来くるとき、頭あたま音おん法則ほうそくが適用てきようされるのに対たいして、北きたでは頭あたま音おん法則ほうそくが適用てきようされない。従したがって次つぎのような差異さいが生しょうずる。

（1）ㄹを頭あたま音おんに持もつもの

南みなみでは、ㄹを初声はつこえに持もつ漢字かんじが語頭ごとうに立たつときは、当該とうがいㄹが、直後ちょくごに母音ぼいん[i]或あるいは半母音はんぼいん[j]が来くる場合ばあいにはㅇ、それ以外いがいの母音ぼいんが来くる場合ばあいにはㄴと綴つづられる。

これに対たいして、北きたでは頭あたま音おん法則ほうそくを適用てきようせず、常つねに初声はつこえのㄹを維持いじする。

南みなみ	北きた	漢字かんじ表記ひょうき
낙하	락하	落下らっか
냉수	랭수	冷水れいすい
연습	련습	鍊習
유의	류의	留意りゅうい
이익	리익	利益りえき

南みなみでは、률・렬は語頭ごとうに加くわえて、母音ぼいん及およびㄴの後のちでも율・열とつづられる。

これに対たいして北きたでは常つねに률・렬とつづられる。ただし、発音はつおん上じょうの例外れいがいとして、北きたで/렬/、/률/は便宜上べんぎじょう、母音ぼいんの後のちでそれぞれ[열]、[율]と、ㄹ以外いがいの子音しいんの後のちでそれぞれ[녈]、[뉼]と発音はつおんする。

南みなみ	北きた	南みなみ発音はつおん	北きた発音はつおん	漢字かんじ表記ひょうき
규율	규률	[규율]		規律きりつ
선열	선렬	[서녈]	[선녈]	先さき烈れつ
법률		[범뉼]		法律ほうりつ
행렬		[행녈]		行列ぎょうれつ
열렬		[열렬]		熱烈ねつれつ

（2）ㄴを頭あたま音おんに持もつもの

同様どうように南みなみでは、ㄴを初声はつこえに持もつ漢字かんじが語頭ごとうに立たち、及および当該とうがいㄴの直後ちょくごに母音ぼいん[i]あるいは半母音はんぼいん[j]が来くるときは、ㄴがㅇと綴つづられる。

これに対たいして北きたでは頭あたま音おん法則ほうそくを適用てきようせず、常つねに初声はつこえのㄴを維持いじする。

南みなみ	北きた	漢字かんじ表記ひょうき
이승	니승	尼僧にそう
여자	녀자	女子じょし

固有こゆう語ごについては、頭あたま音おん法則ほうそくの対象たいしょうではないが、次つぎの語かたりについては、南北なんぼくで頭あたま音おん法則ほうそく類似るいじの差異さいを生しょうずる。

南みなみ	北きた	意味いみ
임	님	愛いとしい人ひと

（3）固有こゆう語ご化かした漢字かんじ語ご

固有こゆう語ご化かしたごく一部いちぶの漢字かんじ語ごについては、（固有こゆう語ごとしての）発音はつおん通どおりに表記ひょうきする結果けっか、北きた南みなみで同どうじ、又または異ことなる表記ひょうきとなったものがある。なお，これらは、辞典じてん上じょう漢字かんじ語ごとして扱あつかわれない点てんに注意ちゅういを要ようする。

南みなみ	北きた	中なか	語源ごげんとなる漢字かんじ語ご	備考びこう
나사			羅紗らしゃ・螺にし絲いと
나팔			喇叭らっぱ
요기			療飢
남색	람색	남색	藍色あいいろ	従来じゅうらい、北きた・中ちゅうともに固有こゆう語ご化かした漢字かんじ語ごとして、남색と綴つづっていたが、北きたでは、現在げんざい漢字かんじ語ごとして扱あつかうこととなっている。람홍색からの類推るいすいと考かんがえられる。
양 / -냥	냥		兩りょう	南みなみでは、語頭ごとうに来くるときには、頭あたま音おん法則ほうそくを適用てきようする。 形式けいしき名詞めいしの場合ばあいには、例外れいがいとなる。
궁량	궁냥		窮きゅう量りょう
원수	원쑤		怨讐（怨讎）

これと反対はんたいに、元来がんらい固有こゆう語ごであったものが発音はつおん上じょうの類推るいすいにより、漢字かんじ語ごに転化てんかしたものもある。

南みなみ	北きた	語源ごげん
우레	우뢰 (雨あめ雷かみなり)	울에←우르-+-에

なお、南みなみにおいても「유（柳やなぎ）」、「임（林はやし）」といった姓せいは、「유（兪）」、「임（任にん）」などの姓せいと区別くべつするために、あえて「류（柳やなぎ）」、「림（林はやし）」と表記ひょうきすることが認みとめられており、またこれを表記ひょうき通どおりに読よむことがある。

南みなみ	北きた	漢字かんじ表記ひょうき
류시원		柳やなぎ時じ元もと

（4）接頭せっとう辞じがある場合ばあい・合成ごうせい語ご

接頭せっとう辞じがある単語たんごや合成ごうせい語ごの場合ばあい、南みなみの標準ひょうじゅん語ごでは語かたり中ちゅうでも頭あたま音おん法則ほうそくが適用てきようされるが，北きたでは頭あたま音おん法則ほうそくは適用てきようされず，発音はつおん上じょう，通常つうじょうの同化どうか現象げんしょうが生しょうじる（その他た，形態けいたい部ぶの境界きょうかいでは「ㄴㄹ」が「ㄴㄴ」になる現象げんしょうも生しょうじる）のみである。

