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生物化学的酸素要求量 - Wikipedia

生物せいぶつ化学かがくてき酸素さんそ要求ようきゅうりょう

(せいぶつかがくてきさんそようきゅうりょう、えい: biochemical oxygen demand)は、生物せいぶつ化学かがくてき酸素さんそ消費しょうひりょうともばれるもっと一般いっぱんてき水質すいしつ指標しひょうのひとつであり、おも略称りゃくしょうBOD使つかわれている[1]

水中すいちゅう有機物ゆうきぶつなどのりょうを、その酸化さんか分解ぶんかいのために微生物びせいぶつ必要ひつようとする酸素さんそりょうあらわしたもので、特定とくてい物質ぶっしつしめすものではない。単位たんいOオー mg/L または mg-O2/L だが、通常つうじょう mg/L とりゃくされる。一般いっぱんに、BODのおおきいほど、その水質すいしつわるいとえる。

概要がいよう 編集へんしゅう

水質すいしつ汚濁おだく典型てんけいてき形態けいたいとして、過剰かじょう有機物ゆうきぶつ排出はいしゅつまねく、腐敗ふはいによるさんかけがある。 水中すいちゅう酸素さんそ溶存ようぞん酸素さんそ)が減少げんしょうすれば、魚類ぎょるいひとしこう気性きしょう生物せいぶつ生存せいぞんできなくなり、さらになくなった場合ばあいには、いわゆる「みずくさる」状況じょうきょうとなり悪臭あくしゅうひとし発生はっせいいたる(魚類ぎょるい生存せいぞん可能かのう溶存ようぞん酸素さんそ濃度のうど下限かげんが3 - 5 mg/Lとわれ、環境かんきょう基準きじゅんのC類型るいけい基準きじゅんとして採用さいようされている)

歴史れきしじょう産業さんぎょう革命かくめいとともに水質すいしつ汚濁おだく直面ちょくめんしたイギリスにおいて発案はつあんされたとわれている[だれによって?]現在げんざい試験しけん方法ほうほうは1908ねん王立おうりつ委員いいんかい河川かせん汚染おせん下水げすい処理しょり)により、河川かせん汚染おせんする有機物ゆうきぶつたいする最適さいてき試験しけん方法ほうほうとして5日間にちかんほう選定せんていされ、その下水げすい処理しょりじょう河川かせん放流ほうりゅう基準きじゅんとして20 mg/Lが採用さいようされた規定きていいでいる。(この5日間にちかん根拠こんきょは、当時とうじイギリス本土ほんど河川かせんながれたち時間じかん最長さいちょうで5にちとされていたためで、それはテムズがわのこととられる)

日本にっぽんにはだい世界せかい大戦たいせんのちアメリカから導入どうにゅうされ、法令ほうれい基準きじゅんれられた。現在げんざいでは、水質すいしつ環境かんきょうレベルの指標しひょうとして環境かんきょう基準きじゅんもちいられているのをはじめとして、排水はいすい性状せいじょうみず処理しょり装置そうち性能せいのうあらわすため、JIS規格きかく水質すいしつ汚濁おだく防止ぼうしほう下水道げすいどうほう建築けんちく基準きじゅんほうなどに登場とうじょうしている。

測定そくてい 編集へんしゅう

BODの測定そくていは、河川かせんなどでしょうじる水質すいしつ汚濁おだく自然しぜん浄化じょうかシミュレーションしたものである。

みずによりみずとともに当然とうぜん採取さいしゅされるその水域すいいき微生物びせいぶつ活動かつどうによる酸素さんそ消費しょうひ計測けいそくすることで、一定いってい時間じかん外部がいぶから酸素さんそ供給きょうきゅうがなされない場合ばあいに、その河川かせんすい溶存ようぞん酸素さんそがどこまで減少げんしょうするかを指標しひょうした。 試料しりょう溶存ようぞん酸素さんそりょう微生物びせいぶつ種類しゅるいなどによって測定そくてい影響えいきょうけるため注意ちゅうい必要ひつようである。

