竪穴たてあな式しき石室いしむろ

竪穴たてあな式しき石室いしむろ（たてあなしきせきしつ）は、古墳こふん時代じだい前期ぜんきから中期ちゅうきにかけてよく見みられる古墳こふんの埋葬まいそう施設しせつである。

 

森もり将軍しょうぐん塚づか古墳こふん（長野ながの県けん千せん曲きょく市し）の竪穴たてあな式しき石室いしむろ（復元ふくげん）
上部じょうぶ（上うえ）と内部ないぶ（下した）、森もり将軍しょうぐん塚づか古墳こふん館かん展示てんじ。

概要がいよう

発掘はっくつ過程かていで竪穴たてあなの石室いしむろのように検出けんしゅつする事ことからその名ながついた。竪穴たてあな式しき石室いしむろに割わり竹ちく形木かたぎ棺かんを埋葬まいそうする方法ほうほうは、3世紀せいき代だいから4世紀せいき代だいにかけて流行りゅうこうした。

その基本きほん構造こうぞうは、割わり竹ちく形木かたぎ棺かんを墓はか壙の底そこに安置あんちしたあと、棺かんに接せっする部分ぶぶんに板いた状じょうの石いしを重かさねていき、棺かんと板いた石せきの間あいだに角かく礫つぶてを隙間すきまなく詰つめ込こんで、最後さいごに大おおきな蓋ぶた石せきをかぶせる。木き棺かんを置おく場所ばしょにあらかじめ粘土ねんどを敷しいたり、墓はか壙の床ゆか全面ぜんめんに砂利じゃりを敷しいたりしている。墓はか壙内に浸透しんとうしてきた雨水あまみずを排水はいすいするための暗渠排水あんきょはいすい施設しせつを設もうけている石室いしむろもある。積つみ上あげられる石いしの量りょうも膨大ぼうだいなもので、総量そうりょう数すうトンに達たっする。その石材せきざいは二上山にじょうざんのサヌカイトが一般いっぱん的てきであるが、徳島とくしま県けんの吉野川よしのがわ下しも流域りゅういきの結晶けっしょう片岩かたいわもよく使つかわれている。石室いしむろの構築こうちくには、相当そうとうな量りょうの石いしが運はこばれたと想定そうていしなければいけない。 木き棺かんと石いしで築きずいた壁かべのあいだに空間くうかんがあまりないので、これを石室いしむろではなく外側そとがわの棺かんと解釈かいしゃくして竪穴たてあな式しき石槨せっかくと表記ひょうきする場合ばあいも多おおい。 4世紀せいき半なかばから簡略かんりゃく化かされた粘土ねんど槨が普及ふきゅうする。この場合ばあいも、木き棺かんを覆おおう空間くうかんを残のこさず、直ちょく接木つぎき棺かんを棺かん床ゆかの粘土ねんどと同おなじ粘土ねんどで包つつみ込こんだ後のち、墓はか壙を埋うめる。その被覆ひふく粘土ねんどは、棒状ぼうじょうの道具どうぐで念入ねんいりに叩はたき締じめられている。

割わり竹ちく形木かたぎ棺かんの内うち・外との面もと石室いしむろの壁面へきめんとにベンガラ（赤色あかいろ顔料がんりょう）が塗ぬられることが多おおい。棺かんの内側うちがわには朱しゅ（水銀すいぎん朱しゅ）が塗ぬられている場合ばあいもあり、ベンガラと朱しゅの両方りょうほうが用もちいられる場合ばあいもある。埴輪はにわを造つくることが埋葬まいそう祭祀さいしの一部いちぶであるととらえられているので、石室いしむろ構築こうちくも同様どうように埋葬まいそう祭祀さいし行為こういであったと考かんがえられる。 このような石室いしむろ・石槨せっかくを構築こうちくするのは、密閉みっぺいと防湿ぼうしつに配慮はいりょしており、また、首長しゅちょうの亡骸なきがらを棺かんに収おさめ保存ほぞんするとともに外敵がいてきから護まもるという意味いみもあり、さらに石いしで覆おおい固かため封ふうじ込こめる意味いみがあったのではないかと推測すいそくされている。このような構築こうちく方法ほうほうや埋葬まいそうの意味いみが5世紀せいき以降いこう薄うすれていく。

日本にっぽん最大さいだい級きゅうの竪穴たてあな式しき石室いしむろは長野ながの県けん千せん曲きょく市しの森もり将軍しょうぐん塚づか古墳こふんのもので、長ながさ 7.6メートル、幅はば 2メートル、高たかさ 2.3メートルにおよぶ。

製作せいさく過程かてい

1. 墳丘ふんきゅうに掘ほった大おおきな土ど壙のそこの中央ちゅうおう部ぶに粘土ねんどをひく。
2. 粘土ねんどの上うえに木き棺かんを安置あんちして遺骸いがいを埋葬まいそうする。
3. 木き棺かんの四方しほうに板いた石せきないし割石わりいしを積つみ上あげて壁かべにを構成こうせいし、壁かべの背後はいごの裏うら込こめも全すべて石材せきざいで充填じゅうてんする。
4. さらに四壁しへきの上うえに大おおきな天井てんじょう石せき数すう個こを並ならべて封鎖ふうさし、その上うえに粘土ねんどを厚あつく被覆ひふくして土どで埋うめる。

例れい

1. 雪野山ゆきのやま古墳こふん - 滋賀しが県けん東ひがし近江おうみ市し（旧きゅう八日市ようかいち市し）近江八幡おうみはちまん市し・竜王りゅうおう町まち、前期ぜんき前半ぜんはんで全長ぜんちょう70メートルの前方後円墳ぜんぽうこうえんふん、竪穴たてあな式しき石室いしむろに舟形ふながた木き棺かんを納おさめる。

関連かんれん項目こうもく

• 粘土ねんど槨
• 横穴よこあな式しき石室いしむろ
• 古墳こふん
• 日本にっぽんの古墳こふん一覧いちらん

参考さんこう文献ぶんけん

• 『古墳こふんとヤマト政権せいけん』文春ぶんしゅん新書しんしょ 白石しらいし太一郎たいちろう（奈良大学ならだいがく教授きょうじゅ）著ちょ