南みなみ	北きた	南みなみ発音はつおん	北きた発音はつおん	漢字かんじ表記ひょうき
해외여행	해외려행	[해외여행]	[해외려행]	海外かいがい旅行りょこう
국제연합	국제련합	[국제연합]	[국제련합]	國際こくさい聯合れんごう
역이용	역리용	[영니용]		逆ぎゃく利用りよう
연이율	년리률	[연니율]	[년니율]	年利ねんり率りつ
열역학	열력학	[열려칵]		熱ねつ力學りきがく
중노동	중로동	[중노동]		重じゅう勞ろう動どう
비논리적	비론리적	[비놀리적]	[비롤리적]	非ひ論理ろんり的てき
공염불	공념불	[공념불]		空念佛からねんぶつ
남존여비	남존녀비	[남존녀비]		男尊女卑だんそんじょひ

また、「량（量りょう）」や「란（欄らん）」等とうの接尾せつび辞じのある単語たんごや合成ごうせい語ごとして、固有こゆう語ごや（欧米おうべいの）外来がいらい語ごの後のちに結合けつごうする場合ばあい、南みなみの標準ひょうじゅん語ごでは頭あたま音おん法則ほうそくが適用てきようされて「양」「난」等とうになるが、北きたでは適用てきようされず、常つねにㄹを維持いじする。

南みなみ	北きた	南みなみ発音はつおん	北きた発音はつおん	漢字かんじ併用へいよう表記ひょうき	意味いみ
개연(꽃)	개련(꽃)	[개연(꼳)]	[개련(꼳)]	개蓮はちす(꽃)	コウホネ
구름양	구름량	[구름냥]		구름量りょう	雲量うんりょう
에너지양	에네르기량	[에너지양]	[에네르기량]	에너지量りょう/에네르기量りょう	エネルギー量りょう
숫용	수룡	[순뇽]		숫/수龍りゅう	雄お龍りゅう
어머니난	어머니란	[어머니난]	[어머니란]	어머니欄らん	母親ははおや欄らん
가십난	―	[가심난]	―	가십欄らん	ゴシップ欄らん
[参考さんこう] 생산량		[생산냥]		生産せいさん量りょう	生産せいさん量りょう
[参考さんこう] 투고란		[투고란]		投稿とうこう欄らん	投稿とうこう欄らん

字音じおん

朝鮮ちょうせん漢かん字音じおんのうち、南みなみで몌、폐であるものは、北きたでは메、페とつづられる（ただし発音はつおんは南みなみでも [메]、[페]）。また、朝鮮ちょうせん漢かん字音じおんのうち、北きたで계であるものの一部いちぶは南みなみでは게と綴つづられる（ただし発音はつおんは北きたでも [게] となる）。

南みなみ	北きた	中なか	漢字かんじ表記ひょうき
몌별	메별	메별	袂たもと別べつ
폐쇄	페쇄	페쇄	閉鎖へいさ
폐지	페지	페지	廢止はいし
휴게	휴계	휴계	休憩きゅうけい

一部いちぶの単語たんごにおいて、本来ほんらい「ㄴㄴ」だったものが「ㄹㄹ」と発音はつおんされることがあり、南みなみでは慣習かんしゅうに従したがい「ㄴㄹ」と表記ひょうきする一方いっぽう、北きたでは「ㄴㄴ」と表記ひょうきする。

南みなみ	北きた	中なか	発音はつおん	漢字かんじ表記ひょうき
곤란	곤난	곤난	［골란］	困難こんなん
한라산	한나산	한나산	［할라산］	漢かん拏山

一部いちぶの漢字かんじにおいて字音じおんが異ことなるものがある。

南みなみ	北きた	中なか	漢字かんじ	用例ようれい
				南みなみ	北きた	中なか	漢字かんじ表記ひょうき
갹	거		醵	갹출	거출		醵出きょしゅつ
왜	외	외	歪ひずみ	왜곡	외곡	외곡	歪曲わいきょく
류	유	유	謬	오류 / 귀류법	오유 / 귀유법	오유 / 귀유법	誤謬ごびゅう / 歸謬法きびゅうほう
끽	긱		喫	끽경 / 만끽	긱경 / 만긱		喫驚きっきょう / 滿喫まんきつ

また、一部いちぶの単語たんごにおいて、通常つうじょうの字音じおんと異ことなる字音じおんが出現しゅつげんすることもある。

南みなみ	北きた	中なか	漢字かんじ表記ひょうき	備考びこう
표지	표식	표식	標識ひょうしき	南みなみにおける「識」の通常つうじょうの字音じおんは「식」
알력	알륵	알륵	軋轢あつれき	北きたにおける「轢」の通常つうじょうの字音じおんは「력」
나침반	라침반	라침판	羅ら針はり盤ばん	中国ちゅうごくにおける「盤ばん」の通常つうじょうの字音じおんは「반」 南みなみでは、/나침판/と発音はつおんする場合ばあいの漢字かんじ表記ひょうきを「羅ら針はり판」とする（標準ひょうじゅん国語こくご大だい辞典じてん）。 北きたでは、/라침판/と発音はつおんする場合ばあいの漢字かんじ表記ひょうきを「羅ら針はり板ばん」とする（朝鮮ちょうせん語ご大だい辞典じてん）。

合成ごうせい語ごに関かんする表記ひょうき

사이시옷 (間あいだのㅅ)

体言たいげん語根ごこんが合成ごうせいされる際さいに、南みなみではいわゆる「사이시옷（間あいだのㅅ）」を表記ひょうきするが、北きたではこれを原則げんそく一切いっさい表記ひょうきしない。但ただし、北きたにおいても새별（新あたらしい星ほし）/샛별（明星みょうじょう）等とうの対立たいりつのあるものについては、発音はつおん上じょうの差異さいを考慮こうりょして表記ひょうきすることとしている。