環境かんきょうすい水質すいしつ測定そくてい目的もくてきとして発案はつあんされたBODであるが、その排水はいすい規制きせいとう活用かつようされ、微生物びせいぶつ存在そんざい期待きたいできないようなみずについては、うえしゅおこなって測定そくていする手法しゅほう採用さいようされることとなった。 また、硝化しょうかせい微生物びせいぶつ活動かつどう窒素ちっそせい物質ぶっしつ酸素さんそ消費しょうひ)を抑制よくせいするBODatuなどもあり、これによる測定そくてい測定そくてい対象たいしょう窒素ちっそせいBOD(N-BOD)、BODからN-BODを減算げんざんしたものをすみ素性すじょうBOD(C-BOD)とすることもられる。

対象たいしょう物質ぶっしつ 編集へんしゅう

BOD5として測定そくていされる物質ぶっしつは、つぎのように大別たいべつできる。

  • 有機物ゆうきぶつ生物せいぶつ現象げんしょうにより酸化さんか分解ぶんかいされるもののだい部分ぶぶん有機物ゆうきぶつであり、BOD測定そくていしゅたる目的もくてきである。だが、種類しゅるい性質せいしつともにきわめて多様たようなため、有機物ゆうきぶつ測定そくてい方法ほうほう(CODやTOCなど)の一致いっちしないことがおおい。とく排水はいすい処理しょり設備せつび排水はいすい環境かんきょう負荷ふか評価ひょうかする場合ばあい十分じゅうぶん把握はあくしておく必要ひつようがある。
    • 糖類とうるい有機ゆうきさんなどはバクテリアうちすみやかに吸収きゅうしゅうされ、おおむね48時間じかん以内いない大半たいはん酵素こうそ反応はんのうによって酸化さんか分解ぶんかいされるため、含有がんゆうりょうのほぼすべてが捕捉ほそくされる
    • デンプンタンパク質たんぱくしつ脂質ししつなどは加水かすい分解ぶんかいによるてい分子ぶんし過程かているため吸収きゅうしゅうされるまで時間じかんかり、またバクテリアの種類しゅるい共存きょうぞん物質ぶっしつにより分解ぶんかい速度そくど影響えいきょうされやすい。含有がんゆうりょうの30 - 70%が捕捉ほそくされる
    • 溶解ようかいせいひく物質ぶっしつや、ベンゼン化合かごうぶつプラスチックるいなどなま分解ぶんかいせいひく物質ぶっしつは、BODとしてほとんど(20%からそれ以下いか捕捉ほそくされない
  • 無機物むきぶつ硫化りゅうかぶつ亜硫酸ありゅうさんイオン、てつ(II)など還元かんげんせい物質ぶっしつ測定そくていふくまれないよう対処たいしょしても、りょう共存きょうぞん物質ぶっしつ操作そうさによっては影響えいきょうする
  • アンモニア試料しりょうちゅう硝化しょうかきんおお場合ばあい硝化しょうか作用さようけて硝酸しょうさん硝酸しょうさん酸化さんかされる過程かてい酸素さんそ消費しょうひされる

測定そくてい方法ほうほう 編集へんしゅう

BODは特定とくてい物質ぶっしつ測定そくていするのではなく、ある条件下じょうけんかでの試験しけん結果けっかであるため、一定いってい操作そうさ手順てじゅんまえないと測定そくてい誤差ごさしょうじるおそれがたかい。

具体ぐたいてき測定そくてい器具きぐ手順てじゅん規格きかくによって様々さまざまだが、時間じかんかる公定こうていほう短時間たんじかん結果けっかせる簡易かんいほうがある。