南みなみ	北きた	南みなみ発音はつおん	北きた発音はつおん	日本語にほんご
젓가락	저가락	［젇까락/저까락］		箸はし
시냇물	시내물	［시낸물］		小川おがわの水みず
나뭇잎	나무잎	［나문닙］	［나무입］	木この葉は
숫양	수양	［순냥］		雄お羊ひつじ
샛별	샛별 새별	［샏뼐］		明星みょうじょう（＝金星かなぼし）
빗바람	빗바람 비바람	［빋빠람］	［빋빠람］ ［비바람］	雨あめ混まじりの風ふう

ㅎの挿入そうにゅう

体言たいげん語幹ごかんが合成ごうせいされる場合ばあいに生しょうずるㅎの挿入そうにゅうについて、南みなみでは次じ音節おんせつの初声はつこえを激げき音おんで表記ひょうきしする。北きたでも原則げんそく同様どうようであるが、雌雄しゆうを表あらわす「수, 암」に限かぎって、これに続つづく語彙ごいが激げき音おん化かして発音はつおんされる場合ばあいであっても原形げんけい通どおり表記ひょうきする。

南みなみ/発音はつおん	北きた	語源ごげん	日本語にほんご
암퇘지	암돼지	아ᇡ-돼지←암-ㅎ-돼지	雌めす豚ぶた
수캐	수개	숳-개←수-ㅎ-개	雄お犬いぬ
암컷		아ᇡ-것	雌めす
[参考さんこう] 휘파람		휴ᄑᆞ람←휴-ㅎ-바람	口笛くちぶえ
[参考さんこう] 안팎		안파ᇧ←안-ㅎ-바ᇧ	内外ないがい

合成ごうせい語ごの語根ごこんの表記ひょうき

合成ごうせい語ごの表記ひょうきはそれぞれの語根ごこんを明示めいじすることを原則げんそくとするが、「こんにち語根ごこんが明確めいかくでない」ものについては語根ごこんを明示めいじしないとしており、これについては南北なんぼくともに同おなじである。しかし個々ここの合成ごうせい語ごを見みると、どの場合ばあいに語根ごこんが明確めいかくでないと見みるのかという分析ぶんせきの違ちがいから、いくつかの合成ごうせい語ごにおいて表記ひょうき法ほうの違ちがいが見みられる。

南みなみ	北きた	発音はつおん(南みなみ)	発音はつおん(北きた)	語源ごげん	日本語にほんご
올바르다	옳바르다	[올바르다]		옳-바르다	正ただしい
달걀	닭알	[달걀]	[다갈]	닭의-알 / 닭-알	鶏卵けいらん
벚꽃	벗꽃	[벋꼳]		벚-꽃	桜さくらの花はな
[参考さんこう] 벚		[벋]		버찌の縮ちぢみ約やく形かたち	さくらんぼ
널빤지	널판지	[널빤지]	[널판지]	널-板子いたご(판ᄌᆞ)	板材いたざい
날짜	날자	[날짜]		날-子こ(ᄌᆞ)	日数にっすう、日付ひづけ
손뼉	손벽	[손뼉]		소ᇇ벽←손-ㅅ-벽	手てのひら
안간힘	안깐힘	[안깐힘]		안-간힘	全力ぜんりょく
아내	안해	[아내]	[안해]	안해 / 안ᄒᆡ	家内やない（妻つま）

上うえの例れいで、「正ただしい」という意味いみの単語たんごは、南みなみでは「올」の部分ぶぶんを語根ごこんが明確めいかくでないものとして発音はつおん通どおりに「올바르다（正ただしい）」と表記ひょうきしているのに対たいし、北きたでは、前半ぜんはん部ぶを「옳다（正ただしい）」の語幹ごかんと見みて「옳바르다」（発音はつおんは南みなみと同おなじ［올바르다］）と表記ひょうきしている。逆ぎゃくに「桜さくらの花はな」という意味いみの単語たんごは、南みなみでは「벚(=버찌)（さくらんぼ）」と「꽃（花はな）」の合成ごうせい語ごと捉とらえているのに対たいし、北きたでは語根ごこんが明確めいかくでないものとして「벗꽃」とつづる。

また、「이」（歯は、虱しらみ）の合成ごうせい語ごに関かんして、南みなみでは発音はつおん通どおりに「니」と綴つづるのに対たいし、北きたでは原形げんけい通どおり「이」と綴つづる。

南みなみ	北きた	発音はつおん	日本語にほんご
앞니	앞이	[암니]	前歯まえば
머릿니	머리이	[머린니]	頭あたま虱しらみ

転訛てんかに関かんする表記ひょうき

標準ひょうじゅん語ごとも関連かんれんする問題もんだいであるが、ㅏ/ㅓを含ふくむ音節おんせつの後のちにㅣを含ふくむ音節おんせつが来くる場合ばあいに前ぜん舌した母音ぼいん化か（앞모음되기）してㅐ/ㅔとなることがある。

これをどの程度ていど表記ひょうき・標準ひょうじゅん語ご（文化ぶんか語ご）に反映はんえいするかについて、南北なんぼく差さがある。

南みなみ	北きた	語源ごげん	日本語にほんご
냄비	남비	日本語にほんごの「なべ」	鍋なべ
곰팡이	곰팽이	곰팡←곰-픠-앙	かび

縮ちぢみ約やく語かたりに関かんする表記ひょうき

「-하다」の縮ちぢみ約やく形かたち

「-하다」の縮ちぢみ約やく形かたちについて、北きたでは、ㅏの省略しょうりゃくのみを認みとめるが、南みなみ・中なかでは、하全体ぜんたいを省略しょうりゃくすることを認みとめる。

原形げんけい	南みなみ	北きた	中なか	日本語にほんご
넉넉하지	넉넉지	넉넉치	넉넉지	十分じゅうぶんだ、豊ゆたかだ
생각하건대	생각건대	생각컨대	생각건대	思おもう
만만하지	만만치			しなやかだ
적절하지	적절치			適切てきせつだ
심심하지	심심치			退屈たいくつだ、味あじが薄うすい、非常ひじょうに深ふかい
적합하지	적합지	적합치	적합지	適かなう、向むく
깔밋하지	깔밋지	깔밋치	깔밋지	小こぎれいだ

また、一部いちぶの語かたりは、南みなみで発音はつおんどおりに表記ひょうきされる。

原形げんけい	南みなみ	北きた	日本語にほんご	備考びこう
아무렇든	아무튼	아뭏든	いずれにしても	南みなみでは、아무러하다の縮ちぢみ約やく形かたちとして아무렇다のみを認みとめ、아뭏다を非ひ標準ひょうじゅん語ごと整理せいりしている。

「-이-」用言ようげんの縮ちぢみ約やく形かたち

「-이다」用言ようげんの縮ちぢみ約やく形かたちに関かんして，南北なんぼくで次つぎのような違ちがいがある。

原形げんけい			縮ちぢみ約やく形かたち							日本語にほんご
第だいI語ご基もと	第だいIII語ご基もと		第だいI語ご基もと	第だいIII語ご基もと
	南みなみ	北きた		南みなみ			北きた
고이다	고이어	고이여	괴다	괴어	괘	고여	괴여		고여	支ささえる、溜たまる
보이다	보이어	보이여	뵈다	뵈어	봬	보여	뵈여		보여	見みえる、見みせる
쓰이다	쓰이어	쓰이여	씌다	씌어		쓰여	씌여			書かかせる、書かける

その他たの縮ちぢみ約やく形かたち

原形げんけい		縮ちぢみ約やく形かたち		日本語にほんご
南みなみ	北きた	南みなみ	北きた
아니에요	아니예요	아녜요	안예요	～ではない

分わかち書がき

分わかち書がきの規定きていについては、南みなみの正書法せいしょほうでの全ぜん10項こうに対たいし、北きたの正書法せいしょほうでは全ぜん6項こうと、南みなみに比くらべて簡潔かんけつに整理せいりされている。概がいして北きたに比くらべて南みなみの正書法せいしょほうでは分わかち書がきを多おおくする傾向けいこうにある。主要しゅような違ちがいは以下いかの通とおりである。

形式けいしき名詞めいし

形式けいしき名詞めいし（南みなみでは의존 명사〔依存いぞん名詞めいし〕、北きたでは불완전명사〔不完全ふかんぜん名詞めいし〕と称しょうされる）の直前ちょくぜんは、南みなみでは分わかち書がきし、北きたでは続つづけ書がきする。数詞すうしと助数詞じょすうしの結合けつごうもこれに準じゅんずるが、南みなみでは一部いちぶ続つづけ書がきが許容きょようされている。

南みなみ	北きた	日本語にほんご
내 것	내것	私わたしのもの
할 수 있다	할수 있다	することができる
한 개	한개	1個いっこ
두 시 삼십 분/두시 삼십분	두시 삼십분	2時じ30分ふん

1つの概念がいねんを表あらわすもの

2単語たんご以上いじょうが合あわさって1つの概念がいねんを表あらわすものは、北きたでは助詞じょしが間あいだに入はいったり品詞ひんしが異ことなる場合ばあいであっても、原則げんそく続つづけ書がきをする。ただし、続つづけ書がきをすると意味いみが二に通とおりに解釈かいしゃくされたり、一いち単位たんいの文字数もじすうが余あまりにも多おおくなる場合ばあいにおいては分わかち書がきが許容きょようされる。

これに対たいし、南みなみでは原則げんそく的てきに分わかち書がきをする。ただし、南みなみでも、①複合語ふくごうごや、②補助ほじょ用言ようげん、③固有名詞こゆうめいし・専門せんもん用語ようごにおいては続つづけ書がきが許容きょようされる。