  • 一定いってい時間じかん経過けいかの、溶存ようぞん酸素さんそ変化へんか測定そくていする方法ほうほう日本にっぽんのJIS規格きかくをはじめ、もっと基本きほんてき方法ほうほう
    • 濃度のうどほう培養ばいようビン、ふらんビンとばれる、内部ないぶ気泡きほうのこさず密栓みっせんできるすりあいガラス容器ようき使用しようする。溶存ようぞん酸素さんそ測定そくていは、薬品やくひんまたは電極でんきょくによる
    • 圧力あつりょくほう二酸化炭素にさんかたんそ吸収きゅうしゅうざい設置せっちした密閉みっぺい容器ようき使用しようする。圧力あつりょく変化へんかから酸素さんそ消費しょうひ測定そくていするため、途中とちゅう経過けいかから分解ぶんかい速度そくどることもできる
  • バイオセンサー一種いっしゅ使用しようし、短時間たんじかん測定そくていする方法ほうほう公定こうていほうとしてはみとめられていないが、プロセス管理かんりけに関心かんしんあつめている

一方いっぽう測定そくていする試料しりょうすいたいしても留意りゅうい事項じこうがある

  • 有機物ゆうきぶつりょう:バクテリアが分解ぶんかいえたとき容器ようきない酸素さんそ半分はんぶん程度ていどのこされている必要ひつようがあり、推測すいそくにより希釈きしゃくする
  • バクテリアの種類しゅるいりょう:バクテリアがわなかったり不足ふそくしていると、有機物ゆうきぶつ分解ぶんかいすすまず測定そくていひくくなるため、うえしゅ必要ひつよう
  • 阻害そがい物質ぶっしつ:バクテリアの活動かつどう増殖ぞうしょくさまたげるさんやアルカリ、重金属じゅうきんぞく殺菌さっきんざいなど毒性どくせいのある物質ぶっしつふくまれている場合ばあいぜん処理しょりたいせいのあるバクテリアの馴養が必要ひつよう

操作そうさ 編集へんしゅう

日本にっぽんのJIS規格きかく K0102-21 にさだめられている操作そうさ標準ひょうじゅん希釈きしゃくほう)をれいとしてあげる

  1. 試料しりょうぜん処理しょり温度おんど調節ちょうせつ中和ちゅうわ還元かんげんだつ硝化しょうか抑制よくせいざい添加てんか)する
  2. BODのを、前回ぜんかい測定そくていやCOD・TOCから推測すいそくし、希釈きしゃく倍数ばいすうめる(4 - 5段階だんかい
  3. 希釈きしゃくすいまたはうえしゅ希釈きしゃくすい希釈きしゃくして最初さいしょ希釈きしゃく試料しりょう調製ちょうせいする(推測すいそく濃度のうどひくくDOが十分じゅうぶんなら希釈きしゃく
  4. 2 - 4ほん培養ばいようビンに気泡きほうはいらないよう希釈きしゃく試料しりょうめて密栓みっせんする
  5. つぎ希釈きしゃく倍数ばいすう希釈きしゃく試料しりょう調製ちょうせいし、同様どうよう瓶詰びんづめしてゆくことをかえ
  6. 15ふん培養ばいようビンのうち1ほん培養ばいようまえのDOを測定そくていする
  7. 20±1 遮光しゃこうした恒温こうおんまたは恒温こうおんそうないで5日間にちかん培養ばいようする
  8. 培養ばいようのDOを測定そくていし、培養ばいようまえのDOにたいし、40 - 70%のものをえら
  9. 培養ばいようまえのDOからえらんだき(うえしゅした場合ばあい補正ほせいし)、希釈きしゃく倍数ばいすうけてBOD5もとめる

各国かっこく採用さいようされている公定こうていほうおおむ同様どうようだが、その測定そくてい目的もくてき行政ぎょうせい判断はんだんとうにより様々さまざま設定せっていがなされている。 とく培養ばいよう日数にっすうは、河川かせん水質すいしつ状況じょうきょうについては一般いっぱんてきに5日間にちかんBODが採用さいようされるが、週休しゅうきゅう2にちせい前提ぜんていとして採取さいしゅ時期じき自由じゆうげる7日間にちかんBODも採用さいようされている。