南みなみ	解釈かいしゃく(南みなみ)	北きた	解釈かいしゃく(北きた)	中なか	解釈かいしゃく(中なか)	日本語にほんご訳やく等とう
영어 사전	「영어 사전」は、国立こくりつ国語こくご院いん『標準ひょうじゅん国語こくご大だい辞典じてん』に登載とうさいされておらず、一いち単語たんご(複合語ふくごうご)とは見みなされないため、原則げんそくどおり分わかち書がきをする。	영어사전	名詞めいし同士どうしが吐を伴ともなわずに結合けつごうし、1つの対象たいしょう、現象げんしょう、状態じょうたいを表あらわすものは、続つづけ書がきをする。	영어사전	固有こゆうの対象たいしょうの名称めいしょうは、続つづけ書がきをする。	英語えいご辞典じてん
국어사전	国立こくりつ国語こくご院いん『標準ひょうじゅん国語こくご大だい辞典じてん』に一いち単語たんご(複合語ふくごうご)として登載とうさいされているため、続つづけ書がきをする。	국어사전	〃	국어사전	〃	国語こくご辞典じてん
경제 부흥 상황	いずれも一いち単語たんごと見みなされないため、原則げんそくどおり分わかち書がきをする。	경제부흥상황	〃	경제부흥상황	名詞めいし同士どうしが吐を伴ともなわずに結合けつごうし、1つの対象たいしょう、現象げんしょう、状態じょうたいを表あらわすため、続つづけ書がきをする。	経済けいざい復興ふっこう状じょう況きょう
전개해 나가고 있는 / 전개해나가고 있는	補助ほじょ用言ようげんは、分わかち書がきをするが、-아/어に続つづくものは、続つづけ書がきをすることができる。	전개해나가고있는	「-아/어/여」、「-고」形かたちの用言ようげんが他たの動詞どうしと合あわさって一ひとつの行動こうどう等とうを表あらわすとき（語かたり結合けつごう）は、続つづけ書がきをする。	전개해나가고 있는	「나가다」や「있는」は、補助ほじょ用言ようげんであるため、分わかち書がきをする。 ただし、「나가다」は、-아/어に続つづく補助ほじょ用言ようげんであるため、続つづけ書がきをする。	展開てんかいしていっている
여러 말 할 것 없이	「말 할」は、「말(을) 하다」の助詞じょしを省略しょうりゃくした形かたちであるため、一いち単語たんごとみなされず、分わかち書がきをする。その他たの単語たんごも原則げんそくどおり分わかち書がきをする。	여러말할것없이	異ことなる品詞ひんしが吐を伴ともなって結合けつごうし、1つの対象たいしょうを表あらわすため、全体ぜんたいとして1つの発音はつおんのかたまり（말소리덩어리）と見みて、続つづけ書がきをする。	여러 말 할 것 없이	冠かんむり形がた詞し「여러」は、接頭せっとう辞じ的てきに用もちいられる場合ばあいには該当がいとうしないため、原則げんそくどおり分わかち書がきをする。 「말 할」は、一いち単語たんごとみなされず、分わかち書がきをする。 固有こゆう語ご不完全ふかんぜん名詞めいし「것」は、前まえの単語たんごと分わかち書がきをする。 副詞ふくし「없이」は、名詞めいしと副詞ふくしが結合けつごうして副詞ふくしを構成こうせいする場合ばあいには該当がいとうしないため、原則げんそくどおり分わかち書がきをする。	全すべて言いうまでもなく、要ようするに
두말없이	国立こくりつ国語こくご院いん『標準ひょうじゅん国語こくご大だい辞典じてん』に一いち単語たんご(複合語ふくごうご)として登載とうさいされているため、続つづけ書がきをする。	두말없이	異ことなる品詞ひんしが吐を伴ともなわずに結合けつごうし、1つの対象たいしょうを表あらわすため、続つづけ書がきをする。	두말없이	名詞めいしと副詞ふくしが結合けつごうして副詞ふくしを構成こうせいするため、続つづけ書がきをする。	つべこべ言いわずに、言いうまでもなく
남궁억 박사 / 남궁 억 박사	「남궁억」は、姓せいと名なであるため、続つづけ書がきをする。ただし、二に字じ姓せいのため、姓せい・名めいの境界きょうかいが分わかるように分わかち書がきをすることが許容きょようされる。 「박사」は、官職かんしょく名めい等とうであるため、姓名せいめいと分わかち書がきをする。	남궁억박사	「남궁억」は、姓せいと名なであるため、続つづけ書がきをする。 「박사」は、官職かんしょく名めい等とうであるため、姓名せいめいに続つづけ書がきをする。	남궁억박사	「남궁억」は、姓名せいめいであるため、続つづけ書がきをする。「박사」は、呼称こしょう語ごであるため、姓名せいめいに続つづけ書がきをする。	南宮なんぐう檍博士はかせ
서울 대학교 인문 대학 / 서울대학교 인문대학	「서울 대학교 인문 대학」は姓名せいめい以外いがいの固有名詞こゆうめいしであるため、単位たんい別べつに分わかち書がきをすることが許容きょようされる。	서울대학교 인문대학	固有こゆうの対象たいしょうの名称めいしょうのうち、節ふしをなしながら続つづくものは、各かく節ふしごとに分わかち書がきをする。	서울대학교 인문대학	党とう組織そしき、行政ぎょうせい区域くいき等とうの名称めいしょうは、全体ぜんたいと部分ぶぶん等とうの間あいだを分わかち書がきする。	ソウル大学だいがく人文学部じんぶんがくぶ
김설미 어머니 ↔ 김설미 어머니	いずれも一いち単語たんごと見みなされないため、原則げんそくどおり分わかち書がきをする。	김설미 어머니 ↔김설미어머니	続つづけ書がきをすると2種類しゅるいの意味いみに理解りかいされうるものは、意味いみがとおるように分わかち書がきをする。	김설미 어머니 ↔김설미어머니	続つづけ書がきをすると他たの意味いみが生しょうずる場合ばあいには、意味いみ単位たんい別べつに意味いみがとおるように分わかち書がきをする。	金きむ雪美ゆきみのお母かあさん ↔金きむ雪美ゆきみ母かあさん
중증 급성 호흡기 증후군 / 중증급성호흡기증후군	専門せんもん用語ようごであるため、続つづけ書がきが許容きょようされる。	중증급성호흡기증후군 / 중증 급성 호흡기증후군	名詞めいし同士どうしが吐を伴ともなわずに結合けつごうし、1つの対象たいしょうを表あらわす語かたり結合けつごうは、続つづけ書がきをする。 ただし、単位たんいが著いちじるしく長ながいため読解どっかいするのが困難こんなんなときは、意味いみ単位たんいで分わかち書がきをすることができる。	중증 급성 호흡기증후군	専門せんもん用語ようごは、続つづけ書がきをする。 ただし、著いちじるしく長ながいため理解りかいするのが困難こんなんなときは、意味いみ単位たんいで分わかち書がきをする。	重症じゅうしょう急性きゅうせい呼吸こきゅう器き症候群しょうこうぐん

韓国かんこくにおける分わかち書がきの現状げんじょう

原則げんそくは上記じょうきの通とおりであるが南みなみにおいては、分わかち書がき与あずか否ひがその語かたりが一ひとつの単語たんごなのか複合語ふくごうごなのか、というあいまいな基準きじゅんに左右さゆうされることから、実際じっさいには分わかち書がきの統一とういつがあまりとれていない。

例たとえば、「국어사전（国語こくご辞典じてん）」という語かたりの場合ばあい、これを2単語たんごと考かんがえる人ひとは分わかち書がき(국어 사전)をするし、1単語たんごと考かんがえる人ひとは続つづけ書がき(국어사전)をするし、というように、何なにをもって1単語たんごと見みなすかによって実際じっさいの分わかち書がきはまちまちに行おこなわれている。

基本きほん的てきには，国立こくりつ国語こくご院いんの『標準ひょうじゅん国語こくご大だい辞典じてん』が標準ひょうじゅんとされ，例たとえば，先述せんじゅつの「국어사전（国語こくご辞典じてん）」の場合ばあいは続つづけ書がきとされているが，これに掲載けいさいされていない語彙ごいについては，結局けっきょく各自かくじに判断はんだんすることとなる。

なお，北きたでは，1単語たんごであるか否ひかに関係かんけいなく続つづけ書がきをするため、このような問題もんだいは生しょうじない。

語彙ごい

南みなみの標準ひょうじゅん語ごはソウル方言ほうげんを基礎きそとしており、北きたの標準ひょうじゅん語ご（「文化ぶんか語ご」と称しょうされる）は平壌ぴょんやん方言ほうげんに依拠いきょするところがある。しかし、南北なんぼくともに標準ひょうじゅん語ごの語彙ごい・語形ごけいは1936年ねんに朝鮮ちょうせん語ご学会がっかいが定さだめた「査定さていした朝鮮ちょうせん語ご標準ひょうじゅん語ご集しゅう（사정한 조선어 표준말 모음）」を基礎きそとしているため、基礎きそ的てきな語彙ごいにおいて南北なんぼく間あいだの差さはほとんど見みられない。その一方いっぽうで、政治せいじ体制たいせい・社会しゃかい制度せいどの相違そういに起因きいんするさまざまな新造しんぞう語ごには差異さいが生しょうじつつあり、この傾向けいこうは今後こんごさらに増ましていくものと見みられる。

政治せいじ体制たいせい・社会しゃかい制度せいどの相違そういによる差異さい

南みなみ（漢字かんじ表記ひょうき）	北きた（漢字かんじ表記ひょうき）	日本語にほんご
한반도（韓かん半島はんとう）	조선반도（朝鮮半島ちょうせんはんとう）	朝鮮半島ちょうせんはんとう
한국 전쟁（韓國かんこく戰爭せんそう）	조국해방전쟁（祖國そこく解放かいほう戰爭せんそう）	朝鮮ちょうせん戦争せんそう
초등학교（初等しょとう學校がっこう）	소학교（小學校しょうがっこう）	小学校しょうがっこう
우체국（郵遞局きょく）	우편국（郵便ゆうびん局きょく）	郵便ゆうびん局きょく
친구（親しん舊きゅう）	동무	友人ゆうじん

北きたで用もちいている「동무（友人ゆうじんの意い）」は朝鮮ちょうせん固有こゆう語ごであり、もともとは朝鮮ちょうせん全土ぜんどで広ひろく用もちいられていた単語たんごであるが、南北なんぼく分断ぶんだん後ごに北きたでロシア語ごтоварищ（友人ゆうじん、同志どうし）の訳語やくごとして用もちいられるようになってからは南みなみで用もちいられなくなった。

また、北きたでは漢字かんじを早はやい時期じきに廃止はいししたので、同音どうおん異義いぎ語ごを回避かいひするために、いくつの漢字かんじ語ごを固有こゆう語ごに置おき換かえることが確認かくにんできる。南みなみでも国語こくご純化じゅんか政策せいさくのため、北きたと同おなじ言葉ことばを使つかう場合ばあいがある。

南みなみ（漢字かんじ表記ひょうき）	北きた	日本語にほんご
홍수（洪水こうずい）	큰물	洪水こうずい
양파（洋よう파）	둥글파	タマネギ
가발（假かり髮かみ）	덧머리	かつら
압정（押釘）	납작못	画鋲がびょう

また、南みなみでは外来がいらい語ごの単語たんごが、北きたでは漢字かんじ語ごや固有こゆう語ごで表現ひょうげんすることもある。

南みなみ	北きた（漢字かんじ表記ひょうき）	日本にっぽん
헤어드라이어	건발기（乾いぬい髮かみ機き）	ヘアドライヤー
소프라노	녀성고음（女聲じょせい高音こうおん）	ソプラノ
호텔	려관（旅館りょかん）	ホテル
헬리콥터	직승비행기（直ちょく昇のぼり飛行機ひこうき）	ヘリコプター
원피스	달린옷	ワンピース
캐러멜	기름사탕（기름沙すな糖とう）	キャラメル
햄버거	고기겹빵	ハンバーガー