このほか、生物せいぶつ分解ぶんかい可能かのう有機物ゆうきぶつ大半たいはん測定そくていや、物質ぶっしつなま分解ぶんかいせい評価ひょうか目的もくてきとする長期間ちょうきかん(10、14、20日間にちかん)BODや、生物せいぶつ分解ぶんかい可能かのう物質ぶっしつ全量ぜんりょう測定そくていするための代替だいたい指標しひょうとして100日間にちかんBODの測定そくていおこなわれている。

基準きじゅん 編集へんしゅう

環境かんきょう基準きじゅん排水はいすい基準きじゅん設定せっていされているほか、それをまえた各種かくしゅ基準きじゅん存在そんざいする。

  • 環境かんきょう基準きじゅん河川かせん水質すいしつ汚濁おだくかか環境かんきょう基準きじゅん項目こうもくとなっており、生活せいかつ環境かんきょう保全ほぜんかか項目こうもくとして、河川かせんにおける基準きじゅんが、その河川かせん利用りよう形態けいたいとう考慮こうりょした類型るいけい自然しぜん環境かんきょう保全ほぜんようする水域すいいき適用てきようされるもっときびしいAA類型るいけいから大都市だいとし河口かこう付近ふきんのE類型るいけいまで)ごとにさだめられている。かく類型るいけいとBODの環境かんきょう基準きじゅん関係かんけいはAA類型るいけいが1 mg/L以下いか、A類型るいけいが2 mg/L以下いか、B類型るいけいが3 mg/L以下いか、C類型るいけいが5 mg/L以下いか、D類型るいけいが8 mg/L以下いか、E類型るいけいが10 mg/L以下いかである。通常つうじょう環境かんきょうすいでは、酸素さんそ溶解ようかいりょうは10 mg/L程度ていどであることから、最低限さいていげん環境かんきょう基準きじゅんとして、酸素さんそがなくならない10mg/Lが採用さいようされている。
  • 排水はいすい基準きじゅん事業じぎょうじょう排水はいすい海域かいいきおよび湖沼こしょう以外いがいへの排出はいしゅつすい)にたいし、BODは160 mg/L以下いかさだめられている。
  • その家庭かてい工場こうじょうからの排水はいすいりょうに、そのBOD濃度のうどをかけたものはBOD負荷ふかりょうばれる。単位たんい質量しつりょうまたは時間じかんあたりの質量しつりょうあらわされる。下水げすい処理しょりじょうなどみず処理しょり施設しせつ設計せっけい運転うんてんするじょう重要じゅうよう指標しひょうとなっている。

対象たいしょう水域すいいき 編集へんしゅう

BOD指標しひょう海域かいいき湖沼こしょうではもちいられない。その理由りゆうとしては、湖沼こしょうにおいては、河川かせんより滞留たいりゅう時間じかんながく、長期ちょうきのBODによる測定そくてい必要ひつようなことから、行政ぎょうせいてきもちいられておらず、その代替だいたい指標しひょうとしてCODが採用さいようされている。

海域かいいきにおいては、塩化えんかぶつイオンの影響えいきょうから溶存ようぞん酸素さんそ測定そくてい複雑ふくざつすること、水質すいしつ汚濁おだく問題もんだいとなりやすい内湾ないわんとう閉鎖へいさせい海域かいいきにおいて、滞留たいりゅう時間じかん関係かんけいから短期たんきBODでは環境かんきょう状況じょうきょう反映はんえいしにくいことから、これも行政ぎょうせいてき採用さいようされず、代替だいたい指標しひょうとしてCODが採用さいようされている。

出典しゅってん 編集へんしゅう

  1. ^ 用語ようご解説かいせつ生物せいぶつ化学かがくてき酸素さんそ要求ようきゅうりょう(BOD)” (2013ねん1がつ22にち). 2018ねん2がつ14にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく 編集へんしゅう