外来がいらい語ごの差異さい

現在げんざい、南みなみでは国立こくりつ国語こくご院いんが1986年ねんに制定せいていした「外来がいらい語ご表記ひょうき法ほう」、北きたでは国語こくご査定さてい委員いいん会かいが2001年ねんに制定せいていした「外国がいこく語ご表記ひょうき法ほう」（외국말적기법）により、それぞれ標準ひょうじゅんの外来がいらい語ご表記ひょうきが規定きていされている。

南みなみではアメリカ英語えいごから導入どうにゅうされた外来がいらい語ごが多おおく、北きたではロシア語ごから導入どうにゅうされた外来がいらい語ごが多おおいので、両者りょうしゃの間あいだで違ちがいが生しょうじる場合ばあいが少すくなくない。また、同おなじ英語えいご外来がいらい語ごであっても、音おとの取とり入いれ方かたが南北なんぼくで異ことなり、結果けっか的てきに異ことなる語形ごけいになることもある。

また、漢字かんじ圏けんを除のぞく外国がいこくの国名こくめい・地名ちめいについては、南みなみでは英語えいご名めいを用もちいるのが一般いっぱん的てきであるのに対たいし、北きたでは現地げんち言語げんごによる名称めいしょうが用もちいられる。中国ちゅうごくの地名ちめい・人名じんめいについては、南みなみでは中国ちゅうごく漢かん字音じおんで表記ひょうきされるのが一般いっぱん的てきであるが、北きたでは北京ぺきん（베이징）を除のぞいて朝鮮ちょうせん漢かん字音じおんで表記ひょうきされる。日本にっぽんの地名ちめいにおいては、南みなみは平たいら音おん・激げき音おんを使つかうのに対たいし、北きたでは平たいら音おん・濃こ音おんで表記ひょうきする（詳細しょうさいは「日本語にほんごのハングル表記ひょうき」を参照さんしょう）。

南みなみ	語源ごげん(南みなみ)	北きた	語源ごげん(北きた)	中なか	語源ごげん(中なか)	日本語にほんご	解説かいせつ
트랙터	英えい: tractor	뜨락또르	露ろ: трактор	뜨락또르	露ろ: трактор	トラクター	南みなみの外来がいらい語ご表記ひょうき法ほうでは、原語げんごにかかわらず、原則げんそく無声音むせいおんを激げき音おんに転写てんしゃする。北きたの外国がいこく語ご表記ひょうき法ほうでは、ロシア語ごの無声音むせいおんを濃こ音おんに転写てんしゃする。
스타킹	米べい: stocking [ˈstɑːkɪŋ]	스토킹	英えい: stocking [ˈstɒkɪŋ]	스타킹	米べい: stocking [ˈstɑːkɪŋ]	ストッキング	南みなみはアメリカ英語えいご、北きたはイギリス英語えいご。なお、北きたの外来がいらい語ご表記ひょうき法ほう(2001年ねん)では、子音しいん記号きごう前まえの[s]を쓰と、母音ぼいん記号きごう前まえの[t]をㅌと書かくことが原則げんそくであるが、朝鮮ちょうせん語ご大だい辞典じてんでは、左ひだりのとおりとされる。
폴란드	英えい: Poland [ˈpoʊlənd]	뽈스까	波なみ: Polska [ˈpɔlska]	뽈스까	波なみ: Polska [ˈpɔlska]	ポーランド	ポーランド語ごも無声音むせいおんは濃こ音おんに転写てんしゃ
시진핑	簡: 习近平ひらた (拼: Xí Jìnpíng)	습근평	朝あさ: 習近平ひらた	습근평	北きたと同おなじ。	習近平ひらた	中国ちゅうごく朝鮮ちょうせん語ごも습근평が標準ひょうじゅんである。
마르크스	Marx	맑스[막쓰]	Marx	맑스[막-]	Marx	マルクス
라디오	米べい: radio [ˈreɪdioʊ]	라지오	ラジオ /ɾaʑio/<英えい: radio	라지오	ラジオ /ɾaʑio/<英えい: radio	ラジオ	南みなみで、原語げんごどおりに表記ひょうきすると레이디오となるはずであるが、外来がいらい語ご表記ひょうき法ほう第だい５項こうが適用てきようされた結果けっか、左ひだりのとおり表記ひょうきされる。
에너지	英えい: energy	에네르기	独どく: Energie	에네르기 / 에너지	英えい: energy、独どく: Energie	エネルギー	中国ちゅうごくでは、에너지を에네르기の同義語どうぎごとしている。
컵	英えい: cup ([ˈkʌp])	고뿌	日にち: コップ /koppɯ/ < 蘭らん: kop	고뿌	北きたと同おなじ。	コップ	賞杯しょうはいの意味いみでは、北きた・中なかでも컵の語かたりを用もちいる。
밀리미터	英えい: millimeter	미리메터	日にち: ミリ+英えい: meter	밀리메터	英えい: millimeter	ミリメートル	北きたも英えい: milliは밀리と転写てんしゃするのが原則げんそくである。

語彙ごい査定さていの差異さい

そのほか、ソウル方言ほうげん形がたと平壌ぴょんやん方言ほうげん形がたの違ちがい等とうに由来ゆらいして、個別こべつ語彙ごいの査定さていについて差異さいが生しょうじたものがある。

南みなみ	北きた	中なか	日本語にほんご	備考びこう
옥수수	강냉이 / 옥수수	강냉이 / 옥수수	とうもろこし	南北なんぼくとも、옥수수, 강냉이の両方りょうほうを標準ひょうじゅん語ごとする。 北きたでは、옥수수を강냉이の同義語どうぎごと定義ていぎする。中なかでも同様どうようである。 南みなみでは、강냉이を옥수수の実み、옥수수を揚あげたものと定義ていぎする。
위	우	우	上うえ
거위	게사니 / 거위	게사니 / 거위	ガチョウ	北きたでは、거위を계사니の同義語どうぎごと定義ていぎする。
상추	부루		レタス
망치	마치		金かなづち
도시락	곽밥		弁当べんとう
싸다	싸다/눅다		安やすい
-	마스다		使つかえなくなるように壊こわしたり縮ちぢめたりする。「부수다（壊こわす）」の意味いみが近ちかい。	北きた固有こゆうの語彙ごい。
-	마사지다		「마스다」の自動詞じどうし形がた
자장면 / 짜장면	짜장면		チャジャンミョン	南みなみでは、 2011年ねん８月がつ前まえは、자장면のみを標準ひょうじゅん語ごとしていた。

「강냉이、우」といった語彙ごいは南みなみにおいても方言ほうげん形がたとしてしばしば耳みみにすることができる。

また、言語げんご醇化じゅんかにより、個別こべつ語彙ごいにつき差異さいが生しょうじたものがある。

南みなみ	北きた	古ふるい言葉ことば	日本語にほんご
튀김	기름튀기	뎀뿌라	天てんぷら

参照さんしょう文献ぶんけん

書籍しょせき

• 조선문화어문법규범편찬위원회 著ちょ、한선희 編へん（朝鮮ちょうせん語ご）『조선문화어문법규범 [朝鮮ちょうせん文化ぶんか語ご文法ぶんぽう規範きはん]』（2版はん）사회과학출판사〈조선사회과학학술집〉、2011年ねん7月がつ15日にち。ISBN 9789946278087。 
• 김연수; 김광수; 김철준 著ちょ、중국조선어사정위원회 編へん（朝鮮ちょうせん語ご）『조선말규범집 [朝鮮ちょうせん語ご規範きはん集しゅう]』延のべ边教育きょういく出版しゅっぱん社しゃ、2016年ねん12月。ISBN 9787552454932。 
• 리승길; 김성근; 홍석희; 최광훈（朝鮮ちょうせん語ご）『문화어발음사전 [文化ぶんか語ご発音はつおん辞典じてん]』사회과학출판사、2014年ねん。ISBN 9789946302188。 

論文ろんぶん

• 최호철（朝鮮ちょうせん語ご）『북한 「조선말규범집」의 2010년 개정과 그 의미 [北朝鮮きたちょうせん「朝鮮ちょうせん語ご規範きはん集しゅう」の2010年ねん改定かいていとその意味いみ]』민족어문학회〈어문논집〉、2012年ねん。ISSN 1226-6388。http://kiss.kstudy.com/journal/thesis_name.asp?key=3046377。 
• 박재호（朝鮮ちょうせん語ご）『《이다》문형의 술어조성법 [「이다」文型ぶんけいの述語じゅつご造成ぞうせい法ほう]』김일성종합대학〈과학연구〉、2016年ねん11月26日にち。 オリジナルの2023年ねん9月がつ2日にち時点じてんにおけるアーカイブ。http://www.ryongnamsan.edu.kp/univ/ko/research/articles/109a0ca3bc27f3e96597370d5c8cf03d。 
• 김택구 「남・북한 언어 규범의 비교와 통일방안의 모색」（朝鮮ちょうせん語ご）
• 북측공동편찬위원회「《겨레말큰사전》편찬을 위한 단일언어규범작성요강」(겨레만큰사전남북공동편찬사업회『《겨레말큰사전》편찬위원회 북측 자료집 1(제1차 회의~제5차 회의)』に収録しゅうろく)
• 북측공동편찬위원회「북남언어표기규범의 차이에 대한 항목별자료」(前項ぜんこう括弧かっこ内ないに同おなじ)
• 김일성《조선어를 발전시키기 위한 몇 가지 문제》(1964)
• 김일성《조선어의 민족적 특성을 옳게 살려 나갈 데 대하여》(1966)

ウェブサイト

• “남북한 언어 비교” (朝鮮ちょうせん語ご). nkinfo.unikorea.go.kr. 통일부. 2023年ねん8月がつ13日にち時点じてんのオリジナルよりアーカイブ。2023年ねん9月がつ18日にち閲覧えつらん。
• “北きた、シュートは「打うち込こみ」…コリアに言葉ことばの壁かべ：平たいら昌あきら大会たいかい”. 読売新聞よみうりしんぶん (2018年ねん2月がつ6日にち). 2021年ねん10月がつ24日にち時点じてんのオリジナルよりアーカイブ。2023年ねん9月がつ18日にち閲覧えつらん。
• “アイスハキと氷上ひかみホケイ　南北なんぼく合同ごうどうチームに「言葉ことばの壁かべ」 - 2018平たいら昌あきらオリンピック（ピョンチャンオリンピック）- 五輪ごりん特集とくしゅう”. 朝日新聞あさひしんぶん (2018年ねん1月がつ27日にち). 2018年ねん3月がつ14日にち時点じてんのオリジナルよりアーカイブ。2018年ねん2月がつ7日にち閲覧えつらん。
• “띄여쓰기규정해설”. 우리 말 배움터. 조선대학교 조선문제연구쎈터 조선어연구실 (2008年ねん8月がつ). 2023年ねん9月がつ18日にち時点じてんのオリジナルよりアーカイブ。2023年ねん9月がつ18日にち閲覧えつらん。

関連かんれん項目こうもく

• ハングル
• 朝鮮ちょうせん語ごの正書法せいしょほう
• ハングル正書法せいしょほう
• 朝鮮ちょうせん語ご規範きはん集しゅう
• ヒンドゥスターニー語ごの印しるしパ間あいだ差異さい